マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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ドクター・コレクターVSアクター 前編です


前回のあらすじ
運命の女神「私の手を煩わせるんじゃねぇ――分かったな?」





第66話 知識

 

 

 先攻はドクター・コレクター。

 

「私の先攻! ドロー!!」

 

 カードを引きつつ、ドクター・コレクターは今の己を取り巻く状況に頬が緩む。

 

 

 ドクター・コレクターは「バトルシティで役者(アクター)を狩れ」と依頼してきた依頼主に感謝していた。

 

 それは報酬の面だけでなく、その依頼の全てがドクター・コレクターの現状を打開する為に用意されたものといって差し支えなかったからだ。

 

 

 このバトルシティの予選では対戦相手は戦うまで誰かは分からない。

 

 仮にアクターがデッキを複数持っていたとしても、通常時の「そのデュエリストに対応したデッキ」とまではいかない。

 

 

 そしてドクター・コレクターのデッキ情報は全てその手で隠していた。ゆえにそのデッキを知るものはいない。

 

 さらにデッキは新しくバージョンアップされており、前のデッキの情報が万が一漏れていたとしても問題は少ないとドクター・コレクターは考える。

 

 試運転はそのドクター・コレクターの頭脳を持ってすれば頭の中でことが足りるゆえに使い慣れていないなどといった事態はドクター・コレクターには起こりえない。

 

 

 つまりアクターが戦うのは「ドクター・コレクター以外は誰も知らないデッキ」だ。

 

 ゆえに互いの条件は同じ。

 

――クククッ、アンタが勝ち続けられたのは相手の情報を全て握っていたゆえ!

 

 

 そしてドクター・コレクターは手札を整えるべくカードをデュエルディスクに差し込む。

 

「まずは魔法カード《手札抹殺》を発動! 互いに手札を全て捨て、捨てた枚数だけドローだ! 私は5枚捨て、5枚ドロー!!」

 

 ドクター・コレクターが墓地に送るカードをその超人的な視力で捉えるアクター。

 

 ドクター・コレクターが墓地に送ったのは《コスモクイーン》・《黒魔導師クラン》・《マジシャンズ・ヴァルキリア》・《ヂェミナイ・エルフ》・《シャッフル・リボーン》の5枚。

 

 

――原作にて使われていたカード……原作では除外ギミックを使っていたが、ここでは《次元融合》は禁止カード…

 

 アニメGXにてドクター・コレクターは自身のカードを除外し、除外されたモンスターを任意の数だけ特殊召喚できる《次元融合》を使い大量にモンスターを展開する戦術をとっていた。

 

 だが今ではルール整備が徹底されたゆえに《次元融合》はOCGと同じく通常のデュエルでは使用できない禁止カードである。

 

 

「5枚捨て、5枚ドロー」

 

 それゆえにドクター・コレクターのデッキを考察しながら手札を入れ替えるアクター。

 

 しかし、その内面に有るのは圧倒的感謝!!

 

 何故なら入れ替える前のアクターの手札は全て緑一色、魔法カードのみである――しかも現状半数が使えないカード。

 

 アクターは相変わらず手札がそれなりに事故っていた。

 

 しかし結果的に手札事故をドクター・コレクターに解消してもらったのだ! そう! 手札に召喚できるモンスターがいる安心感に浸っていた!

 

 

 そんなアクターの内心の歓喜などしるよしもなくドクター・コレクターはデュエルを進行する。

 

「そして《マジカル・コンダクター》を召喚!」

 

 緑のローブを纏った黒い長髪の女性が光と共に静かに現れその目をスッと開いた。

 

《マジカル・コンダクター》

星4 地属性 魔法使い族

攻1700 守1400

 

 

 召喚されたモンスターをフルフェイスの仮面の内側で見つつ思案するアクター。

 

――魔法使い族デッキなのはほぼ確定。しかし原作では使用しなかったカード……魔力カウンター軸? いや、この段階で断定するのは危険か……

 

「では早速行かせて貰おう! フィールド魔法! 《魔法族の里》!!」

 

 ドクター・コレクターの背後から木々が伸び、やがて森となって周囲を覆う。

 

 そして空からは暖かな木漏れ日が漏れ、《マジカル・コンダクター》を照らしていた。

 

「このカードが存在し私のフィールドにのみ魔法使い族モンスターがいる時! 貴様は魔法カードを発動できない! もっとも私のフィールドから魔法使い族モンスターがいなくなればその効果は私が受けるがな……」

 

 周囲の木々は魔法使い族以外を拒絶するかのように脈動する。

 

「そしてこの瞬間《マジカル・コンダクター》の効果が発動!」

 

 《マジカル・コンダクター》の周囲に光の球体がフワフワと浮かぶ。

 

「お互いが魔法カードを発動する度に、自身に魔力カウンターを2つ置く!!」

 

 その光の球体は魔力カウンター。

 

 《マジカル・コンダクター》が魔法カードによって発生した魔力を集めたものだった。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:0 → 2

 

「さらに永続魔法《魔法族の聖域》を発動!」

 

 《魔法族の里》の地面から石造りの廃墟となった祈りの場が現れる。

 

「このカードは私のフィールドのみに魔法カードが表側表示で存在する場合に発動でき――」

 

 その《魔法族の聖域》は《魔法族の里》への侵入を阻む結界となる。

 

「このカードがある限り魔法使い族以外のモンスターを貴様が召喚・特殊召喚したとしてもそのターンそのモンスターは攻撃も効果の発動もできん!」

 

 これにより《マジカル・コンダクター》は守られ、さらに《マジカル・コンダクター》が守られることで《魔法族の里》の効果も遺憾なく発揮される。

 

「尤も私のフィールドに魔法使い族モンスターがいなくなれば自壊してしまうがな……」

 

 ドクター・コレクターはそう言いつつも破壊はさせるつもりはないと鼻をならす。

 

「さらにコイツも発動しておこう――永続魔法《フィールドバリア》!!」

 

 《魔法族の里》を透明なバリアが覆っていく。

 

「これで《魔法族の里》は早々破壊できまい! そして新たに2枚の魔法カードが発動された――よって! 《マジカル・コンダクター》に魔力カウンターを乗せる!!」

 

 そして新たな2枚の魔法カードの魔力により《マジカル・コンダクター》の周囲にさらに4つの球体が浮かび、その数を6つに増やした。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:2 → 4 → 6

 

「そして《マジカル・コンダクター》の効果を発動!!」

 

 《マジカル・コンダクター》の周りをクルクルと回る魔力カウンター。

 

「自身に乗せられた魔力カウンターを任意の数取り除き、その数と同じレベルの魔法使い族モンスターを手札・墓地から呼び出す!」

 

 《マジカル・コンダクター》は空中に陣を描き始める。

 

「《マジカル・コンダクター》の魔力カウンターを4つ取り除き――」

 

 そしてその陣に4つの魔力カウンターが吸い込まれるように飛び去った。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:6 → 2

 

「――墓地より甦れ! 《マジシャンズ・ヴァルキリア》!!」

 

 《マジカル・コンダクター》の描いた陣を背に水色を基調にした魔力の衣を纏い、魔法使いらしい円錐状の帽子を被った女性がその長い茶の髪を揺らしつつ杖を構える。

 

《マジシャンズ・ヴァルキリア》

星4 光属性 魔法使い族

攻1600 守1800

 

「フフフ……だが安心するんだな! 《マジカル・コンダクター》の効果は1ターンに1度のみ、このターンこれ以上モンスターが並ぶことはない――カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

 盤石の布陣を敷いたドクター・コレクターは己の有利を確信し内心で笑う。

 

 

 このデュエルに勝利し「役者(アクター)を倒した」事実があれば犯罪者であるドクター・コレクターであっても手元に置いておこうと考える人間は出てくる筈だ、と。

 

――フッ、もしそうなればこの面倒な逃亡生活ともおさらば出来るというものだ。

 

 

 そんな輝かしい未来を見据えるドクター・コレクターを余所にアクターは相手のデッキの中身を推理していく。

 

 

――魔法使い族軸の行動ロック? 魔力カウンター系も混ぜたのか? 原作で使っていた《黒魔導師クラン》も墓地に送られた……ロックバーンしつつビートダウンするデッキ?

 

 結果的に確実に言えるのは「魔法使い族を主軸にし、色々と盛り込んだデッキ」ということ――ハッキリ言って詳しい内容はこの時点ではアクターには判断できていない。

 

 しかし己には回せないようなデッキであることだけは悲しいほどに理解できていた。

 

「私のターン、ドロー」

 

 アクターは引いた手札とドクター・コレクターの《手札抹殺》で入れ替わった手札を見る。

 

 珍しいことに自身の1ターン目でかなり動けそうだった。

 

「《魔導書士 バテル》を召喚」

 

 水晶がはめ込まれた丸い青い帽子と青色ローブを身に纏った魔導士がとぼけた顔で左手に持った魔導書のページをパラパラめくる。

 

《魔導書士 バテル》

星2 水属性 魔法使い族

攻 500 守 400

 

「このカードの召喚時にデッキから『魔導書』魔法カード1枚を手札に加える――《グリモの魔導書》を手札に」

 

 そして魔導書のあるページを開き、頭に指をあて念じると魔導書から光があふれアクターの手札にカードが1枚加わった。

 

 

 その召喚されたモンスターを見てドクター・コレクターは内心で歯噛みする。

 

――クッ、ヤツが使ったのは魔法使いデッキだったか……

 

 これでは《魔法族の里》や《魔法族の聖域》の相手の行動を阻害するロックカードは意味をなさない。

 

 

 しかしドクター・コレクターにとって嬉しい誤算もある

 

――「『魔導書』魔法カード」との言葉、どうやら魔法カードを多用するデッキのようだ……なら魔力カウンターはかなり溜まる筈だ……

 

 《マジカル・コンダクター》は相手の魔法カードに対しても魔力カウンターを乗せることができる。

 

 それゆえにドクター・コレクターは互いのデッキの相性は決して悪くないと結論付けた。

 

 

 そんなドクター・コレクターの思惑に乗るように魔法カードを発動させるアクター。

 

「永続魔法《魔導書廊エトワール》発動」

 

 《魔法族の里》の対面にいくつもの柱のようなものが地面からせり上がり、その空を夜の闇で満たす。

 

「だが貴様が魔法カードを発動したことで《マジカル・コンダクター》に魔力カウンターが乗る!」

 

 その暗がりを嫌うように《マジカル・コンダクター》の周囲に新たな魔力の光が灯った。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:2 → 4

 

「魔法カード《グリモの魔導書》を発動。デッキから《グリモの魔導書》以外の『魔導書』カードを1枚手札に加える――《セフェルの魔導書》を手札に」

 

 薄く紫に発光する《グリモの魔導書》が空中で開き、その力を以てしてさらなる魔導書を引き寄せる。

 

「やはり魔法カードを多用するデッキのようだな! 魔法カードの発動により《マジカル・コンダクター》に魔力カウンターが乗る!」

 

 己の予想通りの結果にドクター・コレクターは満足しつつ《マジカル・コンダクター》に更なる魔力を灯させる。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:4 → 6

 

「『魔導書』と名のついた魔法カードが発動したことで永続魔法《魔導書廊エトワール》に魔力カウンターが1つ乗る」

 

 だが《魔導書廊エトワール》によって齎された深い夜の空に一つの魔力カウンターが星のように煌いた。

 

《魔導書廊エトワール》

魔力カウンター:0 → 1

 

「フッ、互いに魔力カウンターを使用するデッキか……とんだミラーマッチになったものだ」

 

 様々な言葉を投げかけ揺さぶりをかけるドクター・コレクターだがアクターは気に留める様子もなく淡々とデュエルを続けていく。

 

「自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する為、魔法カード《セフェルの魔導書》を発動」

 

 フィールドに現れる新たな魔導書。

 

「効果により手札の他の『魔導書』魔法カード――《ゲーテの魔導書》を見せ、《セフェルの魔導書》以外の墓地の『魔導書』通常魔法カード1枚の効果を得る」

 

 そしてその《セフェルの魔導書》が開かれるとともに黒い霧のようなものが溢れ、異なる空間へと伸びていく。

 

「墓地の《グリモの魔導書》の効果を得る。そしてデッキから《アルマの魔導書》を手札に」

 

 次々と発動される魔法カードにドクター・コレクターはほくそ笑む。

 

「フハハッ、いいのか? そんなに不用意に魔法カードを発動して! 私の《マジカル・コンダクター》に魔力カウンターがどんどん溜まっていくぞ!」

 

 そのドクター・コレクターの言葉に呼応するように《マジカル・コンダクター》を覆い隠す程に魔力カウンターが溢れていく。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:6 → 8

 

「『魔導書』と名のついた魔法カードが発動したことで永続魔法《魔導書廊エトワール》に魔力カウンターが1つ乗る」

 

 空に魔力カウンターの星がさらに一つ煌く。

 

《魔導書廊エトワール》

魔力カウンター:1 → 2

 

「自分フィールドの魔法使い族モンスター《魔導書士 バテル》をリリースし、手札から《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を特殊召喚」

 

 《魔導書士 バテル》が跪き、その身を光に変え大地に魔法陣を描く。

 

 そこから白い長髪を白い魔法使いらしい帽子に収め、どこか修道服を思わせる青と白の法衣を纏った魔法使いが現れた。

 

 そして先端が剣のようになっている小振りな杖を背の後ろに構える。

 

《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

星4 光属性 魔法使い族

攻1000 守1000

 

 モンスターを1体リリースしてまで呼び出したモンスターの攻撃力は僅か1000。

 

「御大層に現れたようだが、どのみち攻撃力は私のモンスターには及ばない!」

 

 それゆえにドクター・コレクターはそこからどうすると様子を窺いつつ挑発する。

 

「永続魔法《魔導書廊エトワール》により自分フィールド上の魔法使い族モンスターの攻撃力は、このカードに乗っている魔力カウンターの数×100アップする」

 

 夜空に輝く魔力カウンターの2つが《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を照らす。

 

「《魔導書廊エトワール》に乗った魔力カウンターは2つ、よって200ポイント攻撃力が上昇」

 

 照らされた光によって攻撃力が上昇するが――

 

《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

攻1000 → 攻1200

 

 その数値は僅か200――あってないようなものだ。

 

「フハハハ! 足りん、足りんな! まったくもって攻撃力が足りんぞ!」

 

 ゆえにドクター・コレクターは嘲笑をもって返した。

 

「《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》の攻撃力は自身の手札の数×500上昇」

 

 だがそのドクター・コレクターの笑いを遮るように《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》は杖を天に掲げる。

 

「私の手札は4枚――よって攻撃力が2000ポイント上昇」

 

 するとその杖に魔力が満ちていき白く光り輝く。

 

《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

攻1200 → 攻3200

 

「ほう、攻撃力を3200まで上げたか……だが《マジシャンズ・ヴァルキリア》がいる限り私の《マジカル・コンダクター》に攻撃は届かん」

 

「バトルフェイズ、《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》で《マジシャンズ・ヴァルキリア》を攻撃」

 

 ならば順番に片付ければいいだけだと《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》の杖から放たれる一撃が《マジシャンズ・ヴァルキリア》に迫るが――

 

「だが! 私の《マジシャンズ・ヴァルキリア》に易々と手が届くと思うな! 魔法使い族の攻撃宣言時に罠カード《マジシャンズ・サークル》を発動!!」

 

 その一撃は六芒星の描かれた魔法陣が盾となって防ぐ。

 

「互いのプレイヤーは、それぞれ己のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚しなければならない!!」

 

 その場でクルクルと回転する《マジシャンズ・サークル》。

 

 

 当初の予定ではドクター・コレクターの魔法使い族の攻撃宣言時に発動する予定だった。

 

 だがアクターも魔法使い族のデッキを用いた為、より早く使用出来るようになった事実にドクター・コレクターは満足気だ。

 

「私が呼び出すのは当然――2体目の《マジシャンズ・ヴァルキリア》!!」

 

 そして《マジシャンズ・サークル》から1体目の《マジシャンズ・ヴァルキリア》に向かって2体目の《マジシャンズ・ヴァルキリア》が飛び出す。

 

《マジシャンズ・ヴァルキリア》

星4 光属性 魔法使い族

攻1600 守1800

 

「これで2体の《マジシャンズ・ヴァルキリア》の他の魔法使い族モンスターを攻撃対象にできない効果が重複し! 貴様は攻撃することすら出来ん!!」

 

 その2体の《マジシャンズ・ヴァルキリア》は互いに杖を交差させ、あらゆる攻撃を許さぬ強固な結界を生み出した。

 

 

 そんな攻撃自体が封じられた状況だが当のアクターは《マジシャンズ・サークル》の発動をありがたがっていた。

 

 

 それは手札に他のモンスターもおらず呼ぶ当ても今の所なかった為、追加でモンスターを呼べるのはアクターにとって願ったりかなったりなゆえに。

 

「私はデッキより《魔導教士 システィ》を特殊召喚」

 

 そして《マジシャンズ・サークル》から緑の法衣を纏った魔法使いが右手に青い剣のような、左手に黄金の天秤を思わせる道具をそれぞれ持って魔法使いの一団と対峙する。

 

《魔導教士 システィ》

星3 地属性 魔法使い族

攻1600 守 800

 

 

 しかしドクター・コレクターの攻撃ロックによってこれ以上の追撃ができない。

 

 だが気がかりだったドクター・コレクターのセットカードも消えた今、自由に展開できるとアクターは内心で一安心だと胸を撫で下ろす。

 

「バトルを終了し、手札から魔法カード《ルドラの魔導書》を発動」

 

 そして更なる魔導書が天より顕現する。

 

「このカード以外の手札・フィールドの『魔導書』、もしくは魔法使い族モンスター1枚を墓地に送りデッキから2枚ドローする」

 

 その《ルドラの魔導書》に《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》と《魔導教士 システィ》は手をかざし、その力を解き放とうとするが――

 

「さらにその効果にチェーンして速攻魔法《ゲーテの魔導書》を発動」

 

 さらに新たな魔導書がその力に割り込むように現れる。だが魔術師たちは問題なく魔導書の力を制御下においた。

 

「墓地の『魔導書』魔法カードを3枚まで除外し、除外した枚数で効果を適用する」

 

 そしてチェーンの逆処理により《ゲーテの魔導書》の力が先に発揮される。

 

「私は墓地の《魔導書院ラメイソン》・《ヒュグロの魔導書》・《セフェルの魔導書》の3枚を除外して――」

 

 宙に浮かぶ3枚の魔導書カードが時空に吸い込まれるようにその姿を消し――

 

「相手フィールド上のカード1枚を選んでゲームから除外する効果を適用――《フィールドバリア》を除外」

 

 それを贄として取り込んだ《ゲーテの魔導書》から放たれた3つの光が《フィールドバリア》を打ち抜いた。

 

「そしてチェーンの逆処理により《ルドラの魔導書》の効果が適用され、今フィールドに出た《ゲーテの魔導書》を墓地に送り2枚ドロー」

 

 役目を終えた《ゲーテの魔導書》を取り込んだ《ルドラの魔導書》の魔力はアクターの手札に光となって加わった。

 

 

 除外された《フィールドバリア》を余所にドクター・コレクターは思わず呟く。

 

「実質手札損失なしか……いやそれよりも……」

 

――何故《ゲーテの魔導書》で《マジシャンズ・ヴァルキリア》を除外しなかった?

 

 内心でそう考えざるを得なかった。

 

 

 速攻魔法ゆえにバトルフェイズ中でも発動でき、そうしていればドクター・コレクターのモンスターに追撃を掛けることも出来た筈である。

 

 

 しかしその答えは直ぐに判明する。

 

「魔法カード《アルマの魔導書》を発動。除外されている『魔導書』魔法カードを手札に加える。《魔導書院ラメイソン》を手札に」

 

 新たに発動された魔導書によって異次元のゲートが開き、そこからカードが1枚アクターの手札に加わる。

 

 

 そのカードは「ドロー効果」を持ったフィールド魔法。

 

 そう、アクターは追撃よりもドローを欲したのだ――早い話が手札事故を未だに恐れているのだ。

 

 少々情けない理由である。

 

「そして手札に加えたフィールド魔法《魔導書院ラメイソン》を発動。新たなフィールド魔法が発動されたことで《魔法族の里》は破壊される」

 

 《魔法族の里》を囲む木々をなぎ倒し、塔のような建造物が現れた。

 

 その建物の先にはアンテナのようなものが立ちその周囲に大きな円が魔力によって描かれる。

 

「4枚の『魔導書』魔法カードが発動したことでフィールド上の魔力カウンターを置く効果を持つカードにそれぞれ魔力カウンターが乗る」

 

 そして思案にふけるドクター・コレクターの代わりに魔力カウンターが乗る旨を説明するアクター。

 

 《マジカル・コンダクター》の周囲に浮かぶ魔力カウンターの数はかなりのものとなり、もはや《マジカル・コンダクター》の姿はアクターの側からは窺えない。

 

《マジカル・コンダクター》

魔力カウンター:8 → 10 → 12 → 14 → 16

 

 さらに空に魔力カウンターが星のように煌く。数が増えたせいなのか魔力カウンターが星座を描き始めていた。

 

《魔導書廊エトワール》

魔力カウンター:2 → 3 → 4 → 5 → 6

 

「カードを2枚セットしてターンエンド」

 

 ターンエンドが宣言されたゆえにドクター・コレクターはデッキに手をかけるが、それを遮るようにアクターが言葉を放つ。

 

「手札の枚数と《魔導書廊エトワール》の魔力カウンターの数の変化により《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》の攻撃力が変化」

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》の杖が光輝いたり陰ったりなど目まぐるしく変わり、やがてほどほどの光で落ち着いた。

 

《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

攻3200 → → → 攻2100

 

「さらにエンド時に《魔導教士 システィ》の効果を発動。『魔導書』魔法カードを発動した私のターンのターン終了時にフィールド上の自身をゲームから除外」

 

 《魔導教士 システィ》が武具を持った両の手を広げ、天へと昇っていく。

 

「そしてデッキから光属性または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体と、『魔導書』魔法カード1枚を手札に加える――私は光属性・レベル7の《魔導法士 ジュノン》と魔法カード《グリモの魔導書》を手札に」

 

 そして天から2枚のカードがアクターの手札に加わった。これでアクターの手札は4枚。

 

「手札の枚数が増えたことで《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》の攻撃力が上昇」

 

 再び光り輝く《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》の杖。

 

《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

攻2100 → 攻3100

 

 

 あれ程の魔法カードを発動し、魔法・罠ゾーンのカードも豊富にも関わらずアクターの手札は3枚。

 

 

 その事実にドクター・コレクターの背に嫌な汗が流れた。

 

 

 だがそんな彼は気付かない――その程度は些細な問題なことに。

 

 

 






今作でもOCGと同じく速攻魔法《魔導書の神判》は禁止カード扱いになっております




相手の不調(手札事故)を察して

互いに全力でデュエルできるように
自身の戦略に
《手札抹殺》と《マジシャンズ・サークル》を組み込み発動した

ドクター・コレクターはデュエリストの鏡!(そんな訳がない)

これはプロやわ…… (* - ω - ) ウンウン



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