前回のあらすじ
屍を貪る竜「弁護士を呼んでくれ!」
試作型デュエルディスク「斧多くね?」
エビルナイト・ドラゴン「ちくしょーちくしょー! ブラキオレイドス…奴さえいなればー!」
城之内の《鎖付きブーメラン》を装備した《ガルーザス》に手を焼く竜崎。
だがこのまま手をこまねいていてはそのまま押し切られることも相まって、竜崎は逆転のカードを引くべく力強くデッキからカードを引いた。
「このままやったらジリ貧やで……ワイのターン、ドロー! よっしゃ! ワイは今引いた魔法カード《貪欲な壺》を発動や! 墓地におる《ブラキオレイドス》3枚と《剣竜》、《屍を貪る竜》の5枚をデッキに戻してシャッフルし、カードを2枚ドローや!」
欲に塗れた人の顔そのままの壺が5枚のカードをその口に平らげ、頭の壺としての開口部から2枚のカードが飛び出る。
引いた2枚のカードを見つめ竜崎は拳を振り上げる。
「よっしゃぁ!! 引いたで! ワイの全財産はたいて手に入れた秘密兵器を!」
「ペガサス島に行く船の中で言っていた……」
まだ見ぬ切り札に観客の遊戯は城之内の身を案じる。
「《二頭を持つキング・レックス》2頭をリリースしてアドバンス召喚や! その黒き炎で焼き払えっ! 《
2体の贄から黒い炎が立ち上がり、立ち上る炎から黒い大翼を広げ、炎が収まるとその流線的なフォルムがフィールドに降り立った。
その真紅の瞳は獲物を見据えている。
《真紅眼の黒竜》
星7 闇属性 ドラゴン族
攻2400 守2000
「おっしゃっ行くでっ! レッドアイズ! 黒炎弾!」
《真紅眼の黒竜》の口元に炎が集まり「円」へと収束していく。
《ガルーザス》はそれを防げないと判断し《鎖付きブーメラン》を高所へ引っ掛け、攻撃をよけようと動く。
だが自由に空を移動できる《真紅眼の黒竜》の口元が移動した《ガルーザス》の眼前に広がっていた――それが《ガルーザス》の見た最後の光景だった。
城之内LP:2200 → 2100
「くっ、《ガルーザス》まで……」
「ワイはこれでターンエンドや! 城之内! お前にはもうワイに勝つ手段は残っとらへんやろ!」
秘密兵器である《真紅眼の黒竜》の召喚で城之内を追い詰めたと判断する竜崎、しかし城之内にはたった1枚《真紅眼の黒竜》を迎え討てるモンスターがいた――《千年竜》である。
だが呼び出すのに必要なカードが1枚足りない。
「俺のターンドロー! クソッこのカードじゃだめだ! 《凡骨の意地》を発動! 今引いた通常モンスターの《格闘戦士アルティメーター》を見せもう1枚ドロー!」
追加で引いたカードを見るも望んだカード《ベビードラゴン》ではない。
「――俺はモンスターをセット、カードを1枚セットしてターンエンド……」
「逆転のカードは引かれへんかったようやな、ワイのターンドロー! ワイは《ワイルド・ラプター》を召喚!」
小型の恐竜が高く跳躍して現れ、片方の後ろ足で何度も地面を蹴る――今にも飛び出していきそうだ。
《ワイルド・ラプター》
星4 地属性 恐竜族
攻1500 守 800
「どうせそのセットモンスターは《格闘戦士アルティメーター》やろ? ならこのカードで十分行けるで! 《ワイルド・ラプター》! ワイルド・バイト!」
《ワイルド・ラプター》の攻撃と共にセットされたモンスターが姿を現す。
紫のバイザーに青いバトルスーツを着た格闘戦士が腕を交差させ衝撃に備える。
《格闘戦士アルティメーター》
星3 地属性 戦士族
攻 700 守1000
だが爆発的な加速により弾丸となった《ワイルド・ラプター》はその速度を維持したまま《格闘戦士アルティメーター》のガードを掻い潜りその喉元に牙を突き立てた。
「これで終わりや! がら空きの城之内にレッドアイズでダイレクトアタックや!」
「そう簡単に終わってたまるかよ! 速攻魔法《非常食》を発動! 魔法・罠ゾーンのカードを墓地に送ってその分×1000ポイントのライフを回復するぜ! 俺は《凡骨の意地》を墓地へ送りライフを1000回復だ!」
《凡骨の意地》に描かれた青年が城之内に缶詰をそっと差し出し、夕日に消える。
城之内LP:2100 → 3100
「せやけどレッドアイズの攻撃は止まらへんで!」
空高く上昇した《真紅眼の黒竜》が先程のようにブレスを溜め城之内を焼き尽くすべくその砲弾を射出する。
「ぐぁあぁっ!」
城之内LP:3100 → 700
「城之内君ッ!」
残りライフがわずかとなった城之内に遊戯たちは心配のあまり声を上げるも、城之内の目にまだ闘志は残っていた。
「安心しな遊戯! 次のドローで《ベビードラゴン》さえ引けりゃ……」
その城之内の呟きを聞いた竜崎は内心ほくそ笑む。
竜崎の残りの手札は恐竜族の攻撃力を1000アップさせ、モンスターの戦闘破壊時に追加攻撃を可能にする罠カード《生存競争》、仮に《千年竜》を融合できたとしても《ワイルド・ラプター》を攻撃すれば返り討ちできる。
もしも《真紅眼の黒竜》と同士討ちにし、壁モンスターで耐えようとすれば次のターンのドローで新たなモンスターを引き込み召喚。
そして2体の攻撃でのフィニッシュ――竜崎は勝利を確信していた。
「ワイはカードを1枚伏せてターンエンドや! さあお前のラストターンやで城之内!」
「……俺のターンドロー!」
引いたカードは《ベビードラゴン》ではなかった。
ここまでかと残った手札のモンスター《時の魔術師》をセットしようとした城之内に不運――否、幸運が舞い込む。
「……俺はモンスターをセッとぉおおおうぁっ!」
初めて使う慣れない試作型のデュエルディスクの操作を誤り、セットするはずのモンスターを攻撃表示で召喚してしまう。
小さな爆発が起こりそこからシルクハットにマントを付けた目覚まし時計のモンスターが手に持つ杖の先のルーレットを掲げ現れる。
《時の魔術師》
星2 光属性 魔法使い族
攻 500 守 400
「やべえ攻撃表示で出しちまった……んっ?」
最後の最後でヘマをしてしまい落ち込む城之内だが試作型デュエルディスクに灯るランプに気が付く――Mr.クロケッツに説明されたモンスター効果を発動可能であることを指し示すランプだと。
勝機はまだ辛うじて残っていた。
「ッ! こうなりゃ一か八だぜ! 《時の魔術師》の効果発動! コイントスを1回行い裏表を当てる! 当たれば相手フィールドのモンスターを全て破壊! ハズレなら自分フィールドのモンスターを全て破壊し表側表示で破壊されたモンスターの攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受けるぜ!」
文字通りのギャンブルであるが、外れれば当然、城之内の負けであり、仮に当たったとしても次のターン恐竜族モンスターを引けばセットされたカードとのコンボで押し切れるため竜崎は己の勝利を疑わない。
「そんな博打に頼っるちゅうことは、それがお前の最後の手っちゅうわけやな!」
「まあな! コインの代わりにコイツを使うぜ――タイム・ルーレット!!」
《時の魔術師》の持つ杖のルーレットが回転を始める。「当」の文字と髑髏のマーク、そのどちらが当たりなのかは一目瞭然である。
段々と回転のスピードが収まっていき針の止った先は「当」――当たりである。
「よっしゃぁぁー! 成功だぜ! タイム・マジック!」
《時の魔術師》時計部分の長針と短針が目まぐるしく回り出す。
すると《ワイルド・ラプター》と《真紅眼の黒竜》が老いていき骨と皮になるも時計の回転は止まらず、その身体が腐食し最後は骨となって地面に倒れ伏し風化する。
「ワイのモンスターが……」
「まだ俺のターンは終わっちゃいねぇぜ! 魔法カード《死者蘇生》! これでお前の墓地の《真紅眼の黒竜》を蘇生するぜ!」
再びフィールドに舞い降りた《真紅眼の黒竜》――竜崎の秘密兵器がその止めを刺すとは何とも皮肉なことである。
「行くぜバトルだ! えぇっとなんだっけかな……思いだせねぇ――なら! 城之内ファイヤァーー!!」
《真紅眼の黒竜》の攻撃名「黒炎弾」を思い出せず即興で攻撃名を考えた城之内。
だが《真紅眼の黒竜》はその無茶振りにも応え、いつもの丸い炎ではなく広範囲を焼き払うかのようなブレスを竜崎にぶつける。
「な、なんやとぉおおぉーー!!」
ダイナソー竜崎LP:2250 → 0
「そこまでです。勝者、城之内克也!」
デュエルが終わり勝者の名をMr.クロケッツが高らかに宣言する。
その宣言に遊戯たちは歓声と拍手を持って城之内を迎えに行く。
「やったね! 城之内君!」
「いやぁまさか勝っちまうとはな~」
「お兄ちゃんかっこよかったよ」
仲間たちの祝福を受ける城之内。
そんな祝福を受ける城之内に敗北した竜崎は近づき1枚のカードを差し出す。
「おい! 城之内! ワイに大事なこと気づかせてくれた礼にこのカードくれたるわ!」
「ん? ありがとよ! ってこれ《真紅眼の黒竜》じゃねぇーか! いいのかよ! 確か全財産はたいたとか言ってたけど……」
お金の大切さを知る城之内は受け取っていいものかどうか悩むも、竜崎はニット帽を深くかぶり、今の自身の表情を悟られぬよう城之内に後押しするかのように言葉を続ける。
「ワイはパワーを重視しすぎとった。せやから恐竜族デッキにシナジーのないドラゴン族入れるようなマネしてもうたんや……ワイ自身に対する戒めの意味も込めてこの《真紅眼の黒竜》――受け取ってくれへんか?」
竜崎の心の内を聞き、僅かに震えた竜崎の手を城之内は力強く握って握手を交わす。
「竜崎ッ! このカード大事に使わせてもらうぜ!」
「さよか……城之内! あんな形とはいえこのワイに勝ったんや、この先しょうもないデュエルしとったら許さへんで!」
その言葉と共に去っていく竜崎に城之内は拳を握りしめて恥じぬデュエルをすると拳に誓った。
観客席に向かう竜崎に一つの仮定が浮かぶ。
もし先のデュエルで竜崎のデッキに《真紅眼の黒竜》がなければ《貪欲な壺》で引くカードは《ワイルド・ラプター》と《生存競争》、その場合デュエルの結果がどうなるかを考え、意味のない仮定に竜崎はその考えを振り払った。
第1試合が終了し続く第2試合の宣言をMr.クロケッツが行う。
「第2試合、キース・ハワードVS孔雀舞の試合を休憩を挟んだ後に行います。両選手は規定時間までにご準備を済ませておいて下さい」
大会中に交流を深めていた孔雀舞の試合の前に遊戯は孔雀舞を激励する。
「いよいよ舞さんのデュエルだね!」
「しっかし最初の試合から相手は全米チャンプが相手だなんて運がねぇなぁ」
そんな城之内のデリカシーの欠ける言葉に杏子は厳しく返す。
「ちょっと城之内! そういうこと言うんじゃないわよ!」
「いいのよ杏子……アタシは誰が相手だろうと関係ないわ。自分のデュエルをするだけよ。じゃあアタシはそろそろ準備があるから……」
そう言ってデュエル会場に向かう孔雀舞の後姿を見送りつつ城之内は遊戯に問う。
「なあ遊戯――キースってやろうはそんなに強いのか?」
「強いよ。デュエルモンスターズ発祥の地でチャンプになるなんて並大抵の強さじゃない……でも舞さんにだって勝機はあるはずだよ!」
その答えた遊戯に本田もどこか落ち込んでいる城之内を励ますように言葉をかける。
「そうだぜ城之内、お前だって全国大会準優勝者相手にあんなマグレみたいな勝ち方できたんだ――舞ならもっとスマートに行けるだろうぜ」
「……そうだよな」
そんな城之内の不安をよそにデュエルの開始時刻は刻一刻と迫っていた。
メガザウラーまではこのデュエルに入りきらなかった
非力な私を許してくれ……
そしてレベッカ全米チャンプになれそうにない
舞さんは予選で遊戯たちと仲良くなったことにしておいてくれ…(懇願)
ほら! なんかあったんだよ!