マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
いろんな人にスポットライトが当たる

そのライト操作……いったいどこで!?
ハワイで親父に習ったのさ!



DM編 第3章 決闘者の王国 平和な大会
第12話 陰謀


 

 ペガサス島での大会の最終調整を進める神崎にいつものように来客が押し入る――ギースは何をやっているのだろう…。

 

「神崎ッ!! 兄サマが目を覚ましたって、さっき磯野が!! 早く来てくれ!!」

 

 そう言って来客の正体であるモクバは神崎の手を取り駆けだす。

 

 神崎はその手を振り払うわけにもいかないため引っ張られるようについていく。その姿をギースは微笑ましそうに見ながら2人を見送った。

 

 

 

 

 そうしてモクバに手を引かれ海馬のもとまでたどり着いた神崎。

 

 すると海馬は神崎とモクバと握っている手を睨みつけつつ苦虫を噛み潰したような顔で嫌々ながら感謝を述べる。

 

「磯野から大まかな経緯は聞いている。モクバが世話になったようだな……一応礼は言っておいてやる」

 

「いえ、当然のことをしたまでです。それより一つ、双六様より伝言を預かっております」

 

「あの爺さんが? なんだ言ってみろ」

 

「『《青眼の白龍》は今しばらく預けておく、取り返しに行くので待っていろ』とのことです」

 

 

 本来ありえなかったその言葉はKCの医療技術の向上に伴い双六が早い段階で目をさまし、遊戯と海馬のデュエルを見た上での双六の心情の変化によるものだった。

 

 

「ふぅん、あの爺さんがな……」

 

 感慨に耽る海馬をよそにモクバはシュンと小さくなりながら約束を破ってしまったことを謝罪をいれる。

 

「そ、その――ごめんなさい兄サマ……兄サマとの約束破っちゃって――」

 

 倒れた兄を助けるためとはいえ、その兄とした「神崎を信用しない、近づかない」約束を破ってしまったことに対して罪悪感を感じるモクバ。

 

「気にするな、モクバ。今回は俺が倒れたことにも原因がある」

 

 だが海馬はそんなモクバを叱るようなことはせず、むしろ弟であるモクバを心配させてしまった己にこそ叱責を与える。

 

 だが許されたモクバはそのことを喜びつつ、挽回のためにもと、病み上がりの海馬を労わりに動き始める。

 

「兄サマ、何か必要なものはある? 気分はわるくない?」

 

 そう言って海馬の周りでピョコピョコと世話を焼こうとするモクバに海馬は今己の欲する1番のものを言い放つ。

 

「必要なもの? そんなもの決まっている。もう一度遊戯に挑み俺の《青眼の白龍》で今度こそ叩き潰してやる」

 

 若干噛み合っていない会話を神崎は何とか解読する。海馬瀬人は武藤遊戯からの勝利を望んでいるようだった。

 

「ではペガサス島での大会に参加してはどうでしょう。デュエルモンスターズ創始者であるペガサス・J・クロフォードへの挑戦権を賭けた大会になります。その大会に武藤遊戯氏もエントリーしておりますよ」

 

「ふぅん、準備のいいことだ……だが遊戯のデュエルの前に必要なものを用意する! 行くぞ! モクバ! 磯野!」

 

 そうして海馬は磯野を引き連れ、病み上がりであることなど感じさせずに遊戯と戦うために出陣していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペガサス島へと向かう船が停泊している童実野埠頭(どみのふとう)で双六は遊戯たち一行を見送りに来ていた。

 

 そんな中リーゼントが尖る本田ヒロトが城之内をからかうように笑う。

 

「しっかしこんなでけぇ大会に遊戯だけじゃなくちょっと前まで素人同然の城之内のヤロウまで呼ばれるとはなぁ」

 

「なんだと本田ァ!!」

 

 本田の言葉に噛み付きつつも、彼らの中ではいつものやり取りであった。

 

 そこに城之内のデュエルの師匠である双六が2人のやり取りに口を出す。

 

「城之内のデュエルを見てくれておる人はちゃんといるということじゃよ。今まで腐らずに頑張ってきた結果じゃ――誇ってよいぞ」

 

「じいさん……」

 

 城之内が師匠の言葉に感激していると、その師弟を余所に杏子が遊戯に尋ねる。

 

「それよりもこの大会に海馬君が参加するって話、本当なの? 今のところ見当たらないけど……」

 

「送られてきた招待状には海馬君が参加することは書かれていたけど?」

 

 招待状の情報に疑問に思う遊戯だが――

 

「海馬君はもう船の中にいるんじゃないかな?」

 

 白髪の青年獏良了(ばくらりょう)の言葉に遊戯は一応の納得を見せた。

 

 

 

 

 

 彼らの団欒を遮るように黒服たちの間から現れた緑の長髪の青年――天馬 月行(げっこう)が声を張り上げる。

 

「参加デュエリストの皆さん!!

 これよりこの船で大会会場であるペガサス島までお送りします! 

 乗船の際は参加の証である「デュエルグローブ」と「スターチップ」を示してもらいますのでご準備を!

 

 なお! その他関係者は同伴の参加者と共に乗船してもらうことになります!

 またその関係者が問題行動を起こした場合、同伴の参加者がペナルティを負うことになりますのでご注意を!――以上になります! 速やかに乗船なさってください!!」

 

 その発言により船へのゲートが下ろされ、参加デュエリスト達が続々と入船していく。

 

 双六はそんな彼らを見つつ遊戯たちに別れの言葉を掛ける。

 

「遊戯、頑張っておいで――城之内も存分に暴れてくるんじゃぞ」

 

「じいさん、ホントに行かねぇのか?」

 

「儂には店もあるしな。大会期間中留守にしとくわけにもいかんじゃろ。テレビで放送されるとのことじゃし、中継は見とるから半端なデュエルをしとったらすぐにわかるぞ城之内」

 

「げぇ! まじかよ……」

 

 そう言いながら気疲れしそうだと考える城之内。

 

「じゃあ行ってくるよじいちゃん」

 

 そしてその遊戯の言葉を最後に船に乗る彼らを双六は最後まで見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 豪華な船内にテンションの上がっていた城之内だが、長くは続かなかった。

 

 参加者に宛がわれた部屋が男女別のタコ部屋であったのである。

 

 そのことに苦情をもらす城之内に日本チャンプの眼鏡、インセクター羽蛾と準優勝者であるダイナソー竜崎が近づき、羽蛾が声をかける。

 

「そこの君、この部屋をあまり悪く言うものじゃないよ……恐らく主催者側の計らいによるものだろうからね」

 

「誰だテメェ? それにこれのどこが計らいなんだよ」

 

 計らいというならいい部屋の方が……と思う城之内だが、羽蛾はタコ部屋に眼を向け説明する。

 

「この部屋を見渡してごらん。カードトレーディングが始まっているだろう? 

そうして互いのカードを交換しデッキの強化が行えるのさ、そして同時に相手の手の内も探ることが出来る。どうだい、この部屋も捨てたものじゃないだろ――っていない」

 

 羽蛾の話を聞き一目散にカードトレーディングに向かった城之内に遊戯は苦笑しつつ羽蛾に向き合う。

 

「僕の友達がゴメンね……そうだ! 羽蛾君、優勝おめでとう」

 

「ありがとう遊戯クン。でも海馬クンやその彼に勝った遊戯クンのいない大会じゃいまいち優勝した実感がわかないんだよね」

 

「それは準優勝やったワイに対する当て付けか? この大会では前みたいにはいかへんで!! ゴッツイ秘密兵器も用意したしなぁ!!」

 

 羽蛾の発言に対し竜崎は秘密兵器の存在を匂わせ対抗心を露わにする。

 

「それは楽しみだね……ところで遊戯クン、物は相談なんだが――キミのデッキの海馬君を倒した『エクゾディア』を見せてくれないかい? その幻のカードを……」

 

「別にかまわないよ! はいっ!」

 

 羽蛾の提案に城之内の件も相まって遊戯は快諾する。

 

「へぇ~これがエクゾディアの封印カードか……遊戯くんボクはずっとこのカードを倒す戦略を考えていたんだ。君と戦うことになったらエクゾディアを封じる戦略を見せてあげるよ……」

 

 そう言ってエクゾディアのカードを遊戯に返し羽蛾は立ち去っていく。

 

「じゃあワイもこれで失礼させてもらうで、次会う時はデュエルの時やで!!」

 

 続いて竜崎もその言葉と共に駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 与えられた個室へ向かう羽蛾の手に一枚のカードが握られていた。

 

《検問》 通常罠

(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

相手の手札を全て確認し、その中にモンスターカードがあった場合、その攻撃を無効にする。その後、自分は相手の手札からモンスター1体を選んで捨てる。

 

 竜崎を下し優勝した大会での優勝賞品の中の一つにこのカードを見つけ、羽蛾は運命と呼ぶべきものが遊戯を倒し、真のチャンピオンとなれと言っていると感じ取っていた。

 

 このカードがあれば遊戯の手札にエクゾディアが揃うことはないとほくそ笑む。

 

 それがエクゾディアを海に捨てさせないために送られたものだとも気づかずに……

 

 

 

 

 

 

 

 城之内はトレードにより様々なカードを手に入れホクホク顔で遊戯に戦果を報告に行く。

 

 それを見た遊戯は太鼓判を押しつつ、自分のカードも、と城之内にカードを差し出した。

 

「このカード達なら城之内君のデッキのパワーアップができるね。そうだ! ボクのカードも受け取ってよ」

 

「おっ! ありがとな遊戯。これならきっと大会でも優勝できるぜ!!」

 

「そうだね。だけど僕も負けないよ! あっ! でも僕が優勝しても賞金は妹さんの手術に使ってあげてね」

 

「遊戯……」

 

 遊戯の気持ちに感激を受けている城之内に本田がその背中を叩き待ったをかける。

 

「いくら城之内が強くなったって言っても、優勝すんのは厳しいだろうからそれは遊戯に任せてお前は予選を生き残ることだけ考えろよ!」

 

「なんだとぉ! 見てろよぉ! この城之内様が優勝して目にもの見せてやるぜ!!」

 

 本田の「気負いすぎるな」というメッセージを受け取り城之内はそれに応えるように言葉を言い放つ。そんな遊戯たちのやり取りと共に船はペガサス島へと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペガサス島に上陸したデュエリスト達に月行が今大会のルールの説明を行うためマイクを手に取り声を上げようとするも、突如襲来したヘリがそれを妨げる。

 

 船の近くに降り立つ前にヘリから飛び降りた海馬が姿を現し、周りの人間には目もくれず悠然と遊戯の前に立つ。

 

「久しぶりだな遊戯!!」

 

「海馬君!! やっぱりこの大会に参加してたんだね!!」

 

 返す遊戯の言葉に違和感を覚える海馬。お互いが参加していることを条件にお互いが参加を決めている。おかしな話である。

 

「ふぅん。あの男の差し金か……だがいいだろう乗ってやる!!」

 

「海馬君?」

 

「遊戯!! すぐにでも決着を付けてやりたいところだが……俺達が戦うに相応しいものを用意させた――ゆえに! 俺たちの戦いは本戦で決着を付ける!!」

 

 その海馬の宣言に遊戯はもう一人の遊戯へ人格を交代し応える。

 

「わかったぜ海馬!! 本戦で会おう!!」

 

 

 その2人のやり取りを静観していた月行は念のため確認を取る。

 

「もうよろしいですか?」

 

「ふぅん、さっさとこの大会のルールを説明するがいい……」

 

 遮った張本人に言われたくないであろうセリフを受けつつ月行はルール説明を始める。

 

「今大会の予選ルールの説明を行います。参加者に配布されたデュエルグローブに同じく配布されたスターチップ10個を入れ、あちらに見えるペガサス城にたどり着いた先着8名のみが予選突破となります」

 

 月行はペガサス城を指しつつ説明を続ける。

 

「スターチップの入手方法はただ一つ、デュエルにそれを賭け勝利することのみとなっています。そして手持ちのスターチップが0になったものは予選敗退となりますので係員の指示に従ってください」

 

 次に係員である黒服たちを紹介し最後の説明に入る。

 

「さらにデュエル以外でのスターチップの譲渡・強奪は即失格、そして言うまでもありませんがデュエリストの矜持に反する行為も同じく失格となります――以上です。各参加者の健闘を祈ります!!」

 

 

 その宣言からデュエリスト達の戦いは始まったのだった。

 

 

 




船の中ではちゃんと男女別の部屋があるよ!
舞さんも《ヒステリック・サイン》を発動せずにすむぜ!


なお綺麗なペガサスなので刺客たちの出番はありません
死のモノマネ師「なんだとっ!!」
闇のプレイヤーキラー「バカな……!?」
迷宮兄弟「「あ、ありえない……」

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