テレビの画面に大写しになったアゲハチョウのような羽をつけた若い女性のヒロイン「アオバ」は、軽快に飛び回って、双頭の竜の背中に強烈な一撃をくらわす。
「くらええーーーー。」
双頭の竜は、グオワァァァァ....と悲鳴をあげる。
「かっこいいなあ。」
「わたしもいつか作ってみたいな。キャラデザは...八神...コウ...かっこいい名前...
どんな人なんだろう...。」
(コウ視点)
「はっくしょい。」
「コウちゃん、かぜ?」
「ちがう、なんか一瞬鼻がむずむずして...。」
わたしは、ゆびで鼻の下をさすってしまう。
「またそんな恰好で...今日はゲーム雑誌の取材があるんだけど...。」
「え~なんで...めんどくさいよ。」
「困ったわ。でも服がないわね。」
「遠山くん。」
「葉月さん。」
「わたしが、若いころ着ていた服があるよ。」
「あ、けっこうコウちゃんに似合うかも...ですね。」
「だろう。」
りんはピンク色のニットとヒトデのようにも見える五弁花のヘアピン、下は清楚な白のプリーツスカートを用意していた。恥ずかしいくらいのお嬢様仕様だ。
「わたしは、男っぽいし、胸もないからあんまりおしゃれしても...」
「そんなこといわない。どうせスルーするか、ほっとけばそのまま取材受けちゃうでしょう。」
「いいよお、いいから。」
「間に合わなくなっちゃうから、早くして。」
「は、はずかしいよ。」
「八神。」
「葉月さん。」
「ふふん、取材も仕事なんだから。先輩たちをおしのけてメインキャラデザを勝ち取った同じ八神とは思えないね。」
葉月さんはにやつく。
「ほっといてください。」
「八神、上司からの命令だ。遠山くんのコーデで取材を受けるように。」
あの葉月さんが毅然とした態度だ。
「わ、わかりました。」
(りん視点)
髪をとかしてウェーブいれて...うん、見違えるようだわ。
「コウちゃん、みて。」
「....う~ん。」
うなってるけど、かわいい。
「コウちゃん、かわいい。ほら。」
りんは携帯で写真をとりまくる。
「やめてよ、りん。はずかしいよ。」
(コウ視点)
「八神さん、どうぞ。」
ゲーム雑誌の人が呼ぶ声がする。
わたしは指示されたとおりに椅子にすわる。
「テレ顔、かわいいですよ。」
もうだめ~
「あ~八神さんーーーー。」
わたしは逃げたくなって椅子から立ち上がってしまう。
「写真はもういいでしょう。インタビューはしっかりお答えしますから。」
「はい。」
雑誌社の人はにっこりほほえんだ。
(青葉視点)
わたしは、授業参観の作文朗読で将来の夢について書いたのを読むことになった。ねねっちったらその時座ったままねてた。よく先生にみつからないなあ。ドジなのにへんなとこ器用なんだから...
「将来の夢 涼風青葉。わたしの将来の夢は、ゲームのキャラクターデザイナーになることです。理由は、最近発売されたフェアリーズストーリーの主人公の蝶の羽を付けた女性の...八神コウさんていう人のように...。」
「あおっち~『公式コンプリートガイド』買ったよ。」
「私も買った^^。」
「へえ…八神さんて素敵…ピンクのニットがよく似合ってかわいい…。」
青葉の脳裏には美しいコウの姿が焼き付けられ、あこがれの気持ちが増幅されていった。