干物妹!うまるちゃんの日常   作:若狭東

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そろそろ3巻が終わる感じです。


その20 うまるとバレンタイン

2月に入った頃

 

「なるほど……」

 

今日の朝、達生はタイヘイさんに料理を教えてもらうためにタイヘイさんの家に来ていた。

 

「最後、隠し味にいろんな調味料や食材を入れてみるとより美味しくなるよ。俺はりんごをすりおろして、甘味を出しているかな」

 

今はカレーライスをより美味しく、上手くなるやり方を教えてもらっていた。達生はメモ帳にメモを書きながら、聞いている。カレーライスはどの家庭でも隠し味があると思われる。タイヘイさんの家はリンゴのようだ。

 

「参考になります。いろんな事を試してみますね」

 

達生はメモを書きながら、カレーライスが完成する所を見ていた。

 

「他に合いそうな調味料は…はちみつ、ニンニク、ヨーグルトとかかな」

 

ヨーグルト?ヨーグルトでカレーライスが美味しくなるの?

 

達生はヨーグルトがカレーライスに合うことが考えられなかった。

 

「ヨーグルトですか…?」

 

達生は疑問に思ったことをタイヘイさんに聞いてみた。

 

「ヨーグルトを入れると甘みやコクが出るんだよ。ヨーグルトだけじゃなくて、牛乳やバターなどの乳製品もおすすめかな」

 

タイヘイさんが言うからには、本当なんだろう。

 

ヨーグルトや乳製品かぁ……今度試してみよ。

 

達生はあることに気がつく。

 

そういえば今日、こまるちゃんとうまるさんがいないな。

 

達生は気になり、タイヘイさんに聞いてみる。

 

「タイヘイさん。こまるちゃんとうまるさん。今日はいない感じですか?」

 

タイヘイさんは達生の問いに答える。

 

「こまるとうまるなら……」

 

その時

 

家の扉が開く音が聞こえた。誰かがキッチンに向かって歩いてくる。その人は

 

 

エプロン姿のうまるさんだった。

 

 

 

「お兄ちゃん。ちょっと来てくれない?あっ、達生くんも一緒に」

 

うまるさんはタイヘイさんと達生をどこかへ連れて行きたいようだ。うまるさんはタイヘイさんの手を引っ張って連れていく。

 

まだ、タイヘイさんと俺、返事を出していないんだけど

 

そんなことを思っている場合ではない。

 

2人を追いかけないと

 

達生はカレーが入った鍋に蓋をして、2人の後を追いかける。

 

 

 

 

 

達生が行った場所はアパート一階のある人の部屋だった。

 

それは海老名ちゃんの家だった。

 

「お兄ちゃんと達生くんがいたから連れてきたよ」

 

うまるさんは笑顔で海老名ちゃんに言う。

 

「なんなんだ?」

 

タイヘイさんは何故ここに連れてこられたのか、疑問に思っているようだ。

 

海老名ちゃんはタイヘイさんを見て固まっている。

 

どうしたんだろう

 

タイヘイさんとうまるさんはひそひそ話をする。

 

「なぁ……俺、達生くんに料理を教えている途中なんだけど」

 

ひそひそ

 

タイヘイさん。うまるさん。聞こえてるんだけど

 

「チョコ作るの難しそうだからちょっと手伝ってよ。ちょっと達生くんに聞いてみる」

 

ひそひそ……そして

 

「達生くん。チョコ作るんだけど、達生くんも一緒に作らない?」

 

チョコ?そうか、もうバレンタイン近いんだっけ?

 

うーん。チョコの作り方を学ぶのもありかも。

 

チョコの作り方を知らない達生にとっては良いかもしれない。

 

「タイヘイさん。チョコ作りが終わってからでも僕は大丈夫です。チョコの作り方…学びたいし」

 

達生はO.K.を出した。

 

「でも、達生くん。男の俺達がいない方がいいんじゃないかな」

 

タイヘイさんは達生に言う。

 

あー、それも一理ある。バレンタインは基本女の子だけで作るもんだ。男の俺とタイヘイさんがいたら何か……あれだし。

 

「い いいえ!!いてくだささい!!」

 

海老名ちゃんが焦ってタイヘイさんに言う。

 

そんだけ、タイヘイさんに手伝ってもらいたいのかな?

 

達生はキッチンを見渡すと

 

何と…

 

 

 

冷蔵庫が…

 

 

 

2つあった。

 

 

 

うわーお…ファンタスティック。

 

1人暮らしで冷蔵庫が2つあるとは

 

しかも台所もすごく綺麗に使われている!!

 

台所は汚れなど一切なく、料理器具もきちんと整理整頓されていて、ピカピカ輝いていた。

 

達生は海老名ちゃんのキッチンに驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

材料をキッチンに準備して料理を始める。

 

「手作りチョコは装飾や味に力を入れなければすぐに作れるよ」

 

タイヘイさんは3人に言う。達生は重要な所を聞いてメモを取っている。

 

「刻んで、溶かして、形を作る」

 

刻んで、溶かして、形を作ると

 

ふむふむ。ごく普通だな

 

そこからが難しい工程なのか?

 

達生はタイヘイさんの続きの言葉を待っていると

 

「おわり」

 

…………え!?おわり!?

 

「「「 早い!! 」」」

 

3人同時に言う。

 

いやいや……早すぎるでしょ。やろうと思えば、カップラーメンが出来るまでに終わってしまうよ。

 

「溶かす所で色々アレンジできるよ。トリュフだったら生クリーム。生チョコだったら水あめをまぜる」

 

基本のチョコ作りにアレンジを加えていったらいろんなチョコを作れるんだ。

 

「へー」

 

うまるさんはチョコレートを想像しているようだ。

 

「なるほど……勉強になります」

 

達生は言っていたことを忘れないようにメモをする。

 

「それと……」

 

タイヘイさんは話を続ける。

 

「バレンタインチョコは相手におくるためにわざわざ普通のチョコを溶かして手作りにするんだけど……」

 

言われてみれば、バレンタインチョコはわざわざ普通のちょこを買って溶かして作っている。

 

「これはただチョコの種類を変えるために混ぜるんじゃないんだ」

 

達生はタイヘイさんがこれから言うことはだいたい予想できた。気持ちが重要なんだろう。

 

「渡す相手への気持ちをチョコに混ぜる」

 

やっぱり、気持ちを込めることが大切

 

チョコだけではなく、何事にも気持ちを込めることが大切だと思う。

 

「そもそもチョコは原料のカカオ豆をすりつぶして…………」

 

タイヘイさんは何かの呪文のような話を語りだした。

 

…………タイヘイさん何か語りだしたな、大丈夫かな?

 

それから、達生もメモを見ながら、チョコを作り出した。

 

始めに刻んで……溶かして……形を作る

 

後は気持ちを込めると言っても……誰かにあげるものでもないし

 

達生は自分に送るために気持ちを込めて作った。

 

2人を見てみると

 

2人とも、海老名ちゃんを見ていた。

 

? どうしたんだ?

 

達生も海老名ちゃんを見てみると

 

チョコには、こう書かれていた。

 

 

 

〈Dear EBINA〉

 

 

 

? 自分用!?

 

達生も自分のために作ったが、自分の名前を書くほど気持ちは込めていない。

 

しかも、Dearって、確か愛するって意味だったはず。愛する……自分?

 

それか、間違えて書いたのかな?

 

間違えてDearって書いてしまったから、名前を書かないといけなくなったとか

 

どっちかはわからないけど…多分間違えたんだろう。

 

間違えて書いた真実を知るものは、誰もいなかった。

 

 

 

 

 

タイヘイさん以外の3人のチョコ作りは終わり、3人とも自分で作ったチョコを食べていた。

 

「自分で作るチョコは美味しいね。海老名ちゃん。達生くん」

 

うまるさんは食べながら笑顔で言う。うまるさんのチョコに入っているのはあれは、お菓子の……柿の種?

 

まさか、そんな訳ないか。多分きのせい、きのせい。

 

「う……うんっ!」

 

海老名ちゃんも笑顔でチョコを食べている。

 

「自分で作ったから、達成感もあって、美味しいのかも」

 

店で売っているチョコより、何かが違う美味しさを味わえた。

 

「じゃあ、食べ終わったら、料理の続きやろうか」

 

あ……そうだ。今日は料理を教えてもらうために来ていたんだった。すっかり忘れていた達生。

 

「料理?何作っていたの?」

 

うまるさんはタイヘイさんに聞く。

 

「カレーだよ。お昼も近いし、海老名ちゃん。達生くん。お昼食べていく?」

 

時刻を見ると、11時50分

 

もう少しで12時だ。

 

「じゃあ……お言葉に甘えて頂きます」

 

「わ…私も」

 

2人とも、カレーをごちそうになることになった。

 

今日、いろんな料理を学んだ達生だった。

 

 

 

もう少しでスペ4のゲーム大会が行われることは、まだ誰も知らなかった。




次のお話にシルフィンを登場させようと思います。
UAが一万をこしました。これも、皆さんのおかげです。今後もよろしくお願いします。
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