俺たちの冒険の書No.001〜ロトの血を引きし者〜   作:アドライデ

19 / 35
Lv.19:ベギラマを覚えた。

 

「致し方ない! ベギラマ!」

 ベホイミを使われる程、厄介なものはない。少し剣で削り、トドメにこの攻撃魔法を使う。ギラに比べ遥かに性能は良いが、不安定なのは変わらない。消費も約二倍半だ。多用すると直ぐに魔力が底に着く。

 

 上記のような【しにがみのきし】に対しての戦略ができてきた頃、竜王城の地下も深いところまで行けるようになった。

【ストーンマン】にはラリホー戦法。状態異常耐性のある【しにがみのきし】には先手必勝。

【ダースドラゴン】にはガチンコ勝負。

ロトの剣を手に入れてから、それらの強い敵とも戦えるようになってきた。

 

 しかし、これだけ探すも竜王が見つからない。大分奥深くまで歩いていると言うのに。

真っ直ぐ階段を降りる場所があったのだが、特殊な魔力に覆われておりループしていたらしい。

何度か力尽きてからの再挑戦を経験した後に漸く気付く。もしやと引き返し階段を上ったら、最初に降り始めた階段の入口へと直に戻ったときは、少し相手の術中にハマった気がして悔しかった。

なんと無意味なことをしていたのかと…。

 

 既に数え切れない数を挑戦した後、最下層にも関わらず、明るい部屋に出た。

キョロキョロと見渡しながら歩く。

途中宝箱を見つけたが良いものは入ってなかった。呪いのベルト(売ると180G)とかいかにもと言うのを見つけた。

呪われたら来いと言ってくれていた人がいたが、いやこれはあからさま過ぎて使う気も起きない。

 

「………っ!」

 開けた場所に出た。断崖絶壁を横からくり抜いたように、日が差し込み毒沼と合わせて緑の芝生が生い茂っている。

庭のように橋がかけられており、そこから遠くにラダトーム城が見えた。

「監視されているようだな」

 思わずそんな言葉が漏れた。

ラダトーム城からは上部の城は見えていたがここは死角となり、見えていなかった。

 

 中庭の終着点、少し離れたところにある入り口。

その奥に禍々しいオーラを感じた。いる、最終目標がそこにいる。

今の魔力消費量では、勝てない。最短で来れるように、ここまでくる道のりを覚えよう。

己の考えが正しければ相手は悠長に待ってくれている。

「リレミト」

 敵前ではあるが脱出呪文を唱える。

 

「良くぞ戻った」

 どこかホッとしたように出迎える姿に、そう言えば、帰還の御守りを使わず戻るのは久しぶりだったことを思い出す。

現状報告と現時点ではまだ不可能だが、あと少しで行けると予想を告げる。ワンランクアップが必要、やるだけのことはやるしかない。

 

「勇者様…」

 現状が良好へ向かいつつあるのに、なぜか不安そうに声をかけられた。

首を傾げつつ、側に近寄る。

「ローラはあなたのことをお慕いしております。なのに凄く不安なのです」

 そりゃそうか、あれだけ傷付き帰還を繰り返していれば不安にもなる。己でもよく無事だと思う。

 

初めの頃は不安だった。なぜ己がと言う懸念が拭えなかった。確かに、伝説やら言い伝えやら予言やらで雁字搦めで、ひたすら竜王討伐に向けて走って来た。

自由というものがないかもしれない。

 

 勇者とは何か?

どうあらねばならないのか。

 

 答えは簡単だ。

そんなものは初めから無い。

歴史からは方法を学べども、実行するのは現代の己自身の意思。

昔とは違うのだ。同じものを求められても無理だろう。

 

「姫、私は結構、好き勝手しておりますよ」

 姫を助けると言う選択をしたのも…ビビって逃げてたことも、そして前に進むと決めたのも全部自分の意思。

一礼をして立ち去る。

 

 アレフLv.19、使命完了までもう一踏ん張り。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。