serial experiments akagi   作:叶芽

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収録パート

Cou008
 
Lda046
 
Cou009
 
Lda047~Lda057 

 


 





level5

 

 

 

【Cou008】

 

[tedium]

 

   [loneliness]

 

      [akagi]

 

 

 

 

 

「聞いたぞ、大会で優勝したんだってな」

 

「……。つまらなかった」

 

「……ん?」

 

「もう…つまらないの…。麻雀部。先輩はみんな辞めちゃって、美里ちゃんは転校しちゃって、部には私だけ…。大会も…みんなぬるかった…」

 

「……」

 

「…どうして…どうしてみんな私から離れていくの…?」

 

「……」

 

「もう…何もかもうまく行くって思ってたのに…。部活も、学校も、友達も…。これじゃ…また前と同じ…。中学になったら…変えよう…って思ってたのに」

 

「……」

 

「ねぇ…おじさん…私…どうすればよかったの?…どうすればいいの?」

 

「……」

 

「おじさんは、一人だったんだよね?…おじさんは…どうしていたの…?」

 

「……。玲音…今、退屈か?」

 

「……え?」

 

「どうだ?退屈か?」

 

「……。たぶん…退屈…。部室でもずっと一人でネットで打ってる。学校では誰とも話さないし、誰とも打たない…」

 

「週末に東西戦ってのがある。お前が出た大会が表の大会なら、こっちは裏の大会だ」

 

「…え?」

 

「それに出てみないか?…まぁ…退屈しのぎにはなる…」

 

 

【Lda046】

 

 

[tournament]

 

   [team]

 

      [rule]

 

 

東西戦。

今では一年、あるいは数年に一回行われる裏の麻雀大会。

麻雀には、地域によってはルールとかが違って、特に東と西では大きく違ったりするみたい。

どこからどこまでが東のルールなのか、どこからどこまでが西のルールなのかを決めるのが、この東西戦。

私にはよくわからない。なんでそんなのを決めるの?

ルールなんて、その場の人間で決めればいいのに。

おじさんは、単に東と西、どっちが強いかを決める大会と考えてもらってもいい、って言ってた。

そう考えよう。

 

 

【Cou009】

 

[tournament]

 

   [fraud]

 

      [calm]

 

 

「玲音。この東西戦は表の大会と大きく違うところがある」

 

「何?」

 

「簡単言えばなんでもアリの大会だ。勝てばいい。勝った者が正義、そういう大会だ」

 

「イカサマとかしていいの?」

 

「していいわけじゃない。バレたら酷い目にあう。だが、東西戦に来るやつらは、それを覚悟してくる。

いかにバレずにサマをするか、いかに相手を騙すか、いかに勝つか、そういう大会になるってこと」

 

「なんか…怖い」

 

「退屈な日常にちょっとしたスパイス、と思えばいいさ。それと玲音は、無理してサマをしなくていい。

逆にしようとすると、その裏をかかれちまったりする。それだけレベルが高いところだ」

 

「じゃあ、どうすればいいの?イカサマ…しないと負けちゃうんじゃない?」

 

「玲音は、相手を観察することに全力を注げ。だが、相手の裏をかこうとするな。ただ、黙って観ていればいい。もちろん、平常心でな」

 

「それだけで、いいの?」

 

「この大会ではな、相手の癖を見抜こうと必死になる奴もいる。だが、見つけたその癖ってのは、実は演技だったってのもあるんだ。

そういう落とし穴を掘ってるやつが腐るほどいる。落とし穴には、落ちないほうがいいだろ?」

 

「わざと落とし穴に落ちるのは?前おじさん、相手に勝ったって思わせれば勝てるって言ってた」

 

「ククク。だが今回はそれは忘れろ。相手は二重にも三重にも罠を張る奴らだ。お前より、一枚も二枚も上手さ。そういうことに関しちゃな」

 

「なんか…不安になってきた…」

 

「だからこそ玲音、平常心を忘れるな…。これだけ守れば、いいとこまで行けるかもな」

 

 

【Lda047】

 

 

[test]

 

   [gesnius]

 

      [record]

 

 

 

 

おじさんの推薦で、私は東西戦に出ることになった。

テストもあったけど、あっさり合格した。

あの二分の間、みんな外に出ちゃったから、山を全部ひっくり返して、暗記しちゃったけど、よかったのかなぁ。

監視カメラも盗聴器も無かったし。

大将は天貴史さん。

迫力のある人だった。

けど、怖くはなくて、優しい人だった。

ひろゆきさんを除いて、みんなお年寄りさんばかりだけど、みんなすごいんだろうなぁ。

 

 

 

【Lda048】

 

 

[calm]

 

   [observe]

 

      [scared]

 

 

西側の人たちはなんか怖い。

敵だから?それだけじゃない気がする。

大将の原田って人はやくざの人みたい。

ギラギラした目つきが、怖い。

目合わせないように…いやだめ…玲音、観察するのよ。

 

 

【Lda049】

 

 

[team]

 

   [akagi]

 

      [Man of god precincts]

 

 

 

 

 

大会が始まった。

みんなすごい。イカサマばっかり。

後ろから見れば丸わかりだけど、場にいたらきっと分からないだろうなぁ。

しげるおじさんの技はすごい。

後ろから見てても分からなかった。

おじさんが味方で、よかった。

 

 

 

 

【Lda050】

 

 

[joyful]

 

   [advantage]

 

      [innocent]

 

 

 

私も結構頑張れた。

何もしなかったのが、逆に良かったのかも。

直撃や罠を張ろうとせず、素直にツモ狙い。

相手も私を甘く見てたのか、技を使ってこなかった。

その甘さが、命取りだったのかもね、おじちゃん。

 

 

 

【Lda051】

 

[joyful]

 

   [happy]

 

      [team]

 

残ったのは、私としげるおじさん、天おじさんに銀次おじさん。

しげるおじさんは頭を撫でて誉めてくれた。

とてもうれしかった。

なんか幸せな気分。

ここに来て、よかった。

 

 

 

【Lda052】

 

[joyful]

 

   [calm]

 

      [lain]

 

 

ここからは、たぶん運が通じない。

向こうも、もう私を甘く見ないだろうなぁ。

けど平常心だよ、玲音。

なんか、すっごくわくわくしてきた。

ウフフフッ。

 

 

 

【Lda053】

 

 

[akagi]

 

   [wizard]

 

      [The dragon breaks the ground]

 

 

 

その対局は10巡交代制麻雀で、アガっても点数が増えなくてシビア。

しかも満貫しばり、大変。

西側も堅い。中学生大会とは比べ物にならない。

けど、一発も怖い。

親倍満で、ガン牌の銀次さんが飛んだ。

けど、こっちもすごい。

しげるおじさんがクズ手を純チャンリャンペーコーに、天おじさんがそこから四暗刻にまで育てて、西側二人を飛ばした。

おじさんたちには、視えないものまで視えているの?

超能力者見たい。かっこいい。

私も、頑張らなくちゃ。

 

 

 

【Lda054】

 

 

[fraud]

 

   [Ego]

 

      [miss]

 

 

 

五枚目の{白}?

そんな……。言おうかな。けど、このリーチは勝てる気がする。

私、これまでいいとこ無しだったもん。

向こうの罠を空振りさせてやるんだ。

 

 

 

 

【Lda055】

 

 

[miss]

 

   [fool]

 

      [regret]

 

 

引けない。

引けないどころか、六枚目の{白}?

私は馬鹿だ。対面の西の大将は、捨て牌を見れば、ばればれの国士…。

玲音の馬鹿。ちゃんと観察しなきゃ。

もう言い訳出来ない。

この白、切るしかない…。

しげるおじさん、ごめんなさい。

 

 

 

 

【Lda056】

 

 

 

[excepitional]

 

   [for lain]

 

      [akagi]

 

 

振り込んだ。

振り込んだけど、しげるおじさんも牌を倒した。頭ハネって。

{2}、{5}、{⑤}待ち?

おじさんは、すり替えた牌、{5}に対してロンした、と言った。

六枚目の{白}なんて異例を認めるなら、俺の異例も認めさせてもらうって。

それが、当たっていたらすごいけど、なんで私のために?

私なんか、足手まといなのに…。

 

 

 

【Lda057】

 

 

 

[miss]

 

   [akagi]

 

      [Ego]

 

 

しげるおじさんの予想が外れてしまった。

天おじさんが言うには、正確には向こうのミスらしい。

出てきた牌は、{⑤}と{五}。

部下が{5}と{五}を間違えたんだって。

事実、向こうは{⑤}でもよしとするって言っていた。

けど、しげるおじさんは受け入れなかった。

どうして?なんで?

おじさんの予想は、当たってたんだよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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