マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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―注釈―
海馬は海馬瀬人を示し、
モクバは海馬モクバを示しています。


前回あらすじ
「こいつは胡散くせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ────ッ!!」




DM編 第2章 原作開始 世界の始まり
第9話 爺ちゃんはやっぱりヒロイン


 

 

 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を賭けた武藤遊戯とのデュエルに正々堂々と戦い敗れた海馬瀬人は世界に4枚存在する《青眼の白龍》の内、武藤双六が所持する1枚を除いた残り3枚を集めるべく情報を集めていた。

 

 その報告を待つさなか何故自分が負けたのかを海馬は考える。

 

 そんな思案する海馬瀬人を心配したのかモクバは問う。

 

「兄サマ、神崎のヤツに相談したらどうかな? あいつなら――」

 

 その先の言葉をモクバは続けられなかった。

 

 

「モクバ! あの男を信用するなと言ったはずだ!」

 

 

 剛三郎の教育を受けていた昔のように憎悪を露わに激昂する兄の姿にモクバは言葉を失う。

 

 兄である瀬人が神崎をここまで信用しない理由がモクバには分からなかった。

 

 

 

 

 モクバにとって神崎という人間は

 

――今、親がいればこんな感じだったんだろうな……

 

 そんな認識である。

 

 

 その最初の出会いはモクバが兄と共にKCに正式に迎え入れられた時に周りに敵だらけの状況で最初に海馬兄弟の味方になると宣言した時だった。

 

 

 だが出会った当初から親のような認識であったわけではない。

 

 

 その切っ掛けとなったのは、当時大企業の大きな力を得て自分勝手にふるまっていたモクバ。

 

 そしてそんなモクバの顔色を窺い行動していた他の社員。

 

 そんな中でモクバ自身に直に苦言を呈したのが始まりだった。

 

 ――世の中は弱肉強食であり、自身は強者だ。

 

 そう主張したモクバに対し

 

 

 神崎は――

 

 ――自分より弱い者を食い物にする者を強者と言えますか?

 

 そう問いかける。答えに詰まるモクバに神崎は言葉を続ける。

 

 ――それに、そうやって弱者を喰らい続ければ最後は君だけが残る。そんなの……寂しいじゃないですか。

 

 そう言って目線を合わせた神崎はモクバの額を軽く小突いた。

 

 

 その出来事を切っ掛けにモクバは神崎に今は居ない「親」を重ね始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 海馬にとって神崎という人間は

 

 ――信用に値しない不気味な人間。

 

 そんな認識である。

 

 その最初の出会いは弟のモクバと共にKCに正式に迎え入れられた時に周りに敵だらけの状況で最初に海馬兄弟の味方になると宣言した時だった。

 

 

 この段階ですでに海馬の中にあるのは不信感だけだった。

 

 

 当時、剛三郎のスペアとしての価値しかなかった子供に忠誠を誓う重役など信じる方がどうかしている。

 

 

 それから度々海馬の力になろうと動こうとした神崎であったが海馬はそれら全てを拒否し神崎を遠ざけようとした。

 

 そしてそれらの一件から神崎からの接触はなくなった。

 

――諦めたか……

 

 そう判断した海馬だが、ある光景を見て絶句する。

 

 

 そこには海馬瀬人の弟、モクバが楽しそうに神崎と話す姿だった。

 

 

 海馬はすぐさまモクバを引きはがし、自分たちの部屋まで連れて行く。

 

 そしてモクバに神崎を信用しないように、なおかつ近づかないように言い含めた。

 

 納得の色を見せなかったモクバだったが約束は確約した。

 

 

 

 神崎からすれば海馬の将来の姿を知っているだけに敵ではないことを明確にしておきたかったゆえの行動である。

 

 だがそんなことを知りようのない海馬からすれば何を考えているのか分からない不気味な存在だった。

 

 

 ゆえに海馬は力を求めた。モクバを守れるだけの力を。

 

 

 それからというもの海馬はこれまでの言動・行動を改めた。それは神崎に付け入る隙を与えぬためだ。

 

 力を求めた、その先に力の象徴たる《青眼の白龍》があった。

 

 それに惚れ込み、手に入れるために行動し、紆余曲折あった結果、遊戯と《青眼の白龍》を賭けての正々堂々とした勝負をし――敗れた。

 

 

 

 

 ――話は戻る。

 

 海馬に叱責されたモクバはシュンと小さくなり、思わず語気を荒げてしまった海馬は自分を責める。

 

 

 気まずい沈黙が流れた。

 

 

 だがそんな沈黙を破るように慌ただしく扉を開け海馬の側近である磯野が息を切らせ入室する。

 

「瀬人様! 《青眼の白龍》の所持者が判明しました!」

 

「ふぅん、やっとか……すぐにソイツの元へ向かうぞ磯野!」

 

「いえ、それが――」

 

 磯野が言い難そうに報告した言葉を聞いた海馬はその所持者の下へ駈け出した。

 

 

 

 

 

 

 そして海馬はその所持者の自室へ押し入る。そこに「遠慮」の二文字はない。

 

「おや、海馬社長ではないですか。何かご用ですか? 言って下さればこちらから伺いますのに」

 

 そろそろ探しているだろうな~、と海馬瀬人の敗北を確認していた神崎は集めた《青眼の白龍》を持って海馬瀬人の下へ馳せ参じようとしていたところの突然の来客、海馬瀬人に驚く。

 

「貴様自身に用はない、用があるのは貴様の持つ《青眼の白龍》のみ! デュエルをしないお前が持っていることは驚きであったがな。断るというなら――」

 

 

 神崎は表向きにはデュエリスト登録はしているものの「デュエルをしない人間」で通っている。それはデュエリストに「おい、デュエルしろよ」などと言われないためであった。そして――

 

 

「ええ、どうぞ」

 

 海馬瀬人の言葉を遮るようにカードを渡す。

 

 海馬瀬人の「ブルーアイズ愛」を考えれば、逆らえばどうなるかなど考えたくもない神崎は素直に要求を呑む。そこには一通りのブルーアイズデッキを組みデュエルしたため満足していた側面も大きかった。

 

 

「貴様、何が狙いだ……このカードの価値を知らぬわけでもあるまい」

 

 

 海馬瀬人は「神崎」という人間を信用していない。

 

 表向きに忠誠を誓われてはいるが剛三郎の一件もあり不信感しかなく。こちらに真意を明かさず影で何らかの動きを見せていることもその認識に拍車をかけていた。

 

 

 そんな風に思われていることなど知らない神崎からすれば理不尽に他ならない――欲しいと言われ渡そうとしたら疑われる。

 

 「どうしろとっ!」――そう心の中で叫ぶほかなかったが何とか受け取ってもらおうと理由をつける。

 

 

「ええ、存じ上げております。ですが私が観賞用として持つよりデュエルにより雄姿を眺められる方が良いと思いまして……」

 

「貴様のお抱えのデュエリスト――ヤツに使わせるなりすればいいだろう」

 

 

 気に入らなかったらしい。

 

 神崎は「ヤツって誰だよ」と思いつつ話を合わせ

 

 ――ならばこの理由ならばどうだ! と言葉を続ける。

 

 

「デュエリストがカードを選ぶように、カードもまたデュエリストを選ぶ。そう彼は言っておりました。そして自分は《青眼の白龍》に選ばれていない――とも、ですのでお気になさらずに……」

 

 

 ――このカードを使うべきは海馬瀬人である。そんな思いを込めた言葉も……

 

 

「この俺に施しを受けろというのか!」

 

 

 気に入らなかったらしい。

 

 ――「奴」が使わないから君が使っていいよ。

 

 そんな風に受け取られたようだ。

 

 

 ならばと神崎はより海馬瀬人が納得しやすいであろう条件を提示する。

 

「ではお貸しするというのはどうでしょう。ある条件を満たすことができればそのまま差し上げるというのは……」

 

「ほう、その条件とはなんだ」

 

 

 神崎は思っていたよりも好感触だった海馬瀬人の反応に安堵しつつ、人差し指を立て条件を示す。

 

 

「条件はたった一つ。海馬社長。貴方が世界一のデュエリストになること。ただそれだけです」

 

 

 しばらく沈黙した海馬。そんな海馬を見てさらに他の理由を考える神崎だが――

 

 

「クククッ……ハーハッハハハ! いいぞ、実に俺好みの答えだ……いいだろう! しばしそのカード借り受けるとしよう!!」

 

 条件を気に入り高笑いと共に承諾した海馬瀬人は3枚の《青眼の白龍》を手に、高笑いを続けながら去っていった――嵐のような男である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてあくる日、海馬瀬人は武藤遊戯の祖父――武藤双六に《青眼の白龍》を賭けて勝負を挑む。

 

 そのデュエルにて双六は切り札の《青眼の白龍》を召喚し勝負を賭けるも海馬瀬人の3体の《青眼の白龍》の前に敗れ去り、海馬瀬人は双六の《青眼の白龍》を手に入れるのであった。

 

 

 そんな海馬瀬人を見つつ《青眼の白龍》が破られるのを阻止しに来た神崎であったが、そんな彼の下に1枚のカードが飛来、壁に突き刺さる――あと少し横にずれていれば脳天直撃コースであった。

 

 飛来したカードに内心驚く神崎に海馬瀬人は語る。

 

「その1枚は貴様に返しておいてやろう……デュエルをしない貴様ならそのカードを使うこともあるまい」

 

 海馬瀬人はそう言いながら双六から手に入れた《青眼の白龍》を大事そうにデッキの中に加える。

 

 いまいち言動の内容が分からなかった神崎であったが、要は

 

《青眼の白龍》を破りたくはないが、

 

《青眼の白龍》を他のデュエリストが使うのは我慢がならない。

 

《青眼の白龍》を敵として倒したくない。

 

 ゆえに自身の身近にいる「デュエルしない人間」に《青眼の白龍》を他のデュエリストに使わせぬように管理させる。

 

 

 と、こういうことなのだろうと納得した。

 

 

 

 そう納得した神崎だが「爺ちゃん!」という声を聴き意識を引き戻す。

 

「ゆ、遊戯……ごめんよ……儂はあの少年にカードの心を教えようとして……じゃが儂は――」

 

 激しいデュエルゆえに弱り切った双六の言葉に武藤遊戯は祖父をいたわるように声をかける。ダメージは少なめである。

 

「爺ちゃん、今は自分の心配をして……」

 

「これを……負けはしたが魂のカードじゃ。スマンが後は頼む……」

 

 双六は自身のデッキを遊戯に託しぐったりと横たわる。意識を失ったようだ。

 

「爺ちゃん! しっかりして!」

 

「安心してください。気を失っているだけです。後は我々に任せて――」

 

 そんな遊戯に神崎は友好関係を築くため声をかけるも、遊戯の友である城之内克也が待ったをかける。

 

「誰だテメェ――海馬の野郎の関係者か? そんな奴に遊戯の爺さんは任せられねぇ!!」

 

「私は医療関連のスタッフのようなものです。見たところご高齢な方の様ですし万が一のことも考えて……」

 

 

 限りなく真実から遠い事実を伝え、敵意がないことをアピールする神崎――そういったところが海馬瀬人からの信用を遠ざけているのだが……

 

 

「やめなさいよ城之内! 今は遊戯のお爺さんのことが第一でしょ! 遊戯のお爺さんのことは私に任せて」

 

「そうだぜ、城之内! まずはちゃんと医者に診て貰わねぇと!」

 

 今は言い争っている時ではないと遊戯の友である真崎 杏子と本田 ヒロトの言葉は城之内を説き伏せる。

 

 そして双六を神崎の案内の下、医療ルームへと送り届けるため、城之内、杏子、本田の3名は慌ただしくこの場から去っていった。

 

 

 そうして医療ルームに運ばれる双六を見送る遊戯。

 

 その後、遊戯はその姿をもう一人の遊戯へと変え双六のデッキと遊戯自身のデッキと合わせ枚数を調整し、海馬 瀬人を睨みつけ言い放つ。

 

「海馬、次は俺が相手だ!!」

 

 祖父の無念を晴らす為、魂のカードたちと共に遊戯は挑む。

 

 






原作でブルーアイズ確保のために海馬に自殺に追い混まれた3人は今作では元気でやっています。

DEATH-Tなんてなかったんや……

爺ちゃんは軽傷

次回! やっとこさ再現デュエルだぜ!

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