IS -Rachedämonin Silber-   作:名無し猫

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『金色』の痕跡

 個別トーナメントから数日。既に7月に入り、その第一週の週末。一夏とリィスの決着が付いてから色々なことがあった。

 

 まず、箒について。トーナメント終了後、箒が直接リィスに謝りに来たのだ。何故かラウラもついてきていたが。謝罪の内容は今までのことだった。対抗戦での発言のこと、行動のこと。暴言を吐いていたことも含めて謝罪をされ、リィスとしてはかなり戸惑った。彼女自身、それについては気にしていなかったからだ。結局その流れで和解。最後に『一夏を頼む』とだけ言われその時は部屋を去った。

 

 大勢が気になっている一夏とリィスの関係についても、決着が付いた。一学年トーナメント終了の翌日、教室へと登校してきたリィスとその後で現れた一夏に対して一組生徒含み大勢が問い詰めた。『で、結局どうなの?』と。それに対して二人が返答したやり取りが、

 

 

『いや、どうも何も。まだ俺返答聞いてないんだけど……というか、それ今する話か? ええと、リィス?何で席から立って俺の前まで来てるんだ?』

『――うん、そうだね。そういえば君はあの時大勢の前で告白したよね』

『う……そうだな。今思えば恥ずかしいな……』

『だから私もそれらしく答えを返そうかと』

『は?それ、どういう――』

 

 一夏の言葉は最後まで続かなかった。登校した直後で立ったままの一夏の目前。そこに立っていた彼に対してリィスが差のある身長差を埋めるために少し背伸びして、一夏の唇に己のものを重ねたからだ。突然のことに一夏は何が起こったのかを理解出来ず動揺した。そして周囲でそれを見ていた一組生徒達やその他生徒はといえば『キャー!』などと騒ぐ生徒と、余りにも突然かつ大胆なその行動に言葉を失っている生徒に分かれていた。

 

『……えっと、まだ上手くそういうの言葉にできなくて。だから行動でって思って。 これが私の君への答え、じゃダメかな?』

 

 一夏がリィスを見れば、普段の彼女からは考えられないほどにどこかぎこちなく、恥ずかしそうにしながら上目遣いで一夏を見ていた。

 

 結局その騒動は千冬の登場で沈静化されることになる。こうして事実上、お互い公認で付き合っているということになった。

 

 更に同日SHR。千冬から発表があった。つまるところまた部屋の移動である。専用機持ちやその関係者だけで言うなら、元々かなり広かった鈴の部屋にセシリアと四組の簪が移動。箒の部屋に入れ替わりでラウラが移動。シャルロットの部屋には本音が移動。マドカは何故か"二人用"の部屋に個室扱いであり本人が頭を抱えていた。『本格的に嫌な予感がする』という言葉を呟きながら。そして、クロエの個室に清香が移動。これには清香もクロエも大喜びしていた。

 

 最後に。一夏の部屋にリィスが移動である。一組生徒からすれば『あ、ですよね』くらいの感覚だったが他の組からは問い合わせが出た。それに対して千冬が返答した言葉があった。要するに"お前ら元々トーナメントで優勝したら織斑と付き合えるだとかエーヴェルリッヒと同室になれるだとか騒いでたからその通りにした"というものである。

 

 元々これは一夏とリィスが喧嘩をする前。まだ事前告知の段階で流れた噂だ。しかしその噂が流れていたのは事実であり、それを信じ込んだ生徒も居た。だから千冬は"そうしてやった"。これについては相手が千冬であり、また自分達が撒いた種というのもあってかそれ以上文句は出なかった。

 

 しかし、問い合わせという形で本人達からも話が出た。『いいんですかこれ?』という内容だ。元々、一夏とリィスは同室だった。色々な事情があったとはいえ喧嘩するまでは特に問題がなく過ごしており、また"一夏を護る"という目的がリィスにもあったからまだよかった。しかし、前とは状況が異なる。一夏とリィスは付き合っていて、男女だ。それが本人達としても色々不味くないのかという考えはあった。

 

 だがそれについても千冬が返答をした。

 

 "元々同じ部屋だっただろうが。前と変わらん。 ――ただ、弁えろよ?"

 

 何をとは言わなかった。ただ有無を言わさずにそう言われた一夏とリィスは"はい、わかりました"と冷や汗をかきながら返答するしか無かった。

 

 慌ただしく数日が過ぎ、一夏としてもリィスとしてもちゃんと話をできる時間が取れず。しかしそれも少し落ち着いてきての週末。二人の姿は――IS学園の部屋にあった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「しかし、いいのか?」

 

 土曜日。授業は午前中で終了しての昼過ぎ。IS学園女子寮1025号室には私服姿の二人の姿がある。

 

 夏ということもあり半袖シャツにジーパンというラフな姿の一夏と、黒の夏ワンピースに半袖のGジャン姿のリィス。尚、リィスの服装についてはシャルロットが監修した。今までに持っていた服装はほぼ全てが束とクロエの趣味が入ったものであり、週末に入る前に『もっと別のパターンの服買いに行こう』とシャルロットに連れられて買い物に行った。

 

 疑問を放ったのは一夏だ。それに対してリィスは鈴から借りてまだ読み切っていない文庫本を読みながら返答する。

 

「何が?」

「いや、週末だろ?他の奴等と約束とかあったんじゃないのか?」

「大丈夫。というか、なんか皆もう予定あったんだとか。セシリアと鈴は簪と映画観に行ってる。シャルロットは箒とラウラの付き添い?でレゾナンス行ったみたい。多分マドカは寝てる。ここ数日フリーパスで気が狂ったように満喫してたし。……思ったらあのフリーパス、私も貰ってたんだった、どうしようこれ。 クロちゃんは今頃整備室じゃないかな、なんか『いんすぴれーしょんが湧きました』とか言ってた」

「なあ最後のとてつもなく嫌な予感がするの俺だけか?」

「大丈夫、だってクロちゃんだし」

「あー……うん、クロニクルさんだもんなぁ。 何があっても驚かないわ」

 

 再び流れる沈黙。その中でリィスは相も変わらず本を読んでおり、一夏はといえば――

 

「なぁリィス、しかしなんでこんな状況になってるんだ俺は」

「えっ、何が?」

「だからさ――なんで俺はベッドの上で膝の上にリィスを乗せて、なんでリィスはそこで文庫本を読んでるんだ?」

 

 正直に言うと一夏としては気が気ではなかった。膝の上に座り、正面向きで文庫本を読んでいるリィスの銀の髪がすぐそこにあり、彼女が使用しているシャンプーなどに加えて独特の香りがしている。一夏としては、既にそういう関係になった今理性を保つので精一杯だった。

 

「えっとなんだったかな……私、今まで一夏みたいな相手居なかったからどう接したらいいのかって束さんに最初相談したんだけど」

 

 尚、リィスが千冬や束の関係者であるということは既に一夏に話している。そして、束からは一夏に関するある依頼をされているということも話してある。その先についてはまだ話をしていない。数日間、忙しくて部屋に戻ってもお互いグロッキーでそれくらいしか話せなかったのだから。

 

「……ちょっと『見せられないよ!』みたいなこと言われて通信すぐに切ったんだけどね、」

「おい、あの人何言った!?そういえば俺の所にも連絡あったような――」

 

 ふと一夏がリィスの体を支えていた右腕を彼女の身体から離し、手首の白式の待機形態から通信記録を表示すれば――あった。履歴に篠ノ之束という文字が。

 

 見なかったことにした。日常になっているが、嫌な予感がしたからだ。

 

「そ、それで?」

「逃げたね君は。 まぁそれで、束さんじゃ駄目だったからお義父さんに連絡したんだけど忙しくて出れなかったみたいで。最終的に知り合いのドイツ軍副官に相談したんだけど」

「お、おう」

「そしたら副官の人が部下招集していきなり緊急会議始めてね。何か緊急事態でもあったのかな? で、暫くして折り返し連絡あったんだけどその時に今やってるようなことはそういう関係においてコミュニケーションみたいものだからって言われて」

「ドイツどうなってんだよ本当!? 本当どいつもこいつも頭のネジ飛んでるな!」

「ドイツだけに? 面白くないよ一夏」

「……すまん」

 

 膝の上に乗ったままこちらを振り向きジト目で言われる。流石におっさん臭かったかもしれないと反省。

 

 だが、もっとまともな相談相手が居る筈だ。なぜこうも頭のネジが飛んでいる人間にばかり相談するのかと一夏は頭を抱えた。

 

 とはいったものの、その"相談する"というのは良い変化ではあったが。今までのリィスはそれすらも殆どしなかったのだ。特にプライベートなことでは全くといっていいほどに。だからきっと、相談された束や電話に出られなかったものの彼女の義父にドイツの副官というのは嬉しかったんだろうなと推測した。

 

「それとも、嫌だった? ――クラリッサ、そのドイツの副官はこうすれば一夏は喜ぶって言ってたんだけど。あの人はともかくとしてその部下の人達のお墨付きらしくて」

「……嫌ではないけどさ。なんというか、その。 そ、そうだリィス喉乾かないか?ずっと本読んでるだろ。茶でも淹れるよ、緑茶でいいよな?」

「あー、うん。そうだね、貰おうかな」

「はいよ。ちょっと待ってろ」

「……あ。 ――うん」

 

 一夏は『ちょっと待ってろ』と返答してそれまでの体勢を崩しベッドから立とうとする。リィスを離した時に彼女がどこか少し名残惜しそうというか、残念そうな声をあげた気がしたが一夏はあえて気にしない。流石に理性が限界だったからだ。

 

 備え付けのキッチンにある茶葉を取り出して手慣れた手順でお茶を淹れていく。そして、既に使うのは久しぶりにも感じる急須と湯呑みを2つ取り出してそこに緑茶を注いでいく。既に季節は夏、なのでちゃんと冷やした後に湯呑みへと注いでいく。

 

 緑茶を淹れ終わり、ふと見ればリィスがベッドから移動しており、部屋にあるテーブルの椅子へと座っていた。流石にある意味一夏は安心した。まさか変な入れ知恵のせいであの体勢で飲む、なんてことがあるんじゃないのかと考えたからだ。

 

「何か失礼なこと考えなかった今」

「気のせいだ。はいお茶」

「ん。ありがと。 ああ……やっぱり緑茶はいいなぁ」

「満足してくれたらそれは結構」

 

 こうして緑茶に満足そうにしている表情を見るのも喧嘩以前だなぁなどと考えつつ一夏も緑茶を口にしていく。しかし、リィス程ではないが確かにこの茶葉はいいものだと感じる。気がつけば買い置きしているし、日常的に常飲している。在庫がきれかけた日には焦りに似た何かを感じるが、何なのだろうかなどと一夏は思う。

 

「それで、」

「ん?」

「――聞きたいこととか、あるんじゃないのかな」

「……そうだな、あるな」

 

 恐らくではあるが、今日自分と部屋にいるのだって気を遣ってくれたんだろうと考える。ここ数日はトーナメントの事後処理にちょっとした騒動もあったりでまともに時間が取れなかった。一夏としては、リィスの事情を知りたかったのだがその関係である程度のことまでしか聞けていなかった。だから、こうして余裕ができてきた今ちゃんと話を聞きたいという気持ちがあった。

 

 聞きたいことなんて山ほどあった。あの無人機は何なのかとか、どうして場慣れしたようにしているのかとか。何か目的があるのかとか――あの時の、弱音のこととか。

 

 知りたいと望んだ。知ってその上で彼女の助けになりたいと。

 もう二度と独りで無理なんてさせたくないと。

 

 とは、いったものの。

 

「けど、何から聞いていいのか。正直――まだ考えてる。余りにも多くありすぎてさ、どう切り出したらいいかって迷ってる」

「――そっか。じゃあ、私の話をしよう。私の、過去の話」

「リィスの、過去?」

「うん。何で私が千冬さんや束さんと知り合ったのかとか、本人方には許可取ってあるからそこのことも含めて ――そうだね、最初に言っておくけど結構重いよ?別れるなら今のうち。戻れなくなるから」

「絶対別れてやらない。嘗めるなよ俺を」

「……そうだね、ごめん。じゃあ、巻き込ませて貰うね一夏。 私の話をしよう。私の、復讐の話を」

 

 そしてリィスは一夏に話し始めた。今から3年前に起こった出来事で両親が殺されたこと。それからずっとある理由で1人で世界を巡り捜し物をしていたこと。その過程で千冬と束に捕まり、保護され。そして今の立場にあることを。

 

 千冬と束には既に話をしてあり、『もうここまで来ているなら話してもいい』という許可が出た。だから、今の状況についても全部話していった。どうして自分がIS学園に来たのかということを。それはある手がかりを探すためで、そして……一夏を護る、という目的のために。

 

 亡国機業という組織があり、その組織が一夏を狙っている可能性がある事。その組織が"世織計画"と呼ばれる何らかの計画を企てており、それを自分達は阻止しようとしていること。対抗戦の時の騒動は、そいつらが関わって仕組まれたものだということ。

 

 時間にして、かなり長い時間話していることにリィスは気がつく。その間一夏はただ真剣にその話を聞いており、彼女が話を終えたのを見て言葉を返した。

 

「なんというか、とんでもない話だな。でも束さんや千冬姉が絡んでるって聞くとそこまで驚かないな」

「その身内を人外みたいに言うのやめようよ一夏、確かに周囲には変人や化物が多いかもしれないけどさ。 ――その、何も思わないの?」

「何を?」

「だから、私のこととか。 ……私も束さんのISを利用して、殺すために。復讐のために使ってる人間だよ?」

「だから何だよ? 言ったろ、お前の全てを受け入れるって。あんまりネガってると怒るぞまた」

「ごめ――」

「"ごめん"とかそうやっていつも自分が悪いみたいに言うのも気をつけろ。あんまり自分のこと貶めるな。 ……そういう時は"ありがとう"だ」

 

 ふと、思い出したことがあった。似たようなことをかつて言われたのだ、鈴に。それを思い出して『駄目だな』と思い、言葉を言い直す。

 

「ありがとう、一夏。 君を好きになってよかった」

「おう、まだ不甲斐ないかもしれないけどもっと頼れよ。 ――けど、気になることがあるな」

「気になること?」

 

 一夏には気になることがあった。リィスについてや彼女が何者なのかということはある程度理解出来た。けど、彼女は捜し物だとか言っていたが、それが何なのか言っていない。

 

 だからそれが気になった。そして一夏は、それを確かめようとして彼女に問いかける。

 

 それが、彼女にとって思わぬ出来事になるとは知らずに。

 

「そのリィスの言う復讐っていのうがイマイチよくわからないんだ。 ……その捜し物って、聞いちゃ不味い奴か?」

「――そうだね。全部話したし、いいかな。 これは会長や束さんにも前した質問なんだけど、」

 

 リィスはかつて楯無や束、千冬に対して問いかけとして放った言葉を一夏に対しても放った。束や千冬でもわからなかったのだ。だから知らないだろうと、そう思ってただの問いかけ程度にその言葉を作る。

 

「"金色"のISを、一夏は知ってるかな? 私はそれをずっと追ってるんだ」

 

 知るわけがないだろう。そうリィスは考えていた。もし彼が知っているなら恐らく千冬も知っていると考えたからだ。

 

 過去に千冬に問いかけをした時、千冬は知らないと言った。金のISというキーワードを聞いて何なのかと考えるようにしていた。千冬が知らないのだ、だから彼も知るわけがない。そう考えてリィスは『それはそうか』と思った

 

「ごめん一夏、変なこと聞いたね」

「――何で、」

「え? 一夏……?どうしたの?」

 

 

――"『何でリィスがあいつを知ってるんだ……?』"

 

 

 返されたのは、予想もしていない言葉だった。目前で目を見開き、驚きの表情で此方を見る彼に対して反応できず、頭の中が完全にフリーズした。

 

 そんな中、彼女は完全にパニック状態になり、テーブルを立つと座っている一夏に詰め寄っていた。

 

「……知ってるの?あいつを。あの、金色のISを!?」

「リ、リィス?」

「なんで知ってるの!?いつ見たの、会ったのッ!? 何で、どうしてッ――」

「お、落ち着けリィス!どうしたんだよいきなり!」

 

 一夏から見る彼女は完全に動揺していた。それも、己が見たことにない程に。焦り、動揺し、必死の想いが伝わってきた。声は震えており、冷静さを欠いていた。

 

 そんな状態の彼女に対して、どうしていいのかわからなかった。だから、何とかして落ち着かせなければならないという思いで、一夏は椅子から立ち。

 

「落ち着けってリィス! ……そうやって1人で考えてても俺にはわかんねぇし、きっとそのままだぞ。落ち着け、な?」

「ぁ……――」

 

 咄嗟に、動揺していた彼女を抱きしめた。抱きしめ、落ち着かせるように彼女の頭を己へと引き寄せ胸に抱くと、頭をあやすように撫でた。ビクリ、と彼女が驚いたように身体を跳ねさせたが一夏はそれを気に留めない。

 

 昔、とても昔。まだ自分が小さかった時に"そうして貰った記憶があった"からだ。

 

 何かの理由で泣いて、辛くて、どうしようもなくなった時にそうして貰った覚えがあった。誰に、なんてのは思い出せない。けれど覚えているのはとても暖かかったという感覚で……かつて己がそうして貰っていたということを思い出し、リィスに対しても一夏は同じことをした。

 

「……ありがと、一夏。ちょっと取り乱した。 でも、もう暫くだけこうさせて。すぐ落ち着くから」

「俺としては別にこのままでもいいんだが?」

「――ばーか」

 

 茶化すように言った言葉に対してリィスは同じように返し、暫くの間一夏の胸に顔を埋めていた。それを抱きしめ、一夏が感じたのは――震えだ。彼女の身体は、震えていた。

 

 どうしてなのか、とは気になったが今は気にせずただ彼女を落ち着かせるように黙ってそのままにしていた。

 

 暫くして、リィスが『ありがとう、落ち着いた』と言ったのを聞いて一夏は彼女を離す。リィスは息を吸い、目を閉じて頭を左右に振る。セミロングの銀髪がそれにあわせて揺れ、再び開かれた紅の眼は先程よりは落ち着いているように見えたが、まだ少し動揺しているようにも思えた。

 

「大丈夫か?」

「ん……。大丈夫、大分落ち着いたから」

「聞いても、いいか?」

「――うん」

「その、金色のISって何なんだ?どうしてリィスは、そいつを追ってる?」

 

 その問いかけに対して返されたのは暫くの沈黙だ。リィスは暫く沈黙した後、返答を返した。

 

「――私の、パパとママを殺して何もかもを奪ったかもしれない奴なんだ。だから私は、ずっと追ってる。あの金色のISと、あの日の真実を。何で私の幸福が奪われなきゃならなかったのか、大切な人が殺されなきゃならなかったのかって」

 

 両親が殺されたのは聞いた。だが、それにはそんな事情があったのかと一夏は理解する。そして、考える。自分が知っているその情報と、リィスの言う事について。考え、整理していると再び彼女から言葉が来た。

 

「……一夏、お願い教えて。あいつについて、何を知ってるの?」

「――これ、千冬姉どころか誰にも話してないことなんだが」

 

 ある理由から自分の心の中にだけ仕舞い込んできたその記憶。

 絶対に信じてもらえないとも思った記憶。

 

 その記憶と、想い人の追う何かが重なったような気がした。

 

 だから一夏は絶対に話すことはないだろうと思っていた、過去の記憶について彼女に話し始めた。

 

「俺は、金のISに会ったことがある。三年前に。 ――信じられないかもしれないけどそいつは多分男で、俺は助けられたんだ。その金色のISに」

 




 そんなこんなで第32話 『金色』の痕跡 をお送りしました。金色のIS……一体何者なんだ。お互い付き合ってる関係になったということで一夏君もリィスもかなりそういう関係のやり取りが多くなったり。お互いまだ手探り状態でぎこちなくやってますがそれを影から微笑ましく応援しているどこぞのクロなんとかさん。と、愉快な仲間と保護者達。

 さて、結局の所金色って何者で、何が目的なんだよって考えながらの作者のあとがき。

 感想などお待ちしております。

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