前回のあらすじ
デュエリスト特有のフィール――それは一般人には理解しがたいもの
デュエルが始まり試作型デュエルディスクが先攻のプレイヤーを示す。
「ワシの先攻、ドローじゃぁっ! よっしゃぁ! さっそく海の恐ろしさを思い知らせてやるぜよ! フィールド魔法《海》を発動じゃぁっ!」
フィールドの中央から噴水のように海水が溢れ、フィールドに海が形成されていき2人のデュエリストの足首をさざ波が打つ――何度も言うがソリッドビジョンであるため実際に濡れることはない。
「これにより魚族・海竜族・雷族・水族モンスターの攻撃力・守備力は200アップし、逆に機械族・炎族モンスターの攻撃力・守備力は200ダウンするぜよ!」
「これが文字通り、お前のフィールドってわけか」
「そうじゃぁ! この《海》こそワシの真骨頂じゃ! じゃがさらに永続魔法《
海を割り梶木の後ろに竜宮城を思わせる建物がそびえ立つ。
「これでワシのフィールドの水属性モンスターの攻撃力・守備力は300アップぜよ! そしてモンスターと伏せカードを1枚ずつ伏せてターンエンドじゃ!」
梶木の宣言と共に海面に影が映りその身を潜めた。
海に潜むカードに警戒しつつも遊戯はいつも通りにカードを引く。
「俺のターン、ドロー! 自分フィールドにモンスターが存在しないときこのカードを発動できるぜ!――魔法カード《予想
遊戯のフィールドに放電が奔る。
そして球状の光と共にマントを翻し《エルフの剣士》が現れ剣を構える。
《エルフの剣士》
星4 地属性 戦士族
攻1400 守1200
「さらに俺は《エルフの聖剣士》を通常召喚だ!」
緑の装備に身を包んだ《エルフの剣士》に似たエルフが並び立つ。
だが《エルフの剣士》とは違い剣が2本――2刀流だ。
《エルフの聖剣士》
星4 地属性 戦士族
攻2100 守 700
「そして《エルフの聖剣士》の効果を発動! 手札から『エルフの剣士』モンスター1体を特殊召喚する。来いっ! 《翻弄するエルフの剣士》!!」
再び《エルフの剣士》に似たエルフが並び立つ。
今度は身に着けているものからその姿まで瓜二つと言っていいほどに《エルフの剣士》に似ている。
《翻弄するエルフの剣士》
星4 地属性 戦士族
攻1400 守1200
「まだだ! 永続魔法《連合軍》を発動し、その効果で俺のフィールド上の戦士族モンスターの攻撃力は、俺のフィールドの戦士族・魔法使い族モンスターの数×200ポイントアップ! 俺の3体のモンスターはすべて戦士族! よって600ポイントアップ!」
《エルフの剣士》
攻1400 → 攻2000
《エルフの聖剣士》
攻2100 → 攻2700
《翻弄するエルフの剣士》
攻1400 → 攻2000
「俺はカード2枚セットしバトルッ! 《エルフの剣士》でセットモンスターを攻撃!」
《エルフの剣士》がセットモンスターを掬い上げるかのように下段から打ち上げる斬撃をもって隠れた敵を切る。
その正体である《グリズリーマザー》は打ち上げられ、そして海に落ち水しぶきを上げる。
《グリズリーマザー》
星4 水属性 獣戦士族
攻1400 守1000
↓
攻1700 守1300
「《水舞台装置》の効果で水属性であるワシの《グリズリーマザー》の能力はあがっとるが――」
「俺の《エルフの剣士》の敵じゃないぜ!」
幸先の良い遊戯のデュエルのスタートに獏良は驚き城之内たちは声援を送る。
「1ターンで3体のモンスターを呼び出すなんて……」
「これであのヤロウのモンスターはいなくなったぜ!」
「これで梶木に大ダメージだな!」
「行けぇ遊戯ー!」
だが海の底から再び影が映る。
「海を恐れず攻めてきたようじゃなぁ――だがその程度ではまだまだぜよ! 戦闘破壊された《グリズリーマザー》はデッキから攻撃力1500以下の水属性モンスター1体を表側攻撃表示で呼び出すぜよ! 再び来るんじゃっ! 2体目の《グリズリーマザー》!」
海の底に出た影は次第に大きくなり、《グリズリーマザー》は海上に飛び出し、唸り声を上げ現れる。
《グリズリーマザー》
星4 水属性 獣戦士族
攻1400 守1000
「《水舞台装置》の効果で攻・守ともに300アップじゃ!」
《グリズリーマザー》
攻1400 守1000
↓
攻1700 守1300
「ならば《翻弄するエルフの剣士》で攻撃!」
《翻弄するエルフの剣士》は剣を正眼に構え兜割のように剣を振り下ろす。
《グリズリーマザー》は腕を頭上で合わせ白刃取りを試みるも肉球が合わさる音だけが響き、その身は真っ二つとなった。
梶木LP:4000 → 3700
「じゃが《グリズリーマザー》の効果で最後の《グリズリーマザー》を呼ぶぜよっ! そして《水の舞台装置》でパワーアップじゃ!」
《グリズリーマザー》
星4 水属性 獣戦士族
攻1400 守1000
↓
攻1700 守1300
「だがデッキに入れられる同名カードは基本3枚まで、この攻撃で《グリズリーマザー》の効果は打ち止めだ! 行けっ! 《エルフの聖剣士》!」
《エルフの聖剣士》は2本の剣を交差させるように構え突撃。
《グリズリーマザー》が2本の剣を左右の爪でそれぞれ受け止めるも、《エルフの聖剣士》がハサミを閉じるように剣を交差させ《グリズリーマザー》の腕を切り、そのまま首を両断した。
梶木LP:3700 → 2700
「《グリズリーマザー》の効果で来るんじゃぁっ! 《デビル・クラーケン》!!」
海の底から複数の影が浮かび上がり、海から顔をのぞかせる。
その複数の影は巨大なイカの手足であり、海に引きずり込まんとそれらをうねらせる。
《デビル・クラーケン》
星4 水属性 水族
攻1200 守1400
だがこのままでは今のエルフの三剣士に返り討ちにされるのがオチである。
「《デビル・クラーケン》は水属性・水族! よって《水舞台装置》と《海》の効果でパワーアップじゃあっ!」
《デビル・クラーケン》
攻1200 守1400
↓
攻1700 守1900
それでも今のエルフの三剣士に返り討ちにされるのがオチである。
「モンスターを残したか……なら《エルフの聖剣士》のさらなる効果発動! このカードの攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた時に俺のフィールドの『エルフの剣士』モンスターの数だけ、デッキからドローする!」
「なんじゃと! ……オメェのフィールドには《エルフの剣士》と《翻弄するエルフの剣士》の2体、2枚ドローか!」
「そいつは少し違うぜ! 《エルフの聖剣士》はルール上『エルフの剣士』カードとしても扱う! よって3枚ドローだ!」
《エルフの聖剣士》が《エルフの剣士》と《翻弄するエルフの剣士》の持つそれぞれの剣に自身の剣をかざすと光を放ち、その光は遊戯の手札に集まった。
「レベル4で攻撃力2100にも関わらず、そんな効果まであるじゃと!」
凄まじいパワーをもったカードだと驚嘆する梶木。
だが遊戯はデメリットもあるのだと告げる。
「だがその代わり、俺の手札が1枚以上の場合、このカードは攻撃することができないがな……」
「なるほどの、それでバトルの前にカードを伏せて手札を0にしたんじゃな」
「そういうことさ! 俺はこれでターンエンドだ」
連続攻撃を防がれ、さらに上級モンスター召喚のためのリリース要員を残してしまったことに対し次の梶木の動きを警戒する遊戯。
それに対し梶木は楽しくて仕方がない様子を隠すことなくカードに手をかける。
「なかなかやるのぉ遊戯! ワシのターン、ドローじゃぁ! ワシは魔法カード《儀式の下準備》を発動! デッキから儀式魔法カード1枚を選び、さらにそのカードにカード名が記された儀式モンスター1体を自分のデッキ・墓地から選んでその2枚のカードを手札に加えるぜよ!」
黄色い2枚の仮面を左右の顔半分に付けた黒い鳥《儀式の供物》が梶木の周りをパタパタと飛び回る。
「ワシは《要塞クジラの誓い》とそこに記された《要塞クジラ》を手札に加えるぜよ」
その宣言と共に《儀式の供物》は梶木のデッキにとまり、デッキをつついて目当てのカード2枚を咥え、梶木の肩に飛び乗りそのカードを渡す。
渡した後、すぐに飛び立たず物欲しそうな目で梶木を見つめていたが、《デビル・クラーケン》が10本の足の1本の一部を差し出すとそれを咥えどこかへと飛び立っていった。
「さらに魔法カード《サルベージ》を発動しワシの墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を選択して手札に加えれるんじゃ――《グリズリーマザー》2体を手札に加えるぜよ!」
《デビル・クラーケン》はその10本の足の2本を使い《グリズリーマザー》を吊り上げる。
首を吊るような絵面が酷いがその2体を梶木に投げつけ、その2体の姿は途中でカードに変わり梶木の手札に加わった。
「そして《要塞クジラの誓い》を発動ぜよ! 場か手札から、レベルの合計が7以上になるようカードをリリースし儀式召喚を行うぜよ! ワシは手札のレベル4の《グリズリーマザー》とレベル5の《
《デビル・クラーケン》がどこからともなく
そして波紋の中心から山のような巨体が浮かび上がり水しぶきを上げ空へと飛び立つ。
その背に装着された数々の砲台は「要塞」の名に相応しい。
空に浮かんだ《要塞クジラ》は頭部に付いたイッカクの牙に似た角を跳ね上げ大きく口を開き雄叫びを上げた。
《要塞クジラ》
星7 水属性 魚族
攻2350 守2150
だが梶木の――「海」の猛攻はこの程度では止まらない。
「さらにワシは伏せとった永続罠《正統なる血統》を発動しワシの墓地の通常モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚するぜよ! 甦れ! 母なる海の
フィールドの《海》が荒れ狂い海の
《海竜神》
星5 水属性 海竜族
攻1800 守1500
「《要塞クジラ》は水属性・魚族、《海竜神》は水属性・海竜族! よって《水舞台装置》と《海》の力を得るぜよ!」
《要塞クジラ》
星7 水属性 魚族
攻2350 守2150
↓
攻2850 守2650
《海竜神》
星5 水属性 海竜族
攻1800 守1500
↓
攻2300 守2000
「バトルじゃぁ! 《海竜神》で《エルフの剣士》に攻撃! 海竜神の怒り!」
《海竜神》が雄叫びを上げると《海》が荒れ狂い、津波となって《エルフの剣士》を襲い、海深くへと沈めた。
遊戯LP:4000 → 3700
「遊戯! これでオメェの戦士族モンスターが減ったことで《連合軍》の効果も弱まるぜよ!」
「ああ、その通りだぜ! 戦士族が一体減ったことにより200ポイントダウンだ」
《エルフの聖剣士》
攻2700 → 攻2500
《翻弄するエルフの剣士》
攻2000 → 攻1800
「まだまだ行くぜよ! 《要塞クジラ》で《エルフの聖剣士》を攻撃! 唸れ! ホエール・ボンバード!!」
《要塞クジラ》の背中の全ての砲塔が火を噴き砲弾の雨を降らせる。
《エルフの聖剣士》は全てを躱そうとするも、躱した結果《海》に落ちた砲弾が《海》に波を生み出す。
そしてその波に足を取られた《エルフの聖剣士》は雨あられと降り注ぐ砲弾の餌食となった。
遊戯LP:3700 → 3350
「戦士族が減ったことで《連合軍》の効果も弱まりさらに200ポイントダウンだ……」
《翻弄するエルフの剣士》
攻1800 → 攻1600
「最後に《デビル・クラーケン》で残った《翻弄するエルフの剣士》に攻撃!
梶木の攻撃命令を受け水中へと姿を消す《デビル・クラーケン》。
周囲を警戒する《翻弄するエルフの剣士》に《デビル・クラーケン》の足の1本が襲い掛かり、それに対処しようとした《翻弄するエルフの剣士》の隙を突き、《デビル・クラーケン》は10本の足で《翻弄するエルフの剣士》の関節を縛り上げ砕く。
遊戯LP:3350 → 3250
「くっ! 《翻弄するエルフの剣士》までもが!」
「どんなもんじゃい!」
遊戯のモンスターを全滅させたが、まだ梶木のターンは終わらない。
「ワシはバトルを終了し、メインフェイズ2で魔法カード《馬の骨の対価》を発動! その効果により効果モンスター以外の表側表示で存在する1体――《デビル・クラーケン》を墓地へ送り、カードを2枚ドローするぜよ!」
《デビル・クラーケン》は足の1本を身体に突き刺し、身体の内部から無理やりイカの甲を取り出し梶木に託す。
そしてそのまま力尽き、海に沈んでいった。
「ワシはカードを1枚セットしてターンエンドじゃ!」
ターンを終えた梶木に遊戯はデュエリストとしての称賛を送る。
「まさか《翻弄するエルフの剣士》の持つ攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない効果を見抜かれるとはな……さすがだぜ!」
先程の梶木のターンのバトルフェイズでの攻撃順から恐らく初見で効果を見抜いたと思い称賛を送るが――
「そうじゃったんか。何かあると思っとったが、やっぱり効果を隠し持っとったか!」
実際は梶木のデュエリストとしての勘がそうさせただけである――どちらにしろスゴイ。
「なら俺のターンだ! ドロー! 相手フィールドにモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、コイツは手札から特殊召喚できるぜ! その二双の槍で次元を穿て! 現れろ! 《暗黒騎士ガイアロード》!!」
空中に龍が現れ、そこから赤い線の入った黒い全身鎧に2本の真紅の突撃槍を持った騎士が地上に降り立つ。
《暗黒騎士ガイアロード》
星7 地属性 戦士族
攻2300 守2100
「そして魔法カード《黙する死者》を発動し墓地の通常モンスター《エルフの剣士》を守備表示で特殊召喚!」
墓地より這い出た巨大な握りこぶしがその手を開くと小さな光が遊戯のフィールドに降り立ち、その光は地面に剣を突き立てた《エルフの剣士》となって防御の構えを取る。
《エルフの剣士》
星4 地属性 戦士族
攻1400 守1200
「さらに永続罠《強化蘇生》を発動し自分墓地のレベル4以下のモンスター《エルフの聖剣士》復活! そして《強化蘇生》の効果によりレベルが1つ上がり攻撃力・守備力が100ポイントアップ!」
地面から赤い光が溢れ、そこから赤いオーラを纏った《エルフの聖剣士》が2本の剣を地面から引き抜き、二刀の構えを見せる。
《エルフの聖剣士》
星4 地属性 戦士族
攻2100 守 700
↓
攻2200 守 800
梶木によって全滅させられた戦士たちだが、遊戯の元に再び3体の戦士が並び立つ。
「これでフィールドの戦士族の数は3体! よって永続魔法《連合軍》の効果で攻撃力は3×200――600ポイントアップ!」
《暗黒騎士ガイアロード》
攻2300 → 攻2900
《エルフの聖剣士》
攻2200 → 攻2800
《エルフの剣士》
攻1400 → 攻2000
「最後にカードを2枚セットしバトルフェイズに移行するぜ! 《暗黒騎士ガイアロード》で《要塞クジラ》に攻撃! スパイラル・ジャベリン!!」
《要塞クジラ》に向けて放たれた《暗黒騎士ガイアロード》の1本の突撃槍。
その突撃槍は《要塞クジラ》の砲弾を貫きながらその巨体に迫るが、《要塞クジラ》が角をもって弾く。
そして反撃に移ろうとした《要塞クジラ》の目に間近に映ったのは弾いた突撃槍のすぐ後ろに全く同じ軌道で
梶木LP:2700 → 2650
「ぐおっ! ワシの《要塞クジラ》がっ! やるじゃねぇか!」
「続けて《エルフの聖剣士》で《海竜神》を攻撃だ!」
敵に向けて疾走する《エルフの聖剣士》に《海竜神》は津波を起こし飲み込まんとするが、頭から突撃槍に貫かれ海に落ちる《要塞クジラ》を足場にし《エルフの聖剣士》は跳躍。
波の影響を受けない空中から《海竜神》の頭を貫き、もう1本の剣で首を刈り取った。
梶木LP:2650 → 2150
「ダメージを与えたことで《エルフの聖剣士》の効果を発動させてもらうぜ! 俺のフィールドの『エルフの剣士』モンスターの数は2体! よって2枚ドローだ!」
《エルフの聖剣士》が守備姿勢をとる《エルフの剣士》の地面に刺された剣に交差するように2本の剣を地面に突き刺す。
すると大地から光が溢れ、その光は遊戯の手札に集まった。
「俺はこれでターンエンドだ!!」
遊戯を追い詰めていた筈が一転して大型モンスター《要塞クジラ》を失い窮地に立たされる梶木。
だが梶木の目に不安などはなくデュエルが心の底から楽しくてしょうがない様子だ。
「やるじゃねぇか遊戯! じゃが海の恐ろしさはこんなもんじゃないぜよ! 今こそ見せちゃる! 海の真の恐ろしさをな!!」
その梶木の言葉がハッタリではないことを遊戯は感じ取った。
森のクマたち再出演! って違うか……
《要塞クジラ》早めの出演、バトルシティには出ない。
要塞クジラ「!?」