干物妹!うまるちゃんの日常   作:若狭東

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その14 うまると散歩

ある日の土曜日の夜。

 

うまるは相変わらず、家でゴロゴロゲームをしている。

 

タイヘイは『いつものことだな』と思いながら新聞を読んでいた。そして、ある一つの記事に目が入った。

 

 

 

<ウォーキングで健康に!>

 

 

 

「.………………」

 

 

 

日曜日の朝

 

「うまる!起きろ!」

 

タイヘイは大きな声でうまるを起こした。

 

「うーん……もうニチアサ?」

 

突然、兄に起こされたうまるは、目を擦りながら、体を起こした。普段ならこんな朝早くに起こすことはない。

 

うまるはお兄ちゃんを見てみると

 

頭にはサンバイザーをしており、服装はジャージ、腰にはウエストポーチを身につけている。

 

何の格好?どっかのお笑い芸人?

 

「うまる!朝の散歩に行くぞ!」

 

タイヘイに「散歩に行くぞ!」と言われたので、うまるはまた深い眠りに入ろうと、ベッドに入った。

 

スヤァ……

 

「寝るな!」

 

急に大きな声を出し、タイヘイがうるさく、何?と思ったので聞いてみることにした。

 

「もーー。急に何ー?」

 

すると、タイヘイは

 

「お前散歩とか全然しないだろ」

 

『だから、何?うまるのかってでしょ。』と思いつつ、声に出すと、お兄ちゃんはまた怒るので、声に出さず、そのまま聞いてみることにした。

 

「実は…うまるが来る前は毎日朝に散歩する習慣をつけてたんだ。その日の調子が良くなるからな」

 

そんなこと、うまるには関係ない。

 

「そうですか」

 

「なんで急に丁寧語になるんだよ。目が死んでるぞ」

 

うまるの目は死んでいた。タイヘイの言葉など、うまるにとって、関係ないようだ。

 

「ほら!たった30分くらいだから行くぞ!ニチアサ始まる前には戻るから!」

 

これ以上、タイヘイに何を言っても聞かないと思い、うまるはタイヘイについていくことにした。

 

「うまるの貴重な休みなのにーー」

 

うまるの貴重な休みはタイヘイの散歩によって、奪われるのであった。

 

 

 

数分後…

 

「もっと可愛いのないの?」

 

散歩する格好に着替えたうまるはその服装が気に入らなかった。

 

「公園だと普通だよ」

 

頭には熊の絵が描いてあるサンバイザー、服はピンク色のジャージ。何とも地味な服装だった。

 

もっと可愛い服装はないのだろうか…。

 

「まぁそんなに気合い入れずにただ歩くだけでいいんだ。ちょっと歩くだけでも、全然違うらしいぞ」

 

そうタイヘイに言われたうまるは一つ思うことがあった。

 

『じゃあジャージになんなくてもいいじゃん』

 

玄関を出てうまるの散歩が始まった。

 

 

 

外を出ると

 

ピッカァァァ✨

 

「!」

 

「ぬああ……!!体が溶ける……!!」

 

太陽の光が思ったよりもきつかった。

 

「ゾンビかお前は」

 

タイヘイは苦笑いしながら、つっこみを入れた。

 

太陽の光ってこんなにまぶしかった?

 

疑問に思ったので、タイヘイに聞いてみることにした。

 

「なんか太陽まぶしくない?」

 

すると、タイヘイは

 

「7時の朝日はこんなもんだよ」

 

タイヘイは一つ思い当たることがあった。

 

そうか、うまるはもうちょっと遅く学校出るから違く感じるのか。

 

「ん?」

 

うまるは何かに気がついた。

 

「お兄ちゃん!なんかドブにすんごい量の魚がいるんだけど!!」

 

タイヘイは川を見ると

 

大量の鯉が泳いでいた。

 

「鯉だよ」

 

魚の正体が鯉とわかった時、その場に立ち止まり、うまるはあることを思った。

 

『うまるがいつも生活してる周りにこんな魚がいたんだ』

 

立ち止まり、周りにこんな魚がいたことに驚いていると

 

「おーい。行くぞー」

 

タイヘイに言われ、うまるはタイヘイの元へ走っていった。

 

 

 

「この道知らない」

 

うまるにはこんな路地裏を通ったことがなかった。

 

「車通りじゃない方が安全だからな」

 

タイヘイが言ったその時

 

 

 

「バウバウバゥバゥ!!」

 

 

 

「ぬわーーっ!!」

 

いきなり、何かに吠えられ、うまるは尻餅をつく。

 

いてて…

 

「全然安全じゃないじゃん!!」

 

タイヘイの裏に隠れるうまる。体はびくびくしている。

 

その吠えたモンスターの正体は

 

狂暴な犬だった。

 

「前はこんな犬いなかったんだけど……」

 

タイヘイが前に来たときは、こんな犬はいなかった。

 

前と言っても、2年3年前になる。

 

 

しばらくすると

 

散歩をしているうちに、公園についた。

 

そこはお年寄りの方が多かった。

 

ゴルフをするお年寄り、ラジオを聞きながら、朝の準備体操をするお年寄り。さまざまなお年寄りの方だらけだった。

 

「おじいちゃんおばあちゃん達ばっかりだな。うまる」

 

「.…………」

 

うまるの返事はなかった。

 

「?」

 

返事がないことに疑問に思ったタイヘイ

 

さっきのことか

 

犬に吠えられ落ち込んでるのか?まだまだ子供だな

 

「うまる……」

 

苦笑いしながらも、タイヘイは言う。

 

すると、うまるは

 

「お兄ちゃんこれすごいよ!!」

 

うまるはよく公園においてある、子供が乗る動物の乗り物に乗っていた。

 

うまると動物の乗り物はグニャン、グニャン、グニャンと揺れている。

 

「グニャン、グニャンする!!」

 

タイヘイはその乗り物の端に書いてある文字を見る。

 

〈子供用〉

 

いや、完全に子供だな

 

そんなことを思っていると、うまるは乗り物から降りた。

 

「う……気持ち悪い」

 

うまるは苦しそうだ。

 

「何!?大丈夫か!?」

 

タイヘイはうまるを心配し、どうしようか と考えた結果

 

ジュースでも飲ませるかという結論に出た。

 

「うまる。ジュースでも飲むか?」

 

「お…お兄ちゃん。飲む」

 

急いで、公園の自動販売機に行った。

 

ゴクゴク……しゅわぁぁーー

 

「うーーん!!青空の下で飲むコーラは格別だね!」

 

うまるの目は輝いている。

 

タイヘイは思う

 

おかしいな、体力作りに来たはずなんだが

 

 

 

 

 

「たまにはこんな休日もいいね。お兄ちゃん」

 

うまる何言っているんだ?

 

「何言ってんだ。まだ8時前だぞ」

 

うまるは公園の時計を見る。

 

時刻は8時前

 

「あれ!?本当だ!」

 

うまるは驚く。まだ8時にもなっていないんだ。てっきり、昼頃だと思ったうまる。

 

「まだ午前中なの?」

 

「そうだよ。ニチアサ前に帰るって言ったろ」

 

そう2人でベンチで会話していると、ある人が自動販売機前に走ってきた。服装は、ジャージ姿の少年。髪は何故か濡れている。背の高さ的に男子高校生だと分かる。

その高校生がこちらに振り向くと

 

 

 

その人は何と達生くんだった。

 

 

 

 

「達生くん!」

 

「あれ!?タイヘイさんにうまるさん」

 

うまるも驚き、達生くんも驚いている。

 

「偶然だね。達生くんも散歩?」

 

タイヘイはそんなに驚いてはいなかった。

 

「はい。おばあちゃんが、毎週の日曜日は近所の老人の方とゴルフなどするんで、おばあちゃん一人で公園まで行かせるのは怖く、僕も一緒に散歩をしています」

 

「毎週日曜日!?」

 

いつも、休日ゴロゴロしているうまるにとっては、衝撃的な言葉だった。

 

「えらいね。おばあさんのためにも、一緒に行くなんて」

 

タイヘイは感心している。

 

「うまるさんとタイヘイさんも今日は気分転換的な散歩ですか?」

 

達生はタイヘイに聞いてみる。

 

「まぁね。その日の調子が良くなるからね」

 

「なるほど。確かにそうですね」

 

以前まで、散歩をしていた2人の話には、休日をゴロゴロして生きていた、うまるにとっては、理解できなかった。

 

「では、おばあちゃんのゴルフが終わるまで、体力作りしてきます」

 

その場を去ろうとした達生に、タイヘイは聞きたいことがあった。

 

「ちょっと待って。達生くんは、体力作りって具体的に何してる感じ?」

 

タイヘイの質問に対して達生は

 

「えーと……具体的に、おばあちゃんが終わるまで、公園をランニングしたり、筋トレなどをしています」

 

達生が言った言葉にうまるは反射的に言ってしまった。

 

「ランニング!?筋トレ!?」

 

ランニングや筋トレを多分7時頃から今までやっている感じだろう。

 

それも毎週日曜日に。だから、髪が汗で濡れていたんだ。

 

「ありがとう。すごいね達生くんは」

 

タイヘイはまた感心している。

 

「まだ、今日のノルマの距離を走らないといけないので、この辺で…」

 

達生は言い終えると、どこかへ走って行った。

 

「うまるも見習わないとな」

 

「そんなの無理だよ……」

 

今日初めて、休日に散歩したうまるにとっては、見習うなんて無理に等しかった。

 

 

 

 

 

公園を出て、家に帰る帰り道

 

「な?散歩すると休みが長く感じるだろ?」

 

タイヘイはニコニコしながら思う。

 

うまるも早起きする喜びを覚えてくれたかもな

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん」

 

? と思いながら、続きを聞く。

 

「午後は何する?」

 

「んー?そうだなぁ…」

 

タイヘイは午後の予定を考えてなかった。

 

 

 

 

 

次の日曜日

 

「うまる!また散歩行くか?」

 

タイヘイはまたうまるを誘ってみる。

 

だが、うまるは…

 

 

 

「.…………遠慮しときます」

 

 

 

うまるはもう散歩に行きたくない様子だった。

 

「なんで断る時は丁寧語なんだよ」

 

タイヘイは思わずつっこみを入れた。

 

タイヘイは思う。

 

『今頃、達生くんは公園で体作りをしているんだろうな…』

 

 

 

 

 

公園では、達生が筋トレで体作りをしていた。

 

 

 

 

 

 




目次に載せるキャラの挿し絵を書こうと思うので、次更新できる時は、目次に挿し絵も載せようと思います。

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