魔法騎士レイナース   作:たっち・みー

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#004

 act 4 

 

 女性三人を乗せて軽々と疾走する聖獣ハムスケ。

 行き先は分かるようだが、これから先に待ち構えて居る者が何なのか、三人は分からない。

 ただ、最後の敵の姿は想像通りのような気がして、それぞれ苦笑する。

 

「それで……、我々を何所に連れて行く気だ?」

「『沈黙の森』でござる」

「トブの大森林ではないのか?」

「とぶ? それがしの記憶に無いでござるね」

 

 というよりハムスケの存在はイビルアイは知っている。

 レイナースも『森の賢王』の姿は見た事があるので当然、知っている。

 アダマンタイト級冒険者『モモン』が使役する魔獣として。

 そのハムスケが疾走すること数十分で目的地に到着する。自分でも早く付いて驚いていた。

 

「……う~ん。拙者はこれほど早く走れたのでござるのか。運動は大事でござるな。そうそう、ここから先は『沈黙の森』の領域ゆえ、魔法は使用できないでござる。気をつけるでござるよ」

「そうか。了解した」

「……治癒魔法は今の内に……。具合が悪い人は居ませんか?」

 

 ルプスレギナが今、唱えられる魔法を使っておく。ただ、森に踏み込めば魔法の効力は全て無効化されてしまうらしい。

 イビルアイは無手(むて)でも戦えるが、魔力を乗せられないと攻撃力は落ちてしまう。

 レイナースは武器さえあれば心強い程度で、ルプスレギナは気が向いたら戦うとのこと。

 彼女の場合は気まぐれではあるが敵には容赦しない筈だから何も言わなかった。

 

        

 

 歩いて数分で森の雰囲気を感じ取る。確かに魔法の効果がどんどん消されていく。

 ルプスレギナは自分の身体に付与されている魔法の効果の具合を確かめる。

 今のところは問題が無いようで安心した。

 NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)というものが魔法の効果に含まれるものであれば存在が消えるかもしれない、と思ったからだ。無関係だと分かった今はほっと一息つく。

 それから獣道を頼りに歩いていくのだが、ハムスケは後方に控えていて道案内役は誰も居ない。

 聞けば目的地の場所を知らないという。

 それは何故なのか。

 沈黙の森は侵入するものを迷わせる性質があり、地図を頼りに進む事のできない場所だという。

 生きた森というわけではないらしいが詳しい事はハムスケにも分からない。

 とにかく、進むしかない。

 と、進んでからハムスケは思い出す。

 

創師(ファル)の家を先に行くんでござった!」

「はぁ!?」

「引き返した方がいいでござる。そうそう、まずは創師の家に行かないと危険でござった」

 

 と、言われても既に森に入って後方の道は塞がっていた。だが、ここでルプスレギナが指差していく。

 

「出るなら私について来てっす」

「分かるのか?」

「まあ、これでも人狼(ワーウルフ)っすから」

 

 正体を見せた以上は無理に隠しても仕方が無い。

 旅の仲間をいきなり殺しては後々、怒られてしまう。

 ルプスレギナにとって重要なのは主であるアインズの命令のみ。もちろん、この世界のアインズとやらと同じかは分からないけれど。

 雰囲気的には同一人物っぽいのだが、今は成り行きに任せる事にした。

 森が出口を塞ごうとしてもルプスレギナの物理攻撃は割りと高く、いくつかの木々は素手で打ち砕かれる。

 侵入した距離が短かった為に出るのは早かった。

 

「なかなか不思議な森のようっすね」

 

 首を軽く捻りつつルプスレギナは屈伸運動を始める。

 

「ファルの家とやらは何所だ?」

「森の入り口近くにあるでござるが……。右と左……、どっちでござったかな」

 

 それほど遠くないはず、とハムスケが言うので、はぐれないように集団で移動する面々。

 とても高い木々が生い茂っているので屋根は見えそうに無い。魔法も使えない事は分かった。

 森の中ではなく近隣からすでに使用できなくなっているようだ。

 


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