マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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なんとか前編が仕上がったので投稿です


前回のあらすじ
いわれのない風評被害が襲い掛かる!





第29話 太古の王VS異国の王者

「「デュエル!!」」

 

 先攻は遊戯。

 

「俺の先攻! ドロー! 俺は魔法カード《手札抹殺》を発動し互いは手札をすべて捨て、捨てた枚数分ドローする! 俺は5枚捨て、5枚ドロー!」

 

 いきなりの手札交換カード。そしてそれは相手のキースにもプラスに働いてしまう。

 

「俺様も5枚捨てて、5枚ドローだ。ありがとよ! テメェのお蔭で良いカードが舞い込んだぜ」

 

「構わないぜ! 俺は《クィーンズ・ナイト》を攻撃表示で召喚」

 

 紅い鎧を纏った絵札の三騎士が紅一点、《クィーンズ・ナイト》が左右に持ち分けた剣と盾を構え、まだ見ぬ敵に備える。

 

《クィーンズ・ナイト》

星4 光属性 戦士族

攻1500 守1600

 

「そしてカードを3枚伏せて、手札から《命削りの宝札》を発動! 手札が3枚になるようにドロー!」

 

 遊戯はドローした3枚のカードの中から素早く2枚を手に取りセットする。

 

「さらにカードを2枚セットしてターンエンド――エンド時に《命削りの宝札》の効果で残った手札を捨てるぜ」

 

 モンスターの展開はあまりされなかった遊戯のターンだが、そのフィールドには5枚のセットカード――遊戯は盤石の防御と次のターンへの布石があることは容易に見て取れる。

 

 だがキースはそれよりも最初に発動された《手札抹殺》を警戒する。

 

 《手札抹殺》により5枚のカードが遊戯の墓地に送られた――先程の海馬とのデュエルでの決め手となった「墓地で発動するカード」が、である。

 

 何を送ったかは分からないものの早めに使いきらせるべきだと考えを纏める。

 

「俺様のターン、ドロー。ガンガンいかせてもらうぜ! 永続魔法《機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)》2枚と《補給部隊》2枚を発動!」

 

 さっそく発動されるキースのデッキの中核を担うカード、それが2枚。

 

 そして今までのデュエルでは見られなかった《補給部隊》のカード。

 

 遊戯は警戒を見せる。

 

「《可変機獣 ガンナードラゴン》を妥協召喚! だが知ってのとおりリリースなしで召喚されたコイツの元々の攻撃力・守備力は半分になる」

 

 城之内にコンマイ語の洗礼を浴びせた機龍がその赤いボディとキャタピラを走らせドリフトをキメて停車。

 

 だがバランスを崩し横倒れになり、その衝撃で体のパーツが飛び散った。

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2800 守2000

攻1400 守1000

 

「さぁてここからどうなるかは分かるよなぁ……バトルだ! 《可変機獣 ガンナードラゴン》で《クィーンズ・ナイト》に攻撃! 派手にやられてきな!」

 

 そのキースの命令に「任せときな」と言わんばかりにキャタピラを唸らせ起き上がり特攻を敢行する――その姿に迷いは見られない。

 

「迎撃しろ! 《クィーンズ・ナイト》 ブレイク・スラッシュ!!」

 

 突進してきた《可変機獣 ガンナードラゴン》の身体に盾を滑らせながら回避する《クィーンズ・ナイト》。

 

 そしてその勢いのまま《クィーンズ・ナイト》は《可変機獣 ガンナードラゴン》の背に飛び乗り剣を突き刺し、その場を後にする。

 

 中枢を破壊された《可変機獣 ガンナードラゴン》は小さなスパークの後に爆発四散した。

 

キースLP:4000 → 3900

 

「だが2枚の《機甲部隊の最前線》の効果を発動! 破壊された《可変機獣 ガンナードラゴン》の攻撃力以下のモンスターをデッキから呼び出すぜ!」

 

 《可変機獣 ガンナードラゴン》の残骸から2つの影が飛び出す。

 

「俺様が呼び出すのは当然! 2体の機械龍! 《リボルバー・ドラゴン》と《ブローバック・ドラゴン》だ!」

 

 フィールドに降り立つキースの象徴たる2体の機械龍、《リボルバー・ドラゴン》と《ブローバック・ドラゴン》がそれぞれの銃口を《クィーンズ・ナイト》へと向ける。

 

《リボルバー・ドラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2600 守2200

 

《ブローバック・ドラゴン》

星6 闇属性 機械族

攻2300 守1200

 

「さらに自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された時、《補給部隊》の効果でデッキから1枚ドローする。俺様のフィールドの《補給部隊》は2枚、よって2枚ドローだ!」

 

 ゴブリン達がキースの元へ物資を運ぶと慌ただしく持ち場へ戻っていった――戦場に長居したくないらしい。

 

「そぉら追加攻撃と行くぜ! 《クィーンズ・ナイト》を打ち抜きな! 《リボルバー・ドラゴン》! 銃砲撃(ガン・キャノン・ショット)!!」

 

 《リボルバー・ドラゴン》からの3つの銃口が《クィーンズ・ナイト》を狙うも、その姿は3つのシルクハットに隠される。

 

「コイツは確か……」

 

「待ちな。俺はあんたの攻撃宣言時、罠カード《マジカルシルクハット》を発動させてもらったぜ! さぁどいつを攻撃する?」

 

 幾度となく遊戯のピンチを救ってきたカードがキースの猛攻を防がんと立ちふさがる。

 

 だがキースには違和感があった。《可変機獣 ガンナードラゴン》の攻撃時にこのカードを発動していればキースのモンスターの展開を防げたはずである。

 

 遊戯程のデュエリストがミスをしたとは考えにくい――現在の状況からは遊戯の意図が測り切れない。

 

 キースは己の考えを一旦置いておき目の前の攻防に集中する。

 

「なら《リボルバー・ドラゴン》で右のシルクハットを《ブローバック・ドラゴン》で……真ん中のシルクハットに攻撃するぜ!」

 

 右のシルクハットを選択したときの遊戯の僅かな反応からキースは隠れた《クィーンズ・ナイト》の居場所を推測する。

 

 そして《リボルバー・ドラゴン》の放った弾丸は空のシルクハットを打ち抜き、《ブローバック・ドラゴン》の放った弾丸は《クィーンズ・ナイト》を打ち抜いた。

 

「大当たりだぜ。そしてバトルを終了し――」

 

 バトルの終了と共に残りの空のシルクハットが煙のように消え去る。

 

「《ブローバック・ドラゴン》の効果をテメェのセットカードを対象に発動! ロシアン・ルーレット!!」

 

 銃口から銃弾が放たれ遊戯のカードを破壊する――当たりである。だが――

 

「相手の効果で破壊された罠カード《運命の発掘》の効果発動! 自分の墓地の《運命の発掘》の数だけドローするぜ! 俺の墓地には《運命の発掘》が3枚! よって3枚ドロー!」

 

「そいつは梶木のデュエルの時に見せた……クソッ、ツイてねぇな……俺様はカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

 効果の成功がそのまま最良の結果になるとは限らない――デュエルの難しいところだ。

 

 

 そして遊戯は増強された手札で攻勢に移る。

 

「なら俺のターン! ドロー! 相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚! 来いっ! 竜と心を交わす黒騎士!! 《暗黒騎士ガイアロード》!!」

 

 空から2本の真紅の突撃槍と共に黒騎士がフィールドに静かに着地する。

 

《暗黒騎士ガイアロード》

星7 地属性 戦士族

攻2300 守2100

 

「さらに俺はセットしておいた永続罠《強化蘇生》を発動し墓地のレベル4以下のモンスターのレベルを一つ上げ、攻撃力・守備力を100アップさせ呼び戻す! 舞い戻れ! 《クィーンズ・ナイト》!!」

 

《クィーンズ・ナイト》

星4 光属性 戦士族

攻1500 守1600

星5 攻1600 守1700

 

「そして《クィーンズ・ナイト》をリリースしアドバンス召喚! 魔の(いかずち)よ、闇の力の呼び水となれ! 現れろ! 《デーモンの召喚》!!」

 

 雷が《クィーンズ・ナイト》に落ち、その雷撃の中から上級悪魔が歩み出る。

 

《デーモンの召喚》

星6 闇属性 悪魔族

攻2500 守1200

 

「まだだ! 俺は前のターンセットしておいた魔法カード《マジック・プランター》を発動! 俺のフィールドに残った《強化蘇生》を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 引いたカードを見た遊戯はキースの伏せたカードが何であれリカバリーが可能だと攻撃に入る。

 

「バトルだ! 《デーモンの召喚》で《ブローバック・ドラゴン》を攻撃! 魔降雷!」

 

 《デーモンの召喚》から放たれた電撃が《ブローバック・ドラゴン》のあらゆる回路を焼き切り、抵抗の銃弾も放てずに《ブローバック・ドラゴン》は倒れ伏した。

 

キースLP:3900 → 3700

 

「俺様のモンスターが破壊されたことで2枚の《機甲部隊の最前線》と2枚の《補給部隊》の効果を発動! 2枚の《補給部隊》の効果を合わせて2枚ドローし、2枚の《機甲部隊の最前線》の効果で《ブローバック・ドラゴン》の攻撃力以下のモンスターをデッキから呼び出す!」

 

 ゴブリン達がキースの元へドローカードたる物資を運ぶが先程より歩みが遅い。

 

 その荷車には金色の巨大なスロットマシーンと大きな不可思議な時計が乗せられていた――重そうだ。

 

「来なっ! 《スロットマシーンAM(エーエム)-7》! 《タイム・イーター》! 2体とも守備表示だ!」

 

 呼びかけに応じ2体のマシンが荷車から飛び降り、金色の巨躯と時計の魔人が並び立つ。

 

《スロットマシーンAM-7》

星7 闇属性 機械族

攻2000 守2300

 

《タイム・イーター》

星6 闇属性 機械族

攻1900 守1700

 

 その後、ゴブリン達はキースにカードを渡し息も絶え絶えに走り去っていった。

 

「なら《暗黒騎士ガイアロード》で《タイム・イーター》を攻撃! スパイラル・ランス!!」

 

 1本の突撃槍が《タイム・イーター》を襲う。

 

 だが《タイム・イーター》は自身の周囲の時間の流れを変え、動きが遅くなった《暗黒騎士ガイアロード》にその剛腕を振るうが、その拳は相手をすり抜け空を切った――1本の突撃槍だけが地面に「カラン」と音を立て落ちる。

 

 そして腹部に違和感を感じる《タイム・イーター》。

 

 その腹部には1本の突撃槍が背中から腹へと貫通しており、それは《タイム・イーター》と背中を合わせるようにして立つ《暗黒騎士ガイアロード》が貫いたモノ。

 

 《タイム・イーター》は自身が攻撃したのは残像だったことに気付くと同時に倒れ伏した。

 

「俺はバトルを終了し、手札から速攻魔法《魔力の泉》を発動! コイツの効果で相手フィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけドローさせてもらうぜ!」

 

 木造の像から水が溢れ遊戯の手札を潤す――

 

「俺様のフィールドには永続魔法《機甲部隊の最前線》が2枚に《補給部隊》も2枚……表側表示の魔法カードが4枚。いい引きしてやがるな……」

 

 今のお互いのフィールドの状況は《魔力の泉》の効果が大きく発揮される状況であった。

 

「俺は4枚ドロー! そして俺のフィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけ手札を捨てる――俺のフィールドの表側の魔法・罠カードは《魔力の泉》のみ、手札を1枚捨てるぜ!」

 

 溢れ出た水はキースの4枚の永続魔法カードにまで届く。

 

「だが次の相手ターンの終了時まで、相手フィールドの魔法・罠カードは破壊されず、発動と効果を無効化されないがな……」

 

 そしてカードを包み込み、魔力で加護を与えた。

 

「チッ――そいつはありがてぇこった」

 

 だがキースからすれば4枚のドローに比べれば割には合わない。

 

「俺はカードを1枚セットしターンエンドだ」

 

 カードを1枚伏せてターンエンドした遊戯。

 

 互いの手札の枚数にこそ大差はないが、フィールドアドバンテージはキースの有利に変わりない。

 

「フィールドの差が広がってきたんじゃねぇか? 俺様のターン、ドロー! まずは《リボルバー・ドラゴン》の効果を《デーモンの召喚》を対象に発動だ! ロシアン・ルーレット!!」

 

 頭と両手の回転式拳銃のリボルバーが回転を始め、撃鉄が振り下ろされる。その結果は――

 

 轟音と共に放たれた3発の銃弾が《デーモンの召喚》を粉々に粉砕した。当たりである。

 

「そして《キャノン・ソルジャー》を召喚!」

 

 紫のボディが現れ、4本の爪がワシャワシャと動き、背中に取り付けられたキャノン砲がキラリと光る。

 

《キャノン・ソルジャー》

星4 闇属性 機械族

攻1400 守1300

 

「そして《スロットマシーンAM-7》を攻撃表示に変更しバトル! 《リボルバー・ドラゴン》で《暗黒騎士ガイアロード》を攻撃!! ヤツの最後の壁を打ち抜いてやりな!」

 

 放たれる《リボルバー・ドラゴン》の銃弾が《暗黒騎士ガイアロード》の突撃槍を砕き、最後はそれでもなお敵に向かう《暗黒騎士ガイアロード》の額を打ち抜いた。

 

「ぐっ……!」

 

遊戯LP:4000 → 3700

 

「これでテメェのフィールドに壁となるモンスターはいねぇ! この一斉攻撃を喰らいな! まずは《スロットマシーンAM-7》でダイレクトアタックだ!」

 

 金色の巨躯を躍らせレーザー砲を構える《スロットマシーンAM-7》。

 

 だがその攻撃はすんなりとは通らない。

 

「相手のダイレクトアタック時に墓地の《クリアクリボー》を除外し効果発動! デッキから1枚ドローし、ソイツがモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚し代わりに攻撃を受ける!」

 

 その攻撃の前に小さな影が飛び出す。

 

「やっぱり墓地に送っていやがったか! だが攻撃力が2000以上のモンスターを引かねぇと返り討ちだぜ!」

 

 遊戯の墓地のカードを予測していたキースは返り討ちになる可能性を下げるためフィールドの攻撃力が高いモンスターから攻撃を仕掛ける。

 

 だがその攻撃力は2000――少し心もとない数値だ。

 

「……ドロー! 俺が引いたのは《カース・オブ・ドラゴン》! モンスターカードだ!よって攻撃表示で特殊召喚! 攻撃はコイツが代わりに受けるぜ! 」

 

 《クリアクリボー》が「パカッ」と半分に割れ、そこから所々に鋭利な棘を持った竜――《カース・オブ・ドラゴン》が攻撃表示で現れ、反撃を始めた。

 

《カース・オブ・ドラゴン》

星5 闇属性 ドラゴン族

攻2000 守1500

 

「迎え撃て《カース・オブ・ドラゴン》! ドラゴン・フレイム!!」

 

「こっちもだ! 《スロットマシーンAM-7》! プラズマ・レーザー(キャノン)!!」

 

 レーザーと炎が交錯し互いに命中し《カース・オブ・ドラゴン》を地に落とし、《スロットマシーンAM-7》を溶かす。だが――

 

「相打ちだが忘れてもらっちゃ困るぜ! 俺様のモンスターが破壊されたことで2枚の《機甲部隊の最前線》と《補給部隊》の効果を発動!」

 

 生半可な反撃では却って逆効果である。

 

「2枚の《補給部隊》の効果を合わせて2枚ドローし、2枚の《機甲部隊の最前線》の効果で《スロットマシーンAM-7》の攻撃力以下のモンスターをデッキから呼び出す! 《カース・オブ・ドラゴン》を攻撃表示にしたのは失敗だったな!」

 

 キースはそう言いつつも《カース・オブ・ドラゴン》を守備表示で出さなかった遊戯の考えがますます読めない現状に不安を覚える。

 

 守備表示ならキースの展開を防ぐことができた筈である。

 

「2枚の《機甲部隊の最前線》で呼び出すのは《メカ・ハンター》と《振り子刃の拷問機械》!」

 

 ゴブリン達がキースの元へドローカードたる物資を運ぶが荷車を引くのは7本のアームで器用に引っ張る《メカ・ハンター》。

 

 さらに荷車の後ろを《振り子刃の拷問機械》がせっせと押している――仕事しろ! ゴブリン共!

 

《メカ・ハンター》

星4 闇属性 機械族

攻1850 守 800

 

《振り子刃の拷問機械》

星6 闇属性 機械族

攻1750 守2000

 

「バトル中に特殊召喚されたコイツらにも攻撃権は残ってるぜ! 残りの3体でダイレクトアタック!」

 

 《キャノン・ソルジャー》に《メカ・ハンター》、《振り子刃の拷問機械》が遊戯に殺到する。

 

 全ての攻撃が通れば当然遊戯のライフは0になる。

 

「そうはさせないぜ! 墓地の《超電磁タートル》を除外し相手のバトルフェイズを強制終了させるぜ!」

 

 3体のモンスターの前にマシンボディをもったカメが高速スピンしながら横切り、3体のモンスターたちは「UFOだ!」とでも言いそうな様子で指さし、ついつい後を追いかける。

 

 戻ってきたころにはバトルフェイズは終了していた。

 

「さすがに防がれたか……俺様はこれでターンエンドだ――だが随分フィールドに差が付いちまったなぁ」

 

 そう言いつつもキースからの遊戯のプレイングに対する疑念は深まるばかりである。

 

 《超電磁タートル》の効果を《暗黒騎士ガイアロード》を攻撃された時に使用すればモンスターを残しつつ次のターンに移れたであるが故に……

 

 

「俺はアンタのエンドフェイズに永続罠《蘇りし魂》を発動し墓地から通常モンスター1体――《デーモンの召喚》を守備表示で呼び出すぜ! 再び舞い戻れ! (いかずち)の悪魔よ!」

 

 フィールドに地面が裂けるように穴が空き、そこから《デーモンの召喚》が浮き上がる。

 

 《デーモンの召喚》は腕を交差させ翼を畳みその身を小さく丸めガードを固めた。

 

《デーモンの召喚》

星6 闇属性 悪魔族

攻2500 守1200

 

 キースの挑発に呼応するかのように新たなしもべを呼び出す遊戯。

 

 だがキースは挑発しつつも遊戯の大量の手札に警戒を切らさない。

 

 

 遊戯は自身のターンに進める。

 

「慌てるなよ、まだデュエルは始まったばかりだぜ。俺のターン、ドロー! 《デーモンの召喚》が俺のフィールドに存在するとき、このカードを発動できるぜ! 魔法カード《魔霧雨(まきう)》を発動!」

 

 フィールド全体に霧が立ち込め、髑髏を形作りキースのモンスターを睨む。

 

「この霧により《デーモンの召喚》の攻撃力以下の守備力を持つ、相手フィールド上のモンスターを全て破壊するぜ! 魔・降・雷!!」

 

 霧により濡れたキースのモンスターたちに雷撃が伝播する。《デーモンの召喚》の雷撃が最高のポテンシャルを発揮する状況を作り上げた遊戯。だが――

 

「させるかよ! カウンター罠《大革命返し》を発動! フィールドのカードを2枚以上破壊するモンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし除外する! この目障りな霧には消えてもらうぜ!」

 

 《キャノン・ソルジャー》が雷撃を止め、《メカ・ハンター》は空を飛び回り空気の流れを変え、《振り子刃の拷問機械》が振り子刃を振り回し霧を散らす。

 

 そして最後に《リボルバー・ドラゴン》が空に打ち上げた何かが爆発し《魔霧雨》は完全に消滅した。

 

「残念だったな。あと一手足りねぇぜ。せっかくのコンボも無駄に終わっちまったなぁ」

 

「だが《魔霧雨》が無効化されたことでこのカードのバトルフェイズを行えないデメリットも無くなったぜ! そして俺は魔法カード《黙する死者》を発動! これにより俺の墓地の通常モンスター――最上級魔術師を呼び起こす!」

 

 大きな握りこぶしが炎と共に弾け、そこから黒い影が現れる。

 

「今こそ姿を現せ! 我が切り札たる黒衣の魔導師! 《ブラック・マジシャン》!!」

 

 その黒い影の正体は遊戯の相棒たる《ブラック・マジシャン》。

 

 《ブラック・マジシャン》は主の元に帰還しその杖を振るう。

 

《ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

「エースのお出ましか……だが《黙する死者》で呼び出したソイツは攻撃できねぇ。仮に攻撃して俺様のモンスターを破壊できても永続魔法《機甲部隊の最前線》でモンスターは途切れやしねぇさ」

 

 そのキースの言葉に遊戯は挑発的な笑みを浮かべる。

 

「そいつはどうかな? さすがの全米チャンプも4体ものモンスターを失うのは痛いらしい。俺は待っていたのさソイツ(大革命返し)が使われるのを!」

 

 遊戯は手札のカードをゆっくりと示す。

 

「俺の本命はこっちさ! 手札より魔法カード《黒・魔・導(ブラック・マジック)》を発動!」

 

「《ブラック・マジシャン》の攻撃名と同じ名前のカードだと!」

 

「このカードは俺のフィールドに《ブラック・マジシャン》が存在する時、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊するぜ! やれ! 《ブラック・マジシャン》! 《黒・魔・導(ブラック・マジック)》!!」

 

 キースの魔法・罠ゾーンに《ブラック・マジシャン》の杖から放たれた丸い黒の魔法攻撃が迫る。

 

「《大革命返し》を使わせるためだけに俺様のモンスターの展開を手伝うマネを……」

 

 キースは遊戯の不自然なプレイングの狙いに気付く。

 

 だが《黒・魔・導(ブラック・マジック)》を止める手立ては今のキースにはない。

 

 

 そして《黒・魔・導》はキースの魔法・罠ゾーンに紫電を発しながら爆ぜ2枚の《機甲部隊の最前線》と2枚《補給部隊》を破壊する。

 

 《補給部隊》のゴブリンたちはとうに逃げ去っていた。

 

「クソッ! 俺様の布陣が……」

 

 キースのフィールドには今現在攻撃可能な《デーモンの召喚》の攻撃力を僅かに上回る《リボルバー・ドラゴン》がいるものの、それだけで遊戯を止められはしないと自身の不利を悟る。

 

「そして俺は魔法カード《儀式の下準備》を発動し、デッキから儀式魔法カード《カオス-黒魔術の儀式》を選び、さらにソイツにカード名が記された儀式モンスター《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を手札に加える!」

 

 毎度お馴染みの黒い鳥《儀式の供物》が2枚のカードを咥え遊戯の肩に留まる。

 

「さらに俺は魔法カード《馬の骨の対価》を発動! 効果モンスター以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体――《デーモンの召喚》を墓地へ送り、カードを2枚ドロー!」

 

 《デーモンの召喚》は自身の肋骨の一本を外し遊戯に託す。

 

 そして右手を上に挙げて親指を立てながら地面に沈んでいった。

 

「行くぜっ! 儀式魔法《カオス-黒魔術の儀式》を発動し、レベルの合計が8以上になるようカードをリリースし儀式召喚を行う!」

 

 フィールドに六芒星の魔法陣が描かれ、紫の炎が灯る。

 

「墓地の《クリボール》は儀式召喚の素材として自身を除外することができる!」

 

 墓地の球体状のクリボーである《クリボール》の身体の模様が光を放つ。

 

「墓地の《クリボール》とフィールドのレベル7の《ブラック・マジシャン》をリリースし儀式召喚! 新たな叡智をその身に宿し、秘められし力を今ここに解放せよ! 顕現せよっ!《マジシャン・オブ・ブラックカオス》!!」

 

 《クリボール》から発せられた光が《ブラック・マジシャン》を包み込み、その秘められた叡智を得て更なる深淵へと導く。

 

 新たな叡智を取り込み《ブラック・マジシャン》は魔法陣から新たな姿となって現れる。

 

 その黒い拘束具のような衣から溢れる力はまさに滅びの力と呼ぶに相応しい威圧感を放っていた。

 

《マジシャン・オブ・ブラックカオス》

星8 闇属性 魔法使い族

攻2800 守2600

 

「そしてセットしていた魔法カード《拡散する波動》を俺のライフを1000ポイント払い、レベル7以上の魔法使いモンスター《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を対象に発動!」

 

遊戯LP:3700 → 2700

 

「これにより他のモンスターの攻撃はできないが、《マジシャン・オブ・ブラックカオス》は全ての相手モンスターに1回ずつ攻撃できるぜ!」

 

 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の杖に波動が集まり、脈動するかのような力の奔流が発生する。

 

「チッ! マズイことになりやがった……」

 

 現状キースが遊戯の攻撃を止める手立てはない。

 

「行けっ! バトル! 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》でキースの4体のモンスターに攻撃! 滅びの呪文-デス・アルテマ・バースト!!」

 

 滅びの呪文が拡散し、キースの4体のマシンモンスターに襲い掛かる。

 

 《リボルバー・ドラゴン》の首を消し飛ばし、《メカ・ハンター》を打ち落とし、《振り子刃の拷問機械》を爆散させ、《キャノン・ソルジャー》を消滅させた。

 

「ぐぁああぁああぁっ!!」

 

キースLP:3700 → 3500 → 2550 → 1500 → 100

 

「仕留めきれなかったか……俺はこれでターンエンドだ!」

 

 キースの布陣を崩した遊戯は力強くターンを終える。

 

 

 だがキースの目は静かに遊戯を見据えていた。

 

 

 

 

 





キースさん鉄壁入りました~



話は変わりますが
作者が《融合呪印生物-闇》で呼べる融合モンスターを探している時

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を見つけました

そして作者に電撃が奔る!

この悪役感はヒール感溢れるキースにピッタリだ!と
キースのデッキにも無理なく投入できる点も高ポイント!

正規融合しなきゃ使えない効果が多いけど
無効効果や2800打点が欲しいときに《融合呪印生物-闇》で呼び出すのもあり!

まあキースデッキには《融合》入ってるから問題はないけどね!


ですがズァーク関連のカードだから使わせませんけど!(`・ω・´)キリッ


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