紅魔指導要領   作:埋群秋水

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この話をご覧いただいている皆様に感謝の意を示すと共に、何点か注意事項を述べさせて頂きます。
・作者は原作ゲームをプレイしたことはありません。文華帖や、その他書籍、wiki等を参照にしております故、おかしな設定などある場合がございます。是非とも優しい言葉でご指摘頂きたく存じます。
・作者は今回が初執筆、初投稿、更にはインターネット環境を手にいれてまだ1年ほどの、あらゆる意味でのド素人です。可笑しな部分、失礼な点、各種不具合などありましたら、どうか広いお心で接してやってください。ガラスの心臓(ハート)の持ち主です。
おおよそ、以上となります。どうか、素人の駄文を暖かい目をもってご覧ください。



序章
第0話


―はじまり―

 

 

 

 

……キィィー……

 

幻の郷、深い霧、不気味な雰囲気を放つ一軒の真っ赤な館の中に、扉がきしむ音が響き渡る。扉の先は暗くて見えないが、何者かの気配がする。

 

「……おや、魔理沙様以外の――いや、あれはお客様とはいえませんね。兎も角、久しぶりのお客様のようだ。このような場所にどのようなご用件でしょうか?」

 

どこからともなく女の声がする。低く、落ち着いた声だ。パチンッ。指を鳴らす音ともに部屋に蝋燭の光が点る。そこはどうやら書斎、いや、この蔵書量はもはや大図書館ともいえるものだろう。声の主は中心にある机の側で椅子に座っていた。見た目は若い、二十代頃であろうか。黒髪を真ん中で分け、長い後ろ髪をバレッタで1つに纏めている。執事服のような服を着、落ち着いた雰囲気だ。しかし、至って普通の彼女の様相の中、特異な点が1つある。左目につけた片眼鏡の奥、覗く瞳が怪しげに異彩を放つ。

 

(わたくし)の左目が気になるご様子ですね。あまり見つめてはいけませんよ。精神に異常を来してしまいます。」

 

 慌てて目をそらす。どうやら彼女は普通の存在では無いようだ。目をそらした先、1冊の分厚い本が目に入る。タイトルは『紅魔指導要領』。あれは一体……?

 

「この本ですか?これは私がお仕えするお嬢様方の学習計画ですよ。」

 

 彼女は教育に携わる人物のようだ。その落ち着いた雰囲気からよほど教養の高い人物なのであろう。知れず尊敬のまなざしを向ける。

 

「フフフ、そのようなお気持ちは勿体のうございます。私はあくまで家庭教師ですから。」

 

 彼女はこの館に使える家庭教師のようだ。しかし、一体此所は何処なのだろう?気がついたら此所にいたのだが……。

 

「無理に思い出そうとしなくても大丈夫ですよ。まもなく解決いたします。」

 

 解決? 一体何のことだろう。しかし、記憶に靄がかかったかのようだ。何も思い出せない。

 

「時折いらっしゃるそうです。貴方のようにふらっと、この幻想の郷に紛れてしまう方が。普段は紫様がお返しするそうですが、あの方は今冬眠していらっしゃいますからね。近くにいた我々が今回の役目を仰せつかった次第でございます。しかし、よくぞ此所までご無事だったものですね。」

 

 何を言っているのだろう? 全くわからない。しかし何か思い出しそうだ……。

 

「おや、思い出しかけているようですね。……私の仕事はなさそうだ。折角いろいろと用意はしていましたが、まぁ、使わないに越したことはないですがね。」

 

 ……用意とは、後ろに置いてある、明らかに拷問用らしき道具の数々だろうか。何かはわからないが早く思い出した方が良さそうだ。するとその時、本棚の影から幼い少女が姿を現した。

 

「先生、見つかったー?」

 

「……いえ、まだ見つかりませんよ、お嬢様。」

 

「そう、じゃあ向こうに行ってみるわ。」

 

 どうやら彼女の主のようだ。遠くに見える扉へ向けて翼をはためかせ飛んでいった。『飛んでいった』? しかも、かなり若――いや、幼い。あんな子が主? どこか見覚えがある。それにしても、あの娘にはこちらが見えていないのか? さらに、彼女は何故見つからないなどと返答したのだろうか? 疑問だらけだ。いぶかしげに彼女を見る。

 

「貴方が認知されなかった事と、私が見つからないと返事したのが不思議なご様子ですね。前者は私の能力ですよ。お嬢様の目を欺かせて頂きました。後者に関しましては……実は、お嬢様が貴方を元の世界へ帰す前に、血を吸ってから帰そうなどと仰っていましてね。外の世界にはもういない吸血鬼の痕跡を幻想郷の外に示すわけにはいかないと申しましたのに……。また博麗の巫女に叱られてしまいます。」

 

 ……能力? 外の世界? 吸血鬼? 幻想郷? 博麗の巫女?

 ――ああ、思い出した。此所が何処か、自分がどういう存在か。

 

「体が透け始めましたね。外の世界にお帰りになるのですね。それでは、お気を付けて。もう此方へ来てはなりませんよ?」

 

 確かに、危ういところだったのだろう。しかし、この世界が本当にあったとは。まさに幻想の郷だ。もし、ここが妖怪の山などであれば、今頃妖怪の腹の中であろう。感謝しなければ。さぁ、帰ろう。元の、常識の世界へ。私の意識は消えかかる。

 

「さっきも申し上げましたでしょう。私にそのようなお気持ちは勿体のうございます。私とて、家庭教師として契約中の身でなければ貴方を食らっていたかも知れないのですよ?」

 

彼女はそう言ってニタリと凄惨に笑って言った――

 

「私は、悪魔で、家庭教師ですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生ー、まだ見つからないの? 見つからないならもういいわ、帰ったんでしょう。それよりもおなかがすいたわ。ご飯にしましょう?」

 

 遠くから聞こえるこの声は、レミリアお嬢様だ。さっきの人間は無事に外の世界に帰ったようだ。――全く、お嬢様も困った方だ。外の世界で不要になった人間ならまだしも、先ほどのように突発的な事態の場合は危害を加えず帰すよう言われていたのに。だが、このようなわがままもいつものことだ。立派な淑女(レディ)になるために教育せねば……。

 

「先生ー? 早くー。みんな待っているわよー?」

 

「そうだよ、せーんせー? お姉様がおなか空かしてうーうー言ってるわよー?」

 

「妹様、嘘はいけませんわ。」

 

「レミィ、わかったからその槍をしまって頂戴。晩餐が消し飛ぶわ。」

 

「パ、パチュリー様、そんな冷静に仰ってないでなんとかしてください!」

 

「ほら、お嬢様、はやく座りましょう! ご飯ですよ!」

 

「……うー! 先生! 早く!」

 

 全く、賑やかな方々だ。まぁ、悪魔である私にとってこの時間など些末にすぎない。しばし、付き合いましょう。……あぁ、お待たせいたしましたね。そこの覗いていらっしゃる皆々様。それでは只今より、私の、私たちの日常をお届けいたしましょう。どうぞ、ご覧ください。

 

「早く、クロエ先生!」

 

御意 ご主人様(イエス マイロード)。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

―続く―

 




如何でしょうか。連載を続けるかどうかは皆様のお声によって決めたいと思います。筆者自身、こうしてssのウェブサイトを紹介して頂き、皆様の傑作を拝見し憧れ、今回の挑戦と相成りました。願わくは、暖かいお声が届けばと思います。それでは、失礼します。

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