週明けの月曜日。教室に入ってみると何故か空気が浮わついていた。
「おーす。おはよう比企谷。」
「ああ。」
「相変わらずテンション低いなー。」
「むしろ何でお前朝からそんなテンション高いんだよ。」
まあこいつは朝からとか関係なく大体テンション高いけど。割とうざいレベルで。
「いやー、それがよ?比企谷は聞いたか?」
「...何を?」
そんなん言われても分かる訳がない。つーかこれと似たやり取り、最近したような気がする。
「何でもー、一条と桐崎さんが付き合うことになったらしいぞ?」
「...あっそ。」
一条の相手ってやっぱ桐崎だったのか。竜さんに聞いたときになんとなくそんな気はしてたが。
「おろ?あんま驚いてないみたいだね?」
「いや、そんなことはないぞ。普通に驚いてる。...で?この空気はその二人を問い詰めようとしてるってことか?」
「そういうこと!」
「つーかそれどこ情報だ?」
もしかして小野寺か?あの後二人に会ったとか?
「むふふ...それはだな...」
「おーいみんな!二人が来たぞ!」
舞子が説明しようとしたところで件の二人が来たらしい。タイミング悪いな。
「おめでとー!!!」
「お前ら付き合うことになったんだってな!!」
「末永くお幸せにー!!」
出たよこのノリ。クラス内にカップル出来ると大抵こうなるんだよな。俺は参加しないけど。
「なんだよそれ!!一体なんの話・・・!!」
「とぼけんなって楽!!もーネタはあがってんだ!」
...舞子いつの間にあそこまで移動したの?さっきまでここにいたよね?
「一昨日の土曜日・・・!!街で二人がデートしてるのを板野と城ヶ崎が目撃してしまったのだよー!!」
あーなるほど。それでクラス内に広まってんのか。というか板野と城ヶ崎って誰?
「おー?何々お前ら付き合う事になったわけ?いいねー青春だねー。」
いやいや。先生はこの騒ぎおさめてくださいよ。マジで。
「ちょちょちょ待てよみんな!!みんなそれ誤解なんだってばー!!これには色々深い訳が...。」
何か言おうとしていた一条が窓の外を見るなり固まった。そして...
「そーそー誤解なんだよみんなー!俺達はカップルじゃなくて「超ラブラブカップルだっつーの~!!」」
と言いはなった。...え?何あの見え見えの芝居。つーか何でクラスの連中みんな信じてんの?つーか一条と桐崎、さっき何見て固まったんだ?
そう思って窓の外を見ると...
木の枝にのって双眼鏡で覗いているスーツ姿のおっさんがいた。
...何あの不審者?
-翌日-
「おはようダーリン!!早く会いたかったわ!!」
「おはようハニー!!僕もだよ!!」
一条たちのくさい芝居はまだ続いていた。
「...よくやるな。」
「ん?何が?」
...何で舞子はいつもしれっと俺んとこ来んの?
「とぼけんな。お前もあれが芝居なのは分かってんだろ。」
こいつは軽薄そうに見えて実際その通りだが、中々洞察力のある奴だ。気付いていないはずがない。
「まあそうだけどさ。でも!ノった方が面白いじゃん!?」
「...お前のそういうとこが嫌いだよ。」
「面と向かって酷くない!?」
「比企谷君、おはよう。」
「おう小野寺。何か用か?」
「えっと、大した話じゃないんだけど...ちょっと昨日・・・」
それから昨日の小野寺と一条の会話を聞いた。要約すると一条が桐崎の不満を垂れ流していただけのようだ。ま、どうせ誤解を解こうとしたけどヘタレただけだろうけど。
「せっかく付き合って、教室でもあんなにラブラブなのに...どういう事だと思う?」
なるほど。教室で「ハニー!」とか言ってる一条が不満を言ってたのが疑問だったのか。
「...窓の外の木の枝見てみろ。」
「え?...!?あの人誰!?」
どうやら小野寺も不審者の存在に気付いたようだ。
「それは知らんが多分あれが原因であーやってるんじゃねーの?あの双眼鏡ずっと一条の方向いてるし。」
うーん...あれマジでそろそろ通報した方がいいのではなかろうか?
ありがとうございました。そろそろ1巻の内容終わりそうです。
...最近締め切りに追われる作家の気持ちが分かるようになってきました。