【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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標的82 赤と青のデュエット

 

 

 

~sideスバル~

 

空中を赤、青と色とりどりの橋が架かり交わるときに金属と金属がぶつかり合った音と火花が飛び散る。

空に架かっている橋を鳥のようなスピードで走っている少女が2人いた。

他ならぬノーヴェとスバルの2人だ。

2人は時には離れ時には交差してその都度、互いに己の拳と蹴りをぶつけ合っている。

なかなか粘るスバルに対してノーヴェの方はイラつきを隠せなく焦っている様子だが、スバルの方は表面上は怒りこそ見えないがそれでも焦りが見える。

 

「このっ!!いいかげんに落ちやがれ!」

 

(山本とも分断されちゃったし‥ティア達も大丈夫かな?大丈夫‥だよね…)

 

仲間と分断されその不安と分断された仲間の安否を気にするあまりスバルは悲しげな瞳を数秒見せてしまう。

だが、スバルのその瞳もノーヴェの怒りを焚きつけるには十分のようだ。

 

「おい、余所見とは随分余裕だな!?ハチマキ!」

 

「えっ?きゃあ!」

 

3回転を加えながらジャンプしてスバルの首元を蹴り飛ばす。

仲間の心配をするあまり、スバルはノ―ヴェの前で隙を見せてしまったのだ。

 

パリーン

 

ガラスを突き破り近くの廃ビルの中まで蹴り飛ばされたスバル。

 

「ちっ、外したか」

 

だが、スバルは寸前の所を加えられた力と同じ方向に跳んで力を逃がした。

しかし、それでも間に合わなくて力全てを逃がしきれずに残った反動と衝撃でビルの中にまで飛んで床に叩き付けられてしまう。

 

「いっっ‥‥」

 

首元を抑えながら上半身をまず起き上がらせる。

ガラスを突き破ったせいでスバルの体の彼方此方に小さな切り傷が生じる。

しかし、スバルは戦う姿勢を崩さない。

すると、すぐにノーヴェが追いついてくる。

スバルの行動を見てノーヴェは呆れる様に言い放つ。

 

「しつけぇな、お前ごときじゃアタシには勝てねぇんだよ」

 

窓から光が指す方を見ると一筋の影があった。

自分を追いかけてきたノーヴェだ。

 

「アタシとアンタじゃ戦闘機人としての出来が違うんだよ。出来が!!」

 

ノーヴェが勝ち誇った言葉を発するがスバルはこの言葉を違う意味に聞こえた。

 

「確かノーヴェ‥だっけ?」

 

「あぁ!?」

 

「それはどういう意味かな?」

 

「ふん、どうもこうもお前らゼロシリーズの姉妹は所詮、アタシ達が生まれる為の試作品だって事だ」

 

「‥‥」

 

「そうそう、アジトに居た時、お前の姉貴の世話をやらされていたんだけどよぉ~」

 

「っ!?」

 

ノーヴェが言う『お前の姉貴』‥それはつまり、ギンガの事を指している。

ギンガの事がノーヴェの口から出されピクッと反応するスバル。

そんなスバルを尻目にノーヴェは彼女に対して小馬鹿にしたような感じでアジトでの出来事を話し始める。

ノーヴェの話をスバルは俯きながら耳を傾ける。

スカリエッティに捕まっていた時、姉がどんな生活を送っていたのかが気になったのだ。

ちゃんと食事はもらえたのだろうか?

体に変な事をされていないか?

痛い事や辛い事をされていないだろうか?

それがどうしても気になったのだが、ノーヴェの口から出てきたのはスバルが心配している様なものではなかった。

 

「全く滑稽だったぜ‥お前の姉貴の姿はよぉ‥何をするにしても機械的なのにアタシの言っている事を全く理解できていない‥‥」

 

模擬戦でギンガに負けたにも関わらずその時のことを話さないノーヴェ。

意外と小物っぽい。

そしてノーヴェの言う『アタシの言っている事を全く理解できていない』は機械的な態度を改めろと言う事を指していたのだが、あの時のギンガに対してそれは無理な注文だった。

 

「まるでガジェット以下のロボットの様だったぜ‥‥まさに試作品のガラク‥‥」

 

(なっ!?消えた!?)

 

ノーヴェがギンガの事を『ガラクタ』という前に眼前のスバルの姿が消えたと思ったら、

 

ドコーン!!

 

「ガハッ!!」

 

「‥‥」

 

ノーヴェの腹部に凄まじい衝撃と痛みが襲い掛かる。

スバルがノーヴェの腹部に強烈な一撃を食らえたのだ。

 

「ぐっ…て、テメェ‥‥」

 

ノーヴェにとっては不意打ちをくらうかたちになったが、スバルとしては姉が此処まで酷く言われた事に対してどうしても我慢できなかったのだ。

 

「ごめん‥‥少し気を抜いていた。でも、こっからは全力でぶつかるよ‥‥ノーヴェ‥‥」

 

スバルは構え直してノーヴェに向き直す。

先程までのスバルと違い彼女の目は真っ直ぐとノーヴェに向ける。

ノーヴェもまたスバルを見つめる。

 

「ちっ、この試作品のガラクタ風情が!!舐めるなぁ!!」

 

「うおりゃぁぁ!!」

 

マッハキャリバーのローラを最大限回しそのスピードを乗せた拳をノーヴェは紙一重で躱すが次の最小限の旋回からの回し蹴りがヒットして柱に激突して頭から血が出ていた。

ノーヴェは頭を抑えながらスバルを見てから2人同時に違う方向に走り出してスバルは自分が入ってきた穴からノーヴェは近くの壁を破壊して、

 

「「ウィング・ロード(エアライナー)」」

 

両者お得意の魔法を空中に線の様に出してビルの周りを螺旋階段のように巻かれていた。

 

「だぁぁあぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぅおりゃああぁぁぁぁっぁぁぁぁあぁぁ!!」

 

スバルから勢いを殺すことなく放たれる上段回し蹴り。

ノーヴェもまたそれに合わせる形で蹴りを繰り出す。

 

「テメェもファーストと同じようになるんだから、抵抗しても無駄なんだよ!!抵抗すればするだけ痛い目を見るだけなんだからいい加減に諦めろ!!」

 

ノーヴェはスカリエッティがスバルを捕まえたらきっとセッテ、オットー、ディード達後発組の様に感情を消すと判断した。

彼女と敵対している自分が言うのもなんだが、スバルはあまりにも感情が豊かすぎる。

つまりそれほど、スバルは人間社会に適応していたと言う事だ。

そんなスバルをスカリエッティが感情をそのままにして洗脳するだろうか?

いや、答えは『NO』だ。

彼にとって感情は興味を持たない限り邪魔なモノ。

時間が無かったとはいえ、後発組のセッテ、オットー、ディードの3人は喜怒哀楽の感情を1つも入れていないのがその証拠だ。

姉のディエチは感情が薄い中、自分や妹のウェンディがこうして感情を持って生まれてきているのが不思議なレベルである。

ただ、最近ディードの様子がおかしかったのはノーヴェにとって意外であった。

稼働したての頃は寡黙で無表情だったディードがあの日、初任務から帰った後、自分にあそこまで突っかかって来た以降、ディードは様子が変わった。

スカリエッティが感情をプログラムしたわけでもないのに感情らしきものが勝手に芽生え始めているのだから‥‥

それでもスカリエッティはそれを踏まえてスバルを洗脳した時は感情を芽生えさせることなく調整するだろう。

それこそ、本当の殺人兵器として‥‥

 

「誰がお前らなんかの手駒になるか!!それにギン姉だってあの人がきっと元に戻してくれる!!」

 

「はん、誰だか知らねぇがソイツは無理だな!!今のファーストは血も涙もない殺人兵器だ。お前の言うあの人とやらも今頃は返り討ちにされている筈だぜ!!もしかしたら、ファーストもこっちに向かってきているかもしれないぜ」

 

ノーヴェはあの時の模擬戦の経験から今のギンガがそう簡単に負けるとは思えなかった。

 

「っ!?」

 

「まぁ、その場合、お前は姉貴と戦う訳だがな、その時はお前が無様に姉貴にぶちのめされるのを見学させてもらうぜ」

 

ニヤついた顔でギンガがこの場に来る可能性を指摘するノーヴェ。

 

(ちっ、本当だったら、そうなる予定だったのに、ファーストの奴、途中で何処かに蒸けやがって‥‥)

 

表情とは反面、心の中では直前で計画にはない独自の行動をとったギンガに対して毒づくノーヴェだった。

 

「そんなことない!!それにギン姉はファーストなんかじゃない!!ギン姉はギンガ・ナカジマって名前だ!!」

 

スバルがノーヴェにギンガの呼び方を訂正しろと言いながらノーヴェに拳を繰り出し、ノーヴェもスバルを迎え撃つかのように拳を繰り出す。

やがて、両者の拳がぶつかり合うと激しいスパークが発生する。

 

「くっ‥‥」

 

「このっ‥‥ポンコツ・セカンドの分際で‥‥」

 

スバルもノーヴェも一歩も引かない構えだ。

ノーヴェはそんなスバルの姿を忌々しそうに睨みつける。

 

「セカンドじゃない!!私はゲンヤ・ナカジマ、クイント・ナカジマの娘‥そしてギンガ・ナカジマの妹、スバル・ナカジマだ!!」

 

スバルは堂々と自らの名をノーヴェに告げる。

 

「ふん、だったら、テメェをぶちのめした後、ドクターに頼んでセカンドって名前に改名させてやるよ!!」

 

そう言ってノーヴェはジェットエッジに搭載されたスピナーを唸らせながらの蹴りを振り抜きながらスバルに迫る。

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぐぅっ……!?」

 

スバルはノーヴェの蹴りを受けて床に叩きつけられる。

 

「ほら、いい加減に諦めろ。これ以上痛い思いをするのは嫌だろう?」

 

ノーヴェがスバルを挑発‥いや、見下した目で見下ろす。

 

「諦めて‥‥たまるか‥‥私は‥お前を倒して‥‥あの人とギン姉の帰りを待つんだ‥‥」

 

ボロボロに傷つきながらもスバルは立ち上がる。

そして全身が軋むような痛みに耐えつつ、スバルは構えを取る。

スバルのバリアジャケットはフェイトの真ソニックフォーム同様機動力を重視しているため、装甲部分や布の部分がほとんどなく露出が多い。

その為、ダメージが直接身体に行きやすく、スバルの身体の彼方此方から出血が見られる。

 

「確かに‥‥ノーヴェ‥貴女の言う通り‥‥私は痛いのも‥相手に痛い思いをさせるのも嫌い‥‥」

 

息を切らしながらノーヴェに自分の心情を語る。

 

「それでも‥‥それでも、私は負けない!!スカリエッティの思い通りに何てさせない!!私の大好きな人達の頑張りや、想いを踏みにじるようなスカリエッティを……私自身が認めたくない!!行くよ、マッハキャリバー!」

 

「OK」

 

スバルはウィング・ロードでノーヴェとの距離を詰める。

 

「ほざけ!!ポンコツの分際で!!ジェットエッジ!!」

 

「OK」

 

するとノーヴェの方もスバルを迎え撃つかのようにエアライナーを展開させてスバルへと迫る。

そして両者の距離が近づくとノーヴェは腕に装備されたガンナックルでスバルを銃撃してくる。

寸前の所で回避したり、防御をすれば確実に隙を作る事になりノーヴェの大技を受けてしまう。

スバルは肉を切らせて骨を切る手段に打って出た。

ノーヴェのガンナックルの弾は容赦なくスバルの身体を傷つける。

しかし、スバルはそれに怯むことなくノーヴェ目掛けて距離を詰めていく。

 

「なっ!?」

 

その行為にノーヴェは驚愕する。

つい先程まで、口では『痛いのは嫌い』と言っていた奴が、自分が傷つくことを気にすることなく迫って来るのだから

 

「いくぞ!! リボルバーシュート!!」

 

「しゃらくせぇー!!」

 

スバルの拳とノーヴェの拳がぶつかり合う。

 

「くっ‥‥」

 

スバルは肉を切らせて骨を切る手段で負傷した事とやはり、心の中では相手を傷つけたくないと言う心理が働き自分の心に強力なリミッターをかけていた為、この拳のぶつかり合いはスバルがノーヴェにやや押されていた。

その証拠にスバルはまだ戦闘機人としての本能を発揮していない。

それはスバル自身が昔クイントに言われた事を律儀にちゃんと守っている為だった。

生まれた当初スバルはちゃんと自分は普通の人間ではなく戦闘機人である事を自覚していた。

だが、クイントの手によって助け出され、姉のギンガと共にナカジマ家に養子入りしてからはクイントに自分が戦闘機人である事を忘れ1人の人間として生きて行く様に教えられた。

それはギンガも同じだった。

スバルは当初、自分が生まれた研究所では、自分は戦闘機人であり、戦闘機人はただ戦う為の存在で人間ではなく道具だと教えられてきた。

しかし、生まれた時からスバルは自身の存在が人間でも道具でもどちらでもいいとして、傷つくのも嫌だし傷つけるのも嫌と言う戦闘機人としては不出来な心を持っていた。

研究者としてはこのままでは兵器として大きな支障をきたすと感じスバルを精神改造しようとしていた。

だが、研究者たちがスバルを精神改造する前に当時、クイントが所属していやゼスト隊が研究所を摘発しスバルは無事に保護されたのだった。

クイントに保護された後、姉のギンガはスバルを守るためにクイントからシューティングアーツの手ほどきを受けた。

しかし、スバルはやはり、傷つくのも嫌だし傷つけるのも嫌と言う事でギンガと共にクイントからシューティングアーツを習わなかった。

ギンガとスバルにとって姉妹以外の家族が出来て平和に暮らせると思ったが、その2年後、クイントは任務中に殉職し還らぬ人となってしまった。

ギンガは母が自分達と同じ戦闘機人の事を追っている事を母が父に話している事を聞いており、母に変わって自分が戦闘機人事件を追いかけ解決すると決めて管理局の訓練学校へと進学して行った。

スバルは母を失った悲しみはあったが、ギンガのように母の意思を継いで戦闘機人事件を追いかけようとは思わなかった。

そんなスバルに転機が訪れたのは4年前の空港火災に巻き込まれた事だった。

訓練校を卒業するギンガが配属先となる父の部隊、108部隊の隊舎に行くのでスバルも一緒についてきたのが、その際空港で起きた爆発火災事故に巻き込まれてしまった。

この時、ギンガはフェイトに救助され、スバルはなのはに救助された。

そしてなのはの魔法を見て、なのはに憧れてスバルも自分の力は、なのはが自分を助けてくれたように他の人を助けられるんじゃないかと思いそこから魔法の勉強とギンガにシューティングアーツを習い始めたのだ。

だが、戦闘機人としての力は封印してきた。

でも、今回ばかりはそうはいっていられないかもしれない。

ノーヴェはスバルを傷つける事、倒す事に一切の躊躇が無い事から全力を引き出している。

このままでは自分はノーヴェに負けてしまうかもしれない。

負ければノーヴェが言うように自分はスカリエッティの手によって洗脳されてしまうだろう。

そうなれば、なのはやティアナに迷惑をかけてしまう。

スバルにとってこの勝負は絶対に負けられなかった。

 

「ぐっ‥‥」

 

「くそっ‥‥」

 

スバルとノーヴェの間で青と黄色のスパークがバチバチバチとぶつかり合う。

 

「くっ‥‥」

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

ノーヴェとの拳の競り合いにスバルは負けてしまい吹き飛ばされる。

 

ドカーン!!

 

吹き飛ばされたスバルはビルのコンクリートの壁に叩き付けられる。

 

「ぐっ‥‥」

 

余りの痛みと衝撃でスバルの意識が朦朧となる。

 

(やっぱり私じゃ勝てないの‥‥?)

 

(私はノーヴェの言う通り試作品のガラクタなの‥‥?)

 

(もう‥どうでもいいや‥‥)

 

(これ以上傷つくのも痛いのも嫌だし‥‥)

 

スバルが諦めかけたその時‥‥

 

 

貴女らしくないわね、スバル。

 

スバルの脳裏に1人の女の人の声が響いた。

 

(えっ?)

 

その声はスバルにとって忘れられない人の声だった。

 

戦いなさい!!スバル!!

 

(お‥お母さん?)

 

そう、スバルの脳裏に聞こえたのは亡き母、クイントの声だった。

 

どんなに辛くても決して現実から目を背けてはダメよ!!スバル!!

 

(お母さん‥やっぱりお母さんだ!!)

 

スバル、貴女の優しさは1つの美徳でもあるわ。でも、時には力を使わないと大事なモノを守れない事だってあるのよ。

 

ギンガだって貴女を守るために力を求めたのよ。

 

貴女だってそうだったんじゃないの?

 

(‥‥)

 

クイントの問いかけにスバルは何も答えられなかった。

でも、クイントの問いかけはスバルを局員にさせた原点を思い出させてくれた。

 

さぁ立ち上がって1歩前に出なさい!後ろから私が支えてあげるから!!

 

(そうだ、私はなのはさんみたいに人を助ける為に局員になったんだ!!)

 

あの子(ノーヴェ)もスバルやギンガと同じ人としてやり直せる。ただそのやり方を知らないだけ‥‥

 

だから、私に代わって貴女達が教えてあげなさい。

 

戦いだけが全てじゃないって‥‥彼女も人間として、人として皆と一緒に暮らしているって‥‥

 

(お母さん‥‥うん、わかったよ!!私、もっと頑張るから!!)

 

ええ、お母さんはいつでも貴女達の事を見守っているからね。

 

 

姿は見えなかったけどクイントの声は確かにスバルに聞こえた。

それは例え幻聴だったとしてもスバルにとっては関係ない。

自分の傍には常に母が居てくれて、その母はノーヴェの事を自分に託したのだ。

ならば、母の想いに応えなければならない。

スバルは再び前に踏み出した。

 

「これくらいじゃあ、くたばってはいないだろうが、機能停止ぐらいにはなっただろう?さて、さっさと回収して‥‥」

 

スバルを吹き飛ばしたノーヴェはこれでもう勝負はついたと思っていた。

後はスバルの身柄をスカリエッティの所に持って行くだけだ。

ノーヴェがスバルの身柄を確保しようとしたその時、スバルが吹き飛ばされたビルの瓦礫から溢れんばかりの青い魔力光が輝きだした。

 

「な、なんだ!?」

 

やがて、瓦礫が吹き飛ぶとそこには青い魔力光のオーラを纏ったスバルの姿があった。

 

「コイツ、まだ動けたのか?」

 

スバルのしぶとさにノーヴェはうんざりする想いと共に僅かに恐怖が芽生え始めた。

コイツは何度倒してもゾンビのように復活して自分の前に立ち向かって来るのではないか?

そんな恐怖だ。

そしてスバルをよく見ると魔力光のオーラを纏っているだけでなく目の色がエメラルドグリーンから金色に変わっていた。

スバルは長年ずっと封印してきた戦闘機人としての力を覚醒させたのだ。

 

「コイツ、ポンコツの分際で今までアタシに手加減していたのか?」

 

格下相手のスバルに手加減されていたことを知り、ノーヴェの怒りのボルテージは上がっていく。

 

「ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく!!テメェのその態度マジ、ムカつくんだよ!!いい加減に沈めやコラァ!!」

 

ノーヴェはジェットエッジを吹かしてスバルへと向かう。

ノーヴェの回し蹴りを右手でガードしてから両腕で彼女の足を絡みとってから投げ飛ばして柱に衝突し、

 

「がハッ!」

 

ノーヴェは吐血する。

 

「て、テメェ!!」

 

スバルはそのまま追撃をするもノーヴェは地面にひれ伏しスバルの攻撃を躱し、ノーヴェはスバルの足を引っ掛けてスバルを転ばそうとするが、スバルは片腕を軸に回りバク転をして後ろに下がり拳を構え、その隙にノーヴェも立ち上がる。

 

「テメェ!!このクッソがァぁ!!もういい、任務なんざぁ、忘れた!!ぶっ殺す‥ぜってぇーぶっ殺してやる!!」

 

血管が切れるのではないかと言うぐらいノーヴェの怒りのボルテージは益々上がっていく。

怒りが頂点に達したのかノーヴェは自分に与えられた任務を放棄する宣言まで言い放つ。

そんなノーヴェの姿を見てスバルは、

 

もし、あの時、白蘭の手を取っていたら私はあんな風になっていたのかな?

もし、リボーンやなのはさんギン姉、お父さん、お母さんそれにティアがいなかったら私は.....

戦闘機人として彼女と向き合って初めて感じる、彼女の拳は何か嫌だ‥‥

彼女の拳は破壊する為だけ振っている。

でも、その拳は何だか虚しく、泣いているようにも思える。

ノーヴェの姿はまさにスバルのIfを表していた。

 

「これが最後の勝負‥‥マッハキャリバー‥いくよ?」

 

スバルは落ち着いた様子で愛機へと声をかける。

わかって欲しい今の自分(ノーヴェ)の拳がどれぐらい濁っているかを‥‥

 

「OK」

 

ノーヴェを迎え撃つかのようにスバルもマッハキャリバーを加速させる。

 

 

ノーヴェに勝って、分かり合うんだ!

私の拳は決して人を傷つける訳じゃない。破壊のためじゃない! そう、分かり合う為にあるんだ!

 

 

「いくよ!!ノーヴェ!!これが私の全力全開だぁぁぁぁー!!IS発動ぉぉぉぉー!!」

 

「なっ!?」

 

スバルのリボルバーナックルが唸りを上げてノーヴェへと迫る。

 

「ちっ」

 

「振動拳!!」

 

「ぐっ‥‥」

 

またもやスバルの拳とノーヴェの拳がぶつかり合う。

しかし、今度のぶつかり合いはこれまでのとはわけが違った。

スバルの拳とノーヴェの拳がぶつかり合った時、ノーヴェの身体全体にこれまで経験した事のない激痛が走る。

 

「ぐっ‥‥ガぁァァァー!!」

 

あまりの激痛にノーヴェは耐えられずに吹き飛ばされ、地面を何度も跳ねて転がる。そして起き上がろうとしても身体中が激痛と痺れで起き上がれない。

スバルの戦闘機人としての力、IS 『振動破砕』

その振動破砕の共振波をナックルスピナーの周囲に留め、任意対象“のみ”を確実に粉砕する応用攻撃。

咄嗟の思い付きの攻撃であったが上手くいった。

 

「て、テメェ‥‥」

 

ノーヴェは痺れと激痛の中、何とか立ち上がろうとする。

 

「ノーヴェ‥私と貴女は同じ戦闘機人‥でも、戦いだけが戦闘機人の全てじゃないよ‥‥私やギン姉だって同じ戦闘機人でも人として暮らしていけるんだよ。それを分かって欲しい」

 

そんなノーヴェにスバルは戦闘機人の可能性を説く。

 

「い、今更そんな話信じられるか!!」

 

「信じて!だって私達は人間何だから‥‥」

 

「あぁ!?何言ってんだ!?テメェは!?アタシは戦闘機人‥ナンバーズⅸのノーヴェだ!!人も殺す為に作られた殺人兵器なんだ!!テメェら甘ったれと一緒にすんな!!」

 

「ノーヴェ、それは本気で言っているの?」

 

「えっ?」

 

不意の迫力に気圧されるノーヴェ。

スバルは怒るように言葉をたたみ掛ける。

 

「本当にノーヴェは殺す為だけが自分の存在の証明だなんて何て本気で言っているの?」

 

「あぁ、そうだ!!アタシ達はその為に作られたんだ!!だから、お前らみたいな平和ボケの甘ちゃんとは違うんだよ!!」

 

ノーヴェはそう言った瞬間、パチーンと乾いた音が周囲に響く。

スバルはノーヴェの頬を平手打ちしてノーヴェは毒を抜かれたようでただ驚いた顔でスバルを見た。

 

「人殺しの力も矛先を変えるだけでどんな道にも使えるノーヴェが本気で人の為にやりたいと思うならば私はいくらでも力を貸すよ」

 

すると時から一転、慈愛に満ちたスバルの顔を見惚れていたノーヴェはプイと顔を背けて、

 

「アタシは戦闘‥「人が人である定義があるなら」」

 

以前自分の迷いを断ち切ってくれた言葉をノーヴェに伝える。

 

「喜怒哀楽の感情を持って人を思える心があり、自分の曲げたくない信念、それだけあれば十分だよ」

 

「私にそんなモン‥‥」

 

「無いんなら一緒に探そうよ、ノーヴェ!!」

 

ビルの隙間から僅かだが光が差し込まれた。

満面の笑みで倒れているノーヴェに手を差し述べるスバル。

ノーヴェはスバルの手を取るか迷うが、

 

「しゃあねぇ、でも説き伏せられたとかじゃねぇぞ負けたからだ!!今度はぜってぇ勝つ!!」

 

差し出されたスバルの手を握り、ノーヴェは表の世界に一歩踏み込んだ。

だがまだ恥ずかしいか顔を赤くして目をつぶっていた。

 

(くそっ、ファーストだけでなくセカンドにまで負けるなんてなぁ‥‥でも、いつかは必ずコイツ等を越えてやる)

 

ノーヴェはこれまで感じたことのない感覚とナカジマ姉妹にいつかリベンジをすると心に誓いそのまま気を失った。

 

(ノーヴェ‥寝ちゃったんだ‥‥)

 

「‥‥やっぱり慣れない事はするもんじゃないね‥‥ティアが居たらきっと『アンタらしくない』って言っていたね、きっと‥‥」

 

「確かに‥でも相棒はよく頑張った」

 

「えっ?マッハキャリバー今、相棒って‥‥」

 

マッハキャリバーに相棒だと認められて思わず微笑むスバル。

 

「ありがとう‥‥そしてお疲れ、マッハキャリバー」

 

「お疲れ様、相棒」

 

ノーヴェを倒したスバルであったが、ずっと封印してきた戦闘機人モードを初めて発動させた事とノーヴェとの戦闘ダメージで此方も身体中がギシギシといっている。

 

「ティアや山本を助けたいけど、ちょっと無理‥かな‥‥?ゴメン‥みんな‥‥」

 

ノーヴェを倒したが、まだまだナンバーズは居るし、スカリエッティの協力者も居る。

それに姉であるギンガも‥‥

でも、この場に他のナンバーズや協力者、ギンガが来る気配がない事から皆は既に連中と戦い勝っているのかもしれない。

そう思うと不安から一転、安心感がスバルを包み込む。

 

(お母さん‥私、頑張ったよ‥‥)

 

そう言ってスバルは倒れ、少しの間空を見上げていたが、次第に眠くなりそのまま目を閉じて意識を手放した。

でも、その表情はとても満足そうに微笑んでいた。

そして、彼女の手はノーヴェと仲良さそうに繋がれていた。

その様子は先程まで生死をかけて戦っていた仲には見えず、試合をしてそのまま疲れて寝てしまった姉妹の様に見えた‥‥。

 

 

 

・・・・続く


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