マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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キースVSペガサス 前編です

繰り返される効果処理のせいで長くなってしまいました……


前回のあらすじ
色んな人がストレスマッハ

その一方で満足気な人たちがチラホラ

その差は何故だ!




第34話 創造主の世界

 

 

「「デュエル!!」」

 

 デュエルが始まりMr.クロケッツが一つ注釈を入れる。

 

「先攻はチャレンジャーたるキース・ハワード氏に与えられます」

 

 創造主が相手ではたとえ全米チャンプであろうと挑戦者(チャレンジャー)である。

 

「なら行くぜ! 俺様のターン! ドロー! 手札から魔法カード《闇の誘惑》を発動! デッキから2枚ドローし手札の闇属性モンスター《スロットマシーンAM(エーエム)-7》を除外!」

 

 《スロットマシーンAM-7》がスロットを回し「7」の文字が三つ並ぶとコインの代わりにカードが飛び出る。

 

「モンスターをセットし、カードを3枚伏せてターンエンドだ! さぁ! ペガサス! テメェのターンだ!」

 

 どこかイキイキしたキースの動きにペガサスはベストコンディションであることを感じ取り、全力をもって勝ちに行く。

 

 観客席のシンディアに勝利を届けると――愛する人の前ではカッコイイところを見せたいものだ。

 

「ワタシのターンデース、ドロー。まずは永続魔法《魂吸収》を発動しマース。…………ところでキース。ユーはコミックはお好きですか?」

 

「ああ? いや、あまり読まねぇが……それがどうした?」

 

 突然のペガサスの質問にキースは過去の記憶を掘り出しながら答える。

 

「No! それは人生の半分は損をしていマース! ぜひもっと読んでみてくだサーイ! ワタシは子供のころからずっと愛読していマース。そしてテレビ画面いっぱいに暴れまわるキャラクターたちは最高デース。彼らはずっとワタシの心の箱庭で元気に駆け回っていマース」

 

「……そうか」

 

 饒舌に語るペガサスの勢いに押され気味なキース。

 

「このデュエルでそんな世界にユーを招待しマース! ワタシはフィールド魔法《トゥーン・キングダム》を発動デース」

 

 フィールドに突如現れる緑のカバーの絵本。

 

 その本が開きパラパラとページをめくり、あるページで止まるとそこからファンタジーな白いお城が飛び出した。

 

「こいつは……」

 

 警戒を強めるキースにペガサスは得意げに説明する。

 

「このカードはワタシのトゥーンモンスターのための世界デース! その効果処理としてデッキの上からカード3枚を裏側表示で除外しマース」

 

 ペガサスのデッキから除外された3枚のカードから青白い火の玉が浮かび上がる。

 

 それらはペガサスに向かって進み、ペガサスをその光で包んだ。

 

ペガサスLP:4000 → 5500

 

「《魂吸収》の効果か……」

 

「その通りデース! 永続魔法《魂吸収》の効果によりワタシはカードが除外される毎に1枚につき500ポイント、ライフを回復しマース」

 

「除外されたのは3枚……1500ポイントの回復か」

 

「Yes! さらに《七星(しちせい)宝刀(ほうとう)》を発動! その効果で手札のレベル7《トゥーン・ブラック・マジシャン》を除外し2枚ドローデース」

 

 デフォルメされた《ブラック・マジシャン》である《トゥーン・ブラック・マジシャン》が《七星の宝刀》の金色の輝きを煌めかせペガサスを照らしカードを導く。

 

 だがキースには聞き逃せないものがあった。

 

「《トゥーン・ブラック・マジシャン》だと! まさかトゥーンモンスターは!」

 

「その通りデース! 『トゥーンモンスター』は『デュエルモンスターズ』のモンスターがトゥーン化したものなのデース! そして忘れてはいけまセンヨ。カードが除外されたことで永続魔法《魂吸収》の効果で回復しマース」

 

ペガサスLP:5500 → 6000

 

「ではさっそくワタシの愛らしい『トゥーンモンスター』に登場してもらいマース。《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》を召喚デース!」

 

 魔法を操る双子のエルフの姉妹《ヂェミナイ・エルフ》がデフォルメされた《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》がそれぞれポーズを取りながら笑い声を上げる。

 

《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》

星4 地属性 魔法使い族

攻1900 守 900

 

「そしてワタシの『トゥーンモンスター』たちはワタシのフィールド上に《トゥーン・ワールド》が存在し、相手フィールド上に『トゥーンモンスター』が存在しない場合、ダイレクトアタックすることができマース!」

 

「なんだとっ!」

 

 姉妹はハイタッチをしながらキースに向けてウインクを放つ。

 

「ワタシのフィールドには《トゥーン・ワールド》として扱う《トゥーン・キングダム》がありマース。ダイレクトアタック――と言いたいところデスガ……基本的に『トゥーンモンスター』は呼び出したターンには攻撃できマセーン」

 

 ペガサスの発言に思わずハイタッチしたまま固まる《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》。

 

 そしてペガサスをジト目で眺めた。

 

「さらに永続魔法《強欲なカケラ》とそしてカードを1枚セットし、魔法カード《命削りの宝札》を発動デース! 手札が3枚になるようにドロー!」

 

 新たに引いた3枚のカードを楽し気に見やるペガサス。

 

「そしてカードを更に2枚セットしてターンエンドデース! そしてターンエンドと共に《命削りの宝札》のデメリットで手札を全て捨てマース!」

 

 互いに様子見な状態だがキースはトゥーンの未知なる部分を知るために攻勢に出る。

 

 

「俺のターン、ドロー! 永続罠《闇次元の解放》を発動! 闇より帰還しコイン(カード)を吐きだしな! 《スロットマシーンAM-7》!」

 

 空間に歪が生まれ、《スロットマシーンAM-7》がスロットを回転させながらその歪をこじ開けセットモンスターの隣に並ぶ。

 

《スロットマシーンAM-7》

星7 闇属性 機械族

攻2000 守2300

 

「魔法カード《馬の骨の対価》の効果で通常モンスター《スロットマシーンAM-7》を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 スロットを回すことを止め、腹部のコインを溜めて置く部位をこじ開けコイン(カード)をばらまく《スロットマシーンAM-7》。

 

 もはや切腹を超えた何かであった。

 

「まだだ! 魔法カード《マジック・プランター》の効果で永続罠《闇次元の解放》を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 あのペガサス相手に出し惜しみなどしていられない、とキースはさらにカードを引き込む。

 

「そして速攻魔法《魔力の泉》を発動! ペガサス! テメェのフィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけドローし、俺様のフィールドの表側の魔法・罠カードの数だけ手札を捨てる!」

 

 ペガサスのフィールドの表側の魔法・罠カードは《魂吸収》・《トゥーン・キングダム》・《強欲なカケラ》の3枚。

 

 そしてキースのフィールドの表側の魔法・罠カードは今発動した《魔力の泉》のみ――多くのドローに繋がる。

 

「3枚ドローして1枚捨てる! さっそく攻め込ませてもらうぜ!」

 

 増やした手札を見てキースはプランを組み上げる。

 

「永続魔法《機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)》と同じく永続魔法《補給部隊》を発動! さらに《可変機獣 ガンナードラゴン》を妥協召喚!」

 

 フィールドに突如として現れる機械仕掛けの前線基地+補給基地。

 

 そしてそこからキャタピラ音と共に基地から出動する《可変機獣 ガンナードラゴン》。

 

「妥協召喚された《可変機獣 ガンナードラゴン》の元々の攻撃力・守備力は半分になる」

 

 だが基地の天井に頭が引っかかっている――だがそのままゴリ押しで基地から出動した。

 

 首がいびつに曲がっているのは気のせいに違いない。

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2800 守2000

攻1400 守1000

 

「さらにリバースカードオープン! 罠カード《アルケミー・サイクル》! エンドフェイズまで俺様のフィールドの表側表示モンスター全ての元々の攻撃力を0にする!」

 

 《可変機獣 ガンナードラゴン》に紫色のオーラが纏わりつき、《可変機獣 ガンナードラゴン》はくたびれた様に首を下ろす。

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》

攻1400 → 攻撃 0

 

「そして魔法カード《機械複製術》を発動! 俺様のフィールドの攻撃力500以下の機械族モンスターの同名モンスターをデッキから2体まで特殊召喚する! 並び立て! 2体の《可変機獣 ガンナードラゴン》!!」

 

 《可変機獣 ガンナードラゴン》は首と尻尾で器用に忍術の印を組み始める。

 

 すると2つの煙の柱が立ち、傷一つない《可変機獣 ガンナードラゴン》2体が1体目の《可変機獣 ガンナードラゴン》と同じポーズで現れた――ニンニン。

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》×2

星7 闇属性 機械族

攻2800 守2000

 

「セットモンスターを反転召喚! 出番だぜ! 《メカ・ハンター》!」

 

 クルリと空中で羽根を広げ宙返りした球体のボディの《メカ・ハンター》が7本のアームを開き空中に浮かぶ。

 

《メカ・ハンター》

星4 闇属性 機械族

攻1850 守 800

 

「そして罠カード《ゲットライド!》を発動! 墓地のユニオンモンスター《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を《メカ・ハンター》に装備し、そのモンスター効果で攻撃力・守備力は500ポイントアップ!!」

 

 球体の《メカ・ハンター》に《強化支援メカ・ヘビーウェポン》は仮面のように取り付く。

 

 《メカ・ハンター》は自身の剣を鏡のように使いその様子を確認している――尻尾のように揺れるアームを見るに気に入っているようだ。

 

《メカ・ハンター》

攻1850 守 800

攻2350 守1300

 

「バトルだ! まずは攻撃力0の《可変機獣 ガンナードラゴン》で《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》に攻撃だ!」

 

 歪んだ首を振り回し《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》に叩きつける。

 

 その一撃を色白な妹が魔法の壁で弾き、色黒の姉が《可変機獣 ガンナードラゴン》に攻撃せんと飛び上がる。

 

「お得意の《機甲部隊の最前線》の効果で新たなモンスターを呼ぶのデスネ? しかし! 《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》には戦闘ダメージを与えた時、相手の手札を1枚捨てさせる効果がありマース! ただでは呼ばせマセーン!」

 

 魔法の弾丸が《可変機獣 ガンナードラゴン》とキースに迫る。

 

「折込積みさ! 永続罠《スピリットバリア》を発動! 俺様のフィールドにモンスターが存在する限り、こっちが受ける戦闘ダメージは0だ!」

 

 キースを庇うように身を丸めた《可変機獣 ガンナードラゴン》に魔法の弾丸が衝突する。

 

「Oh~躱されてしまいまシタネ」

 

「まずは罠カード《アルケミー・サイクル》の効果を受けたモンスターが破壊された時、カードを1枚ドローする! そしてモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果でさらにもう1枚ドロー!」

 

 《可変機獣 ガンナードラゴン》の残骸を掻き分けるように蠢く影。

 

「そして永続魔法《機甲部隊の最前線》の効果で破壊された《可変機獣 ガンナードラゴン》以下の攻撃力を持つモンスターを特殊召喚! 待ちに待ったデュエルだぜ! 《リボルバー・ドラゴン》!」

 

 キースと共にもっとも長く戦った《リボルバー・ドラゴン》がペガサスとキースの再戦を喜ぶようにリボルバーをカラカラ回す。

 

《リボルバー・ドラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2600 守2200

 

「せっかく現れたトゥーンとやらには消えてもらうぜ! 《メカ・ハンター》! 仇を討ってやりな!」

 

 《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》の姉妹の間を通り抜けるように飛んだ《メカ・ハンター》は通り抜けざまに両翼で姉妹それぞれを弾き飛ばす。

 

ペガサスLP:6000 → 5550

 

「Oh! No! ワタシの可愛いトゥーンが! ……デ・ス・ガ」

 

 そして《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》は目を回しながら倒れるが、その後フラフラと立ち上がった。

 

「破壊されねぇだと!」

 

 滑空しながら不思議そうに様子を見る《メカ・ハンター》を見て、腹を抱えケラケラと笑う《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》。

 

「これが『トゥーンモンスター』の特性なのか?」

 

 いまいち状況が呑みこめないキースにペガサスは得意げに語る。

 

「ワタシのトゥーンは無敵デース! 《トゥーン・キングダム》の効果によりワタシのトゥーンモンスターが破壊される代わりに破壊されるモンスター1体につき1枚、ワタシのデッキの上からカードを裏側表示で除外しマース!」

 

「なるほどな……」

 

「それだけではありマセーン。カードが除外されたので永続魔法《魂吸収》の効果でライフを回復しマース」

 

ペガサスLP:5550 → 6050

 

「《トゥーン・キングダム》と《魂吸収》のコンボで生半可な攻撃は逆効果ってわけか――だったらサンドバックになってな! 《リボルバー・ドラゴン》で攻撃! ガン・キャノン・ショット!!」

 

 《リボルバー・ドラゴン》から放たれた銃弾を上体を後ろに倒しながら回避する《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》。

 

 通り過ぎた弾丸はペガサスに直撃する。

 

ペガサスLP:6050 → 5350

 

「No!! ですがこれもワタシのトゥーンを守るため――平気デース!」

 

 《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》はペガサスに感謝のウインクをした後、逆再生のように上体を起こす。

 

「《トゥーン・キングダム》の効果で代わりにデッキのカードを除外し、さらに《魂吸収》の効果でライフを回復しマース」

 

ペガサスLP:5350 → 5850

 

「なら蹴散らしな! 2体目の《可変機獣 ガンナードラゴン》!!」

 

 《可変機獣 ガンナードラゴン》の頭と背のキャノン砲が火を噴くが、《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》が姉妹で「O」の文字を作りその穴を砲弾が通り抜けペガサスに命中する。

 

 まるでトゥーンたちがペガサスを攻撃したかの……いや、よしておこう。

 

「無駄デース! 《トゥーン・キングダム》の効果で代わりにデッキのカードを除外し、さらに《魂吸収》の効果でライフを回復デース」

 

ペガサスLP:5850 → 4950 → 5450

 

「くっ、ターン制限はねぇようだな……3体目の《可変機獣 ガンナードラゴン》も攻撃だ!」

 

 再び繰り返される《可変機獣 ガンナードラゴン》の攻撃、回避する《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》、攻撃が直撃するペガサス。

 

「何度やろうと同じことデース! 《トゥーン・キングダム》の効果で代わりにデッキのカードを除外し、さらに《魂吸収》の効果でライフを回復デース」

 

ペガサスLP:5450 → 4550 → 5050

 

「大したダメージが与えられねぇな……だが効果破壊ならどうだ? 《リボルバー・ドラゴン》の効果で《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》を破壊して――」

 

 狙いを定める《リボルバー・ドラゴン》だが――

 

「そうはいきマセーン! 《トゥーン・キングダム》がある限り、ワタシの『トゥーンモンスター』は相手の効果の対象にならないのデース!」

 

 《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》は本の中に引っ込んでしまった――これでは狙えない。

 

「クッ……俺様はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 キースは『トゥーンモンスター』の厄介さに攻めあぐねていた。

 

 その隙を逃すペガサスではない。

 

「Stop! そのエンドフェイズ時にワタシは永続罠《闇次元の解放》を発動し除外された闇属性モンスターを特殊召喚しマース!」

 

「呼ばれたターン攻撃できねぇデメリットを回避しやがったか!」

 

「Yes! ご明察デース! 現れなさい、愛らしき魔術師! 《トゥーン・ブラック・マジシャン》!!」

 

 《トゥーン・キングダム》が新たなページをめくり、次元にゲートを開けたようなページから遊戯の象徴たる《ブラック・マジシャン》がデフォルメされた、最上級魔術師《トゥーン・ブラック・マジシャン》がペコリとお辞儀をして並び立つ。

 

《トゥーン・ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

「さらに罠カード《トゥーン・マスク》も発動しマース!」

 

 赤い帽子をかぶった緑色のマスクが《可変機獣 ガンナードラゴン》に取り付き蠢く。

 

「なんだコイツはっ!」

 

「このカードはワタシのフィールドに《トゥーン・ワールド》があるとき相手のモンスターのレベル以下のレベルをもつ『トゥーンモンスター』1体を手札及びデッキから召喚条件を無視して特殊召喚しマース!」

 

「俺様の《可変機獣 ガンナードラゴン》のレベルは7!」

 

「行きますヨ! そのブレスと同じ熱き心を示しなサーイ! レベル7! 《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》!」

 

 再び《トゥーン・キングダム》の新たなページがめくられ、溶岩が溢れだす火山のページが開く。

 

 その火口から《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》をデフォルメした《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》が元気よく飛び出し腕を突き上げ、他のトゥーンもそれに続き手を突き上げ交差させる。

 

《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》

星7 闇属性 ドラゴン族

攻2400 守2000

 

「城之内のヤツのカードまで……」

 

「キース、これからアナタに『トゥーン』の恐ろしさをたっぷりと味わわせてあげマース。最後に永続罠《破滅へのクイックドロー》を発動デース」

 

「望むところだ!」

 

「では……ワタシのターン、ドローしますが……その前に永続罠《破滅へのクイックドロー》の効果が発動されマース!」

 

 永続罠《破滅へのクイックドロー》の周りで「ジャジャーン」と両の手を使って指し示す3体のトゥーンたち。

 

「このカードが存在する限りお互いのプレイヤーはドローフェイズ開始時に手札が0枚のとき、通常のドローに加えてもう1枚ドローする事ができマース! 2枚ドローデース!」

 

「チッ……実質テメェだけのドローになりそうだな……」

 

 キースの手札は永続魔法《補給部隊》によりそう途切れることはない。

 

「そしてドロー時に《強欲なカケラ》に1つめの強欲カウンターが乗りマース」

 

 壺の欠片が《強欲な壺》を半分、形作る。

 

強欲カウンター:0 → 1

 

「まずワタシは魔法カード《マジック・プランター》を発動し永続罠《闇次元の解放》を墓地に送り2枚ドローデース!」

 

 《闇次元の解放》がフィールドから離れたことで次元の穴が開く。

 

「《闇次元の解放》がフィールドから離れたので、この効果で呼び出した《トゥーン・ブラック・マジシャン》は破壊され除外されますが――」

 

 次元の穴に吸い込まれそうになる《トゥーン・ブラック・マジシャン》――《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》と《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》がその手を懸命に引っ張る。

 

「《トゥーン・キングダム》の効果で破壊されねぇから除外もされねぇ訳か……」

 

「Yes! 《トゥーン・キングダム》の効果で代わりにデッキのカードを除外し、さらに《魂吸収》の効果でライフを回復デース」

 

ペガサスLP:5050 → 5550

 

 《トゥーン・ブラック・マジシャン》は本の中に逃げ込み、異次元の穴が塞がるのを本の隙間から見てホッと胸を撫で下ろす。

 

「此処で永続魔法《フィールドバリア》を発動しマース。この効果で互いはフィールド魔法を発動できず破壊することもできマセーン!」

 

 そんな中、《トゥーン・キングダム》を透明なバリアが包みフィールド全体に広がった。

 

「余程その絵本が大事らしいな」

 

「もちろんデース! 《トゥーン・ワールド》は『トゥーンモンスター』たちの世界そのものなのデース!」

 

 キースの予想にペガサスは笑顔でそう答える。

 

「ではトゥーンのさらなる力をお見せしマース! ワタシは《トゥーン・ブラック・マジシャン》の効果を発動!」

 

 本から出た《トゥーン・ブラック・マジシャン》が杖をクルクルと回転させながら空中に魔法陣を描く。

 

「それにより1ターンに1度、手札から『トゥーン』カード1枚を捨て、

デッキからこのカード以外の『トゥーンモンスター』1体を召喚条件を無視して特殊召喚するか、デッキから『トゥーン』魔法・罠カード1枚を手札に加えマース。

ワタシは新たなモンスターを呼び出しマース!」

 

 《トゥーン・ブラック・マジシャン》が《トゥーン・キングダム》に杖をかざす。

 

「《トゥーン・キャノン・ソルジャー》を捨て、デッキより特殊召喚! 起動しなサーイ! トゥーンマシン! 《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》!!」

 

 すると新たなページがめくられ、秘密基地のような工場のページが開かれ、カタパルトから《リボルバー・ドラゴン》をデフォルメした明るい色合いの《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》が射出され、3つの銃口から空に花火を打ち上げる。

 

《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2600 守2200

 

「俺様のカードまで……」

 

 ペガサスが繰り出すトゥーンはどれもこの大会に集ったデュエリストたちのものである。

 

 どこか運命を感じさせる。

 

「そして《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》の効果でフィールド上のカード1枚に狙いを定めマース! ワタシが選ぶのは《スピリットバリア》! ロシアン・ルーレット!!」

 

 《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》のリボルバーが回転を始めた。

 

 《リボルバー・ドラゴン》と同じように2枚以上表が出ればキースを守る《スピリットバリア》は破壊される。

 

 銃身から紐にいくつかの旗が付いたものが飛び出す――当たりなのかハズレなのか判断し難い。

 

「Oh No! ハズレデース」

 

 肩を落とす《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》を他のトゥーンたちがその肩を叩き慰める。

 

「バトル! デスガ……《スピリットバリア》がある限り『トゥーンモンスター』の効果でダイレクトアタックをしても意味がありませんネ」

 

 トゥーンたちは考え込む仕草を見せるペガサスの様子をうかがっている。

 

「ならモンスターを減らすとしマース! 《メカ・ハンター》を攻撃しなサーイ 《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》! 黒・炎・弾!!」

 

 《メカ・ハンター》に《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》の球体のブレスが迫る。

 

 だが《メカ・ハンター》の顔に張り付いている《強化支援メカ・ヘビーウェポン》のせいで視界が狭く回避が遅れ、火だるまになる《メカ・ハンター》。

 

「だが《スピリットバリア》のおかげでダメージはねぇ! そして《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を代わりに破壊し《メカ・ハンター》は無傷だ!」

 

 火だるまの《メカ・ハンター》は仮面をパージし炎から逃れた。

 

《メカ・ハンター》

攻2350 → 攻1850

 

「なら《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》で《メカ・ハンター》を攻撃デース!」

 

 《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》が《メカ・ハンター》の周りをクルクルと回り、攻撃目標を絞り切れなかった《メカ・ハンター》は目を回しながら地面へと落ちていった。

 

「だがモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果でさらにもう1枚ドロー! そしてさらに永続魔法《機甲部隊の最前線》で攻撃力以下のモンスターを特殊召喚! 《振り子刃の拷問機械》を守備表示で特殊召喚!」

 

 巨大な振り子刃を敵に向けつつ、腕を交差し防御の構えを取る《振り子刃の拷問機械》――だが状況的に生きて帰れそうにない。

 

《振り子刃の拷問機械》

星6 闇属性 機械族

攻1750 守2000

 

「なら《トゥーン・ブラック・マジシャン》! 《振り子刃の拷問機械》を破壊しなサーイ! ブラック・マジック!」

 

 《トゥーン・ブラック・マジシャン》が目を閉じ杖に魔力を溜める――周りのトゥーンたちが応援のつもりなのか何やらガヤガヤはやし立てている。

 

 そして形成した魔力弾を天に掲げ杖を大きく振り被り身体全体を使って放った。

 

 爆散する《振り子刃の拷問機械》、勢い余って倒れそうになる《トゥーン・ブラック・マジシャン》を支えるトゥーンたち。

 

「バトルを終了し、《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》の効果を発動! 手札からこのカード以外のトゥーンモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚しマース!」

 

 《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》は咆哮を上げ新たな仲間に呼びかける。

 

 その声に《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》は目を回し、《トゥーン・ブラック・マジシャン》は目をギュッと閉じながら両耳を手で塞ぐ。

 

「呼び出すのはこのカードデース! 美しくも愛らしき白き龍! 《ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン》!」

 

 《トゥーン・キングダム》のページがめくれ新たなページが開き、《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》が花火を打ち上げる。

 

 そのページは光り輝く神々しい城。

 

 そこから《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》をデフォルメした《ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン》が胸を張りのそのそと歩み出る。

 

 そして他のトゥーンたちとハイタッチを交わしていく。

 

《ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン》

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「伝説のブルーアイズまでとはな……」

 

 フィールドに並ぶトゥーンたちにペガサスは御満悦だ。

 

「5体のトゥーンたちが並んだ姿は壮観デース! 最後に魔法カード《タイムカプセル》を発動し、デッキからカードを1枚裏側表示で除外し、ワタシの次の2回目のスタンバイフェイズ時に手札に加えマース! そしてカードが除外されたことで《魂吸収》の効果でライフを回復デース」

 

 ミイラを収める柩のような《タイムカプセル》に1枚のカードが収納される。

 

ペガサスLP:5500 → 6050

 

「そしてエンドフェイズ時に《破滅のクイックドロー》の維持コストを払いマース! ターンエンドデース!」

 

ペガサスLP:6050 → 5350

 

 自身のフィールドに5体の『トゥーンモンスター』を並べターンを終えたペガサス。

 

 久々の強者とのデュエルに意気揚々と問いかける。

 

「さぁ、キース! ワタシの無敵のトゥーンモンスター相手にどう立ち向かいマスカ!」

 

「無敵……か。そんなモンはねぇと証明してやるさ! 俺様のターン! ドロー!」

 

 デュエルの戦歴だけならばデュエリストとしてほとんど隠居した状態であるペガサスよりもキースの方が圧倒的に密度は高い。

 

 それゆえにキースは「無敵」などと言うものはまやかしに過ぎないと考えていた。

 

「速攻魔法《帝王の烈旋》を発動! その効果でアドバンス召喚の際のリリースをテメェのモンスターで行える! そしてコイツの効果は対象に取らねぇ効果! 《トゥーン・キングダム》じゃあ防げねぇぜ!」

 

「Oh! ワタシのトゥーンが!」

 

「テメェの《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》をリリースしてアドバンス召喚! 幻想の世界を打ち抜きな! 《ブローバック・ドラゴン》! そして効果を発動! 《フィールドバリア》を狙うぜ! コイントス!」

 

 《トゥーン・リボルバー・ドラゴン》の内側から食い破るように現れた《ブローバック・ドラゴン》は頭部の拳銃を《トゥーン・キングダム》を守る《フィールドバリア》に狙いを定める。

 

《ブローバック・ドラゴン》

星6 闇属性 機械族

攻2300 守1200

 

「その『無敵』のタネは《トゥーン・キングダム》あってのことだ! さっさと破壊させてもらうぜ!」

 

「ですがそう上手く成功するとは限りマセーン!」

 

 そのペガサスの言葉に《ブローバック・ドラゴン》は当てて見せると引き金を引くが、弾は出ない――ハズレだ。

 

 悔しげに膝をつく《ブローバック・ドラゴン》。

 

「ならバトルだっ! 《リボルバー・ドラゴン》と《可変機獣 ガンナードラゴン》2体で《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》を攻撃するぜ!」

 

 《リボルバー・ドラゴン》の3つの銃弾と《可変機獣 ガンナードラゴン》の無数のミサイルが放たれ《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》を襲う。

 

 その弾幕を《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》は身体を軟体動物のように滑らせながら回避。

 

 回避した弾幕がペガサスを襲う。

 

「NoOOO!! ですが《トゥーン・キングダム》の効果で代わりにデッキのカードを除外し、さらに《魂吸収》の効果でライフを回復デース!!」

 

 3枚のカードがデッキトップから魂のように浮かび上がりペガサスの糧となる。

 

ペガサスLP:5350 → 4650 → 5150 → 4250 → 4750 → 3850 → 4350

 

 ダメージと回復を挟み目まぐるしく増減するペガサスのライフだが、キースの最上級モンスターの3度の攻撃を受けたのにも関わらず削れたライフはたった1000ポイント。

 

――遠いな……

 

 キースはそう思わずにはいられない。

 

「なら《ブローバック・ドラゴン》で《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》を攻撃だ!」

 

 《ブローバック・ドラゴン》がキースの為に特攻をかけ、《レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン》の滑空からのとび蹴りの前に沈む。

 

「《補給部隊》の効果で1枚ドロー! そして《機甲部隊の最前線》の効果で《ツインバレル・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚! そして効果を発動! もう一度《フィールドバリア》を狙う!」

 

 《ブローバック・ドラゴン》よりも一回り以上小さくなった《ツインバレル・ドラゴン》が飛び出しその身を伏せ、《フィールドバリア》を狙う。

 

《ツインバレル・ドラゴン》

星4 闇属性 機械族

攻1700 守 200

 

「その効果の成功率は決して高いものではありマセーン! そして今日のワタシは運命の女神に愛されていマース!」

 

 そう言って観客席のシンディアを視界に入れるペガサス。

 

 ギャンブル効果の結果は《ツインバレル・ドラゴン》の頭の小型の拳銃が「ポスッ」と音を立てたことが何よりの証――つまりハズレである。

 

「俺様はカードを1枚伏せてターンエンドだ……」

 

 互いに決定的なダメージが通らぬまま、キースはターンを終えた。

 

 






レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン 爆誕!
城之内「おおー! 俺のレッドアイズだ!!」
静香「本当! 可愛い!」

ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン 降臨!
海馬「おのれペガサス……よくも俺のブルーアイズを惨めな姿に……」
モクバ「(可愛いと思うんだけどなー)」

何故なのか……



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