マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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表の遊戯VSレベッカ 前編です


前回のあらすじ
???「カードの心も理解せずにぃ! 全米チャンプになれるわけねぇだろぉ!」

本田の恋の計画が露見
それに対し城之内は顎を尖らせ始めたようです




第45話 リストラされたのだーれだ?

 

 デュエルディスクがレベッカの先攻を示す。さらにレベッカは充実した己の手札に頬を緩める。

 

「私の先攻! ドロー! まずは魔法カード《名推理》を発動! この効果により遊戯! あなたはレベルを1つ宣言しなさい!」

 

「レベルを?」

 

 一風変わった効果に疑問を覚える遊戯。そんな遊戯にレベッカは得意げに説明する。

 

「そうよ! 私はその後に通常召喚が可能なモンスターが出るまで私のデッキのカードをめくり墓地に送るわ!」

 

 そして遊戯を探偵のように指差す。

 

「そしてそのカードがアナタの宣言したレベルなら墓地に送り、違っていたなら特殊召喚するの! さぁ、選びなさい!」

 

「…………ボクはレベル8を選択するよ!」

 

 《名推理》の効果を生かすために高レベルのモンスターが多いと予想した遊戯は《トレード・イン》にも対応するレベルを選択した。

 

「ならデッキからカードを墓地に送るわ! 一枚目!《神聖なる魂(ホーリーシャイン・ソウル)》! レベル6モンスターだけど通常召喚できるカードじゃないわ! よって墓地へ! 次は――」

 

 次々と墓地に送られていくカードたち、そして――

 

「――遂に通常召喚できるモンスターが来たわ! 《クリッター》! レベル3よ。残念だけどアナタの推理はハズレみたいね! カモン! 《クリッター》!」

 

 若干大きめの毛玉が何度かバウンドしながらレベッカのフィールドに着地し、3つの目が開かれ、周囲の様子をうかがっている。

 

 周りに誰もいないことを確認すると緑の細い手足が毛玉から現れ、細かな牙がびっしり生えた口で「ニシシ」と笑う。

 

《クリッター》

星3 闇属性 悪魔族

攻1000 守 600

 

 そんな守備表示で特殊召喚された《クリッター》にレベッカは感嘆の声を上げて近づく。

 

「これが最新型のソリッドビジョン! ワオッ! 《クリッター》ちゃん可愛い!」

 

 デュエルリングでは望めない距離感にデュエルディスク片手に《クリッター》を見ながらその周りを1周するレベッカ。

 

 そんなレベッカに《クリッター》は照れたように頭をかいている。

 

「…………レベッカ。デュエル中だよ」

 

 そのレベッカの気持ちが分からなくない遊戯だが、今はデュエル中である。ゆえに心を鬼にしてデュエルの進行を伝えた。

 

「もう! ちょっとくらいイイじゃない! なら私はさらにモンスターをセットしてターンエンドよ!」

 

 渋々《クリッター》から離れたレベッカはターンを終え、遊戯に自信たっぷりに宣言する。

 

「さぁ遊戯アナタのターンよ! もっとも、センセーショナルな話題を呼んだ天才デュエリストであるこのアタシに勝てるとは 到底思えないけど! ねぇ~テリーちゃ~ん」

 

 クマのぬいぐるみ――テリーちゃんとの会話も忘れない。

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

 そんなレベッカにやり難そうにカードを引く遊戯。

 

 

 

 だがそのレベッカの言葉に城之内は敏感に反応した。

 

――有名ってことは強いのか?

 

 そんな城之内の疑問だが、最近デュエリストになった城之内はそこまで情報通という訳ではない。

 

 ゆえに多くの情報を持っていそうな牛尾に問いかける。

 

「なぁ、牛尾。あいつ、先生(センコー)がなんとか言ってけど有名なのか?」

 

先生(センセー)じゃなくて、センセーショナルな……まあ、むこうでは結構デカいニュースになってたからな――ジュニアチャンプから最年少プロになったってな」

 

 城之内の予想通り牛尾は情報通であった――望まぬ形だが。

 

 デュエル本場の地のアメリカでかなり取り上げられていたと牛尾は続ける。

 

「あいつ、プロなのか……」

 

「プロ」の称号――城之内の目指すべき先。

 

 

 その「プロ」の姿をしっかりと見据えた城之内の目に映ったのは――

 

 

 

 大量に墓地に送られたカードに警戒を高める遊戯。

 

 そしてそんな遊戯に対して――

 

「遅いね~テリーちゃん。早くだしてくれないかなぁ~」

 

 首を掲げながらクマのぬいぐるみに話しかけるレベッカの姿。

 

 その姿に城之内は思わず牛尾に問いかける

 

「…………アイツ、プロなのか?」

 

 城之内の思っていたイメージと大きく違う。

 

 夢を壊された子供のような城之内の姿に牛尾は一応のフォローを入れる。

 

「まぁプロって言ってもピンキリだからな――アイツがどうかは知らんが……」

 

 

 

 そんな2人のやり取りを余所に遊戯が動き出す。

 

「ボクは魔法カード《予想 GUY(ガイ)》を発動! ボクのフィールドにモンスターがいない時デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚する。来てっ! 《エルフの剣士》!!」

 

 遊戯のデッキの切り込み隊長と呼ぶべき剣士が剣を構え、力強く声を上げる。

 

《エルフの剣士》

星4 地属性 戦士族

攻1400 守1200

 

「さらに手札を1枚捨てて手札から特殊召喚! 巧妙なる奇術師! 《THE() トリッキー》!!」

 

 フィールドにフワフワと落ちてきた青いマントが「ポンッ!」と小さく爆発。

 

 そしてその煙の中から「?」が描かれたマスクに身体の中心に「?」の描かれた道化師のような衣装の《THE トリッキー》が青いマントをクルリと翻し現れ優雅にお辞儀する。

 

《THE トリッキー》

星5 風属性 魔法使い族

攻2000 守1200

 

「まだまだ行くよ! 魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動し手札のモンスターを1体墓地に送り、デッキからレベル1――《サクリボー》を特殊召喚!」

 

 《サクリボー》が鋭い爪で相手をひっかく動作をしながら現れる――やる気は十分のようだが――

 

《サクリボー》

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

 

「そして《サクリボー》をリリースしてアドバンス召喚! 雷鳴と共に現れろ! 《デーモンの召喚》!!」

 

 遊戯の宣言にとっさに振り向き目があった《サクリボー》の視線に思わず目をそらす遊戯。

 

 そして光の粒子となった《サクリボー》から《デーモンの召喚》が雷を纏いながらフィールドに召喚された。

 

《デーモンの召喚》

星6 闇属性 悪魔族

攻2500 守1200

 

「《サクリボー》がリリースされたことでその効果によりボクは1枚ドロー!」

 

 空に薄っすら映る《サクリボー》の恨めしい視線が遊戯を突き刺す。

 

「バトルだ! 《エルフの剣士》で《クリッター》を攻撃!」

 

 《エルフの剣士》の剣の一閃が背を見せ逃亡を図った《クリッター》を切り裂く。

 

 倒れ伏した《クリッター》は震える手で床に何かを書こうとしたが、その倒れた背に剣が突き刺さり《クリッター》の身体は大きく「ビクン!」と揺れ、動かなくなった。

 

「墓地に行っちゃったよ~。ガッデム!」

 

 破壊されたことを憤慨するレベッカ。

 

 だがクマのぬいぐるみ、テリーちゃんがアドバイスを送る! ――そういった設定なんだろう……

 

「どうしたのテリーちゃん、なになに? やられちゃった《クリッター》ちゃんの効果を使えばいいって? ありがとう~テリーちゃ~ん」

 

 そんなレベッカのイタイ――子供らしい姿に観客となった杏子の「なにこの子……」とでも言いたげな視線が注がれるがレベッカはどこ吹く風だ。

 

「墓地に送られた《クリッター》の効果でデッキから攻撃力1500以下の《聖なる魔術師(セイント・マジシャン)》を手札に加えるわ! もっともこのカードはこのターン使えないけどね!」

 

「だったら次はそのセットモンスターを《THE トリッキー》で攻撃だ! マジック・ブラッシュ!!」

 

 セットモンスターを《THE トリッキー》がマントで包み、そのマントが折りたたまれていく。

 

 そして優雅にマントを広げると薄く引き伸ばされた赤いズボンを履いた紫の昆虫が背負った荷物共々ヒラヒラと地面に落ちる。

 

《魔導雑貨商人》

星1 光属性 昆虫族

攻 200 守 700

 

「この子も破壊されちゃうけど、その前にリバース効果が発動するわ! 私のデッキの上から魔法・罠カードが出るまでカードを墓地に送って、そのカードを手札に加えるわ!」

 

 再び墓地に送られる数多くのカード達。

 

「――来たわ! 私は魔法カード《モンスターゲート》を手札に加える!」

 

「またカードが沢山墓地に――でもこれでキミのモンスターはいなくなった! ダイレクトアタックだ! 《デーモンの召喚》! 魔降雷!」

 

 《デーモンの召喚》の角に雷が蓄積され、無防備なレベッカに雷撃が放たれる。

 

「そうはさせないわ! 相手のダイレクトアタック時にこのカードは特殊召喚できるのよ! 私を守る盾になりなさい! 《護封剣の剣士》!」

 

 だが蒼い甲冑を身に纏った剣士が《光の護封剣》のような光の剣で雷撃を切り払った。

 

《護封剣の剣士》

星8 光属性 戦士族

攻 0 守2400

 

「この効果で呼ばれたこの子はその攻撃モンスターの攻撃力がこの子の守備力より下なら破壊できるけど、今回は無理そうね! でもダイレクトアタックはこれで防げるわ!」

 

「ならそのカードも墓地行きだ! 《デーモンの召喚》で《護封剣の剣士》にそのまま攻撃!」

 

 《デーモンの召喚》の手の鋭利な爪が光の剣共々《護封剣の剣士》を切り裂き、吹き飛ばす。

 

「えぇ~? またやられちゃった~」

 

「あのねぇ……最初から負けるに決まってるだろ!」

 

 そんなカードの心に寄り添わないレベッカの態度に遊戯は苦言を呈そうとするが――

 

「テリーちゃん、あのお兄ちゃんがアタシをいじめるのよ~」

 

「いじめてないって!」

 

 レベッカはまともに取り合わない。

 

「ん? なになに? まだ負けたわけじゃないって? そうね! それに良いカードは手札に加えられたしノープロブレムね!」

 

 レベッカのペースに翻弄される遊戯は心中で頭を抱える。

 

「ボクはバトルを終了して魔法カード《馬の骨の対価》を発動するよ! 通常モンスター《エルフの剣士》を墓地に送って2枚ドローだ!」

 

 《馬の骨の対価》の発動に《エルフの剣士》は思わずその手から剣を落とした。

 

 そしてその動揺を隠しつつ「うん、分かってたよ」と言わんばかりの視線を遊戯に向け、両の手で顔を押さえながら走り去っていった。宙に奔った水滴は言わずもがなである。

 

 その後ろ姿を遊戯はしっかりと見据えつつ、《エルフの剣士》のお蔭で手に入れることができたカード(想い)を自身のフィールドに託す。

 

「ボクはカードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 

 だがターンを終えた遊戯はレベッカのデュエルがいまいち読めず、どこかデュエルがし難そうに双六には見えた。

 

 だが双六はこのデュエルに覚えがあった――テリーちゃんの方の覚えはない。

 

「このデュエルもしやアーサーの……」

 

 

 そんな双六の呟きなど気にせずレベッカは攻めに転じる。

 

「ならアタシのターンね! ドロー! さ~て、どうしよう~ ん? なになに? あ~そっか! このカードが呼べるわね! サンキュ~テリーちゃん! いいコねぇ」

 

 未だにクマのぬいぐるみと話し続けるレベッカ。

 

「レベッカ、君のターンだよ」

 

「今考えてるの! 話しかけないで! やっぱりこれかな~? うん決めた! これにしよう! 私の墓地に光属性のモンスターが5種類以上いるときこの子は特殊召喚できるわ!」

 

 遊戯の苦言に怒りを露わにしつつデュエルを続ける。

 

「ッ! レベッカの墓地にはかなりのカードが送られている!」

 

「そうよ! この子を呼ぶ準備はもう出来てるわ! きなさい 光の洗礼を受けし悪魔の名を持つドラゴン! 《ライトレイ ディアボロス》!!」

 

 白い甲冑のような鱗に青い文様が奔り、光と共に翼を広げ悪魔の名を持つ聖なる龍が剛腕を振るい咆哮を上げる。

 

《ライトレイ ディアボロス》

星7 光属性 ドラゴン族

攻2800 守1000

 

「そして早速この子の効果を使わせてもらうわ! 私の墓地の光属性モンスターを除外することで遊戯! アナタのフィールドのセットカードを1枚、持ち主のデッキの一番上か一番下に戻せるのよ!」

 

 レベッカは遊戯の2枚のセットカードを見比べ宣言する。

 

「墓地の光属性《魔導雑貨商人》を除外して私から見て右のセットカードをデッキトップへ!!」

 

 レベッカの指さすカードに空から拳を振りかぶる《ライトレイ ディアボロス》。

 

「そうはさせない! その効果にチェーンして速攻魔法《トリッキーズ・マジック4(フォー)》を発動!」

 

 だが《ライトレイ ディアボロス》に狙われたカードが反転し「4」と貼られたカプセル状薬が現れる。

 

 そのカプセル状の薬は《THE トリッキー》に取り込まれ、その身体が複数の影にブレ始めた。

 

「その効果でボクの《THE トリッキー》1体を墓地へ送って、レベッカ! 君のフィールドのモンスターの数だけ、ボクのフィールドに『トリッキートークン』を守備表示で特殊召喚だ!」

 

 カプセル状の薬により複数の姿に分身する筈の《THE トリッキー》だったが、レベッカのフィールドのモンスターは1体である。

 

 よってそのブレた姿は元に戻っていき、守備の姿勢を見せる――その姿は若干、青みが薄まったかもれない。

 

『トリッキートークン』

星5 風属性 魔法使い族

攻2000 守1200

 

「ちぇっ、躱されちゃった……でもまだまだ私の番は終わらないわ! いくわよ!」

 

――ん? 急に雰囲気が変わった。

 

 レベッカの雰囲気が変わったことに気付く遊戯――その今までとは別人の雰囲気に何かあると慎重に様子をうかがう。

 

「私は《黒き森のウィッチ》を召喚!」

 

 キョロキョロと周囲を気にするように歩み出る黒ローブを身に纏った《黒き森のウィッチ》。

 

 そんな《黒き森のウィッチ》に空で蜃気楼のように浮かぶ《サイコ・ショッカー》が「安心しろ! ドッキリじゃない! 君は自由だ! 思う存分暴れてこい!」と親指を立ててエールを送る。

 

 施術(エラッタ)は無事に終わり釈放されたのだ。

 

 空に向けて敬礼する《黒き森のウィッチ》。

 

 そして三つの目がギラリと光る――何やら鬱憤が溜まっているご様子。

 

《黒き森のウィッチ》

星4 闇属性 魔法使い族

攻1100 守1200

 

「そして《黒き森のウィッチ》をリリースして魔法カード《モンスターゲート》を発動!」

 

 《黒き森のウィッチ》は高笑いと共にその身を天に捧げゲートを開く。

 

「このカードの効果で通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキの上からカードを墓地に送って、その通常召喚可能なモンスターを特殊召喚するわ!」

 

 三度大量に墓地に送られるカード。そろそろデッキが心許ないがレベッカは気にしない。

 

――このターンで仕留めてやるわ!

 

「私が呼べたのは《ミスティック・パイパー》 !」

 

 赤い外套を頭までスッポリ被った《ミスティック・パイパー》が横笛を吹きつつ。ステップを踏みリズムを取る。

 

《ミスティック・パイパー》

星1 光属性 魔法使い族

攻 0 守 0

 

 

「攻撃力0のモンスターなら大丈夫そうね」

 

 観客となった杏子が安心するように言うが、レベッカは鼻を鳴らしながら得意げに語る。

 

「フフン! 甘いわ! デッキから墓地に送られた3体の《ライトロード・ビースト ウォルフ》の効果を発動!」

 

 《モンスターゲート》の効果で送られた『通常召喚できない』モンスターたちが地面を砕き現れる。

 

「デッキから墓地に送られたこの子たちは墓地から特殊召喚できるのよ! さぁ! 戻りなさい!3体の《ライトロード・ビースト ウォルフ》!!」

 

 3体の白い毛並みのオオカミの獣戦士がハルバードを肩に担ぎ、右手の鍵爪を天に掲げる。

 

《ライトロード・ビースト ウォルフ》×3

星4 光属性 獣戦士族

攻2100 守 300

 

「さらに! 墓地に送られた《黒き森のウィッチ》の効果で守備力1500以下の《金華猫(きんかびょう)》を手札に加える!」

 

 《黒き森のウィッチ》の高笑いが再び響き、それに追従するように猫の鳴き声が木霊する。

 

 

 レベル4にも関わらず高いステータスのモンスターが一気に3体並ぶ姿に警戒を露わにする遊戯。

 

「テリーちゃん! アイツ、ワケ分かんなくなってるみたいよ! ウフフ!!」

 

 その遊戯の反応を驚きと取ったレベッカは満足そうに笑う――だがまだこんなものではない。

 

「まだまだ行くわ! 《ミスティック・パイパー》の効果を発動! このカードをリリースして私は1枚ドロー! そして引いたカードを互いに確認してレベル1モンスターだったらもう1枚ドローよ!」

 

「だけど君のデッキにそこまでレベル1のカードは無い筈だ!」

 

 レベッカのデッキを推察する遊戯だが、レベッカの目的はそこ(追加ドロー)にはない。

 

「ドロー! !? あらぁ~ん! 予想外にいいカードが引けちゃったわ。私が引いたのは――レベル8《混沌帝龍(カオス・エンペラー・ドラゴン)-終焉の使者-》!!」

 

「クッ……そのカードは!」

 

 遊戯の持つ《カオス・ソルジャー》と同じ名を持った《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》と双璧をなす強力なカードに状況の悪化を悟る遊戯。

 

「フフフッ! さぁ行くわよ! 墓地の闇属性《クリッター》と光属性《神聖なる魂》を除外して特殊召喚! その破壊の力を持って世界を終焉に導け! 《混沌帝龍(カオス・エンペラー・ドラゴン)-終焉の使者-》!!」

 

 墓地の《クリッター》と《神聖なる魂》が光と闇に姿を変え溶け合い新たな龍を生み出す呼び水となる。

 

 その溶け合った姿は青い身体に銀の甲殻をもった終焉をもたらす龍を生み出す。ただそこにいるだけにも拘らず溢れ出るプレッシャーは強大そのものであった。

 

《混沌帝龍 -終焉の使者-》

星8 闇属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

 フィールドに並び立つ攻撃力2000オーバーの5体のモンスター。

 

 デュエルディスクのソリッドビジョンによりその力強さをより一層感じ取ったレベッカはバトルフェイズに入る。

 

「あははは! 受けなさい! この一斉攻撃を! カオス・エンペラー! 《デーモンの召喚》を蹴散らしなさい! カオス・ファイアーー!!」

 

 《混沌帝龍 -終焉の使者-》の終焉をもたらす青い炎が《デーモンの召喚》に迫る。

 

「させないよ! ボクは手札から《クリボール》を捨てて効果発動! 攻撃してきた相手モンスターを守備表示にする! 頼むよ! 《クリボール》!!」

 

 飛び出した《クリボール》が球体状の身体をジャイロ回転させ、青い炎を突っ切り《混沌帝龍 -終焉の使者-》に突っ込む。

 

 その《クリボール》をその拳で迎撃しようとした《混沌帝龍 -終焉の使者-》。

 

 だが、その球筋はその拳の前で落下する。

 

――ジャイロフォークだとぉ!

 

 そんな驚愕に目を見開いた《混沌帝龍 -終焉の使者-》を余所に《クリボール》は落下しつつ突き進み、《混沌帝龍 -終焉の使者-》の足の小指部分にクリーンヒットした。

 

 足の小指を押さえて蹲り、堪らず守備表示になる《混沌帝龍 -終焉の使者-》。

 

「シット! でもこれでアナタの手札は0! 奇跡は2度起こらないわ! 《ライトレイ ディアボロス》で《デーモンの召喚》を攻撃! ライト・ジャッジメント!!」

 

 《ライトレイ ディアボロス》の爪から伸びる光が剣を形作り、右手を口元に持っていき、左手を頭の上あたりに沿え、両の手から伸びる光の剣が十字を描く構えを取った。

 

 そんな独特の構えに先手必勝とばかりに《デーモンの召喚》は雷撃を放つが、《ライトレイ ディアボロス》の十字に交差させた剣が解放される。

 

 その剣筋は雷撃を一刀の元に切り伏せ、もう一方の剣撃が《デーモンの召喚》の心の臓を打ち抜いた。

 

「くぅううっ!」

 

遊戯LP:4000 → 3700

 

「次よ! 1体目の《ライトロード・ビースト ウォルフ》で守備表示の『トリッキートークン』を攻撃!」

 

 《ライトロード・ビースト ウォルフ》のハルバードの先端部分で突きを繰り出す。

 

 それに対し『トリッキートークン』は闘牛士のように自身のマントで目標をずらし回避する。

 

 だが《ライトロード・ビースト ウォルフ》が力任せにハルバードを『トリッキートークン』に向けて薙ぎ払い、ハルバードの斧部分によって『トリッキートークン』は呆気なく両断された。

 

「これで遊戯! アナタのフィールドはがら空きよ! 残りの2体の《ライトロード・ビースト ウォルフ》の攻撃でフィニッシュよ! 行きなさい!!」

 

 2体の《ライトロード・ビースト ウォルフ》がそれぞれハルバードを構え、遊戯に迫る。

 

 この合計攻撃力4200の攻撃を防がなければ遊戯のライフは当然尽きる。

 

「させないよ! リバースカードオープン! 罠カード《裁きの天秤》! このカードの効果でレベッカ、キミのフィールドのカードの数がボクの手札・フィールドのカードの合計数より多い時、ボクはその差の数だけドローする!」

 

 フィールドに神々しいオーラを纏った髭の老人が天秤を手に現れる。

 

「な~んだ、攻撃を防ぐカードじゃないのね。私のフィールドは5体のモンスターだけよ」

 

 天秤に光が灯され傾き始める。

 

「ボクの手札は0でフィールドには《裁きの天秤》だけだ! その差、4枚ドロー!!」

 

 遊戯のドローと共に神々しいオーラを纏った老人は煙のように消えていった。

 

「沢山ドローしたようだけど、アナタに次のターンはないわ!」

 

 遊戯に2体の《ライトロード・ビースト ウォルフ》ハルバードが振り下ろされる。

 

「やったわ! これで私の勝ちよ! ねぇ~テリーちゃ~ん」

 

 クマのぬいぐるみに勝利を報告するレベッカ。

 

『クリッ』

 

 だがそんな声に釣られて遊戯を見たレベッカが見たものはハルバードを真剣白羽取りしている《クリボー》の姿だった。

 

 それでもハルバードの勢いは殺せなかったのかハルバードと遊戯に挟まれているような状態である。微妙に苦しそうだ。

 

「ボクはダメージ計算時に手札の《クリボー》を捨てて効果を発動させてもらったよ。これでこの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0だ!」

 

 しかしもう一方の《ライトロード・ビースト ウォルフ》のハルバードは遊戯に命中していた。

 

遊戯LP:3700 → 1600

 

「もう! しぶといわねぇ! 私はバトルを終了してターンエ――」

 

「待ってレベッカ! キミのバトルフェイズ終了時に手札の《クリボーン》を捨てて効果を発動させてもらうよ!」

 

 頭に白いベールをつけた白い《クリボー》の姿をした《クリボーン》が天からキラキラとした光を放ちフィールドに降り立つ。

 

「今度はなによ!」

 

「このターンに戦闘で破壊されボクの墓地へ送られたモンスター1体を蘇生する! 帰ってきて! 《デーモンの召喚》!!」

 

 フィールドに降り立った《クリボーン》がそのまま地面へと沈んでいく。

 

 そして地面から《デーモンの召喚》の手を取り引き上げるように《クリボーン》が地面から浮かび上がり、《デーモンの召喚》をフィールドに呼び寄せ自身はそのまま空へと帰っていった。

 

《デーモンの召喚》

星6 闇属性 悪魔族

攻2500 守1200

 

 窮地を脱した遊戯。さらにはボードアドバンテージの回復までこなしている。

 

 今の状況にレベッカの背に嫌な汗が流れる。

 

――あのドローでアタシの攻撃を防ぐだけじゃなく、場を繋ぐカードまで引き当てたの?

 

 4枚と多めにドローしたことを加味しても驚異的なドロー力である。

 

 だがフィールドアドバンテージはレベッカに分がある。

 

「私はこれでターンエンドよ! フフッ、これからたっぷりとブルーアイズを奪われた者の心の痛み思い知らせてやるんだからね!」

 

 その強がるような軽口とは裏腹にレベッカはこのデュエルは負ける訳にはいかないと内心で心の緩みを締め直した。

 

 

 




黒き森のウィッチ「ヒャッハッー! 自由だ! 十数年ぶりのシャバだ! エクゾ呼んで暴れてやるよぉ!! 薙ぎ払ってやんよぉ! ヒャハハハハー!」

処刑人-マキュラ「ヤツが解き放たれた、だと……危険すぎる! 釈放するなら俺にしておくんだ!」

八汰烏「俺もきっちり施術(エラッタ)を受ければ……」



クリッチー「次のデュエル後半――遂に私が動く時が来たようですね……さぁ! 行きますよ! 《融合準備(フュージョン・リザーブ)》さん、《融合徴兵》さん!! 《音楽家の帝王(ミュージシャン・キング)》に後れを取るわけにはいきません!」


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