前回のあらすじ
まさかの中編、デュエルが長くなってしまった
そしてデュエルは万能のコミュニケーションツールであることが証明されました
徐々に追い詰められていく遊戯――だがカードを引く手に動揺は見られない。
「俺のターン、ドロー! まずは墓地の《置換融合》を除外し効果を発動!! それにより墓地の融合モンスターである《天翔の竜騎士ガイア》をエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!!」
渦の中から半透明な《天翔の竜騎士ガイア》が遊戯のエクストラデッキに戻り、駄賃代わりとデッキのカードを手渡す。
「よしっ! 俺はさらに魔法カード《マジック・プランター》を発動し、俺のフィールドの永続罠《蘇りし魂》を墓地に送り2枚ドローだ!」
フィールドに現れた沼地は《蘇りし魂》をズブズブと沈め、代わりに泥の中から2枚のカードを吐き出す。
そして遊戯は引いたカードを見て攻勢に移る。
「魔法カード《死者蘇生》を発動! それにより墓地のモンスターを呼び戻すぜ! もう1度、力を貸してくれ! 《ブラック・マジシャン》!」
横に1回転ターンしながら現れた《ブラック・マジシャン》は「何度でも力になる」と言わんばかりに杖を構えた。
《ブラック・マジシャン》
星7 闇属性 魔法使い族
攻2500 守2100
「さらに俺のフィールドに《ブラック・マジシャン》が存在するとき、手札の魔法カード《
《ブラック・マジシャン》から放たれた数多のナイフが《リボルバー・ドラゴン》に突き刺さるも、その装甲を突き抜けることはない。
だが《ブラック・マジシャン》が指を鳴らすと数多のナイフは連鎖的に爆発を起こし《リボルバー・ドラゴン》の関節を破壊――その巨躯は倒れ伏した。
「こうもあっさり《リボルバー・ドラゴン》を片付けられるとはな……」
「行けっ! 《ブラック・マジシャン》! キースにダイレクトアタック!
キースのライフを削りきる球体状の黒い魔力弾。だがその姿は謎の扉に防がれる。
「させねぇよ! 相手のダイレクトアタック時、罠カード《カウンター・ゲート》を発動するぜ! コイツによりその攻撃は無効だ! そして俺様はデッキから1枚ドローし、そいつがモンスターなら表側攻撃表示で通常召喚する!」
黒い魔力弾を防いだ扉――ゲートが開くとそこから脳のような外見をした不気味なモンスターが触手をしならせ飛び出し、触手を器用に使って扉を閉める。
《融合呪印生物-闇》
星3 闇属性 岩石族
攻1000 守1600
「俺様が引いたのは《融合呪印生物-闇》。よって通常召喚される」
「くっ! これでもダメだったか……なら俺はカードを2枚セットしターンエンドだ」
キースの永続魔法の布陣を突破し、大打撃を与えた筈の状況で攻め続ける遊戯。
だが残り僅か100ポイントのライフが削り切れない。
遊戯の戦況は悪くはないがその心の言い得ぬ「淀み」が振り払えなかった。
「なら俺様のターンだ。ドロー! まずは永続罠《強化蘇生》を発動! 墓地のレベル4以下の《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を蘇生させる! その効果でレベルが1つ上がり攻撃力・守備力が100上がる!」
ジェット機のようなマシンが地面を押しのけて赤いオーラを纏いながら空を飛ぶ。
《強化支援メカ・ヘビーウェポン》
星3 闇属性 機械族
攻 500 守 500
↓
星4 攻 600 守 600
「そして魔法カード《マジック・プランター》を発動し、永続罠《強化蘇生》を墓地に送り2枚ドロー! 《強化支援メカ・ヘビーウェポン》のレベルと攻撃力・守備力は元に戻る」
赤いオーラの無くなった《強化支援メカ・ヘビーウェポン》は急激に速度を落とし、ノロノロと地面近くをホバリングしつつ、キースにカードを射出する。
《強化支援メカ・ヘビーウェポン》
星4 攻 600 守 600
↓
星3 攻 500 守 500
キースは引いたカードを見てプランを立てる
――
「まずは《キャノン・ソルジャー》を通常召喚! そして《融合呪印生物-闇》の効果を発動!」
二度目の登場を見せる《キャノン・ソルジャー》。
「真の力を見せてやる」と言わんばかりに自分から《融合呪印生物-闇》の触手に身をゆだねた。
《キャノン・ソルジャー》
星4 闇属性 機械族
攻1400 守1300
「その効果により《キャノン・ソルジャー》と共にコイツをリリースすることで条件にあった融合モンスターを特殊召喚する! 立ち塞がる壁を突き崩せ! 《迷宮の魔戦車》!!」
《キャノン・ソルジャー》の身体を覆った《融合呪印生物-闇》が内側からのドリルの一撃により砕け散り、《迷宮の魔戦車》が突き進む。
《迷宮の魔戦車》
星7 闇属性 機械族
攻2400 守2400
「さらに通常魔法《オーバーロード・フュージョン》を発動! 今墓地に送られた《キャノン・ソルジャー》と《融合呪印生物-闇》を除外し融合召喚を行う!」
キースのフィールドにスパークが奔り、新たなマシンを呼び寄せる。
「そうはさせないぜ! リバースカードオープン! 永続罠《王宮の鉄壁》! このカードがフィールドにある限り、カードを除外することはできないぜ! よって《オーバーロード・フュージョン》の効果も発動できない!」
王の一喝によりスパークは収束していき、その姿を消した――これでキースの除外戦術は封じられた。
だが王者の歩みは止まらない。
「だったら《強化支援メカ・ヘビーウェポン》の効果を発動し、《迷宮の魔戦車》に装備しパワーアップ!!」
《強化支援メカ・ヘビーウェポン》がドリル状に変形し《迷宮の魔戦車》のドリルにドッキング――そのドリルの次元を一段階上げる。
《迷宮の魔戦車》
攻2400 守2400
↓
攻2900 守2900
「バトルだ! 《迷宮の魔戦車》で《ブラック・マジシャン》を攻撃だ! ドリル・バニッシャッーー!!」
《迷宮の魔戦車》がそのドリルを唸らせ《ブラック・マジシャン》を貫かんとキャタピラを走らせる。
「させないぜ! 罠カード《ブラック・イリュージョン》を発動! これで俺のフィールドの攻撃力2000以上の魔法使い族・闇属性モンスターである《ブラック・マジシャン》はターン終了時まで、戦闘では破壊されず、相手の効果を受けない!」
「BM」と書かれた盾から《ブラック・マジシャン》を覆うように紫のバリアが展開される。
そしてその盾に《迷宮の魔戦車》のドリルが火花を散らしながら衝突する。
「これで俺の《ブラック・マジシャン》は破壊されないぜ!」
「だがダメージは受けてもらうぜ――それも特大のダメージをなぁ! ダメージ計算時、手札から速攻魔法《リミッター解除》を発動! これで俺様のフィールドの機械族モンスターの攻撃力は2倍だ!!」
《迷宮の魔戦車》のリミッターが外され限界を超えた螺旋の力がその身に宿る。
《迷宮の魔戦車》
攻2900 → 攻5800
そのドリルの攻撃力は5800、今の遊戯のライフを削り取り切れる螺旋力だ。
そして《ブラック・イリュージョン》の盾を打ち破ったドリルの衝撃が遊戯を襲った。
――やったか?
必殺を賭けたキースの攻撃。
確かな手ごたえを感じたキースだが煙が晴れるとそこにはライフが一切変動していない遊戯が立っていた。
「――防ぎやがった……となると、あのカードを握ってやがったな?」
攻撃が防がれた理由を遊戯のたった1枚残された手札から推察するキース。
「――そうさ! 俺は《クリボー》の効果を発動した! これでダメージは0だ!」
遊戯の前で小さな腕を広げ目を回す黒い毛玉《クリボー》がいた。
「最後に隠してやがったか。だったらカードを2枚セットしてターンエンド。エンド時に《リミッター解除》の効果を受けた《迷宮の魔戦車》は破壊されるが、装備された《強化支援メカ・ヘビーウェポン》の効果で代わりにコイツを破壊するぜ……そして攻撃力は元に戻る」
《迷宮の魔戦車》
攻5800 守2900
↓
攻2400 守2400
キースの猛攻を防ぎ切りようやく遊戯のターンとなる。
そして海馬のデュエルの時のラストターンと同じく手札は0。
だがあの時とは違い墓地で発動できるカードなどは使い切ってしまっている。
頼みの綱は相棒たる魔術師のみ、だがそれだけではキースの3枚のセットカードを突破することは厳しい。
敗北の足音が遊戯の耳に届く。
――負けるのか……
敗北の可能性を考え遊戯の闘志に揺らぎが生まれる。
「…………俺のターン! ドロー! ……クッ!」
そして一縷の望みをかけて引いたカードはあまりにもハイリスクなカード。
このカードを発動せず《ブラック・マジシャン》でガードを固め次のターンに賭けるべきか、そう考えてしまう遊戯。
そして遊戯の闘志が膝を屈しそうになったその時、
胸に拳をあてたキースの姿が目に映った――それはデュエルに迷いの見えた遊戯へのメッセージ。
――挫けそうなときは、今まで共に戦ってきたヤツを思い出しな……そいつを忘れんじゃねぇ
そんなキースの言葉なき言葉を読み取った遊戯――デュエリストには声に出さずとも分かり合える。
遊戯が共に戦い支えてくれていたのはデッキのカードだけではない。
城之内たち親友の存在。
ライバルとして互いを高め合った海馬を含めた数々のデュエリストたち。
そして相棒である表の遊戯。
そんな彼らの想いを遊戯はデュエルを通して受け継いでいる――それを強く意識する。
遊戯の闘志の揺らぎはいつの間にか消えていた。
今の手札では足りない――紡いできた想いに応えるには。
「俺は今引いた魔法カード《カップ・オブ・エース》を発動! コイントスを1回行い表が出れば俺はカードを2枚ドローし、裏が出た時は相手がカードを2枚ドローする!」
遊戯が発動したのは相手に2枚のドローをもたらす可能性のあるカード。
今現在攻勢に出ることのできない遊戯がこの状況でキースに2枚の手札を渡す結果となればどうなるか。それが分からぬ遊戯ではない。
しかも仮に遊戯が2枚のドローに成功しても引いたカード次第では何もできずにキースにターンを明け渡すことになる――その1ターンを逃すキースではない。
そんな遊戯の命運を賭けフィールドに現れた聖杯がクルクルと回転を始める。
「腹は決まったみてぇだな……」
「ああ、俺はこのカードに全てを賭けるぜっ!!」
そして回転の止まった聖杯の向きは正位置――つまりコイントスの表である。
「《カップ・オブ・エース》の効果で2枚ドローする!」
その宣言と共に遊戯はデッキに手をおき目を閉じる――このドローに自分たちの全てを乗せるために……
「ドロォオオーー!!」
力強く引いたカードを見て遊戯の心は震える――それは友の魂を呼び寄せるカード。
「俺は《
遊戯LP:2700 → 1700
「FUSION」と書かれたカップ麺が小さな爆発と共に現れる。
「熱き友の想いと共に俺に力を貸してくれ! 《炎の剣士》!!」
そしてカップ麺を切り裂き、熱き友の化身が姿を現した。
《炎の剣士》
星5 炎属性 戦士族
攻1800 守1600
「ソイツは城之内のカードッ!」
これまでの遊戯のデュエルを見ていたキースはそれが遊戯の《炎の剣士》ではなく城之内のものだと直感した。
警戒するキースをよそに遊戯は更なるカードを発動する。
「さらに俺は魔法カード《融合》を発動するぜ! フィールドの《ブラック・マジシャン》と《炎の剣士》で融合召喚! 黒衣の騎士よ! 今こそ姿を現せ! これが
その身を炎に変えた《炎の剣士》が《ブラック・マジシャン》を包み込み主を守る新たな剣として生まれ変わらせる。
そして黒衣の騎士が熱を帯びた剣を振り、赤く縁取られた盾を前に半身で佇む。
《黒炎の騎士-ブラック・フレア・ナイト-》
星6 闇属性 戦士族
攻2200 守 800
「攻撃力が下がってる、だと?」
融合召喚された、素材の《ブラック・マジシャン》の攻撃力より低いステータスを持ったカードに何かあるとさらに警戒を強めるキース。
「さぁ、バトルだ! 《黒炎の騎士-ブラック・フレア・ナイト-》で《迷宮の魔戦車》を攻撃!
剣を横に構え《迷宮の魔戦車》へと疾走する《黒炎の騎士-ブラック・フレア・ナイト-》。
その剣を《迷宮の魔戦車》のドリルに突き立て貫こうとするが、回転を始めたドリルにその身を貫かれ倒れ伏した。
「だがブラック・フレア・ナイトの戦闘によって発生するこのカードのコントローラーへのダメージは0になる!」
「と、すると――戦闘で破壊されることをトリガーにするモンスターか!」
「その通りだぜ! 《黒炎の騎士-ブラック・フレア・ナイト-》が戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキまたは手札から《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》を1体特殊召喚する!」
遊戯の
「
現れるは炎より歩み出る
《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》
星8 光属性 戦士族
攻2800 守2000
キースのデュエリストの経験が新たな戦士の存在に警鐘を鳴らす。
「だったら罠カード《苦渋の黙札》を発動! 俺様は《迷宮の魔戦車》をリリースし、カード名が異なる元々の種族・属性・レベルが同じモンスター1体を俺様のデッキ・墓地から選んで手札に加える! 俺が手札に加えるのは《リボルバー・ドラゴン》!!」
《迷宮の魔戦車》が地面を掘り進め、そこから《リボルバー・ドラゴン》がキースの手札に舞い戻る。
このタイミングでキースの相棒たるカードを手札に加えたと言うことは残りのセットカードの一つはそれを呼び寄せるためのカードであると遊戯は予測する。
だが親友との友情のカードならば、と突き進んだ――立ち止まるわけにはいかない。
「これで最後だ! 《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》でダイレクトアタック!」
《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》がその手の金色の鎌を振りかぶり跳躍する。
「させるかよ! テメェの攻撃宣言時! リバーストラップ、オープン!!」
「やはり来たか!」
――罠カード《ヒーロー見参》が!
遊戯の予測通り手札の《リボルバー・ドラゴン》を呼び出すためのカード
その効果によりキースの手札からランダムに選ばれたカードがモンスターならば特殊召喚できる――そしてキースの手札は《リボルバー・ドラゴン》1枚のみ。
「コイツの効果により手札からモンスターカードを特殊召喚するぜ! 最後のひと踏ん張りだ! 現れろ! 《リボルバー・ドラゴン》!!」
キースのピンチに駆け付るキースの魂のカード――
《リボルバー・ドラゴン》
星7 闇属性 機械族
攻2600 守2200
「だが攻撃力は《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》が上だ! 《リボルバー・ドラゴン》に攻撃しろ! ミラージュ・ナイト!!」
金の鎌が鉄の機械龍の首を狩り取らんと振りかぶられる。
「やらせるかよっ! 最後のリバースカードオープン! 罠カード《ゲットライド!》を発動ォ!」
《リボルバー・ドラゴン》の背後に影が映る。
「墓地のユニオンモンスター《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を《リボルバー・ドラゴン》に装備し、その効果で攻撃力・守備力は500アップポイントアップ!! これで返り討ちだぜ!!
その影の正体である《強化支援メカ・ヘビーウェポン》が《リボルバー・ドラゴン》にドッキングしその性能を引き上げる。
《リボルバー・ドラゴン》
攻2600 守2200
↓
攻3100 守2700
《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》の攻撃力を超えた《リボルバー・ドラゴン》は迎撃の銃弾を放つ。
――だが幻影の騎士の鎧が怪しく光る。
「まだだ! ダメージ計算時、《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》の効果を発動! このカードの攻撃力に相手モンスターの元々の攻撃力を加えるぜ! ミラージュ・サルベージション!!」
《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》に着弾した銃弾はその金の鎧に吸い込まれ、鎧を通じ鎌に機械龍の力が伝達され金の鎌に黒い龍の文様が浮かび上がった。
《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》
攻2800 → 攻5400
「なんだとっ!!」
「俺
思わず飛び出た遊戯の咆哮とも取れる声と共に勝利の一撃が《リボルバー・ドラゴン》に迫る――キースの伏せカードはもうない。
しかし、そんな状態でも《リボルバー・ドラゴン》は最後まで銃弾を放つことを止めはしなかった。
そして《幻影の騎士-ミラージュ・ナイト-》の鎌によりその命を刈り取られる。
だが《強化支援メカ・ヘビーウェポン》が身代わりとなり《リボルバー・ドラゴン》の破壊はまぬがれるが、その衝撃による爆風が辺りを覆った。
「そ、そこまで! 決勝戦、勝者――武藤遊戯ィイイ!」
そんなMr.クロケッツの宣言が響く。
それでもなお《リボルバー・ドラゴン》は最後までキースの傍にあり続けた。
キースさんは輝けたかな?