マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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城之内VS本田 前編です

ご多分に漏れず、デュエル数の少ない本田君のデッキも色々詰め込んでおります。
あんまり変なものを入れたつもりはないですが、どうか予めご容赦を……


前回のあらすじ
裏と表のデュエリストたち、それぞれの会合

温度差がスゴイなー(小並感)




第57話 だがそのメタルはレアだぜ?

 デュエルディスクが城之内が先行であることを示すが――

 

「本田! 先行・後攻、好きな方を選んでいいぜ!」

 

 デュエルディスクを操作し本田に先行・後攻の決定権をゆだねる城之内。

 

 実践のデュエルは初めてだと思われる本田に対しての城之内なりの気遣いだった。

 

「なんだぁ? 負けた時の言い訳にするつもりか? 随分弱気じゃねぇか城之内!」

 

 そんな気遣いを嬉しく思いつつ、素直に言葉には出せない本田。ゆえについ憎まれ口を叩く。

 

「へっ! 言ってな! ハンデ代わりだよ!」

 

 城之内もそんな本田の心情を察してか挑発交じりに返した。

 

「ならありがたく選ばせてもらうぜ! 俺の先行だ! ドロー!」

 

 本田は引いたカードを見てどう動くか考える。

 

 そして牛尾の教えを頭の中で反芻(はんすう)し戦術を組み立てた。

 

「まず俺はライフを800払って魔法カード《魔の試着部屋》を発動!」

 

本田LP:4000 → 3200

 

 本田の背後にグロテスクな機械が現れ赤いカーテンがかけられる。

 

「デッキの上からカードを4枚めくって、その中のレベル3以下の通常モンスターを全て特殊召喚するぜ! まず1枚目! レベル3、通常モンスター《アクロバットモンキー》!」

 

 赤いカーテンの内側から白を基調とした猿型のロボットがクルリと宙で一回転し本田の足に手を置き反省のポーズを取る。

 

「そして2枚目! レベル3、通常モンスター《レアメタル・ソルジャー》!

さらに3枚目! レベル3、通常モンスター《レアメタル・レディ》!」

 

 さらにカーテンの内側から青い金属の鎧を纏った男性とピンクの金属の鎧を纏った女性が並び立つ。

 

「そんでもって最後の4枚目だ! 魔法カード《闇の量産工場》! コイツはモンスターじゃねぇから最後にデッキに戻すぜ」

 

 そして《闇の量産工場》で働くゴブリンが赤いカーテンから飛び出そうとしたが機械の腕に捕まえられ赤いカーテンの向こう側に消えていった。

 

「レベル3以下の通常モンスターの《アクロバットモンキー》・《レアメタル・ソルジャー》・《レアメタル・レディ》を特殊召喚だ!」

 

 その本田の宣言と共に3体のモンスターは戦隊もののようなポーズで並び、その背後で謎の爆発が起こった。

 

《アクロバットモンキー》

星3 地属性 機械族

攻1000 守1800

 

《レアメタル・ソルジャー》

星3 地属性 機械族

攻 900 守 450

 

《レアメタル・レディ》

星3 地属性 機械族

攻 450 守 900

 

「どうよ! 城之内! 油断してっと痛い目見るぜ!」

 

「一気に3体もモンスターを並べたか! だがどいつもそこまで攻撃力は高くねぇ! そっからどうするよ!」

 

 得意げな本田に城之内はデッキの中身を知らない相手との未知にワクワクが抑えられない。

 

「勿論このままじゃねぇさ! 魔法カード《馬の骨の対価》で 通常モンスター《アクロバットモンキー》を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 《アクロバットモンキー》が本田にビシッと敬礼し、手足で8の字を描くようなポーズを取る。

 

 すると《アクロバットモンキー》が立つ地面に突如穴が空き、そのポーズのまま落下していった。

 

「よっしゃぁ! 早速俺のエースの登場だぜ! 魔法カード《融合》を発動!」

 

 引いたカードの1枚を勢いよくデュエルディスクに差し込む本田。エースのお出ましである。

 

「フィールドの《レアメタル・ソルジャー》と《レアメタル・レディ》で融合召喚! 2つの力合わせ! 未来の力を解放だ! 来いっ! 《レアメタル・ヴァルキリー》!」

 

 《レアメタル・ソルジャー》が光の粒子となって《レアメタル・レディ》のアーマーに新たな力を宿す。

 

 そして光と共に現れるはアーマーがパワーアップし、双頭のランスを持った戦乙女。

 

《レアメタル・ヴァルキリー》

星6 地属性 機械族

攻1200 守 500

 

 だがその攻撃力はレベル6にも関わらず1200と控えめ。

 

「攻撃力は1200、何かありそうだな……」

 

 だが城之内にとってそれは「攻撃力以外の何か」を持つ可能性を感じさせ警戒を強める。

 

「俺はモンスターをセットして、さらにリバースカードを3枚伏せてターンエンドだぜ! さぁ城之内! どっからでもかかってきな!」

 

 ターンを終えた本田のセットカードは3枚。手札消費の激しい融合召喚を行ったにしてはガードが充実している。

 

 ゆえにまずは本田の様子見といったところなのだろうと城之内は考えた。

 

「なら俺のターン、ドロー! まずは魔法カード《予想 GUY(ガイ)》を発動だぜ! 俺のフィールドにモンスターがいない時、コイツの効果でデッキから通常モンスターを呼び出すぜ! 出番だ! 《アックス・レイダー》!!」

 

 フィールドに放電が奔り、その放電を突き破るように《アックス・レイダー》が飛び出し、斧を敵に向け構える。

 

《アックス・レイダー》

星4 地属性 戦士族

攻1700 守1150

 

「さらに――本田! お前が融合召喚で来るなら俺も融合召喚で行くぜ! 魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》を発動!」

 

 城之内のフィールドに現れるカップ麺。

 

 そしてカップ麺の蓋が飛び、炎が舞い昇った。

 

 もはや遊戯たちにとってお馴染みの光景である。

 

「ライフを1000払ってエクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚だ! 俺と共に熱く燃え上がれ! 融合召喚! 現れろ! 《炎の剣士》!!」

 

城之内LP:4000 → 3000

 

 長らく城之内を支えてきた炎を統べし剣士がその大剣を振るい城之内の前に陣取る。

 

 だが《簡易融合》で呼ばれた《炎の剣士》は攻撃することができず、このターンしかフィールドに留まれない。

 

《炎の剣士》

星5 炎属性 戦士族

攻1800 守1600

 

「そして《炎の剣士》をリリースしアドバンス召喚! 《バーバリアン2号》!」

 

 ゆえに《炎の剣士》は大剣を天に掲げ火柱となって呼び水となる。

 

 そして棍棒にて炎を払い、野性味あふれるバーバリアンの戦士が棍棒を肩に担ぎ直し雄叫びを上げた。

 

《バーバリアン2号》

星5 地属性 戦士族

攻1800 守1500

 

「最後に永続魔法《補給部隊》を発動して――バトルだ! 《バーバリアン2号》で《レアメタル・ヴァルキリー》を攻撃だ! ワイルド・スマッシュ!」

 

 その巨体から想像もできないスピードで跳躍した《バーバリアン2号》が《レアメタル・ヴァルキリー》に向けて棍棒を振り下ろす。

 

 《レアメタル・ヴァルキリー》もとっさに双頭のランスでガードした。

 

 だが棍棒の威力に負けヒビが入るランス。このままでは持ちそうにない。

 

「さすがに不用心だぜ! 城之内! 罠カード《ロケットハンド》発動!」

 

 だが突如として青い機械の腕《ロケットハンド》が手首部分からブースターを噴かせ、《バーバリアン2号》に突撃しその巨体を吹き飛ばす。

 

「コイツを俺のフィールドの攻撃力800以上の攻撃表示モンスターに装備して、攻撃力を800アップさせるぜ!」

 

 その後《ロケットハンド》が《レアメタル・ヴァルキリー》の天に掲げた腕に装着された。

 

《レアメタル・ヴァルキリー》

攻1200 → 攻2000

 

「なにぃっ!」

 

 城之内の驚きを余所に《バーバリアン2号》は吹き飛ばされた拍子に壊れた棍棒を投げ捨て拳を振りかぶり《レアメタル・ヴァルキリー》に殴り掛かる。

 

「返り討ちだぜ! 《レアメタル・ヴァルキリー》 ブースト・ナックル!!」

 

 すると《レアメタル・ヴァルキリー》は《バーバリアン2号》の拳を躱し懐に飛び込みカウンター気味に《ロケットハンド》のブースターで加速されたアッパーを放つ。

 

 強かに顎を打ち上げれられた《バーバリアン2号》は城之内のすぐ隣に吹き飛ばされていった。

 

「のわっ!」

 

城之内LP:3000 → 2800

 

「へへっ! どうよ、城之内。先制パンチは貰ったぜ?」

 

 最初に相手にダメージを与えたのはデュエル歴の浅い本田。その事実に観戦中の杏子は発破をかけるような声援を送る。

 

「ちょっと何やってんのよ、城之内ー! 真面目にやんなさいー!」

 

「良いぞー! 本田ー! その調子だー!」

 

「城之内君も頑張ってー!」

 

 そして両者をそれぞれ応援する牛尾と遊戯。

 

「ま、まだまだだぜ! こっからが本番だ! 本番!」

 

 そして城之内は得意気な本田に強がりのような言葉を放ちつつ、次の手を打つ。

 

「まずは俺のフィールドのモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドロー!」

 

 のびている《バーバリアン2号》をリアカーに乗せて運ぶ《補給部隊》のゴブリンたちの一人が城之内に向け何かが入った皮袋を投げつける――若干態度が悪い。

 

 そんなゴブリンたちに城之内は眉を引くつかせながらもデュエルを続行する――デュエリストたるもの平常心を忘れてはならない。

 

「…………だったら! 《アックス・レイダー》でそのセットモンスターを攻撃だ!」

 

 セットモンスターに対して斧を振りかぶる《アックス・レイダー》。

 

 セットモンスターもこのままではまずいと感じたのか慌てて表側になる。

 

 露わになったその姿は青みがかった毛並みの巨大なネズミ。その手には人の頭蓋骨らしきものを握っている。

 

《巨大ネズミ》

星4 地属性 獣族

攻1400 守1450

 

 そして振り下ろされる《アックス・レイダー》の斧に対し「頭蓋ガード!」と言わんばかりに手に持った頭蓋骨を掲げるも、そのまま両断された――まぁ、そりゃそうなる。

 

 だが両断され、消えていく《巨大ネズミ》を余所に頭蓋骨がカタカタと嗤いだす。

 

 それを見た城之内は自身の苦手な幽霊の類に思わず怖気に苛まれながら本田に尋ねた。

 

「な、な、なんだよ、それっ!?」

 

「おいおい、何ビビってんだよ城之内。ただのソリッドビジョンだろ?」

 

 あまりの城之内の怯えように呆れながら本田は幽霊とは無関係であることを説明するが――

 

「う、うるせぇ! 怖いもんは怖いんだよ!」

 

 城之内とて頭では分かっていても苦手意識から抜け出せない。

 

 ゆえに本田はデュエルを続ける――そうすれば嗤う頭蓋骨は消えるゆえに。

 

「情けねぇなぁ……戦闘で破壊されて墓地に行った《巨大ネズミ》の効果でデッキから攻撃力1500以下の地属性モンスター《イリュージョン・シープ》を特殊召喚させて貰うぜ」

 

 なおも嗤い続ける頭蓋骨を空から降ってきた黒い毛並みの二足歩行の丸っこい羊が踏み砕く。

 

 だがその羊は「何か踏んだかな?」と言わんばかりに尻尾に付けたコインを揺らしながら周囲を見渡していた。

 

《イリュージョン・シープ》

星3 地属性 獣族

攻1150 守 900

 

 そして怯える城之内を見つけ、両手を広げて身体全体をポワポワと動かし城之内を元気付けようと奮闘し始める――既に何か踏んだことは頭には残っていなさそうだ。

 

 そんな《イリュージョン・シープ》の姿に我を取り戻した城之内が思わず尋ねる。

 

「その羊も――それにさっきの《巨大ネズミ》も獣族モンスターだよな?」

 

 今まで本田のカードのモンスターは全て機械族だったにも関わらず、どう見ても機械族に見えない2体のモンスターに城之内は首を傾げる。

 

「へへっ、そうだな」

 

 本田は説明する気はないようだ――後の楽しみといったところだろう。

 

「う~ん、なら俺はバトルを終了して永続魔法《凡骨の意地》を発動! さらにカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

 

 ガードを固める城之内に本田はこのまま押し切るとばかりに攻め気を見せる。

 

 

「よっしゃ! このまま一気に行くぜ! 俺のターン、ドロー!」

 

 引いた手札を見た本田は勝負を決めに掛かる。

 

「よし! 俺は罠カード《融合準備(フュージョン・リザーブ)》を発動するぜ! エクストラデッキの融合モンスター《メタル・ドラゴン》を見せ、そこに記された《鋼鉄の巨神像》を手札に!」

 

 半透明な機械の龍がスッと現れたと同時にブロック片のようなパーツで作られた機械の銅像が両の手を前で構えて本田の手札に加わった。

 

「さらに墓地から《融合》も回収させてもらうぜ!」

 

 前のターン発動した本田の《融合》が再びその手に戻る。融合素材と融合を手札に加えたのなら当然――

 

「そして魔法カード《融合》をもう一回発動だ! 融合素材の代わりに出来る《イリュージョン・シープ》と《鋼鉄の巨神像》を融合!」

 

 先程の《鋼鉄の巨神像》がフィールドに地響きと共に着地する。

 

 その地響きの振動で倒れた《イリュージョン・シープ》を《鋼鉄の巨神像》が指でつまみ、頭上へ跳躍。《融合》の渦で混ざり合う。

 

「融合召喚! 全速全開フルスロットルだぜ! 《メタル・ドラゴン》!!」

 

 空から列車のような長く銀に輝いた機械の身体をくねらせフィールドに舞い降りる《メタル・ドラゴン》。

 

 そして竜の頭部のマシンアイが城之内を見据え、口から蒸気を吹き出す。

 

《メタル・ドラゴン》

星6 風属性 機械族

攻1850 守1700

 

「げぇっ! そいつは!」

 

 この《メタル・ドラゴン》――実は過去の童実野町での町内大会の準々決勝戦において、城之内に敗北を叩きつけた因縁深きモンスター。

 

 その過去の苦い敗北を思い出し城之内は思わず冷汗を流す。

 

 そんな城之内を見つつ、本田は力強く宣言した。

 

「よっしゃあ! バトルと行くぜ! 《メタル・ドラゴン》で《アックス・レイダー》を攻撃だ!」

 

 《アックス・レイダー》に宙を進む列車の如く突き進む《メタル・ドラゴン》。

 

 《アックス・レイダー》は紙一重でその機械仕掛けの顎を躱すが、突如として曲がった機械の尾に弾かれ空中に投げ出され銀の咢に捕まった。

 

 もがく《アックス・レイダー》だったがその咢から放たれた火炎によりその身を散らせる。

 

城之内LP:2800 → 2650

 

「うわっ! ――だがモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドローだ!」

 

 塵へと還った《アックス・レイダー》を運ぶことは出来ないと城之内の足をポンと叩いたゴブリンたちの一人。

 

 そしてそのゴブリンは出荷される家畜を見るような目で城之内を見つめ、皮袋をそっと城之内の足元に置き一目散に駆けていく。

 

 きっと武運を祈っているのだろう――巻き込まれたくないゆえに逃げたわけではないのだ。

 

「さらに《レアメタル・ヴァルキリー》でダイレクトアタック!」

 

 引き絞られた弓のように《レアメタル・ヴァルキリー》は拳を下げて力を溜める。

 

 そしてその力が解放され一筋の弾丸となって城之内に襲い掛かった。

 

「このままだと2000のダメージか、さすがにそれはキツイぜ!」

 

 この《レアメタル・ヴァルキリー》の攻撃を喰らえばさすがにライフが心許なくなるとセットカードをチラリと見やる城之内だが、続く本田の説明に目を見開く。

 

「残念だが2000のダメージじゃ済まねぇぜ! 《レアメタル・ヴァルキリー》はダイレクトアタックする時のダメージステップ時に攻撃力1000ポイントアップするからな!」

 

 つまりこの《レアメタル・ヴァルキリー》のダイレクトアタックが通れば3000ポイントダメージ――今の城之内の2650のライフでは一溜りもない。

 

「まずい! この攻撃が通れば城之内君のライフは!」

 

 それゆえに観戦している遊戯は城之内を案じるが――

 

「だったら、直接受けなきゃ良いだけだ! その攻撃時に永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から蘇れ! 《バーバリアン2号》!!」

 

 地面から周囲の土を吹き飛ばし《バーバリアン2号》がその両腕を上げ、まずその上半身がフィールドに顔を出す。

 

《バーバリアン2号》

星5 地属性 戦士族

攻1800 守1500

 

 城之内にはキチンとガードする手段が用意されていた。

 

「だとしてもソイツじゃ攻撃力が足りねぇぜ、城之内! そのまま攻撃続行だ! 《レアメタル・ヴァルキリー》!」

 

 そしてそのまま《レアメタル・ヴァルキリー》に顔面を殴られ、地面から引き抜かれるように吹き飛ぶ《バーバリアン2号》。

 

 舞う土煙。

 

 《バーバリアン2号》もせめて地面から完全に出るまでは待って欲しかったことだろう。

 

 だがその土煙の中から青い、いや蒼い《炎の剣士》と言うべき戦士が大剣を構え、蒼い炎を噴出させて佇んでいた。

 

《蒼炎の剣士》

星4 炎属性 戦士族

攻1800 守1600

 

「なんでモンスターが!?」

 

 思わず驚きを見せる本田。

 

「ヘヘッ! お前の攻撃時にコイツも発動していたのさ! 永続罠《死力のタッグ・チェンジ》をな!」

 

 そんな本田の反応に満足げな城之内。

 

「コイツの効果で俺は新たなレベル4以下の戦士族モンスターを手札から呼ぶことで攻撃表示モンスターとの戦闘ダメージは受けねぇぜ!」

 

「そうか! そいつぁ確かキースとのデュエルで使ってたヤツか!」

 

 だが本田も埋没された記憶からあの一戦を思い出す。

 

「おうよ! それで手札からレベル4以下の戦士族モンスター《蒼炎の剣士》を呼ばせてもらったってわけよ! どんなもんだ!」

 

 先制打を取られた意趣返しだと言わんばかりに城之内は鼻高々だ。

 

「永続魔法《補給部隊》ドローで引いてやがったのか…………だったら戦闘以外で破壊させてもらうぜ!」

 

 だが本田とてあの一戦から《死力のタッグ・チェンジ》の特性は把握していた。

 

「俺は《レアメタル・ヴァルキリー》に装備された《ロケットハンド》のもう一つの効果を発動!」

 

 効果破壊には対応していない弱点があると。

 

「装備されたコイツを墓地に送ることでフィールドの表側のカード1枚を破壊するぜ! 俺は《蒼炎の剣士》を破壊!」

 

 《レアメタル・ヴァルキリー》の腕から《ロケットハンド》が勢いよく射出され《蒼炎の剣士》の大剣のガードを突き抜けその身体に風穴を開ける。

 

 そして倒れ伏す《蒼炎の剣士》。

 

「だが《ロケットハンド》を装備していた《レアメタル・ヴァルキリー》の攻撃力は0になっちまって表示形式も変更出来ねぇけどな」

 

 《ロケットハンド》の射出に全エネルギーを使い切ってしまったゆえか膝を付く《レアメタル・ヴァルキリー》。

 

《レアメタル・ヴァルキリー》

攻2000 → 攻 0

 

 だが倒れ伏した《蒼炎の剣士》から紅い炎が噴き上がる。

 

「こ、今度はなんだ!?」

 

 またまた驚く本田――今の城之内は本田の知っている城之内とは大きく違う。

 

 本田がデュエリストとなり腕を磨いたように城之内もまた腕を磨いてきたのだ。

 

「《蒼炎の剣士》の効果さ! コイツが相手によって破壊され墓地に送られたとき、墓地の自身を除外することで俺の墓地の戦士族・炎属性モンスター1体を復活させる!」

 

 《蒼炎の剣士》の最後の力が仲間の元へと託される。

 

「仲間の想いを継ぎ、帰って来い! 俺のフェイバリットカード! 《炎の剣士》!」

 

 そして再び舞い戻る《炎の剣士》。今度は先のターンとは違いあらゆる制限から解放されていた。

 

《炎の剣士》

星5 炎属性 戦士族

攻1800 守1600

 

「残念だったな、本田! 次のターンでソイツとはおさらばだぜ!」

 

 城之内の言うとおり攻撃力が0になった《レアメタル・ヴァルキリー》を戦闘破壊することは容易いだろう。

 

 結果的に《ロケットハンド》の効果を無駄打ちしてしまった本田は地団駄を踏む。

 

「くっそー! だがそうはいかねぇ! 俺は《レアメタル・ヴァルキリー》のさらなる効果を発動!」

 

 だが本田のエースの力はココからだった。

 

「フィールド上の自身とエクストラデッキの《レアメタル・ナイト》を交換する!」

 

 《レアメタル・ヴァルキリー》のアーマーがパージされる。

 

「交換だとっ!」

 

 その一風変わった効果に驚きと興味を示す城之内。

 

「交換召喚! レアメタルチェンジ! 出てきな! レアメタルのもう一つの可能性! 《レアメタル・ナイト》!」

 

 そしてパージされたアーマーがどこからともなく現れた《レアメタル・ソルジャー》の中の人に装着されていく。

 

 そして青いアーマーに身を包み紫電の奔る両剣を構えた。

 

《レアメタル・ナイト》

星6 地属性 機械族

攻1200 守 500

 

「成程な! 最初からソイツの効果で《ロケットハンド》の欠点をカバーするつもりだったってわけか!」

 

「おうよ! まあ、この効果は特殊召喚されたターンには使えねぇがな。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

 本田のデッキの大まかなスタイルを把握した城之内に本田はここからだと自信たっぷりにターンエンドした。

 

 

 

 だが観客席となったベンチに座る牛尾の本田を見る視線は冷たい。

 

「ハァ~まったく本田のヤツあれだけ口を酸っぱくして言ったってぇのに……」

 

「どうしたの、牛尾君?」

 

 思わず首を傾げ尋ねる杏子。

 

 杏子の目から見た本田のデュエルはどこにも問題がないように見えたのだが――

 

「どうしたも、こうしたもねぇよ。不肖の弟子が詰まんねぇプレイミスすりゃあ、師匠として恥ずかしいもんさ」

 

 本田のデッキ構築に協力した牛尾には本田のデュエルに大きなミスがあったことが分かる。

 

「プレイミス?」

 

「そうだね、牛尾君。本田君のこのミスが後に響かなきゃいいんだけど……」

 

 疑問が深まる杏子を余所に遊戯も牛尾の意見に神妙に同調する。

 

「ねぇ遊戯、本田のデュエル何かダメなところでもあったの?」

 

 そして杏子が尋ねた疑問を解消するように遊戯が説明を始めた。

 

「うん、《ロケットハンド》の破壊効果は『表側』のカードならフィールドのどんなカードでも破壊できるんだ。だけど本田君はモンスターを破壊しちゃったから――」

 

 さらに牛尾が遊戯の説明を引き継ぐ。

 

「ああ、あの時の城之内の手札は0枚、表側の永続魔法《凡骨の意地》を破壊すりゃ《凡骨の意地》での追加ドローも見込めず次のドロー次第で城之内は一気に苦しくなった筈だ」

 

「それに永続罠《死力のタッグ・チェンジ》は手札に呼び出せる戦士族モンスターがいないと効果は使えないからね。本田君は折角のチャンスを不意にしちゃったんだ」

 

 そして遊戯がそう締めくくった。

 

「だったら教えて上げた方が――」

 

「ソレは駄目だよ、杏子」

 

 説明を聞き終えた杏子は「本田にアドバイスするべきではないか?」と考えるが、いつもらしからぬ遊戯の強い口調に止められる。

 

「そうだな、遊戯。本田のヤツが望んだのは真剣勝負だ。外野からアドバイスなんて受け取れねぇだろうよ」

 

 牛尾も遊戯と同じ意見だった。だがそう言いつつも牛尾がどこかソワソワしているのは置いておこう。

 

 

 しかしそんな牛尾の不安を余所に周囲には何やら騒がしくなっていることに彼らはまだ気付かない。

 

 






アクロバットモンキー「次回はもう一人の俺が大活躍するウッキー!」




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