第7話への流れに違和感があるとの声を頂いたので
第7話を加筆修正してみました。2016年11月24日
今回は繋ぎの話
海馬兄弟の過去は次の話になるよ!
如何にして丸くなったかをサクッと紹介だ!
前回のあらすじ
(´・ω・`) 剛三郎は出荷よー
(´・ω・`) そんなー
キース「イカサマはイクナイ(・A・)」
とある路地裏に枯葉やゴミを抱え満足そうに笑う大柄な男がいた。その男こそ神崎が捜していた人物であり将来的に闇のゲームの罰ゲームから自力で復帰する存在である。
今現在の男の様子を確認するために人のよさそうな笑みを浮かべ話しかける神崎、返答は辛辣なものだった。
「近づくんじゃねぇ! これは俺の金だっ! 誰にもわたさねぇ!」
そう言って男の近くの枯葉やゴミを集め神崎から遠ざける男。男には枯葉やゴミが紙幣に見えているらしい。
「いえ、目的は金銭でありませんよ。私は――」
男を刺激しないように自身の目的を話そうとする神崎の顔面に男の丸太のような拳が突き刺さる。これで尻尾を巻いて逃げるだろうと判断した男だったが殴った相手はビクともしない。さらに拳の隙間から
――目 が あ っ た。
そして男は恐怖する。神崎の何も写さぬ無機質な目に――人間を見る目じゃない――実際はいきなり殴りかかられてショックを受けているだけである。
そうとは知らず男は尻餅をつき後ずさる。その心はとうに折れていた。
「ヒッ! 来るな! 金ならくれてやる!」
その言葉と共に落ち葉やゴミを頭からかぶる神崎。打算はあれど良かれと思ってその男を助けに来た神崎の目は益々死んでいき、そしてその目を見て男は益々恐怖する――負のサイクルであった。
「安心してください――君に危害を加えるつもりはありません。ただ君の社会復帰を手伝いたいだけです」
「わっ、わかった。言うとおりにする!」
いまいち会話が噛み合っていない2人だが一応の了承が取れたことに神崎は安堵して笑みをこぼした。
酷い目にあったとKCの医療スタッフを乗せた車に神崎の連れてきた黒服たちが先程の男を運び入れる様子を見ながらひとりごちる神崎――さすがに化け物を見るかのような目で見られたのは堪えたらしい。
項垂れたまま車に同乗し先程の男をつれツバインシュタイン博士の元へと向かう神崎であった。
研究室ではツバインシュタイン博士が男を精密検査にかけた結果を興味深そうに眺めていたが雇い主である神崎が入室してきたことを確認すると男の現在の状態を報告する。
「Mr.神崎、彼の肉体的な異常は特にありません。報告にはゴミなどが紙幣に見えるとのことでしたが……眼球や脳にもこれといった異常は見当たりませんでした」
肉体的な問題はほとんどないことを聞き胸をなでおろす神崎。ゆえに「すでに知っている」情報に間違いがないか問いかける。
「となるとやはりオカルト関係ですか?」
「ええ恐らくは……実は彼の―――」
ツバインシュタイン博士はまだ見ぬ現象に対しヒートアップしていく。これに付き合うのは際限がないため神崎は用件を伝え退散することにした。
「ツバインシュタイン博士、私が頼みたいことは彼の精神状態の回復になります」
「――ですから彼自身の身に起きていることは……えっ!? それだけ……ですか?」
熱弁を振るっていたツバインシュタイン博士は冷や水を浴びせられたかのごとく呟く。一体何をするつもりだったのやら。
「はい、それだけです。この状態から復帰させる施術を今以上に完璧なものにしておきたいのです。彼の状態を今までの患者と同じだと思わない方がいい」
「……なるほど、そういうことでしたら腕を尽くしましょう」
少々不満げにツバインシュタイン博士は雇い主の要望を聞きいれた。
研究所を後にした神崎は自室に戻り期待に満ちた目で願う――どうか『マインドクラッシュ』の治療に応用できるものであってほしいと。
そのデータは万が一闇のゲームの罰ゲームを受けた際に精神的な「死」から復帰する術となるのだから。
あくる日、一人の母親が自身の不甲斐なさを呪っていた。光を失ってしまった娘に再び光を灯すための治療費を払うことができない自身を呪う。
だがそんな母親にも転機が訪れる。格安で治療を引き受けてくれる人間があらわれたのだ。その人間――神崎は名刺を渡し挨拶を交わす。
「私はこういうものなんですが――」
その名刺にはKCの文字、大企業である。訝しむ母親に神崎はその疑念を払うべく言葉を続ける。
「我が社では今回の症例に対し新たな治療法を確立しました。もちろん安全性は保証されているのですが、何分新しいものはなかなか受け入れられないのが世の常です。ですので――」
続く話を纏めれば要は実験台になれとでもいうものであった。だが費用は相手持ちとなる上手すぎる話であった。
結局、返事は後日としてお引き取り頂いたものの答えは出ない。神崎の素性を調べても特に問題は出てこず、「デュエルモンスターズの生みの親――ペガサス氏の婚約者、奇跡の復活」そんな情報も出てくる次第。
最終的に当事者である娘に相談したものの負担が減るならその方がいいと逆に説得されてしまった。
こうして母親は悪魔の物かもしれぬ手を握ることにしたのである――酷い言われようだ。
海馬瀬人が社長に就任し軍事産業は解体され、なおかつ海馬瀬人に粛清されることもなく、様々な手回しも順調に進み神崎は日々職務に励んでいた。まさに我が世の春であった。
そんな彼に意外な人物から連絡が入る。
「おや、これは海馬社長ではないですか」
『儂はもう社長ではない』
受話器越しに不機嫌さを隠さないKC前社長、海馬剛三郎の声が響く。
「そうでしたね。では何とお呼びすればよいでしょうか?」
『好きに呼べ』
「では剛三郎殿、御用件はなんでしょう? 今のご生活にご不満でも?」
『この「檻」に不満はない。敗者には豪勢な位だ』
剛三郎は皮肉を返しつつ意を決して語りだす。
『貴様に折り入って頼みたいことがある……「乃亜」のことだ』
意外な名前が出てきたと神崎は驚きつつも理由を考える。
「海馬乃亜」――海馬剛三郎の実子
不慮の交通事故で重症を負い幼くして亡くなるも、後取りを必要とする剛三郎によって意識と人格をコンピュータに移し替えられた子供。
彼の存在は剛三郎がKCに返り咲ける可能性を有していたため、近いうちに手を打とうと考えていた剛三郎のジョーカー。
その存在を神崎に明かすことで得られるメリットはほとんどないゆえに剛三郎の考えが神崎にはわからない。
思考を巡らせる神崎をよそに剛三郎は話を続ける。
『貴様のことだ、どうせ知っているのだろう? いまヤツがどんな状態なのか』
知りません――神崎はそう言いそうになるのを堪え、続きを促す。
事実、電脳空間での孤独な生活の結果、乃亜の人格が歪むことは知っていても今現在どのような精神状態かまではわからなかった。
『儂はヤツが怖かった。日々歪んでゆくその精神が、ゆえに目を背けた――人を見られぬものに社長の座は渡せぬと……』
剛三郎は懺悔するかのように話す。
『愚かな考えよ……親である儂が見ずに誰があの子を見るのか!!』
電話ごしだが剛三郎の大きな感情のブレが見て取れた。
『儂はっ……! 儂はっ……!』
――「ヤツ」から「あの子」、その言葉の変化は剛三郎らしからぬものだった。
そして熱が籠り、話が脱線しかけていたのを元に戻す意味を込めて神崎は静かに言い放つ「落ち着いて下さい」と。
『……スマン。そこで本題なのだが、貴様はさまざまな治療技術を研究しているのだろう? 儂が言える義理ではないが、それでどうかあの子を救ってやってほしい……』
誰だコイツ――神崎はそう言いそうになるのを堪えに堪え、剛三郎の偽物の可能性を考えて部下に確認を取らせる。
偽物であってほしかった――そんな神崎の望みは砕ける。
本物だった。
『……どうか……頼む』
確認の間の沈黙を難色を示していると感じた剛三郎は消え入りそうな声で願う。
「わかりました。最善を尽くさせていただきます」
どのみち乃亜に対して何らかのアクションを取る必要があった神崎は時期が早まっただけだと考え快く引き受ける。
通話を終え神崎は剛三郎の精神状態に疑問が残る。
隠居先として可能な限り穏やかな気分になるようにさまざまなことを手配したがこれほどまでに人格が変わるのかと、近々精神科医に様子を見させようと神崎は決心した。
実際は闇のアイテムが発動した状態で、剛三郎が強い敗北感を持ったために心が折れ、疑似的な「マインドクラッシュ」を受けパズルのようにバラバラに砕けた精神に強力な穏やか空間によって「穏やか成分」ともいうべきピースを組み合わせ生まれたのがこの「若干綺麗な剛三郎」であった。
このままいけば「綺麗な剛三郎」になる日も遠くはない。
そんなことはつゆ知らず剛三郎の罠である可能性を考え、神崎は慎重に進み乃亜のもとにたどり着いていた――人を素直に信用できない悲しい男である。
そして巨大なスクリーンが突如として起動し、そこに映った少年が神崎を見やる。
『初めまして僕は海馬
スクリーンの一枚に映りだされた乃亜は自虐気味に笑う。捨てられた自分に何の用だとでも言いたげに。
「こちらこそ初めまして、乃亜君。私は神崎という者です」
神崎は挨拶を返しつつ、神崎がスクリーンを映し出そうとする前に相手の方が先に行動したことから乃亜にはまだ他者との関わり――人とのコミュニケーションに飢えていることが見て取れた。
ゆえにまだ乃亜の人格が歪み切っていないことを神崎は感じ取っていた。
『僕に何の用かな? なにか知恵でも借りに来たのかい?』
「いえ違います。まあ新しい医者が来たとでも思ってもらえれば――」
その言葉に乃亜が笑いながら激昂する――器用なヤツである。
『クククッ! 医者! 医者だって! すでに死んでいる僕に医者! ふざけるなッ!!』
乃亜は怒り、そのままヒートアップしていく。
その怒りを見て――剛三郎の怒りかたと似ているな。やっぱり親子だなぁ。などと神崎はどこか他人事のように考えていた。
『僕が何もできないんだと思っているんだろう。目にもの……』
その怒りは益々ヒートアップしていき、危険なことを考えだした乃亜に神崎は彼にとって爆弾となる言葉を投じる。
「乃亜君、君は生きている」
『見せて……えっ、今なんて……』
「君は生きていると言いました」
『嘘をつくなっ! だって僕は!』
信じられないといったふうな乃亜をよそに神崎は自身の企みが成功したことに安堵する。
人間は希望や逃げ道を持っている限り自棄になることは少ない。ゆえにこちらでそれを用意してやることによりこれ以上人格が歪むのを防ぐ試み。
まったくもって彼のやり方は何故こうも悪役じみているのか。
動揺から立ち直る前に事前に調べていた情報を基に神崎は次々と
「君の
乃亜は慌てて言葉を返す。
『コールドスリープされているのなら脳の活動も停止しているはずだっ! だけど僕はこの電脳空間で学び知識を蓄えている――それをどう説明するっ!!』
いい傾向だ――そう神崎は考える。
死んでいることではなく、生きていることを証明させようとしている乃亜の精神状態、心は生きることを願ってきていた。
「君はその電脳空間で学び知識をためているそうですね」
ならば後は簡単だった。
「電脳空間が君の全てだとするならば学ぶ必要などありません。パソコンのように知識をダウンロードするだけでいいのだから――つまり君が学びを必要としているその事実が君の肉体が死んでいないことの証明になります」
『だがっ! 現代医学ではコールドスリープから目覚める方法は見つかっていないはずだっ!!』
「ええ、そうですね。
『他の手段?』
「はい、他の手段です。ですが信じられないであろう君のために軽いデモンストレーションをしましょう」
そう言って神崎は懐から人造闇のアイテムを取り出し仰々しく行使する。
「世界には君の知らない未知が溢れています。今それをご覧に入れましょう」
こうして神崎は新たな患者「乃亜」の治療にあたることになる。
デュエルには無限の可能性がある。
錬金術・デュエルエナジー・絆・友情など――そんなよく分からない力がきっと彼の心と体を癒してくれることだろう。
I2社でペガサスはデュエルモンスターズの生みの親たる自身との対戦を優勝商品とした大会の開催を計画していた。
その企画のアドバイザーとしてペガサス島に呼ばれた神崎はその大会の特殊ルールに頭を抱える。
デュエルモンスターズ誕生の際のテコ入れが一体なんだったのかと思えるレベルである。具体的にはフィールドパワーソースなどだ。
「どうデスカ?」
自信たっぷりに問いかけるペガサス――トゥーンを弱体化させられたことに対して嫌がらせをしている訳ではない……ないよね?
「このルールですとフィールド魔法を戦術として組み込むデュエリストに不利になるかと、現在あまりフィールド魔法を活用するデュエリストが少ないためのルールだとは分かるのですが……」
現在、爆発的にデュエルモンスターズが世界に広まっているが、やはりと言うべきか高い火力を持ったモンスターばかりが注目を浴びている現状があった。
そして様々なカードを用いた「コンボ」もデュエルモンスターズの楽しみなのだと伝えるために今大会のルールを提案したペガサスの意を神崎は汲み取る。
「Wow! その通りデース。話が早くて助かりマース」
「――でしたら今大会の参加者に参加賞として大会前にフィールド魔法を配布するというのはどうでしょう。それに加えてトレードの機会を設ければデッキ強化の際に使用されることもあるでしょう」
とりあえずいくつか考えていた候補のうちの一つを伝えるとペガサスは喜んでその話に乗り会議は進む。
「Oh! その手がありましタ! アナタに相談したのは正解デース! デスガ惜しくもありマース……アナタがデュエリストでないのが悔やまれマース!」
額に手を当てオーバーに残念がるペガサス、その後手をポンと叩きいま思いついたように話す。
「そうデース! 実はシンディアが最近デュエルモンスターズを始めたのですがこれを機にアナタも始めてみてくだサーイ! シンディアのデュエルの腕は月行ボーイと夜行ボーイの教えも合わさりグングン伸びていマース!」
会議……は進む。
「……デスガ最近月行ボーイと夜行ボーイのシンディアに向けるアツイ視線が気になりマース……」
会議……? は進む。
「……シンディア様は可憐なお姿ゆえに仕方のないことでは?」
「それは当然のことデース! Oh……美しさとは罪なものデース……」
会議は進むったら進むのだっ!!
この後も同じようなやり取りが続いたそうな……ガンバッ!!
(。゚ω゚) 。「良いことをしたあとは気持ちがいいな」
~入りきらなかった人物紹介~
月行と夜行
遊戯王Rにて登場した「ペガサスミニオン」のトップ2の双子。
緑色の長髪が特徴の双子の兄弟。
兄、月行はペガサスから「パーフェクト・デュエリスト」と称されるほど優秀なデュエリストである。
弟、夜行はそんな兄と比較され強い劣等感を持っている。
ペガサスミニオンとは
原作では
実子をもうけなかったペガサス・J・クロフォードが自身の後継者を確保する為に世界中から集め育てた孤児などである。皆優れたデュエリストでありペガサスを尊敬している。
本作では
早々に隠居しシンディアとのラブロマンスへシフトしたいペガサスが後継者を確保する為に世界中から集め育てた孤児などである。
皆優れたデュエリストであり、ペガサスとシンディアを本当の親のように慕い2人もそれを嬉しく思っている。
そのためペガサスは当初の目的は忘却の彼方となった――もう十分ラブロマンスしてるしね!
ちなみにアツイ視線の正体はペガサスの嫉妬心からくる気のせいです。