紅魔指導要領   作:埋群秋水

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お待たせいたしました。
どうぞ、ご覧ください。


第13話

 

 

 今から語りますのは、なんと言うこともないとある日常の1ページで御座います。その瞬間はなんともなくとも、思い起こせば大事な物であるのでしょう。

 それでは、どうぞ。ご覧くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方。紅魔館は吸血鬼である旦那様方を中心としているので、昼夜が一般とは逆転している。シェフを始めとした食料関係者は夕餉の準備。執事、または私のようなお嬢様着きの従者はそれぞれの主の朝の、いや、暮れの紅茶の用意をする。私の召喚主は旦那様だが、命ぜられたのはお嬢様の家庭教師である。お相手するのはお嬢様だ。そういう訳で、私は台車に紅茶と軽食を乗せてお嬢様の部屋へと向かっている。正直に言えば私は家庭教師なので、この様なことをする必要は無い。しかし、従者の人数が足りないと言うのもあるが、私がお嬢様に気に入られているというのもある。

――まぁ、私も別に嫌というわけではありませんしね。お嬢様の寝顔はとても可愛らしい物ですし。これも一つの役得という物ですか。

 

 お嬢様の部屋の前についた。服装を整え、ノックをする。

 

「お早う御座います。クロエです。目覚めのお茶をお持ちいたしました。」

 

 しかし、一向に返事が返ってこない。私は再度ノックをした。

 

「お嬢様、如何なされましたか? お茶をお持ちいたしましたよ?」

 

 やはり何も返ってこない。これはおそらく……。

 

「入りますよ?」

 

 念のため断りを入れた後、私はドアノブをひねった。そして部屋の中に入る。部屋の隅、大きな天蓋のついたベッドが目に入る。因みに、吸血鬼と言えば棺桶で眠ると言われているが、お嬢様を始め、この館の吸血鬼は誰一人として棺桶で眠りはしていない。私も棺桶に入っている生者というのはこの前の葬儀屋(アンダーテイカー)位しか知らない。

 

さて、改めてベッドへ目を向けると、そこには可愛らしい様子で、小さな寝息を立てたお嬢様がいらっしゃった。駆け布団を蹴っ飛ばしたのか、床に落ちている。よく見ると鼻提灯の様なものまで出しているではないか。

――いやはや、何とも可愛らしいのは良いですが、これはいくら何でも淑女(レディ)としてはよろしくないですね。今のお嬢様からはカリスマの()の字も感じられません。精々「かりちゅま」が良いところですね。さて、普通に起こして差し上げても良いのですが……。

 

 私は部屋全体に防音の魔法を掛け、お嬢様の側へ行き能力を用いて自身の姿を偽った。そして、その姿のままお嬢様を起こし始めた。

 

「お嬢様、お早う御座います。もう日が暮れました。お目覚めの時間ですよ。」

 

「う~……うにゅ~~……もう起きる時間なのぉ? ……あと五分……。」

 

「駄目ですよ。そう仰ってすぐに起きた試しがないではないですか。ほら、起きてください。」

 

「んぅ~~……わかったわよぅ……。」

 

 お嬢様は渋々といった様子で身体を起こした。そして可愛らしい伸びを挟んだ後、目を擦りながらこちらを振り返った。

 

「ん~~……先生おは、よ……う?」

 

 そして、ポカンとこちらを見つめる。目を見開いて、よく見ると身体をすこしカタカタと振るわせている。私はにっこりと笑顔を浮かべて挨拶をした。

 

「お早う御座います、お嬢様。」

 

ッキャァアアアアーーーーッ!!!?

 

 絹を裂くような悲鳴をあげてお嬢様が叫ぶ。念のために防音の魔法を掛けておいて正解だったようだ。私が手を伸ばすとお嬢様は涙目で後ずさりする。それもそのはず、今の私の姿は、何とも形容しがたい実に冒涜的な姿をしているだろう。これは以前、私が旧支配者(グレート・オールド・ワン)の夢に入ったときにみたある生命体(?)の姿を模した物である。目覚めて目にした物がこれなら、目が覚めることは請け合いだろう。

 

 お嬢様の可愛らしい姿を堪能した私は、能力を解きお嬢様の側へと近づいた。お嬢様はベッドの上で、頭に被ったナイトキャップを握りしめ、さながら頭をかかえて縮こまる幼子のような姿で「うぅー……」と呻いている。一種のカリスマすら感じるその姿に私は感動を覚えた。

 

「お嬢様、ご安心ください。もう大丈夫ですよ。」

 

「……ほ、本当? さっきのやつもういない……?」

 

 お嬢様がおそるおそるといった様子で顔を上げた。いつもの私の顔が見ると安心したような顔を浮かべた。と、同時に怒りだした。

 

何てことするのよ先生!! 全然怖くなんてなかったけど、びっくりしたじゃない!

 

「これはこれは。大変失礼いたしました。しかし、スカーレット家のご息女たるお嬢様ならあの程度何の気にも留めないかと思いまして。」

 

「うぐゅっ! ま、まぁ? あたしは別に気にしないけどね? でも、他の者にやってはだめよ? あたしみたいな淑女(レディ)でないと耐えられないでしょうしね!……漏らしちゃうかと思ったわ。(ボソ)

 

御意 ご主人様(イエス マイロード)。それでは、お嬢様。こちらが目覚めの紅茶で御座います。今朝はアッサムをお持ちいたしました。ミルクは如何ですか?」

 

「いるわ。あと、ハチミツも!」

 

「歯磨きはしっかりとなさってくださいね?」

 

 私は注文通りに紅茶を仕上げお嬢様に渡し、本日の予定を伝えた。今日は午後からテストを用意してある。これに合格すれば、残り時間は遊びの時間となることは伝えてある。

 

「あのね、先生。テストに合格したら、先生にお願いしたいことがあるんだけど……。」

 

「はい、何で御座いましょう?」

 

「一緒にお散歩してほしいなぁって思って……。」

 

「畏まりました。では、朝餉に参りましょう。昼食の後、書斎にてお待ちしております。」

 

 私はお嬢様の着替えを手伝った後、お嬢様をエスコートしながら食堂へ向かった。デザートには私の作ったプリンが用意されている。お嬢様の大好きな一品である。

――何も言わずに出した方が喜ばれるでしょうね。前に出したときは背中の翼がパタパタと動いていましたが、今回はどうなるのでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事に朝餉も終わった。お嬢様はデザートのプリンが現れると、案の定翼をパタパタとさせて喜んでいた。

――時折見せるあの外見相応の振る舞いの時は、お嬢様ではなく()()()()()とお呼びした方がしっくりくるような気がするのですが……。今度美鈴に話してみますか。

 

 現在、私は午後のテストの用意をしている最中である。すると、自室の扉がノックされて声が聞こえてきた。

 

「クロエさーん、いますかー? 私です、美鈴ですー。」

 

「どうぞ、開いていますよ。」

 

「失礼しまーす。」

 

 入ってきたのは美鈴である。つい先ほどまで門番の仕事をしていた彼女だが疲れはないのだろうか?

 

「あぁ、お仕事ご苦労様です。どうしたのですか? 今は勤務時間外でしょう?」

 

「いやぁ、昼間郵便屋さんからお手紙を預かりまして。クロエさん宛に、ロンドンからなんですけど……。」

 

「ほう! ロンドンからですか。では、おそらく彼からでしょうね。」

 

「彼って……あのセバスチャンという方ですか? おぉ、本当に手紙をくださるなんて、マメな方なんですね! もしかして、クロエさんに気があるんじゃないですか?」

 

よしてください、気色悪い。彼とは手紙を送ってもらうという契約をしましたからね。違えはしないでしょう。」

 

 私は手紙を受け取って観察する。確かに彼の字で間違いない。だが、彼が只で手紙を寄越すはずがない。何らかの警戒はすべきだろう。

 

 私は未だにこちらをみてニヤニヤしている美鈴に向き合った。そしてあるお願いをする。

 

「美鈴、一つ頼み事があるのですが、この手紙をあけていただけませんか?」

 

「えーっ! クロエさん、まさか恥ずかしいとかなんですか? 意外と初心なところがあるんですねぇ?」

 

 鬼の首を取ったと言わんばかりにニヤニヤしながらこちらを見る美鈴。お姫様だっこをされて顔を真っ赤にしていた自身のことはすっかり棚に上げている。

 

「えーあー、そうなんですよーはずかしくてー(棒)」

 

「仕方ないですねっ! では、不肖私、美鈴が開けさせて頂きます! とりゃぁああっ!」

 

 勢いよく手紙の封を開ける美鈴。その瞬間、いかにも怪しい紫色の煙が美鈴の身体を包み込む。必死に抵抗するも抵抗むなしく煙に包み込まれる美鈴。

――ああ、やはり何かしらの呪いでもありましたか。まぁ、美鈴は自業自得ということですね。

 

 しばらくして煙が晴れる。すると、そこにいたのは、

 

 

 

――小さくなった美鈴だった。

 

ブッ!!!! ク、アッハッハッハッハッ!!

 

 

―続く―

 




如何でしたでしょうか?

私は東方の中では紅魔館のキャラクターが好きでこんな話を書いているのですが、皆さんはどうでしょうか? どうにかして妹様を絡めていきたいです。ネタ出し頑張ります。

ご意見、ご感想などあればお待ちしております。それでは。

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