魔導騎士ギルティア「私だけメッチャ殴られたんですけど……」
攻撃力1800ラインたち「「それが50ポイントの差だよ」」
デュエルの終わりと共にソリッドビジョンが消えていき、城之内と本田はデュエルディスクを待機状態へと移行させる。
そしてデュエルの終了と共に公園の周囲にいた観客たちは各々にこの2人のデュエリストに声援を送る。
「スゲー! これが
「凄かったぞー!
「角刈りの坊主も惜しかったなー!」
老若男女入り混じる様々な声援に、城之内と本田は手を振りながら遊戯たちの元へゆっくりと戻った。
そして周囲の喧騒も落ち着きを見せた頃、本田は頭をかきながら言葉を零す。
「いやぁ~負けちまったぜ。途中まではイイ線いってたんだけどな~」
そこには本田の「悔しさ」の感情が読み取れた。
そんな本田に牛尾が溜息を吐きながら返す。
「まぁ《ロケットハンド》の効果をちゃんと理解してたら――もう少し粘れただろうがな」
「えっ? なんでだよ?」
牛尾が師匠として本田のプレイミスを指摘するが、弟子である本田の方はまだ理解していない。
「……自分の使うカードがどんな効果持ってるか、ちゃんと把握しとけって言っただろ?」
「え~と? どっか間違ってたか?」
「本田君。《ロケットハンド》は表側だったら魔法・罠カードも破壊できるんだよ?」
そんな本田に《ロケットハンド》の効果を説明する遊戯。
「マ、マジかよ! だったら《死力のタッグ・チェンジ》を破壊しときゃよかったぜ……アレのせいで城之内のモンスターが全然減らなかったしな……」
自身のプレイミスに気付いた本田はデュエリストあるある「あの時ああしていれば……」を味わうが若干目の付け所が悪い。
そして城之内は《ロケットハンド》の効果を正確に知って冷汗を流す。
「そんな効果だったのかよ……危ねぇとこだったぜ。でもよぉ本田、破壊するなら《凡骨の意地》の方が良いぜ。《死力のタッグ・チェンジ》は手札にモンスターがいねぇと使えねぇからな」
ついでに本田にアドバイスを送る城之内。
「そういやそうだったな……」
そうなのだ、本田。
そんな本田の抜けているところを見た師である牛尾は頭を抱える。
「はぁ~地力の違いがモロに出た感じだな」
「おうよ! この城之内様は日々進化を続けてんのさ!」
本田の師匠、牛尾の見解に何故か城之内の方が鼻高々だ。
「へ~城之内も大分強くなってるのね~」
そう言いつつ杏子は思う。過去、デュエルを始めたばかりの頃は杏子にボロ負けしていた城之内の姿が嘘のようだ。
「じいちゃんとの特訓の成果だね! 城之内君!」
「ああ! じいさんには改めて感謝しとかねぇと!」
城之内の師匠、双六との修練の日々が城之内を着実に前へと押し進めていた。
「まぁ今回は俺が負けちまったが、やっぱりデュエルって楽しいもんだな」
「だろ! こっからもっと楽しくなるぜ!」
満足気な本田に城之内はデュエルの明るい今後に太鼓判を押す。
そんな城之内に賛同しつつ、本田はデュエルディスクから自身のデッキを取り出し、デュエルディスクを元の持ち主、牛尾に返却する。
「よっと、牛尾! デュエルディスクありがとな!」
「何、良いってことよ」
デュエルディスクを受け取り、ガンマンのように腰元のホルダーに収納した牛尾。
それを目で追いかける城之内。
「おお! なんだよそれ! カッコイイじゃねぇか!!」
端的に言って男のロマンが詰まっている動作だった。
「いや、オメェのデュエルディスクにも付属品として付いてんだろ?」
「本当か!」
牛尾の呆れた視線を余所に箱をひっくり返し、目当てのブツを探し始める城之内。
ちなみにこのデュエルディスク収納用のホルダーだが――
原作にて城之内がデュエルディスクを付けたまま牛丼をかっ込み周囲の人間が迷惑していたこと、
そしてその後、周囲の人間から注意を受けて城之内が隅に置いておいたデュエルディスクが盗難にあったエピソードがある。
その一件を覚えていた神崎がそういった迷惑にならないよう、そして盗難予防の為に制作を依頼したものである。
既にKCでは採用されており別バリエーションを望む声も多い。
「おお! これか!」
目当ての収納用ホルダーを見つけ、早速試す城之内。
カッコイイ動きを研究しているようだ。
そんな中、杏子は思わず牛尾に尋ねる。
「そう言えば……牛尾君も『デュエルディスク』持ってるけどデュエリストレベルっていくつなの? ひょっとしてKCで働いたら貰えたりする?」
「ん? 他は知らねぇが、俺んとこの部署はその手の贔屓は絶対にねぇよ。それと俺のデュエリストレベルは『7』だ」
明かされたデュエリストレベルにキメポーズを練習していた城之内は思わず固まり、しばらくして復帰する。
「なぁに! 俺よりも高いのか!」
城之内のデュエリストレベル「6」よりも一つ高い。
「やっぱ強かったんだなぁ……さすが俺の師匠」
本田もデュエルの教えを受けた身としてウンウンと感慨深く頷いている。
「いや、こんなレベルなんて目安に過ぎねぇよ。本田とデュエルした城之内、お前が一番分かってる筈だぜ?」
「そうだよ、城之内君。目に見えるものだけが全てじゃないよ」
牛尾と遊戯の言うとおりだった。
デュエリストレベルの更新は大会で結果を出すことや、プロ資格の為の認定試験などを受けた際に更新されることが多い。
ゆえに自発的にそういったものを受けない限りそうそう更新されないため、あくまで目安である。
デュエリストレベルの低いものが高いものを倒すことは大して珍しくない。
「『見えるんだけど、見えないもの』か……でもよ、男って生き物は比べちまうもんなんだよ――ってことで勝負だ! 牛尾!」
だが自身が知らぬ強者がいるのなら挑みたくなるのが男の性である。
ゆえに城之内は牛尾にデュエルを挑むが――
「いや、そろそろ日も暮れるから1回帰った方が良いだろ――それにデッキを見直すんだろ?」
正論には勝てなかった。
「それもそうね。牛尾君とのデュエルはまた今度にしときなさい、城之内」
そんな杏子の言葉により一同は解散する。
そうして帰る頃には日も沈んでいった。
――かに思われたが、杏子を除いたヤロウどもは遊戯の部屋に集合していた。
新しいカードの存在に後日まで待てなくなった城之内により、徹夜でデッキの見直しが提案されたためである。
そして遊戯の部屋でペガサスから送られてきたカードを並べて見比べる一同。
遊戯の祖父、双六は寄る年波には勝てぬと既に就寝済みだ。
「へ~やっぱ色んなカードあんな~ よしっ! コイツならこのカードとイイ感じだな!」
新たなカードと現在持っているカードを見比べながら大きくデッキを組み直していく城之内。
「つい、目移りしちゃうね!」
遊戯もペガサスから送られてきたカードを吟味する。だが城之内とは違い今のデッキを大きく崩さないようだ。
そして本田も見たことのないカードにテンションが上がりっぱなしである。
「スゲェ強そうなカードが盛りだくさんだな! おお! これとかカッコイイじゃねぇか!」
「それは止めとけ、オメェのデッキは『融合召喚』が胆だろ。使うとするなら――まぁ城之内が貰ったカードになるが、こっちだな」
若干暴走気味な本田にアドバイスを送りつつ、なだめる牛尾。
だがそのカードに城之内は見覚えがあった。
「おっ! コイツ――キースが使ってたカードと似てるな!」
「確かにこのカードなら本田君のデッキにピッタリだね!」
そのカードは融合モンスターをサポートするカード。
キースの使っていたモンスターとよく似た姿をしている。
「ならトレードしようぜ! 本田!」
「……でも良いのかよ、城之内? これ、ペガサス会長から貰ったカードだろ? お宝になるんじゃねぇか?」
軽く告げられた城之内の提案。
本田としては嬉しい限りだが、ペガサスが城之内の為に選んだカードであるため本田は気が引けるようだ。
「つまんねぇこと気にすんなよ、本田! このカードだって誰かと一緒に活躍できる方が嬉しいに決まってんだろ?」
「城之内……」
そんな城之内の真っ直ぐな言葉に思わず目頭が熱くなる本田。
牛尾はそんな城之内の想いに応えるように本田の持つ1枚のカードをトレードのカードに提案する。
このカードなら城之内の力になってくれると信じて。
「なら本田の持ってるコイツとトレードしたらどうだ? 城之内、オメェも『融合召喚』使うんだろ? なら役に立つはずだ」
「おお! いいじゃんか! ならトレード成立だぜ、本田!」
「おうよ!」
城之内と本田は互いに熱い握手と共にカードを交換する。
互いに満足顔だ。
そうしてデッキ構築が進んでいき、遊戯と城之内のデッキは新しく生まれ変わっていった。
だが大まかなデッキ構築を終えた城之内が眉間に皺をよせ難しい顔で首を傾げる。
「しっかし、新しくデッキを組み直したものの、遊戯から貰ったコイツが合わなくなっちまったなぁ……今まで世話になってきたしどうにかしてやりたいんだが……」
それは《凡骨の意地》のカード――その効果はドローフェイズ時に通常モンスターをドローした時、追加でドロー出来る効果。
このカードはこれまで何度も城之内のピンチを救ってくれたカードだ。
しかし新しい城之内のデッキの通常モンスターの割合が減ってしまったため、《凡骨の意地》の効果を活用し難い。
だがこれは親友、遊戯が託してくれたカードゆえに蔑にはしたくない思いが城之内にはある。
そんな悩める城之内に元の持ち主、遊戯が提案する。
「そうだ! 本田君! この城之内君のカード受け取ってくれないかな? 本田君のデッキにピッタリだし!」
「そうだな。本田のエースを呼び出す助けにもなるからな、かなりガッチリ合うカードだ」
本田のデッキと相性はいいと太鼓判を押す牛尾。
「おお! 遊戯から貰ったカードが俺を通じて本田の元へ! 俺たちの『友情』みてぇでいいじゃねぇか! 受け取ってくれよ、本田!」
その受け継がれていく
そしてそんな仲間たちの友情に本田の涙腺は決壊する。
「くぅ~あんがとよ! 遊戯! 城之内! 牛尾!」
見事な男泣きだった。
暫くして男泣きを終えた本田を軽く茶化す牛尾。
「ハハッ、見事な泣きっぷりだったぜ」
「何か俺だけ恥ずかしい思いしちまったじゃねぇか……」
「まあまあ、本田君も落ち着いて」
ワザとらしく怒っているアピールをする本田をなだめる遊戯。そんな遊戯をチラりと見た本田はニヤリと笑う。
「だったら、遊戯! クラスのヤツが言ってたんだけどよ――杏子とデートしてたらしいじゃねぇか!」
「ええっ! どうしてそれを!」
本田の言葉に何故知っているのか驚く遊戯。
そしてそんな遊戯に牛尾は溜息を吐きながら話す。
「……遊戯。オメェはそろそろ自分が有名人だってことをキチンと自覚した方が良いぜ?」
「そうなの?」
「全米チャンプを首の皮一枚まで追いつめたんだ。当たり前だろ……」
牛尾の言葉に疑問を返した遊戯だが、牛尾からすれば何をいまさらなことであろう。
そして沈黙を守っていた城之内が起動した。
「おお、ついにか! それでどうだったんだよ!」
親友のめでたい祝うべき事柄である。城之内は自身のことのように喜び、続きを促す。
「ボクじゃなくて、もう一人のボクとなんだけど……博物館に行ったりして――」
そうして遊戯は恥ずかしげに杏子とのデートの内容を話していく。
それに城之内や本田は興味深々である。
だがその話の途中で牛尾はあることを思い出した。
「んんっ?」
「どうしたよ、牛尾?」
「いや、ついこの間、KCにレベッカの嬢ちゃんと遊戯が仲良さげに来てたって話があった気が――」
その話は竜崎から牛尾に語られたもの、竜崎の主観ではあるが「付き合っているように見えた」と聞いている。
「おいおい、遊戯――ひょっとして二股かぁ?」
城之内が冗談めかして問いただす。
だが当然城之内たちは遊戯がそんなことをするとは思ってはいない――ただのからかい目的である。
「あれはまだこっちに慣れてないレベッカが案内してほしいって頼まれちゃってホプキンス教授の《青眼の白龍》を持ってる海馬君に会いに行っただけだから! でも会えなかったけど……」
城之内と本田にからかわれ、慌てて弁解する遊戯。
「どうだろうなー、城之内ー?」
「どうだろうなー、本田ー?」
しかしその言い方だと言い訳のように聞こえてしまうため、より2人のからかいは続く。
困った遊戯は牛尾に助けを求めるような視線を送り、それに応えた牛尾が助け舟を出す――牛尾のマッチポンプな気がするが、それは置いておこう。
「そういや本田。オメェは城之内の妹さんに夢中みたいだが――野坂のヤツとはどうなったんだ?」
牛尾の言う野坂こと「野坂ミホ」は青い薄紫の髪色に長いポニーテールで黄色いリボンがトレードマークの遊戯のクラスメートの女子生徒。
本田が恋していた筈だったと牛尾は思い出す。
「あっ! そうだぜ、本田! 静香に近づくなとは言わねぇが、そこら辺はしっかりしとけよ!」
今まで遊戯に向いていた城之内の矛先が本田へと向きを変えた――ホッと溜息を吐く遊戯。
「いや、それなんだけどよ……」
本田は思わず言い淀む。無理もない。何故なら――
「なんだ? 振られたのか? まぁ野坂の嬢ちゃんは獏良のヤツにお熱だからな」
「牛尾ォ……そこはもうちっとオブラートに包んで言ってくれよぉ!!」
「ってことはやっぱり振られちゃったんだね」
遊戯の言うとおり、悲しいことに本田の初恋は砕け散っていた。
その時の絶望は計り知れないであろう。
「……くっ、その通りだぜ、遊戯……俺はもう恋なんてコリゴリだ! ってその時は思ったんだが――」
「城之内の妹さんに惚れちまったと」
「おうよ! あんないい子はそうはいねぇ!」
自信を持って新たな恋に目覚めていた本田。
だが牛尾は冷静に今の本田と静香の状況を推察する。
「まぁ、望み薄だろうけどな。向こうの方はオメェを『兄の友人』くらいにしか見てなさそうだったしよ」
「いーや! 俺は諦めねぇぜ!」
「本田君、城之内君の前であんまりその話は――」
再び沈黙を続けている城之内に遊戯は慌てて本田と牛尾を止めようとするが、
城之内は勢いよく本田に詰め寄り言い放つ。
「いや! 俺は止めねぇぜ、本田! だがよぉ! もし静香を悲しませるようなことすりゃあ許さねぇからな!!」
「城之内! ってことは俺のこと応援してくれんのか!!」
兄である城之内が自身の恋を応援してくれるのだと期待の眼差しで城之内を見つめる本田だが――
「いや、応援はしねぇ」
「そこは応援しないんだ……」
きっぱりと断りを入れる城之内。その一刀両断な有様に遊戯も思わず声を漏らす。
だが城之内にも城之内なりに妹、静香のことを案じてのことだった。
「そういうことは静香が自分で決めることだからな! さすがにおかしなヤツが相手だったらぶっ飛ばすけどよ」
「まぁ何はともあれよかったじゃねぇか、本田。後はオメェが頑張るだけだ」
城之内のお許しに、本田にデュエルの師としてその恋のアタック作戦に巻き込まれた牛尾も頑張れと本田の肩を軽く叩いた。
「ああ! ――だけどよ、牛尾。オメェの周りでそう言う話はねぇのか? 俺らばっか話すのはフェアじゃねぇだろ?」
そんな牛尾の応援に元気よく答えた本田だが、先程の意趣返しなのか今度は牛尾に
「あっ! それはボクも聞いてみたい!」
「俺もだ! 学校ではその手の話は聞かねぇから KCでのことで頼むぜ!」
遊戯と城之内も普段の牛尾から
「お、おう、つっても俺のいる部署はヤロウばっかりだからな……あんまりそういう話は出てこねぇぜ?」
そんな遊戯たちの勢いに引き気味で対応する牛尾――徹夜のせいか一同のテンションは若干おかしい。
「それでも構わないよ!」
「なら…………まずはコレを見て見な」
牛尾はガサゴソとタブレット端末を取り出し、操作。そしてその画面を遊戯たちに見せる。
「なぁにこれぇ?」
「最近入ってきたヤツラと歓迎会した時の写真データだ」
疑問を見せる遊戯に牛尾は写真データをパラパラめくり、全員の集合写真のところで止め、機械関連に理解がある本田に手渡す。
「あ~確かにヤロウばっかりだな、って竜崎じゃねぇか!!」
城之内は本田の横からその集合写真を眺めていると見知った顔を見つけ、若干テンションが上がった。
「ああ、そいつは最近来た新人だ」
「確か羽蛾君もいるんだよね――あっ! いた!」
「後の新人はこのデカくてゴツいヤツ――『アヌビス』っつう外人さんだ」
牛尾の説明を貰いつつ、集合写真を眺めていく一同。
何と言うべきか、その集合写真に写る面々は色々と濃いめの人たちだった。
当初の目的を忘れつつ、牛尾の同僚たちを眺める遊戯たち。
「あっ! この人、この前レベッカとお世話になった北森さんだ!」
だが遊戯が見知った顔の鼻眼鏡の女性の名を上げるとともに城之内は本来の目的を思い出す。
「おお! 出かしたぜ、遊戯! ってことで牛尾!」
タブレット端末に釘付けだった一同は一斉に牛尾を見やる――何が彼らを此処まで駆り立てるのか……
「いや、そうは言っても北森の嬢ちゃんとは何もねぇんだが……
おずおずと牛尾は語りだす。だが牛尾自身、そして牛尾の同僚も恋だの愛だのといった話とはとことん縁がない。
「それに俺のいる部署ではあんまり恋愛がどうこうの話は聞かねぇ――デュエリストが多いせいか大抵がデュエルの話ばっかりだ」
悲しいことに皆が某男前ヒロインのごとく「デュエルが恋人」状態だった。
「そうなのか?」
「ああ、ここに写ってんのはみんなデュエリストだ」
集合写真をパッと見ただけでも、それなりの人数がいるため、思わず聞き返した城之内に牛尾は若干遠い眼になりながら答える。
デュエルマッスルも標準装備という魔境ゆえに……
「っておい! 何で静香ちゃんがここに写ってんだよ!!」
「なぁに! 本田! ちょっと見せてみろ!」
だが本田のその声に城之内は本田からタブレット端末をぶんどり凝視する。
城之内が確認したその姿は確かに妹、静香のもの。
「それは妹さんが治療後のKCへの通院の時にたまたま会ってな。ギースの旦那――まあ俺の先輩なんだが――の提案もあって参加しただけだ」
「なんだ、それだけか……」
だが牛尾の説明も相まって城之内は一安心である。
そしてタブレット端末の写真データをパラパラとめくりながら、歓迎会の様子を眺める遊戯たち。
竜崎と羽蛾の漫談、竜崎のツッコミが冴えわたる。
モクバを曲芸のように宙に投げ、お手玉のように自在に操るアヌビスの大道芸。
だが途中でモクバの存在に気付き乱入した乃亜にアヌビスはドつかれていた。だがアヌビスはノーダメージとでも言いたげなドヤ顔で返す。
ヴァロンの瓦割り芸、地面まで砕くまでが御約束らしい。その後ギースに
北森と静香のデュエット、後ろのおかっぱ頭の青年がキーボードを演奏している。ちなみに即興らしい。
ギースの
そして優勝商品である商品券ゲットを目指す腕相撲大会にて精一杯に力を込める静香と、その静香の腕を圧し折らないように力加減に手古摺りアワアワする北森の対決。
その傍には万が一の事態に備え、
だが写真データではその危機感が伝わらない。ただの微笑ましい光景に見える。
そういった様々な歓迎会での様子が写真に収められていた。
「へ~楽しそうだね」
「おっ! モクバのヤツもいんのか!」
「んっ! こいつ、静香ちゃんになんか近くねぇか?」
だがそれが城之内は妹、静香の様子を見つつ、本田が恋敵になりそうな人間を探し始めた段階で遊戯は牛尾に歓迎会の様子を尋ね、他愛の無い話で盛り上がる一同。
そして歓迎会の写真データをつまみに盛り上がる城之内と本田。
そんな城之内と本田を眺める牛尾の「心ここに非ず」な状態に思わず遊戯は静かに尋ねる。
「――どうかしたの?」
「いや、まさかオメェらとこうやって並んでバカやれるとは思ってもみなかったんでな……」
牛尾は恥ずかしそうに鼻をかく。牛尾にとって夢のような時間だった
「ちょっとばかし、『現実感』ってもんが付いてこなかっただけだ」
「……そうなんだ」
照れながら言いきられた牛尾の言葉につられて照れながら同意するように頬をかく遊戯。
「じゃあボクたちの仲を取り持ってくれた――」
そして遊戯は邪気のない笑顔で言葉を続けた。
「――『
「ッ!?」
だがそうして続けられた遊戯の言葉に牛尾は冷や水をかけられたように一気に現実に引き戻される。
牛尾は遊戯からそんな言葉は聞きたくなかった。
「どうしたの? 牛尾君」
目に見えて顔が強張った牛尾に心配そうに尋ねる遊戯。
今の牛尾にはそんな遊戯の純粋な心配すら心がざわつく。
「い、いや、なんでもねぇ――ほら、話の続きといこうじゃねぇか、アイツらも呼んでるみたいだしよ」
動揺が隠せなかった牛尾だが、遊戯はそれを「照れ」によるものと判断し、4人で写真データを見ながら和気藹々と話を弾ませる。
だがその輪の中にいる牛尾は既に気が気でない。思い出すのは――
――お前も今の『幸福』を失いたくないだろう?
牛尾の先輩であるギースから告げられた言葉。
失いたくなかった。
こんなにも充実し、楽しく幸福な時間を、居場所を、仲間を、人生を
たとえこの「幸福」の全てが「作り出され」、「与えられた」ものでも――
失いたくなかった。
もし失えば、きっと自分は壊れてしまう。
そんな確信が牛尾にはあった。
平和やわー(白目)
~入りきらなかった人物紹介~~
コミック版で1話だけ登場した本田が恋した図書委員の女の子。 だが本田は振られた。
黄色いリボンが特徴。そのためかリボンちゃんと呼ばれている。
本田の愛のパズル型手紙にすぐにうつむいて顔を赤らめてしまうほどの清純派。
東映版のアニメ「遊☆戯☆王」はレギュラーの座を獲得。
だが性格がミーハーでお金が大好きなちゃっかりものに、さらに図書委員から美化委員に変更された。
そしてやっぱり本田は恋をした。
だが野坂ミホ本人は獏良に片思いしている。というよりミーハーゆえのアイドル的な見方に見える。
「獏良くんはトイレなんかいかないもん!」など衝撃的な台詞も多い。
だがアニメ「遊戯王デュエルモンスターズ」には未登場。
~本作での野坂ミホ及び周辺の様子~
さすがにコミック版の野坂ミホではキャラを掴み切れなかったので
基本的に「東映版のアニメ版『遊☆戯☆王』」での野坂ミホをベースにしています。
遊戯たちのクラスメートであるが遊戯たちよりは若干距離が遠い。
それは牛尾が早期に「キレイな牛尾」になってしまったゆえに
美化委員である本田と野坂ミホが風紀委員の牛尾の代わりに奔走する必要がなくなったためである。
それゆえに本田と野坂ミホの距離がそれほど縮まらず、それに伴い遊戯たちとの距離も縮まらなかった。
本田が恋してい
野坂ミホ本人は獏良にキャーキャー言っている。
今日も今日とて童実野高校、並びに童実野町の治安は牛尾の手により守られ、改善されている。
よって不良グループ類は既に息をしていない
当然その中の