干物妹!うまるちゃんの日常   作:若狭東

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これから、土日の更新を目指します。


その53 救世主登場

こりゃ、絶体絶命。どうしたものか。

 

「た…達生くん?どうしたんですか?」

 

きりえちゃんが聞いてきた。ここは正直に「俺も忘れてきたわ。てへっ!」とでも言っておくべきなのか?

 

それとも、今は誤魔化しておく?

 

うーん。誤魔化した所でどうするんだ。俺は

 

「実は俺も財布忘れてきたしまった…」

 

「‥‥そ‥‥そんな‥‥」

 

「でも、大丈夫。諦めない限り、試合は終わらないから」

 

自分でこんなことを言っておきながら、何が大丈夫なのだろうか?現状、今大ピンチなんだが。

 

と‥ここで、俺はこのピンチから脱出できそうな案が一つ頭に浮かんだ。これが、無理ならもう‥‥‥‥うん。諦めよう。

 

「きりえちゃん。ちょっと待ってて‥‥」

 

「は‥‥はい‥‥」

 

 

 

俺は、ささっとトイレに駆け込む。そして、ポケットからスマホを取りだし、電話帳を開き、ある人に電話をかける。

 

プルルル プルルル プル‥‥

 

「もしもし~。どうしたの~?」

 

スマホからは聞き慣れた女性の声。まず、電話が繋がってくれたことに感謝。

 

「もしもし。母さん。今静岡にいるんだけど、非常事態で‥‥」「ひ‥ひっじょうじたい?事故でもあったの?それとも、何か犯罪でも起こしたの?今、病院?警察署?交番?」

 

‥‥この人は‥‥。相変わらず変わらないな。

 

「そこまでの非常事態じゃないんだけど、今母さんの店にいるんだ」

 

「私のお店?どうして‥‥?what?」

 

「まぁ、話すと‥‥かくかくしかじか」

 

 

 

「で、今ここに来ていて、財布がない状態なんだ」

 

1分~2分ほどの説明だったが、何とか母さんには伝わった。

 

「お財布がないのね。わかったわ。それなら‥‥裏口に来てくれる?」

 

裏口‥‥となると、店の外に出ないといけないのか。

 

「ごめん。母さん。もう、お店に入ってしまって‥‥俺は今トイレにいるんだけど、9番テーブルに同じ部員の子もいるんだ」

 

「そ‥‥そうなの。困ったわね。もう、あれしかないのかしら」

 

「あれ‥‥とは?」

 

「ひ・み・つ。9番テーブルで5分ほど待っててくれる?」

 

何か怪しいが、頼んでいる身としてはここは呑むしかない。

 

「わかった。待っとくよ」

 

「じゃあ、待たね~」

 

プツ‥‥プー プー プー

 

心配だが、ここは母に頼るしかない。

 

通話が切れた携帯をポケットにしまい、俺はトイレを出た。

 

 

 

きりえちゃんの所へ戻る。きりえちゃんは戻ってきた俺を見ると、表情が和らいだ。きっと、一人で心細かったのかもしれない。

 

「それで、お財布の件は‥‥」

 

「それなら、5分ほど、ここで待っとけば、大丈夫」

 

「は‥‥はぁ‥‥」

 

そして、待つこと5分後‥‥

 

一人のサングラスをした女性が俺たちの元へやって来た。

 

「あなた達をタダ食いで逮捕します!」

 

「ええっ?だ誰ですか??タダ食いって!?」

 

きりえちゃんはいきなりの訪問者にひどく慌てている。

 

「母さん。遊ぶのはやめてくれ。きりえちゃんがパニックを起こしているから」

 

「か‥‥母さん??」

 

「あら、それは残念ね。ふふ」

 

そう言って、俺の隣に座るサングラスの女性。

 

「で、こっちから頼んでいてなんだけど、ここに来ても大丈夫なの?」

 

「たっちゃんが困っているんだもの。私は仕事より、助けることを優先します」

 

「あはは‥‥ありがとう。母さん」

 

本当に、この店の社長が客として、来ても大丈夫なのだろうか?と思うが、大丈夫ということにしておこう。

 

「え‥‥えっと?」

 

きりえちゃんは状況を呑み込めていないようだ。まぁ、無理もないか。

 

「きりえちゃん。この人が俺の母親」

 

「どうも~たっちゃんの母で~す。たっちゃんにこんなに可愛い彼女さんが出来ていたなんて、私は嬉しいわ。嬉しくて泣きそうだわ。ひっく、ひっく」

 

面倒だから。そういうの

 

「か‥‥彼女!?」

 

「違うから、電話で部員の子って言ったよね」

 

「部員の子といいつつ、彼女さんなんでしょ。このこの~」

 

母は俺のほっぺたをつついてくる。

 

まったく、面倒な人だ。

 

「ふふっ、冗談よ。確か、きりえさんだったかしら?」

 

「は‥はい。本場きりえです」

 

「救世主の私が来たから、もう安心よ。好きなもの頼みなさい」

 

頼りになる時は本当に頼りになる人だ。この人は

 

 

 

 

 

ご飯を食べ終え、お会計を済ませ、店の外に出る。母さんもお昼を食べてなかったらしく、母さんもご飯を食べていた。

 

「ふぅ~やっぱり、美味しいわね~。じゃあ、私。そろそろ行くわね」

 

「ありがとう母さん。今日はすごく助かったよ」

 

「ご馳走して頂きありがとうございました。このお金はいつか‥‥返」

 

「いいのよ。いいのよ。いつか、恋人同士になるんだもの。ご馳走するのが早かろうが、遅かろうが、どっちでもいいわ。ふふふ」

 

本当にこの人はからかうのが好きだな。まぁ、そこが面白い面でもあるけど

 

「はいはい。じゃあね。母さん」

 

「さようなら。本日はありがとうございました」

 

「またね~。青春はまだまだ、だからね~」

 

こうして、俺ときりえちゃんは救世主と別れたのだった。

 

 

 

そして、帰りの電車の中。

 

「ごめんね。母があんな人で」

 

俺は溜め息をつきながら、きりえちゃんに言った。

 

「いえ、今日はお世話になりましたし、何よりも優しそうな人でした。まるで、うまるさんのような‥‥」

 

きりえちゃんは何か想像しているようだ。

 

うまるちゃん?うまるちゃんと母さんかぁ‥‥

 

うまるちゃんが優しいのも、母さんが優しいのも間違いないが‥‥

 

「あはは‥‥」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、ちょっとね」

 

母さんは単なる子供だからなー

 

俺はそんなことを思いながら、きりえちゃんといろんなことを話して、楽しんだのだった。

 

 




いろんなクロスオーバーのリクエストありがとうございました。次回から、ある漫画とクロスオーバーさせていこうと思います。その漫画は現在もマガジンで連載しています。

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