serial experiments akagi   作:叶芽

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収録パート


Cou013

Lda078~Lda087







level8

 

 

 

 

【Cou013】

 

 

[move]

 

   [hurt]

 

      [Ego]

 

 

 

 

 

 

「自分が自分じゃない…?」

 

「………の……かも…。あの子が……」

 

「…………。最近、雀荘荒らして出禁くらったんだってな。まるで『傀』だって。玲音、そいつか?」

 

「…うん。あの子、マナーがすごく悪くて」

 

「その時、お前はどこにいる」

 

「わからない…」

 

「ふーん…。つまり、乗っ取られたってわけか」

 

「…………。たぶん、違う…かも…」

 

「……」

 

「あの子は、私…。私が、あの子になっていくの…」

 

「………………。怖いか?」

 

「うん…」

 

「ククク。俺だったら耐えられねぇな…。ククク…」

 

「俺が、俺じゃなくなるから?」

 

「ああ」

 

「玲音も…嫌。けど、せっかく知り合えたのに、別れるのも、嫌…」

 

「…まぁ、だとしたら、玲音。お前も強くならなきゃならない、ってことだ」

 

「強く?」

 

「俺は、お前のようになっちまったら、耐えられない…。

だが、お前は違うんだろ?なら、そういうのとうまく付き合ってなきゃならない。そいつが前に出たがるんなら、お前も前に出ることだな」

 

「そんなこと…出来ないよ」

 

「出来るさ。玲音は東西戦、お前の力で決勝まで行ったんだ。それに俺は、今のお前を東西戦にスカウトした。自信を持ちな…」

 

「けど……私なんだよ?」

 

「試してみな」

 

「え?」

 

「試してみることさ。全てはそれから。まず動くこと。動かなくなったら『今のお前』は死んじまう」

 

「死ぬ?……肉体が、残っているのに?」

 

「ああ。それは死体と同じようなもん。半死さ」

 

「けど…怖い…あの子が、私が傷つく…」

 

「傷つくってのは、そんなに悪いものでもないさ。悪くない。まるで悪くない。痛みを受ければ、てめぇが生きてるってことを実感できる」

 

「おじさんには…きっと分からないよ。私の事なんて…」

 

「自分を傷つける辛さを、俺は知らない、ってか?」

 

「………うん」

 

「…玲音。自分を傷つけないで生きてるやつを、俺は知らない。それに、俺に関して言えば、たぶん俺は極端だ。

………。この刀傷だってそうだ。俺は自分を殺そうとだってしてきた」

 

「……。それ…自分でつけたの?」

 

「あるギャンブルで、俺が自分の意地を通しちまったばかりに、相手につけられちまったものだ。

あの時、相手の言うことを聞いていれば、こんなことにはならなかっただろうな。

向こうが『言った』ことは、出た目じゃなくて、生きたいか死にたいかってことなんだが、俺は『死にたい』って答えた。

まぁ、いろいろあって結局は生きちまったがな…ククク…」

 

「…おじさん、なんで死にたかったの?」

 

「自分を捻じ曲げるくらいなら死んだ方がましってこと。捻じ曲げられねぇんだ。出た目と自分が死ぬことはな」

 

「……なんか、難しくなってきちゃった」

 

「ククク………だな。まぁ、雀荘には俺から言っておくから、行きたい時に行けばいいさ」

 

 

 

【Lda078】

 

 

[confict]

 

   [hurt]

 

      [twist]

 

 

 

わからなくなってきちゃった。

lainとぶつかったら、私が傷つく。

けどそれって、私を捻じ曲げるってことにもならない?

でも、ハッキリしたことはある。

lainに、マナーはしっかりするように言おう。

それが、私を捻じ曲げることになったとしても。

 

 

 

【Lda079】

 

 

 

[father]

 

   [disappearance]

 

      [memory]

 

 

 

 

 

お父さんが、帰ってこない。

飲み会かな?

 

【Lda080】

 

 

[father]

 

   [connect]

 

      [home]

 

 

 

 

 

もう三日も帰ってこない。

原村先生から電話が来た。どうしたの、って。

お父さんのことを話した。

そしたら、警察には連絡したの、って。

してなかった。

先生は怒鳴った。

今すぐ連絡しなさい、って。こっちからもしてみるからって。

ただ、学校には来るようにって言ってた。

家の目立つ所に、帰ったら学校に連絡するようメモを残しておけばいいからって。

けど…家にいたい。

家に電話が来るかもしれない。

そのことを先生に言ったら、なら無理してこなくていいです、って。

でも、学校のみんな、特に後輩は心配してるから、早く戻ってくるようにって言ってくれた。

休学についてとか色々なことは、こっちでやっておくからって。

先生、ありがとう。

 

 

 

【Lda081】

 

 

[police]

 

   [rumor]

 

      [rage]

 

 

 

 

 

警察の人が家まで来た。

若い警官が陰口を言っていた。蒸発したとかって。

お父さんはそんな人じゃない。

悔しくて涙が止まらなかった。

あんまりにも悔しかったから警察のホストをめちゃくちゃにしてやった。

ざまぁみろ。

私の大切な人を守るんだ。

 

 

 

【Lda082】

 

 

[limits]

 

   [sine!]

 

      [hentai!]

 

 

 

 

 

無言電話とか、嫌らしい電話とかが来るようになった。

あまりにもしつこいから、線を抜こうと思った。

でも、お父さんからのことを考えたら、我慢するしかなかった。

気が付いたら、死ね!変態!と叫んでいた自分が怖い。

 

 

 

【Lda083】

 

 

[home]

 

   [wired]

 

      [nodocchi]

 

 

 

 

雀荘に行きたいけど、家から離れられない。

結局チャットと、ネット麻雀ばかりの毎日。

結構有名にもなってて、のどっちの再来か、って書き込みを見つけた。

のどっち、って誰だろう。一回打ってみたいな。

 

 

 

 

【Lda084】

 

 

[father]

 

   [disappearance]

 

      [search]

 

 

 

 

警察にお父さんの事について聞いてみた。

まだ、見つからないの?って

現在捜索中って、本当に探しているの?

適当に仕事してるんじゃないの?

だったら許せない…。

あんたたちの本部壊してあげようか?

 

 

 

 

【Lda085】

 

 

 

[wired]

 

   [search]

 

      [alone]

 

 

 

もう警察は頼りにならない。

ネットのみんなに聞いてみよう。

 

 

【Lda086】

 

 

[real]

 

   [move]

 

      [alone]

 

 

 

 

ネットのみんなに聞いても駄目だった。

こちらから出せる情報には限界があるし、所詮は顔も責任もない空間。

他人のことに関心をもってくれる人なんて、いないよね。

信じられるのは、己だけ。

私が、動かなきゃ。

 

 

 

 

【Lda087】

 

 

 

 

   [critical]

 

     

 

 

 

家を空けるのは電話の事もあるから怖かったけど、もう限界。

どこに行こう。

お父さんの行きつけの雀荘はどうかな。

あそこなら、私も行っていいところだし。

 

 

 

 

 


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