魔法騎士レイナース   作:たっち・みー

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#007

 act 7 

 

 森を抜けた場所は見晴らしがよく、大きな石がいくつか転がっていた。

 一言で言えば草原地帯だ。

 背後の森は襲ってくることは無く、出口が塞がったところで静かになった。

 

「森を抜けた今、魔法が使えるはずでござる」

「なんでそれをお前が知っている?」

「さあ? なんででござろうか。そういう()()なのでは?」

 

 身も蓋も無いのはハムスケも同様のようだ。

 呆れつつもイビルアイとレイナースは辺りを調査する。

 ルプスレギナは近くの岩場に腰掛けて瞑想を始める。

 一休みと魔力回復、状況整理などを(おこな)うためだ。

 ここまで休まず移動し続けたのだから、疲れを感じていた。

 人狼(ワーウルフ)としての本能が働いているのかもしれない。

 飲食と睡眠を不要にする『維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)』が無いので無理な強行軍は危険だと思った。

 休める時に休む。

 

「えてるな、とやらはこの辺りなのか?」

「この辺りが『エテルナの泉』と言われているのは間違いないでござるよ」

 

 周りを見回しても湖のような水溜りはどこにも見当たらない。もちろん、空にも。

 あるのは無数の岩ばかり。

 ただ、黒い仔山羊(ダーク・ヤング)はここを通っていったようで、踏み砕かれた跡が延々と伸びていた。

 あのモンスターが世界を滅ぼす魔物と言われても不思議は無い。それを家畜として飼育している村とはどんなところなのか。というか、あれがまだ他にも居るという事かもしれない。

 行きたくないな、とイビルアイは思う。

 明らかに人間を踏み潰すようなモンスターを飼えるとは到底思えない。

 

        

 

 この国では家畜に踏み潰されても罪に問われないのか、とハムスケに聞くと遠いところの事は分からないと答えてきた。

 運が無かったと思って諦めろ、という事なのか。

 イビルアイが疲れたため息をつくころ、レイナースは辺りの調査を終えて武器の具合を確かめていた。

 ずっと移動が多かったので身体の調子が狂ってはいけないと判断したためだ。

 投擲用の小刀の確認もしておく。こちらは投げた後、回収できるのか不安だった。

 今のところ他国と戦争状態というわけではないようだ。では、世界の危機とは何なのか。

 セフィーロが崩壊するという言葉の意味は正直、分からない。

 ジルクニフ姫がセフィーロを救ってほしいと願ったから我々はここに来た、と考えるのが自然だ。だが、いきなり命の危機を感じたが。

 裸一貫で世界を救うのは無謀だ。であれば、今の我々は何を頼りに進めばいいのか。

 ただ単に姫の下まで行ってアインズを倒せばいいのか。

 

「……今の装備でアインズを倒せ、というのは無いだろうな」

 

 意味も無く呼ばれて殺されるのは勘弁願いたい。

 

「ハムスケ。君は何か知らないのか? 我々は魔法騎士になれば世界を救えるのか?」

「拙者はお主達を案内する役目しか知らないでござる」

「今のままでは世界は救えないぞ」

「それがしは世界の命運とか正直、分からないでござるからな」

 

 自分が住む世界の崩壊に対して暢気なものだとレイナースは呆れる。

 だが、今のまま何の情報も無く進むのは危険だ。

 

「近くに村などは無いのか?」

「それならば……」

 

 ハムスケが早々に役立たずだと理解したイビルアイが魔法を唱える。

 沈黙の森の結界らしきものが働かなかったようで『飛行(フライ)』が使えた。

 


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