マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
アクター「デュエルは99%の知性が勝敗を決する。運が働くのはたった1%に過ぎない」

ドクター・コレクター「その1%に私は懸ける! 私の引きは奇跡を呼ぶぞ! ドローォオオオ! そしてセット! ターンエ――」

アクター「エンドサイクで」

ドクター・コレクター「( ゚д゚ )」





第68話 探し人

 

 

「こ、これが裏デュエル界の――」

 

 1ポイントのライフも削れずにデュエルに敗北したドクターコレクター。

 

 だがアクターの「どうしろっていうんだ!」な手札事故をドクターコレクター自身が発動した魔法カード《手札抹殺》で解消し、最適な手札に交換。

 

 さらにはモンスター不足で困っていたところを《マジシャンズ・サークル》で展開を補助すればこうもなろう。

 

 

 だがそうとは知らずに勝手に戦慄するドクターコレクター。

 

 そしてそのドクターコレクターの頭を片手で掴み持ち上げるアクター。

 

 ドクターコレクターの巨体は宙に浮く。

 

「グッ……この私を……片手で!?」

 

 巨体で筋肉質なドクターコレクターはアクターの思わぬ怪力に驚くが――

 

 アクターの中の人、神崎にとってはクマに比べれば遥かに軽い程度だ。

 

 そしてアクターは冥界の王の力を以てドクターコレクターの(バー)を見ながら機械的に問いかける――(バー)は素直だ。

 

「誰に雇われた?」

 

「ハッ! 言うと思うのか?」

 

 信用で成り立つ裏の世界で依頼主を明かすバカはいないと鼻で笑うドクターコレクター。

 

 だがアクターは内心で「答えた方が () () () に楽なのだが」と考えるも、それを説明する訳にもいかないゆえにオカルト(冥界の王)の力の行使を決断する。

 

「そうか」

 

 そのアクターの言葉と共にドクターコレクターを掴む腕に「何か」が脈動し、ドクターコレクターの頭にゆっくりと迫る。

 

 不審に思うドクターコレクターだが、彼のデュエリストとしての本能が警鐘を鳴らした。

 

 その腕の内側に蠢く「ナニカ」の危険性を。

 

「何だ……『ソレ』は……」

 

 ドクターコレクターの脳を目指して這いずる不可視の「ナニカ」。

 

 そしてオカルト課の黒い噂にドクター・コレクターは思い至る。

 

 どれも一笑に付すような噂ばかりだが、今ある現状を受け止めねばその先に待つのは――

 

「――ま、待てっ! 話す! 話すから待て!」

 

 自身の直観に従いドクターコレクターは叫ぶように声を上げる――裏の信頼も命には代えられない。

 

 だがアクターは何も答えない。

 

「知らないんだ! 私は依頼主は知らない! だが状況的に恐らく――」

 

 ドクターコレクターの「知らない」、そして「恐らく」――それでは(バー)を見ての判断は難しいとアクターは腕に奔る力を止める訳にはいかない。

 

 たとえIQ200の頭脳を持つドクターコレクターの推測であっても確実な保証はない。

 

 情報は信頼性のあるものに限るのだ。

 

 

 やがてドクターコレクターの頭を掴んだ手から「何か」の力が行使される。

 

 その頭の中が掻き回されるような感覚にドクターコレクターは叫び声を上げるが、その声は音として発されない。

 

 声なき声が響く。

 

 

 暫くしてアクターの手が離され、自由になったドクターコレクター。

 

「あ、悪魔め……」

 

 そんなか細い声と共にドクターコレクターの巨体は糸の切れた死体のように倒れた――その瞳に生気はない。

 

 

 ちなみにこんな有様だが、命と精神に大きな害はない。

 

 精々、恐ろしい夢を見た程度の影響である。

 

 

――冥界の王の力……便利なものだ。しかし過信は禁物。

 

 アクターこと神崎はそんなことを考えつつ、ドクターコレクターから得られた情報を纏めるように呟く。

 

「彼越しに見たあの(バー)と状況からして――」

 

 ドクターコレクターの依頼主は――

 

「――あの理事長、いや今は『まだ』違うのか」

 

 

 言葉にされた「理事長」。それは――

 

 

 遊戯王GXにて登場するデュエルアカデミアの理事長、影丸(かげまる)である。

 

 遊戯王GXの時代ではかなりの高齢であり、生命維持装置で僅かに命を繋いでいる状態の老人だ。

 

 不老不死を求めており、やがてデュエルアカデミアに封印された「三幻魔」のカードを狙っているのだが――

 

 今はまだDM時代のバトルシティの時期。

 

 ゆえにデュエルアカデミアはまだ建物すらない。

 

 

 

 そんな、アクターこと神崎によって読み取られたドクターコレクターからの情報。

 

 それは状況証拠にすらならない――だが、狙われていると分かっているだけで神崎にとっては十分だった。

 

 さらに神崎には狙われた理由が容易に推理出来る。

 

――「オカルト課の技術で不老不死を得たい」といったところか……

 

 そう思考しつつも面倒だとアクターはため息を零す。

 

「厄介事だな……」

 

 

 一番の問題はこの遊戯王ワールドにおいて「不死」はともかく「不老」なら可能性があることだった。

 

 

 電脳空間に保存されていた乃亜の存在から肉体と精神を切り離す技術は既にあるのだ。

 

 乃亜の場合はそこから修復した乃亜の元の身体に精神を戻した。

 

 

 ならば新しい若い身体に精神を移すことも可能ではないかと考えるのが人の性であろう。

 

 

 さらに厄介な事にそれを実際に実行した人間がいる。時期が不明なため未来にとの注釈が付く可能性があるが。

 

 

 その人物は遊戯王GXにて登場した影丸の配下のセブンスターズの一人、錬金術師アムナエルである。

 

 不治の病に侵されていたアムナエルは錬金術が生み出す人造生命体「ホムンクルス」に己が魂を移したのだ。

 

 しかしその過程に何らかの問題があったのか、やがてその身体は朽ち始め寿命はさほど長くはなかった。だが一応は成功しているのである。

 

 

 よって「不老」の実現の可能性は決して低くはない。

 

 世界が引っ繰り返る程の情報である。

 

 

 ゆえに神崎ことアクターは内心で頭を抱えつつ、影丸への対処法を考えながらドクター・コレクターのパズルカードを手にし、ギースに連絡を入れ、回収班に引き渡しを済ませた後に新たな獲物を探しに町の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある町の表参道の一角で周囲をキョロキョロと見回す双六の姿があった。

 

 何ゆえこんなところで右往左往しているのかというと――

 

 海馬とのデュエル後、「城之内の応援に行く」と意気揚々と海馬の元から走り去ったものの、城之内と連絡する手段もない為、城之内を見つけられなかったからである。

 

 それゆえに困り果てた双六は周囲の人間に助けを求めることにした。

 

 取り合えず目についた黒いバンダナにサイコロのような装飾のついたイヤリングをぶら下げた青年に声をかけながら走り寄る。

 

「おーい! そこのキミー! スマンが聞きたいことが――」

 

 しかしその青年が振り返ると同時に双六はその足を止める――見知った顔であった。

 

「あれ? なんで遊戯くんのお爺さんが一人で?」

 

「おお! 御伽くんじゃないか!」

 

 その青年は遊戯の友人でもある御伽 龍児。

 

 そして御伽の父はかつて双六の弟子でもあった。ゆえに双六は問いかける。

 

「君のお父さんは元気かね?」

 

 過去の闇のゲームによって仲違いしてしまった御伽の父と双六。

 

 御伽の父は闇のゲームの罰ゲームにより老いた姿になったことで双六を恨んでいた。

 

 だが、今ではその闇のゲームの代償もKCのオカルト課の治療技術により解消され、双六との不和も解消しているのだが――

 

 仲違いしていた期間が長かったゆえか御伽の父は双六とあまり近況報告などをしなかったゆえに双六はかつての弟子の今現在を気にしていた。

 

「はい、今はとても! 僕と新しいゲーム作りで盛り上がってます! それと……父が過去にとんだご迷惑を……」

 

 家族との出来事を楽しそうに語る御伽。しかし御伽の父が過去に双六に迷惑をかけた件を家族の一人として謝罪する。

 

「いやいや、もう済んだことじゃ。それにアヤツとも話はついとるしキミが気にすることではないぞい」

 

「――そうですか、ありがとうございます…………それで聞きたいことって、何か困りごとみたいですけど」

 

 そんな双六の寛容な言葉に御伽は感謝しつつ、本題を切り出す。

 

「ああ、実は城之内の奴を探しておってな。じゃが、この広い童実野町だとなかなか見つからんからの~」

 

 そういいながら困った顔で髭をさする双六。

 

 そんな双六の困り顔に苦笑しつつ御伽は力になれそうだと提案する。

 

「ならKCのスタッフに尋ねたらいいですよ。知り合いの応援とかなら場所くらいは教えてくれると思います」

 

「おお、そういえばそんなことを言っとった気が……」

 

 言っていたも何も飛行船からの映像から説明があったゆえに早々聞き逃す筈もないのだが……

 

 それゆえに御伽は若干の呆れの感情を隠しつつ尋ねた。

 

「アナウンスを聞いてなかったんですか?」

 

「うむ! 年を取ると忘れっぽくなってしまってな」

 

 自信満々な面持ちで返す双六。

 

 実際はきたるべき海馬とのデュエルの為に周囲の情報をシャットアウトするほど集中していたゆえだ。

 

 しかし遊戯に余計な心配をかけたくないと誰にも話すつもりがない為、双六は咄嗟に誤魔化した。

 

「なら僕が聞いておきますよ――ちょっと待っていて下さい」

 

「何から何までスマンの」

 

 双六の態度からその手の思惑は御伽には読み取れなかったものの御伽は深く追及せずKCスタッフの元へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「すみません、ちょっといいですか?」

 

「ん? 何だよ、俺に何か用か? って、あっ! スタッフの仕事か……」

 

 そう御伽におずおずと話しかけられたヴァロン。そして自身がKCのスタッフであることを思い出す。

 

 今回のヴァロンの仕事は基本的にグールズ狩りだが、こうして頼りにされた以上無視は出来ない。

 

 よって職務を果たすべく、どこからともなくタブレットを取り出し御伽に向かい合う。

 

「んで、どうしたよ?」

 

「実は――」

 

 そうして御伽は双六を取り巻く事情をヴァロンに説明していき、ヴァロンも相槌を打ちながら聞き――

 

「――ってこと何で友達の居場所を探して貰えないかな?」

 

 話を終えてヴァロンの気安さから若干砕けた口調になった御伽。

 

 一方のヴァロンも大した問題ではなかった為手早く済ませてしまおうと動く。

 

「なんだ、そんなことか。だったら身元確認とかをしねぇといけねぇから、その友達の名前とアンタの名前を――」

 

 そして必要事項を御伽に尋ねようとしたヴァロンだったが――

 

「儂の弟子、城之内 克也じゃ!」

 

 いつのまにやら合流していた双六が探し人の名を答えた。

 

 そんな双六を視界に入れるヴァロン。そして面倒そうに返す。

 

「ん? 何だ、爺さん? アンタも困りごとか? だったら順番を――」

 

 だがヴァロンが最後まで言い切る前に御伽が注釈に入った。

 

「いや、その探してる友達はこの人の弟子なんだ」

 

「そうなのか? ならさっさと手続き済ませちまおうぜ」

 

 その御伽の言葉よりもヴァロンの頭にあるのは――

 

――この爺さん、強そうだな……

 

 バトルジャンキー全開の考えだった。

 

 しかし今は仕事を優先しなければならないヴァロンはその闘志に蓋をしつつ手続きに戻る。

 

 そしてヴァロンの指示に従う双六と御伽。その後、手続きが終わり――

 

「……とっ、これでOKだ。それで肝心の城之内ってヤツの居場所なんだが――」

 

 ヴァロンが指し示す端末に顔を覗かせる双六と御伽。

 

 その端末には周辺の地図とその地図上の2つの点が表示されていた。それなりに近い。

 

「今、俺たちがいるのがココで城之内ってのがいるのがこの辺りだ」

 

「ほーさすがはKC、ハイテクじゃのー」

 

 その端末に映る情報を説明するヴァロンに感嘆の声を漏らす双六。

 

 その双六の様子から機械関連には弱そうと見たヴァロンは御伽に問いかける。

 

「こっちで地図も用意出来るが――どうするよ?」

 

「いや、大丈夫だよ。もう覚えた」

 

 問題ないと顔を上げる御伽にヴァロンはお節介ついでに気を回す。

 

「そうか、一応近くにいる俺の同僚にも声をかけといてやるよ。その辺りに城之内ってヤツがいなかったらもう1度俺たち(スタッフ)に声をかけるといいぜ」

 

「何から何まで助かったぞい!」

 

 そんなヴァロンの心遣いに双六は元気よく礼を返す。

 

「こっちも仕事だから気にすんなよ」

 

「ありがと! それじゃぁ僕たちはこれで!」

 

「ああ、達者でな」

 

 そんなヴァロンのぶっきらぼうな言葉を背に双六と御伽たちは城之内の元へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして肝心の双六の探し人である城之内は――

 

 ベンチに腰掛け周囲を窺っていた。

 

 バトルシティが始まってからそれなりの時間が経っているにも関わらず動きを見せない城之内に本田はため息を吐きながら問いかける。

 

「なぁ、城之内。さっきから座り込んでるけどよぉ、デュエルはしねぇのか? ほら、あのデュエリストなんてどうだ?」

 

 城之内が初戦で躓いても事だろうと、本田はあまり強そうに見えないデュエリストを相手に提案するが、城之内は動かない。

 

 そして城之内は自身の内心を吐露する。

 

「いや、普通の相手じゃダメなんだ……」

 

「普通の? 相手なんて誰だっていいじゃねぇか」

 

 ルール上は誰を倒そうともパズルカードの良し悪しに違いはないと本田は考えるが――

 

「誰でもいいってわけにはいかねーんだよ」

 

 城之内にはこの大会で勝ち抜く以外の目標がある。

 

「俺はこのバトルシティでどうしても戦いてぇヤツがいるんだ……」

 

 再戦を誓った男の約束――城之内はそれに応えようと足掻いていた。

 

「でも今の俺じゃあ全然ダメだ。だからよ、俺は決勝トーナメントまでに俺よりも強い奴とデュエルして『真のデュエリスト』に少しでも近づきてぇんだ!」

 

「成程な……だがよ――決勝トーナメントに参加できるのは早いもん勝ちなんだろ? そうノンビリもしてられねぇぜ?」

 

 しかし本田の意見ももっともだった。本戦に出られなければ約束もへったくれもない。

 

 その本田の言葉に城之内も言葉をなくす。

 

「うっ、それはそうだけどよ……どいつが強えぇデュエリストなのか分からねぇし……」

 

 城之内にはこの手のデュエル界の情報にとことん疎かった。

 

 そして今、城之内と共にいる本田・杏子の両名とも詳しいわけではない。

 

「こういうとき牛尾君がいれば色々教えてくれるのにね」

 

 それゆえに杏子はこういったときに頼りになる仲間を思い浮かべるが――

 

「でも牛尾は大会運営の仕事中だろからな……邪魔する訳にもいかねぇだろ」

 

 本田の言う通り大会運営に関わっている牛尾が一参加者である城之内に付きっ切りなど出来る筈もない。

 

「なら遊戯のお爺さんなら? ひょっとして今日もお店?」

 

 ならばと城之内の師匠の名を上げる杏子――デュエル歴の長さならトップクラスである。

 

「いや、それがよ。何か別の用があるとかどうとかでよ……」

 

 しかし城之内はそれは無理だと知っていた。

 

 双六は「用事」としか言っていなかったがデュエリストとして溢れんばかりの闘志を漲らせていた姿を見た城之内は邪魔することはできないと言葉を濁す。

 

 

 

 そんな困り果てた城之内一同だったが彼らに走り寄る影が2つ。

 

「お~い! 城之内~!」

 

 その影の一つは城之内達に掲げた手をブンブンと振りながら近づいてくる双六。

 

 そしてその後に追従する御伽。

 

 その2人の姿をハッキリと視界に収めた本田は笑う。

 

「おっ、『噂をすれば』って奴じゃねぇか」

 

 

 

 そうして城之内たち一同に合流した双六と御伽。

 

 急に走ったせいか息も絶え絶えな双六の背を御伽がさすっていた。

 

 そんないつもの朗らかな双六の姿に城之内は内心で安心しつつも尋ねずにはいられない。

 

「おお! じいさん! 用は済んだのか?」

 

「うむ、バッチリじゃ!」

 

 城之内の言葉にブイサインで返す双六。

 

 一方で杏子は珍しい組み合わせに理由を御伽に問いかける。

 

「ひょっとして遊戯のおじいさんの用事って御伽くんが関係してたの?」

 

「いや、そういう訳じゃないんだけど――」

 

「御伽くんは儂が城之内を探すのを手伝ってくれたんじゃよ!」

 

 言葉を濁した御伽に双六が感謝の意を示しつつ訳を話した。

 

「へぇ、そうなのか……ならこれで城之内のヤツも動き出せるぜ! ありがとな、御伽!」

 

 なにはともあれこれでやっと動き出せると本田は自身の手のひらに拳を打ち付け気合を入れた。

 

「ん? それはどういうことじゃ? それに見たところ城之内はパズルカードを1枚しか持っておらんようじゃし……まさか負けてしもうたのか?」

 

 だが詳しい事情を知らない双六はそんな城之内たちの状況に疑問符を浮かべるばかりだ。

 

「それなんだけどよ 聞いてくれよ爺さん。城之内の奴が――」

 

 ゆえに本田が代表して現在の城之内を取り巻く状況を説明していき――

 

「――って訳なんだよ。だから爺さんの知恵を貸しちゃ貰えねぇか?」

 

 そんな本田の説明に腕を組みながら神妙に聞いていた双六はカッと目を見開き声を張る。

 

「成程な、さすがじゃぞ、城之内! そういうことなら儂は喜んで協力するぞい! ではとびっきりの相手を探しにいくとするかの!!」

 

 向上心を忘れぬ弟子の姿に双六は満足気だ。

 

「おう! 爺さん! 任せるぜ!」

 

 そしてまだ見ぬ強敵に燃えている城之内だったが本田は双六の傍で耳打ちするかのように念を押す。

 

「だがよ、あんまり強い相手だとそのまま負けちまうだろうから、ほどほどにしてやってくれよな」

 

「うるせぇぞ本田! 俺と俺の新しいデッキをなめんじゃねぇぜ!」

 

 しかし案の定バッチリと聞こえていた城之内――本田も隠す気はなかったようだが……

 

 そんな若干浮足立った城之内に本田は己の師である牛尾の言葉を贈る。

 

「でも牛尾も言ってたぜ。『新しいデッキは思いもしねぇ問題があるかもしれねぇから試運転を入念にするもんだ』って――そこは大丈夫か?」

 

「それは………………大丈夫だ……」

 

 微妙に自信が持てない様子の城之内。

 

「その間に不安しか感じないんだけど……」

 

「自信はないんだね……」

 

 その城之内を姿をジト目で見る杏子と乾いた笑いをこぼす御伽。

 

「なぁに安心せい! 城之内! 何度かデュエルした儂がお前さんのデッキの強さをキチンと知っとる! 自信を持つんじゃ!」

 

「……だよな! よっしゃぁ! どんな相手だろうとドンとこいだぜ!!」

 

 だがそんな城之内の不安も、師である双六の言葉で吹き飛び、先ほどの自信を取り戻し胸を張る。

 

「まったくもう、調子がいいんだから……」

 

 そう言いながら頭を押さえる杏子を余所に天を仰ぎ見る城之内。

 

「待ってろよ、遊戯! キース! 決勝トーナメントまでにデュエリストレベルMAXになってやるぜ!」

 

 そして双六主導の元、城之内の対戦相手探しが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方その城之内との男の約束の相手である遊戯は対戦相手を探していた。そんな遊戯の前に一人の目つきの悪い男が立ち塞がる。

 

「お前が……武藤遊戯……だな……」

 

「ああ、そういうアンタは誰だ?」

 

 その男は遊戯を見知った様子だが遊戯には覚えのない人物だ。

 

「俺は……『デプレ・スコット』……お前を見定めに……来た……」

 

 特徴的な話し方で名乗る男、デプレ・スコット。

 

 そしてデプレは懐からパズルカードを取り出し遊戯に問いただす。

 

「……『パズルカード』は何枚……持っている? 俺は……2枚だ……」

 

「俺はまだ1枚だ」

 

 パズルカードを見せながら返答した遊戯に対して、デプレは僅かに考える素振りを見せ――

 

「なら……互いにパズルカード1枚……賭けでの勝負を……挑ませて……もらう……」

 

 手に持つ2枚のパズルカードの内の1枚を仕舞い、遊戯にデュエルを申し込む。

 

 だが遊戯には気がかりなことがあった。それは――

 

「俺の何を見定めるんだ?」

 

 デプレが名乗った際に言った「見定める」との言葉。

 

 遊戯に向けてデプレから発せられる気迫からただ事ではないと遊戯は推察する。

 

「……それを……言うかどうかは……お前次第だ……」

 

 だがデプレは今の段階では話す気はないと突っぱねるばかり。

 

 それに対し遊戯は「ならばデュエルで語るまで」とデュエルディスクを展開した。

 

 

「 「デュエル!!」 」

 

 ペガサスに対する恩義に報いる為、ペガサスミニオンが一人デプレが動き出す。

 

 

 






~入りきらなかった人物紹介、その1~
影丸(かげまる)
遊戯王GXにて登場

GX時代ではデュエル・アカデミア理事長を勤める。

100歳を超える高齢で、通常は生命維持装置のようなタンクの中に呼吸器を付けて浮かんでいる。

不老不死の方法を探っており、その過程でデュエルアカデに封印されていた「三幻魔」のカードに目を付けた。

そして「三幻魔」の封印解除の条件を揃えるためセブンスターズを組織し十代たちの刺客として放なった。

ちなみに三幻魔の力を取り込み、筋骨隆々な姿になる。

だが十代に敗北し元の老人の姿に戻った(だが何故か以前より元気になった)


~今作では~
不老不死の方法を模索し、オカルト課の技術に目を付け、狙っている。

「素直に頼めば……」と思うかもしれないが

影丸は神崎を一切信用していないので無理もない話である。


それゆえ神崎にとって代えがきかなさそうな駒と思われる役者(アクター)を手中に収めようとドクター・コレクターを刺客として放った。





~入りきらなかった人物紹介、その2~
アムナエル
遊戯王GXにて登場

セブンスターズの一員であり、錬金術師でもある。

単独での「ホムンクルス」の製造から精神の移動など、錬金術師としての力量は高い。

デュエルの実力も高く、数々の十代たちの仲間を倒す程。

その正体は――またの機会に




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