「おっ、きりえじゃねぇか?」
俺を今の悩みから救ってくれそうな、天使?的な人が現れた。天使ではないが、救世主?だろうか?
「あっ、ボンバさ……」
「なな何で、兄貴が……!」
俺が言う前にきりえちゃんがその言葉を残して、走って行ってしまった。
「「「…………」」」
「き、きりえ?あはは……はぁー」
ボンバさん以外の俺たち三人は走り去っていくきりえちゃんの姿を呆然と眺めていた。多分、きりえちゃんはボンバさん、兄のことが嫌い?それとも苦手らしい。
「あはは……クリスマスの日ぐらい待ってくれよ!きりえーー」
ボンバさんはそう叫んできりえちゃんの方向へ、走って行ってしまった。
近所迷惑だよ。ボンバさん……
というか、一体、この約1分間に何があったのだろうか?
1分前と今を見比べて、変化した所はきりえちゃんが帰ってしまったことだった。
「あはは(笑?)……俺らも帰ろうか」
「そ、そうだね……」
「うん……」
今、起こった出来事には触れずに俺たち、3人も帰ることにした。
3人で息も白くなるほど寒く、真っ暗な道を歩く。
歩き始めてから、まだ5分もたってない時…俺は歩きながら思う……
女子2人と夜道……に。きき緊張するんだが!
毎回のごとく、異性の女子と歩いているのが俺だけの時に思い出させるこの感情。
今までにも、このような回想シーンはあったけど……あったんだけど……やっぱり、恥ずかしく、緊張することについては毎回のごとく変わらない。これって、よく恋愛ゲームとかで言う
『俺は2人のことを気にかけている……』
的なやつなのか?そうなのか?
今の俺にはよくわからない。だが、めっちゃ緊張している俺に、気にかけるほどの余裕はないため、多分違うらしい。
そんなことを考えていると、うまるちゃんから、ブーンブーンとケータイの音が鳴る。うまるちゃんは立ち止まり、スマホをポケットから出して、手で操作する。うまるちゃんが止まったので、海老名ちゃんと俺も立ち止まる。うまるちゃんはジーとスマホの画面を見ている。
「どうかした。うまるちゃん?」
ジーとスマホの画面を見ていたうまるちゃんを気になった、海老名ちゃんが声をかける。
「え!?あ……ううん」
うまるちゃんは何かに動揺している感じだった。
スマホのメール?に何か動揺するほどのことが書かれていたのだろうか?そして
「ごめん海老名ちゃん達生くん!シルフィンさん家に忘れ物したから先に帰れる?」
「え?うん…」
「ごめんね!」
そう言って、たたたっと来た道を戻っていくうまるちゃん。
俺は何も言えずに走り去っていく、うまるちゃんを眺めていた。
今度も約1分間?いや体感的に30秒ほどの間に何が起こったのだろうか?
30秒前と今で変化したことはうまるちゃんがいないこと。
「うまるちゃん…どうしたのかな?」
「私にも…突然のことだったので…」
2人でうまるちゃんが走り去った、俺たちがさっきまで歩いていた道をぼんやり眺める。
うまるちゃんがいなくなり、海老名ちゃんと俺だけ…
「ま、まさか!うまるちゃんは二人っきりにさせるためにわざとこんなシチュエーションを!何というお方なんだ!」
俺はちょっとばかり、ボケてみることにした。ボケてみることによって、俺の緊張が少しでも和らぐかな?と思ってボケてみたのだ。
「う、ううまるちゃんが…そそそんなことを…」
海老名ちゃんはあわわわ…と暗くてもわかるほど、顔を朱に染めている。俺の緊張はなくなったが、今度は海老名ちゃんが別の緊張をしてしまったようだ。
というか、俺の言ったことを本気にしてる!!?
「海老名ちゃん。冗談だから。冗談冗談。スマホのメールに何か…大事なことが書かれていたんだよ。多分」
俺は急いで、さっき言ったことを訂正する。
「そ…そうなんだ…。うん。そうだよね。」
海老名ちゃんはもじもじしながら、そう言った。
もじもじしてるということは、まだ緊張しているようだ。だが、さっきよりは緊張がなくなったようだ。というか、俺があんな冗談を言わなかったら、海老名ちゃんが緊張することはなかった。
「さっ、アパートまで歩こうか」
「そそそんな…迷惑は…」
この反応。この展開。この前の焼肉と時にも、体験したような気がするぞ。それなら、この言葉に対する言葉は
「以前の焼肉の時と同じだけど、じゃあ、俺からのお願いで。送らせて欲しいんだ」
俺はそう言った時に思った。
以前の俺って、こんなカッコイイ言葉を口にしていたのだろうか?いや、今回は以前より、持ってしまったに違いない。
我ながら、何と恥ずかしい言葉!
「達生くんのお願いは一体、全部で何個あるんですか…」
海老名ちゃんはそう言って、微笑んでいる。
「あはは…100個ぐらい?」
そんな話をしながら、歩いていると
「あっ、カップル!」
「コラッ!そんなこと言わないの」
すれ違った、女性の小学生ぐらいの子供に『カップル!』と言われた。
その瞬間に俺の鼓動は一気に激しくなる。さっきまで、なかった緊張?いや、恥ずかしさがまた蘇ってくる。
ドクンドクン、ドクン…ドクドク?
そんな俺は横にいる海老名ちゃんを見てみると、かあああ……とさっきのように顔を朱に染めていた。
俺は思いきって、言ってみた。
「寒いから……前みたいに手でも繋ぐ?はは……」
この時の俺は頭が働かないほど、どうかしてた。多分
「えっ……!あっ、ううん……。うん……」
そして、海老名ちゃんも緊張でどうかしてたに違いない。
いや、海老名ちゃんはわかんないけど?俺は完璧にどうかしてた。
こうして、緊張している2人は恥ずかしがりながらも、手を繋ぎながら、アパートまで歩いたのだった。
昔はどういう風にこんな感じなのを書いていたかな?と思いながら、書いていました笑