...デートらしいデートをさせてあげられなくてすいません。
あと今回、今までに何回か触れてきた事故についても書きました。
佐々木竜之介。組の人には竜と呼ばれている、一条の家がやっている集英組というヤクザで若頭を務めている人物だ。
「こんなとこで何してんすか、竜さん。」
「いやー、実はとうとう坊っちゃんにも彼女が出来てな!!!わしらは坊っちゃんらのデートの手伝いでもできればと・・・」
そして2年前、俺と衝突した車を運転していた張本人だ。
あの日、何か特別な事があった訳ではなく、ただ俺が買っているラノベの新刊が発売されたから買いに行ったというだけだった。ただそれでも、欲しかった物を手にいれた直後で柄にもなくテンションがあがり、注意が散漫になっていたのは否めない。
そんな時にそれは起こった。
突然見知らぬ猫がそれまで遊んでいたらしき少女―小野寺-の手を離れ、突然道路に飛び出したのだ。いやそれだけならばまだいい。問題はその猫に向かって1台の大型車が迫っていることだ。タイミング的にもブレーキは間に合いそうもなく、このままでは数秒後あの猫が車にはね飛ばされてしまうだろう。
そう考えた時にはもう俺の体は車の前に飛び出し...
全身に痛みを感じる間もなく俺は意識を失った。
で、そのまま足を折って入院。
竜さんと小野寺は、家族を除いて俺のお見舞いに来てくれた唯一の人だった。
竜さんは俺を直接はねてしまった人として、小野寺は猫が道路に飛び出すきっかけを作ってしまった人として、それぞれ罪悪感を感じて...
「わしらは坊っちゃんらのデートの手伝いでもできればと思ってな!!!」
竜さんが嬉そうに話す。...一条に彼女...別に羨ましくはないけど。いやホントマジで!
「そっすか...どおりで見覚えある強面の人沢山いるなとおもいましたよ...ちなみに相手は?」
聞いても分からないだろうけど。
「あーほら、最近ここらに外人のギャング共が越してきてな、そこの一人娘じゃ!」
へー外人ギャング...ん?外人?最近越してきた?
「あ、あの竜さん!お久し振りです!」
俺が考えにふけっていると小野寺が竜さんに話かけた。そういや、俺の見舞いに来たときに会ってたんだっけか。
「おお、あん時の嬢ちゃんもおったんか!いや久し振りじゃの!」
「気付いてなかったんですか?」
「いやーすまんすまん。坊主の方は目とか髪の毛とか特徴的だからすぐ分かったんだが...」
ひでぇなおい。確かに俺のアホ毛は目立つかもしれんし、俺ほどに目の腐った人間もそういないだろうけど。
「・・・じゃ、小野寺。俺そろそろ帰るわ。そろそろマジで時間もやばいし。」
「え!?あ、うん、そうだね!?」
何でテンパってるんだ?...そういやさっき何か言おうとしてたな。
「なぁ小野寺。さっきは何言おうとしてたんだ?」
「え!?あ、えーっと...」
何か言いにくそうだな...
「た、大したことじゃないの。気にしないで」
「...そうか。じゃあな。」
あーよかった、変なこと言われないで。もし小野寺に絶縁宣言されたらその場で死んじゃうところだわ。
そんなくだらないことを考えながら俺は帰路についた。
~Side 小咲~
はぁ...
「えっと...何か余計なことしたか?」
「え!?いや別にそんなこと!そ、それよりも一条君のことはいいんですか?」
「おお、そうだった!じゃあ、またな!」
とてもヤクザとは思えない優しい笑みを浮かべながら竜さんが立ち去って行く。
「・・・はあー...。」
竜さんが見えなくなった所で私はさっきよりも大きなため息をついた。
こんなことってないよ...勢い任せな部分はあったけど、せっかく勇気振り絞ったのに...
「さっきの雰囲気だったら告白できたかもしれなかったのに...。」
もう少しで決定的な言葉を口にできたと思うとなおさら悔いが...
「はぁ...帰ろう...。」
結局最後に一つ、オマケのようにため息をはいて私は駅に向かった...。
ありがとうございました。
事故のくだりの設定は最初から決めていたのですが、うまく文章化できずにグダグダになってしまい申し訳ありません。