干物妹!うまるちゃんの日常   作:若狭東

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その17 うまるとお食事会

ある日の日曜日

 

達生は相変わらず、朝からテレビゲームをしていた。朝からゲーム三昧なのは、いつものことだ。平日も学校から帰ってからゲームをしているが、流石に疲労とゲームをする時間が少ないことがあり、なかなかゲームに熱中できない。部活がない時の休日は達生にとって、最高の時間だと言っても良いくらいだ。

 

ゲームをすること、数時間

 

「ちょっと、いいかい?」

 

祖母が話かけてきた。

 

「何かあった?」

 

何だろう?と思いながら、達生は話しかける。

 

「今から、夕方まで近くの老人ホームに行くんだけども、一人でお留守番できるかい?」

 

何だ、そんなことか。もう俺高校生だよ。ばあちゃん。

 

でも、祖母は俺を心配して言ってくれたのだと思う。

 

まったく、ばあちゃんは優しいな

 

「大丈夫。留守番できるよ」

 

すると、祖母はキッチンの方へ歩いていき、何か入った袋を2つ持ってきた。

 

何が入っているのか、わからない袋に対して、考えていると

 

「今日の朝、ばあちゃんの知り合いからもらった、取れたての新鮮な魚と新鮮な野菜だよ」

 

達生は袋の中を見ると

 

その袋の中は新鮮な魚と新鮮な野菜だった。

 

「たまには栄養も必要じゃから」

 

平日、学校の朝とお弁当は祖母が作ってくれる。夜ご飯は2人で協力して作っている。

 

しかし、休日の朝は食べず、昼はコンビニでおにぎりを買ったりして過ごしていることが多い。

 

祖母は休日に栄養をとっていない達生を心配しているのだろう…

 

達生は優しい祖母に感謝する。

 

「ありがとう。大事に使うね」

 

祖母はにっこり微笑み、時計を見る。

 

時刻は午前11時30分

 

「じゃあ行ってくるね」

 

祖母は玄関に向かう。

 

「行ってらっしゃい」

 

達生は祖母とお別れの挨拶をした。

 

 

 

 

 

「さぁ、この食材どうしようか」

 

食材をもらったのはいいけど、どう調理しようか悩む。

 

しかも、量が多い。見た感じ、ざっと5人~6人ほどの量がある。

 

ばあちゃんもらったのはいいけど俺一人じゃ食べきれないよ

 

達生はどうしようか考える

 

考えること、5分後

 

そして、一つの考えが頭に浮かんだ。

 

そうだ!タイヘイさんにおすそわけしよう。

 

タイヘイさんには、アイスクリームやファミレスなど奢ってもらってお世話になっている。いつかお礼をするチャンスを探していたができることがなかった。

 

そして、今この時

 

食材も多すぎるし、タイヘイさんにお礼ができる。

 

いわゆるこれは一石二鳥だ。

 

そうと決まれば、タイヘイさんに渡しに行こう。

 

時計を見る。

 

時刻は午前11時50分

 

今から渡しに行けば、何とかお昼に間に合いそうだ。

 

「よしっ、急ごう」

 

達生はお昼に自分が食べる分を家に残して、早速タイヘイさんの家に向かった。

 

 

 

 

 

タイヘイさんの家についた。かかった時間はおよそ10分ほど。

 

アパートの2階に上がり、タイヘイさんの家の前に立つ。

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

達生は玄関の扉を開けると

 

「あ 達生くん!」

 

タイヘイさんが出てくれた。

 

「こんにちは。タイヘイさん」

 

達生はタイヘイさんに挨拶をする。

 

挨拶をしてから、タイヘイさんの後ろに現れた人は…うまるさんだった。

 

「こんにちは。達生くんっ」

 

うまるさんも挨拶をする。

 

「あっ こんにちは。うまるさん」

 

達生は挨拶を返す。

 

「何かうまるに用事?」

 

タイヘイさんはうまるさんに用事があるのだろうと思っているようだ。

 

「あっ、いえ、その、今日の朝に祖母から取れたての魚と野菜をもらったので、どうぞ食べてください」

 

達生は最初言うのに戸惑いがあったものの何とか言えた。

 

ふぅ、言えて良かった。

 

「え?魚と野菜?悪いね」

 

タイヘイさんは2つの袋を受け取ってくれた。

 

何とか渡すことに成功した。

 

その時

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

「なんだろ?達生くん。ごめんね。ちょっと家に上がって」

 

タイヘイさんに言われるがままに家に上がることにした。

 

「お邪魔します」

 

家に上がり、達生は玄関を見る。

 

タイヘイさんは玄関を開けると

 

そこには海老名ちゃんがいた。

 

「あ 海老名ちゃん!」

 

「こ……こんにちは。お兄さん……」

 

海老名ちゃんはタイヘイさんに挨拶をする。

 

「こんにちは。海老名ちゃんっ」

 

うまるさんが挨拶をしたので、自分も挨拶をする。

 

「こんにちは」

 

「あっ、うまるちゃん。達生くん。こんにちは!」

 

海老名ちゃんは挨拶を返す。

 

「うまると遊びに行くの?」

 

タイヘイさんはうまるさんと遊びに行くのかな?と思っているようだ。

 

「あっ…いえ……あの……」

 

海老名ちゃんの言葉が途切れる。

 

そして、顔を赤くしながら

 

「じっ……実家からあきたこまちが送られてきて!食べてください!」

 

海老名ちゃんの手には「あきたこまち」と書かれたお米がある。

 

海老名ちゃんの実家秋田なんだ

 

達生は海老名ちゃんの実家が秋田という事実を初めて知った。

 

「え?お米?悪いなぁ」

 

タイヘイさんは悪いなぁと思いつつ、あきたこまちを受け取る。すると

 

 

 

きゅるるるる

 

 

 

「「「 ? 」」」

 

 

 

一瞬、時が止まる。

 

一体何が起こったんだ?

 

音がした方向を見てみると

 

 

 

 

 

 

 

そこには顔を赤くした海老名ちゃんがいた。

 

「すすす すす……すみませんお腹が……」

 

海老名ちゃんはパニック状態だ。壁に向かって話している。

 

「…………… !」

 

タイヘイさんは何か、思いついた様子だった。

 

「よかったら、達生くん。海老名ちゃん。お昼食べていかない?」

 

タイヘイさんはお昼ご飯を誘ってきた。

 

「「 え? 」」

 

達生と海老名ちゃんは同じタイミングで言う。

 

「せっかく秋田のお米と新鮮な魚と野菜をもらったし、どうかな?」

 

まだお昼を食べてない達生。お腹は空腹に満たされている。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。ごちそうになります」

 

達生が言うと、海老名ちゃんも

 

「お言葉に甘えて。いただきます」

 

海老名ちゃんもどうやらお腹が空いているようだ。

 

お腹が空いていなかったら、あんな音鳴らないよね。 

 

 

 

達生はタイヘイさんの家でお昼を頂くことにした。

 

 

 

 

 

時刻は12時30分

 

キッチンでは

 

「フッフッフ……良い機会だ」

 

タイヘイが何かを企んでいた。

 

タイヘイは思う。

 

この頃、うまるはジャンクフードばっかりしか食べていない。

 

ジャンクフードばっかり食べるうまるに和食の美味しさを教えるには良い機会だ!!

 

タイヘイはやる気に満ちあふれている。

 

よーし気合いを入れて土鍋で炊こう!

 

タイヘイの料理に幕が開けた。

 

 

 

 

 

テーブルでは

 

3人が会話をしている。

 

「……なんだかごめんね。お兄ちゃんがすごいやる気になっちゃってて」

 

うまるさんは苦笑いしながら謝ってきた。

 

「ううんっ!一緒に食べれて嬉しいよ」

 

海老名ちゃんは皆でお昼を食べれることが嬉しいようだ。

 

「俺もタイヘイさんの料理を食べれることが嬉しいな」

 

一度、タイヘイさんの料理を食べてみたいとは思っていた。

 

そして、今この時

 

今日はおそそわけしにきたはずなんだけど

 

「海老名ちゃんと達生くんで食べるなら、外食の方がいいのにね」

 

うまるさんはテーブルを台ふきでふきながら、言った。

 

「あっ、でも…」

 

海老名ちゃんは何かを言おうとしている。

 

「私、いつも一人で食べるから……こうやって家で皆でご飯食べれるの嬉しいな……」

 

「「……………」」

 

そうだ。海老名ちゃんは一人暮らしで生活してるんだ。

 

皆で食べることは達生も嬉しい。

 

だけど、一番嬉しいのは海老名ちゃんだった。

 

「海老名ちゃ………」

 

うまるさんは言葉を話すのを止めた。

 

どうしたんだ?

 

達生は疑問に思い、うまるさんを見ると

 

うまるさんは海老名ちゃんを見ていた。

 

達生も海老名を見てみると

 

海老名ちゃんはお腹をぐいぐい手で押さえている。

 

「……………?」

 

達生が疑問に思っていると

 

「できたぞー」

 

タイヘイさんが料理を持ってきてくれた。

 

美味しそうな、いい匂いが鼻の中に入る。

 

「土鍋で炊き込みご飯を作ってみたぞ。おかずももらった魚と野菜で作ってみた」

 

いい匂いの正体は炊き込みご飯の匂いだった。

 

匂いだけでも美味しそうだ。

 

「わーー」

 

海老名ちゃんは驚いている。

 

「すごいですね。タイヘイさん」

 

達生もタイヘイさんの料理のすごさに驚きを隠せない。

 

「いや、そんなことないよ。よし食べようか」

 

4人で合唱をした。

 

 

 

「「「「 いただきます! 」」」」

 

 

 

まず、炊き込みご飯を一口

 

パクっ

 

う……めっちゃ美味しい。

 

達生が渡した魚と野菜が入っていた。

 

今まで食べた炊き込みご飯の中で一番美味しいかもしれない。

 

「おいしい!」

 

うまるさんも達生と同じように炊き込みご飯が美味しいらしく

 

タイヘイさんに笑顔で言った。

 

タイヘイさんはうまるさんを見ずに違う方向を見ている。

 

その方向は確か…

 

その方向の先には海老名ちゃんがいた。

 

「んめな」

 

?  んめな?秋田弁?

 

海老名ちゃんは3人が見ていることに気がつくと、顔を赤くしながら

 

「あっ、すいません…方言出ちゃって……」

 

海老名ちゃんは焦っている。

 

「あ 大丈夫だよ」

 

うまるさんが笑顔で言う。

 

「……………「んめなー」って「うまい」って事だよね?」

 

達生は疑問に思ったことを聞くと

 

「あっ……んだんだよ」

 

んだ!?「んだんだよ」ってそうだよって事なのかな……?

 

これ以上追求するのはやめとこう。

 

 

 

達生はとても美味しいお昼ご飯を頂くことにした。

 

 

 

4人とも食べ終えると、合唱をした。

 

 

 

「「「「 ごちそうさまでした! 」」」」

 

 

 

「秋田のお米と新鮮な魚と野菜美味しかったね」

 

うまるさんが言う。

 

そうだ!タイヘイさんにごちそうになったお礼を言わないと

 

「お昼ありがとうございました」

 

達生が言うと、海老名ちゃんも

 

「あの、ご飯誘ってくれてありがとうございます」

 

タイヘイさんにお礼を言った。

 

「ううん。2人ともまたいつかおいでよ」

 

タイヘイさんはまた来てもいいと言ってくれた。

 

すると、海老名ちゃんは置いてある広告に気がつく。

 

その広告はファミレスの料理の広告だった。その広告を見ると

 

 

 

きゅるるるる

 

 

 

うん?この音は?

 

音がした方向を見ると

 

またしても、顔を赤くした海老名ちゃんがいた。

 

海老名ちゃんは焦っている。

 

「足りなかった?」

 

タイヘイさんは苦笑いしている。

 

達生には充分に満腹になる量だった。

 

「いいいえっ!!そそんな事ないです」

 

海老名ちゃんは恥ずかしそうだ。

 

達生はあることに気がつく。

 

もしかして、あのポーズでお腹を押さえていたのか?

 

海老名ちゃんは今もぐいぐい手でお腹を押さえている。

 

「じゃあピザでも頼む?お兄ちゃん」

 

うまるさんはタイヘイさんに聞く。

 

「え!?ピザ……!?いやぁ……流石にピザは……」

 

タイヘイさんは、あはは……と苦笑いしている。

 

タイヘイさんの言う通りだ。充分に満腹になるほどの量だった。

 

しかし、海老名ちゃんは

 

「あの……じゃあ……ハーフサイズで……」

 

タイヘイさんと達生は思う。

 

 

 

「「 頼むの!? 」」

 

 

 

これが例の、女子の別腹っていうやつか?

 

結果ピザを頼むことになった。

 

 

 

 

 

うまるさんと海老名ちゃんがピザを食べている時

 

達生はキッチンでタイヘイさんと一緒に食器洗いをしていた。

 

「達生くん。悪いね。食器洗い手伝ってもらって」

 

タイヘイさんは食器を洗いながら、達生に言う。

 

「いえいえ、今日ごちそうしてもらったので、せめてのお礼です」

 

あれ?たしか、タイヘイさんに食材をおそそわけしに来たんだよね?

 

そんなことを考えても仕方がない。

 

そうだ!タイヘイさんに聞きたいことがあったんだった。

 

「すみません。タイヘイさん」

 

達生はタイヘイさんに聞いてみる。

 

「うん?どうしたの?」

 

タイヘイさんは?と思っている。

 

「今日の料理のやり方教えてもらえませんか?」

 

そう。達生は今日の料理のやり方をタイヘイさんに教えてもらいたかった。

 

タイヘイさん。教えてくれるかな?

 

すると、タイヘイさんは

 

「うん。いいよ。食器洗い終わってからでもいいかな?」

 

あっさりO.K.をもらうことができた。

 

良かった

 

「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

 

普通にタイヘイさんに教えてもらえるようだ。

 

あ……あと、一つ聞きたいことがあったんだった。

 

お昼ご飯を食べている時に思った、今日一番の疑問。

 

「タイヘイさん。今日こまるちゃんを見てないんですが、どこにいますか?」

 

今日、一度もこまるちゃんの姿を見てないのだ。なので、疑問に思いつつ、タイヘイさんに聞いてみた。

 

「え…こまる?こまるは……祖母の家で遊んでいるよ」

 

タイヘイさんは戸惑いがあったものの達生の問いに答えてくれた。

 

「あっそうなんですか」

 

達生はタイヘイさんの答えに納得した。

 

 

 

こまるの正体が達生にバレるのもそう遠くはない。

 

 

 

 

 

時刻は午後4時

 

達生は家に帰ると

 

早速ゲームをやり始めた。

 

本当は午後にゲームをやりまくる予定だったが、タイヘイさんの家にいたら、こんな時間になってしまった。

 

「急いで、ゲームやらなきゃ……」

 

達生はゲームに熱中した。

 

 

 

数時間後

 

「ただいま」

 

祖母が帰ってきた。

 

「おかえり。ばあちゃん」

 

達生は祖母に言う。

 

「ばあちゃん。今日の夜ご飯。俺一人で作ってもいい?」

 

達生は祖母に問いかける。

 

「あぁ……それじゃあ頼もうかね」

 

祖母は疲れているようだ。ソファーに体を預ける。

 

何故、達生は一人で料理を作りたいのか?

 

その答えは今日タイヘイさんに教えてもらった料理を祖母に食べさせてあげたいからだ。

 

今日の昼に食べようとした食材がまだある。家には運よく土鍋もある。

 

早速キッチンに行き、料理を作り始める。

 

 

 

 

 

料理が完成して、テーブルに持っていく。

 

「いい匂いがするねぇ」

 

いい匂いするやろ?やっぱり、お昼と同様に炊き込みご飯はいい匂いがする。

 

 

 

「「 いただきます 」」

 

 

 

祖母が食べるのを待つ。

 

パクっ

 

祖母の感想は

 

「うん。この炊き込みご飯美味しい」

 

祖母は「美味しい」と言ってくれた。

 

 

 

美味しくて良かった。

 

何とか失敗しなくて良かった。

 

 

 

今日教えてもらったことを早速試すのは、不安があったが…

 

何とか成功して良かったと思う達生でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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