【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

84 / 95
標的80 想い人はすぐ側に

 

 

 

 

 

 

 

~スカリエッティ アジト フェイト視点~

 

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

荒い息のフェイト。

それもそのはずで、現在フェイトが戦闘機人と向かいあっている部屋はAMF濃度が強く通常よりも魔力の消費も膨大だった。

それに比べて戦闘機人は魔法とは違う戦闘機人独自の能力、ISはAMFの影響を一切受けない。

その為、戦闘機人はAMFの影響下では魔導師と互角以上の戦闘が可能なのだ。

いや、AMFの影響下では戦闘機人の方が魔導師よりも遥かに強力な存在となる。

レジアスもこの能力に目をつけてスカリエッティと密かに手を結んで、本来管理局の法律で禁止されている戦闘機人の研究を彼にさせて、常に人員不足であえぐ『陸』の戦力補強に当てようとしていたのだ。

その証拠が当時『陸』のエースとされたゼスト隊は戦闘機人の前に敢え無く全滅した経緯がある。

アジトに突入する際、聖王教会のシスターであるシャッハとカリムの義弟で管理局の監査官であるヴェロッサ・アコースとは分断されてしまっていたフェイトであるが、シャッハもヴェロッサもそれなりの魔導師だ。

フェイトは2人の無事を信じ、自身の任務の為、先を進んだ。

そして、この部屋に誘い込まれてしまったのだ。

フェイトは2人の戦闘機人相手に雷撃の如くバルディシュを振る。

だがいつもの繊細さは全く見えず、焦り苛立っている様子だ。

 

「いい格好だね、フェイト・テスタロッサ」

 

またフェイトの前にスカリエッティのホログラムが現れた。

スカリエッティはフェイトのその姿を嘲笑するように笑みを浮かべて、フェイトは彼の笑みに屈辱を感じながら歯を食いしばっている。

 

「くっ!?」

 

「おぉ、そこまで怖い顔をしないでくれ。折角の美人が台無しだよ」

 

別に怖い訳でもないがフェイトに不快な気分を与える為にスカリエッティはわざと言っているのだ。

案の定フェイトはそれが挑発行為であるが分かっていても怒りは消えない。

 

「どこを見ている?」

 

「貴方の相手は私達です。戦いの最中、余所見とは随分と余裕ですね。それとも私達など眼中にはないと言う訳ですか?」

 

「我々も随分と舐められたものだな」

 

そんなフェイトの様子を指摘するのはスカリエッティの配下特有の青いボディースーツ状の戦闘服を着ていて、方や足の方に翼が生えていて女性とは思えない頑強な肉体と青色にも近い紫の髪のトーレ。

一方、可愛らしい桃色の髪でトーレ程の頑強な肉体ではなく足元には翼などもないトーレとの共通点はせいぜい服ぐらいだ。そして両腕には中中大きそうなブーメランが2つ装備されているセッテ。

 

「ふぅ~‥‥」

 

フェイトは一旦目を瞑り深く深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

(焦ってはダメ、此処はただでさえAMF濃度が濃いのにこれ以上精神を乱したら‥‥)

 

更に戦闘が不利になるだけじゃなく最悪魔力がそこをついて魔法が使えなくなる。

そうなる前に自分の気を落ち着かせて目の前の敵を見る。

 

「バルディッシュ、モードチェンジ!!ライオットフォーム!!」

 

「イエッサー」

 

そしてバルディッシュの形状を戦斧から二等の刀へと変化させて、

 

「やぁぁ!!」

 

「ISライドインパルス」

 

激しく飛び散るフェイトの金色の光と同じ力でぶつかり合うトーレの紫色の拳が起す花火、若干フェイトの方がトーレの力に圧されて分が悪い様だ。

加えて‥‥

 

「フェイトお嬢様、私が居ると言う事もお忘れなく」

 

「っ!?」

 

セッテのブーメランは弧を描きながらフェイトに向かって飛んで行くがそれにいち早く気づきトーレから離れて対応する。

だがそちらに注意が行けばもう片方には隙が出来る。

しかもスピードとスピードの戦いにおいてほんの僅かな一瞬の隙でも致命的な隙となる。

 

「隙が大きい!!」

 

その隙にキレのある動きとスピードで、フェイトはトーレに背後へと回りこまれ拳を背中から入れられる。

 

「ぁぁ‥‥」

 

落ちて行くフェイトに休む暇を与えないセッテは自分のブーメランをフェイトに向けて飛ばす。

今度の攻撃は流石に躱すことができずにもろに攻撃をくらってしまいフェイトは床へと叩き落とされてしまう。

勢いよく床に落とされて激突した所には瓦礫と粉塵が舞い上がり、フェイトの姿を覆い隠す程の粉塵はトーレ、セッテ、スカリエッティの3人の視界を眩ませる。

 

「良くやった、トーレ、セッテ」

 

フェイトを撃墜させた2人を褒めてフェイトの方に目をやるとまだ煙は立ち込めていてスカリエッティは2人にその場で様子を見る事を指示する。

これほどの勢いで地面に叩き付けたのだからフェイトも無事ではないと思う3人。

やがて煙晴れてフェイトの姿が見える前に、

 

「プラズマランサー..ファイアー!!」

 

雷を纏った魔法弾を生成し意思の持った雷の魔法弾は煙の中からトーレ達を狙う。

 

「ちっ」

 

「ぐっ」

 

「ほぉ~‥‥」

 

トーレは躱す事ができるがセッテは喰らってしまいノックアウトされる。

何とか躱したトーレは、

 

「大人しく...ぐっ」

 

180度回転した魔法弾にトーレは当たってしまう。

トーレは膝をつかせフェイトはバルディッシュの片方の剣先をトーレに向けている。

そしてトーレ達に投降を勧めようとするが、

 

「トーレとセッテ2人相手によく奮戦したが、君はもう限界なのではないか?」

 

「なっ!?」

 

赤いバインドが地面から飛び出してフェイトの体を囲うようにして徐々にフェイトの体に巻き付いていく。

早目に斬ろうと思えば斬ったのだがフェイトはここでやられる訳には行かない。

ただでさえ戦闘機人は他に11人、それに他にも敵はいる。

ここでの戦闘は他の戦場にも影響を与えるだろう。

特にフェイトという人物は良くも悪くも物事を深く考えてしまう。

後、他にも迷いを生む何かがフェイトの心を酷く揺らしている。

 

「大丈夫かい?無理はよくないよ。無理は‥ね」

 

甘い言葉に毒のような悪意を載せた気遣いをフェイトにかけフェイトはその言葉に顔を曇らせてゆっくり回る毒が彼女の顔を歪ませていく。

 

「あぁフェイト・テスタロッサ。今の君の顔はまさにあの時の彼女そっくりだ」

 

「彼女?」

 

フェイトは薄っすらと分かっていた。

スカリエッティが取り上げた『彼女』と言う人物が誰なのかを‥‥

 

「賢明な君のことだ。誰だか分かっているのではないか?プレシア・テスタロッサ‥‥かつて君を生み出した女性の事さ‥‥自分の愛娘を失い、ポッカリと開いた心の穴を自分の知識と技術で埋めようとした何とも愚かな女だったよ‥‥」

 

フェイトの耳には「何とも哀れ」そんな言葉が聞こえてきそうな気がした。

 

「今の君もそうだね。唯一の肉親、血の繋がりのある母を失いその悲しみを埋める為に君はあの幼い2人を引き取った。」

 

此処で彼が言っているのは彼女の家族と言える存在のキャロとエリオの事だろう。彼の言葉に否定の意思を立ててフェイトは行動する。

 

「ち、違う!!私はそんなつもりじゃ...「君は!!」」

 

だがそんな言葉を意に返さず、スカリエッティはすぐに彼女の否定を受け入れまた笑みを浮かべてフェイトを見る。

 

「君は自分に都合のいい駒が欲しかったんだよね?それとも路頭に迷う小さな子供を引き取って育てていますと世間にアピールをして誰かに称賛されたかったのかい?」

 

悪意が含まれたその言葉はフェイトの心にグサッと突き刺さる。

 

「ち、ちが‥私は‥‥わたしは‥‥「本当にそうなのかい?」」

 

フェイトの力を振り絞って出した言葉にスカリエッティは聞き耳を立ててそのまま投げ返す。

 

「‥‥」

 

「ならば何故、あの2人をこの様な場所へ‥‥危険な戦場に送り出した?何故、嘱託でもなく正規の局員にした?何故、他の子供の様に学校へ通わせていない?余計な知識をつけられると何か不味い事でもあるのかね?」

 

スカリエッティは見下す様な目でフェイトに尋ねる。

フェイトにとって彼の言葉はまるで極寒の吹雪が吹き荒れる地に叩き込まれたかのような悪寒を感じさせる。

 

「何故、君はあの子達に知識ではなく戦い方を教えた?」

 

「あっ‥‥ハァ‥‥ハァ‥ち、ちが‥わた‥‥わたしは‥‥わたしは‥‥」

 

次第に呼吸が‥‥息遣いが荒くなってくるフェイトに対して畳み掛ける様にスカリエッティは続ける。

 

「何故、君はあの子達に武器を持たせた!?答えろ!!答えてみるがいい!!フェイト・テスタロッサ!!今、君がしている事はかつて、プレシア・テスタロッサが君にした事と同じなんだよ!!」

 

スカリエッティはフェイトの目の前まで歩いてきてそして彼女の前で膝を折り、フェイトと目線を合わせて彼女の悲観な瞳を確認する。

 

「私と君は同じだ‥」

 

「ち、ちが‥‥私は‥‥貴方なんかとは‥‥」

 

フェイトは必至に自分とスカリエッティは異なる存在だと否定するがその口調はあまりにも弱々しい。

 

「いいや、同じだよ‥自分の目的の為に駒を揃え、知識ではなく武器を与え、戦い方を教え、戦場に立たせているいのだから‥‥私が戦闘機人を生み出し、彼女達を戦わせているのと君が幼い子供を引き取り戦わせている事‥‥それの一体何が違うと言うのかね?納得いく答えを是非とも私に聞かせてくれ」

 

無残で残酷な言葉が彼女の心をベキベキとゆっくりと確実にへし折っていく。

スカリエッティは最初からこのつもりだったのだろう。

彼女の精神をチクチクと突き、爪楊枝のようにへし折りながら彼女をまずは肉体的に追い詰めて弱ったところを次に精神的に追い詰めて再起不能として貶める。

その為に部屋にはAMFを充満させ、仲間と分断させて1人にして、2人の戦闘機人を彼女にけしかけた。

スカリエッティの言葉攻めの精神攻撃の前にフェイトの目から段々と光が失われ始める。

スカリエッティの言っている言葉に反論できず、彼の言っている事は客観的には事実である以上反論できないのだ。

 

(動揺は心の歪を生み、後悔は心を黒く染め、頭の中には霧をかける)

 

フェイトの心を落とし精神を壊し、ただの人形として彼女を捕らえる。まずはそこからだ、そしてあともう一押しもう一押しで彼女は完全に落ちる。

心を失った人間はただの人形となる。

そうなれば、自分が新たな心を入れてやればフェイトを意のままに操れる。

生物学研究の過程の中で心理学も熟知しているスカリエッティらしいやり方だ。

たいした労力を入れずに彼は管理局のエースを手に入れられる寸前の所まで手を伸ばした。

それにはやはり、

 

「君の大事なものは全て壊れる。君は何1つ守る事は出来なんて出来ない。かつて、プレシア・テスタロッサが愛娘を守る事出来なかった様に‥‥君がそのプレシア・テスタロッサを助けることが出来なかった様にね‥‥君は再び悲劇を‥喪失を体験するのだ」

 

「そ、そんなことは‥‥」

 

「証拠を見せよう‥‥これを見たまえ‥‥」

 

空中にスクリーンが写りそこには煙だらけで中は全くライトがついているかも怪しいぐらい暗い。

そして何か石の転がる音と共に誰かが膝を付く音が聞こえる。

 

『ハァ‥‥ハァ‥‥』

 

灯籠の炎ゆらりと明るい1つのオレンジ色の炎が視界に入り次に2つの炎も見え出して誰がそこにいるのかがすぐにわかる。

 

「ま、まさか!!?」

 

「そう、ここは地下深くのスタジアムでね、先程転移させた2人がいるのさ」

 

先程転移された2人そんなのは彼等しかありえない。

ツナと神威の2人だ。

彼等の戦いをフェイトに見せてフェイトの最後の希望であるツナが死ぬ瞬間をフェイトに見せようとしているのだ。

そんな事も知らないスクリーンの向う側の人達は先程から動きが無い様子。

もしかしたら‥‥フェイトが心の奥でそんな事を思ってしまう。

 

だが次の瞬間その思いと共に煙を吹き飛ばし勢い良く燃え上がるオレンジ色の炎!!

 

「「!!?」」

 

「どうした神威?お前の力はそんなものか?」

 

そして勢い良くカメラのアングルが変わりツナの見る方向へと向けるとそこには大きな穴が空いた形跡がありそして何か爆発でも起きた様に瓦礫が飛び散り、

 

「黙れぇ!!」

 

神威は飛び出して来た。

何やら彼は酷く怒っている様子だ。

彼は勢い良く飛び出してきて大きく拳を振り下ろしてツナのそれとぶつけ合い激しい衝撃波でカメラの画面も揺らいでいる。

2人は大きく後ろに追いやられブレーキをかけるように地面に摩擦をかけながら停り

 

「ツナ、上を見ろ」

 

ふと第三者のリボーンの言葉にツナは上を見るとそこにはフェイトの捕らわれた様子が映り出しているスクリーンがあった。

ようやくそちらに目をやりフェイトが自分達の姿を見ていたのに気付くが、ツナはすぐに神威の方に視線を戻す。

 

「おやおや、彼はこちらに気づいたのに何の言葉も無しか‥随分と冷たいね。まぁ確かに彼にとって弱い君の存在なんて眼中に無いのだろう?」

 

フェイトはスカリエッティの言葉に身を震わせて言葉を失ってしまう。私は弱い、今囚われてしまい膝をつかせて彼の言葉に自分を見失い武器を持つ事もできずにいる。

そして何より彼に言葉をかけてもらう事を期待してしまった。

いつもの様に彼の一言で救われる自分を期待してまた彼に助けてもらおうと心の奥底で思ってしまう。

 

「おや?今、君は彼に救われたいと願っているね?」

 

フェイトは体をビクッと震わせて反応する。

彼女はスカリエッティにあからさまに分かる反応を見せてしまった。

 

「自分の弱さに気付き、自分の弱さに嫌悪感を抱いているね?」

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥わたしは‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥わたしは‥‥」

 

フェイト声を震わせながら激しい息遣いで反応する。

 

(ふむ、あともうひと押しって所だね)

 

「弱さに身を震わす少女‥そんないたいけな女性に言葉をかけないなんて流石はマフィアのボス。非情な男だ。まぁ、マフィアの世界は弱肉強食みたいだからね、弱い者は切り捨てられる。どうやら君は彼にとって切り捨てる弱者と認識されたみたいだ。それと‥‥」

 

スカリエッティはまだ何か付け足す様にフェイトに言い放つ。

彼の言葉はフェイトにショックを与えるには十分な威力だった。

 

「私の協力者の中で彼の事をよく知る人物がいるのだが、それによると彼には既に意中の異性がいるみたいだよ。フェイト君」

 

「っ!?」

 

スカリエッティは今、何て言った?

ツナには既に好きな人が居る?

 

「そ、そんな‥‥うそ‥‥嘘よ!!全部お前の出鱈目だ!!」

 

「嘘ではないさ。これを見給え」

 

フェイトの前にもう1枚のスクリーンが表示される。

そこにはツナと共に栗毛色のショートカットの少女の画像が映し出されている。

 

「彼女が彼の意中の人、ササガワ・キョウコだ。彼とは同じ世界、同じ学校に通っているらしいよ」

 

何枚か写真が自動再生されて行くと京子とツナが仲睦まじい様子の画像が表示されていく。

 

「‥‥」

 

表示されていく画像をフェイトはただ黙って見ている。

 

「まぁ、彼は元々異世界の住人でマフィアのボスなのだから正妻の他に愛人が居てもおかしくはないがね、だが君と彼とでは住む世界が違う。彼はいずれ自分の世界に戻らなければならない」

 

「っ!?」

 

(そうだ‥‥ツナは‥‥いずれ元の世界に‥‥)

 

スカリエッティの言う通り、ツナは確かに異世界の住人だ。

自分の世界に戻る方法が分かればその世界へ戻らなければならない。

これまでのツナとの生活でフェイトはすっかりその事を失念していた。

 

「おぉ~可哀想に君は母親だけでなく好意を寄せた男にも捨てられる運命みたいだね。フェイト‥全くプレシア・テスタロッサも皮肉めいた名前を君につけたものだね」

 

皮肉っぽくスカリエッティが呟きその音を拾うスクリーン。

 

「おい、あのマッド‥あんな事言っているがどうするツナ?しかも京子の事までフェイトにばらしているぞ」

 

リボーンはツナに何か言いたいことはないか聞くとツナから思いもよらない返事が返ってくる。

 

「必要ない」

 

「‥‥そうか」

 

リボーンはツナの言葉に微笑みを浮かべて満足そうに答える。

 

「伝えたい言葉ならもうフェイトに伝えた‥‥後はフェイト次第だ」

 

ツナは真っ直ぐ自分の向き合わないといけない相手を見て自分の覚悟の炎を燃やす。

 

「マスター」

 

自分の相棒の言葉に反応するフェイトの目の前にある物が落ちてきた。

 

「これは‥‥」

 

前にツナに貰った御守り...フェイトの瞳に徐々に光が宿ってくると共に彼の精神を支えようと思い出も溢れてくる。

ツナと初めて向き合った模擬戦最初はとてもひ弱そうで戦うには向かない人だと思った、だけど敗北とともに知った彼の強さを‥‥

ホテル・アグスタの戦いの後、あの晩の時に知った。

魘されている自分を心配してそして私の過去をしっかり受け入れ私の手を優しく包み込んでくれた彼の優しさを‥‥

それだけじゃない、普段の日常では強い彼とは裏腹に色んなおっちょこちょいな所もあるのを知った。

だけどそれでも彼は止まらなかった皆と笑いながら時には笑われながら自分も笑い渡しや皆の隣にいてくれる。

フェイトの目には次第に光が戻り始めてくる。

 

「ツナはずっと私を支えてくれている‥‥」

 

ぎゅっとツナから貰った御守りを握りしめて立ち上がりフェイトから眩い金色の光が溢れ出て彼女震えを吹き飛ばす。

 

(ありがとうツナ、こんな私の事をずっと支えてくれて‥‥だったら、期待に答えないと‥‥ツナが誰を好き何て今は関係ないじゃない!!)

 

ツナに言われた私は凄いって

ツナに言われた私は憧れだって

今度は私がツナに言うんだ。『ありがとう』って

私がここで立ち上がれたのは『貴方のお陰だ』って

そして私が何を思っているのかを余すこと無く彼に伝えるんだ!!

ツナが元の世界に戻るのだって、あの子を選ぶのだって、それはツナ自身の意思だ。

私はツナの意思には文句はない。

ツナがあの子を選んで私を選ばなかった時‥‥その時は、所詮私はその程度の女だったって事じゃない。

そんな些細な問題よりも今は‥‥

今は成すべき事があるじゃない!!

だから私は!!

 

逆立つ髪と溢れんばかりの光が彼女の意志を肯定するように激しさを増す。

 

「バルディッシュ!!行くよ!!」

 

「イエッサー」

 

「真ソニックフォーム!!」

 

フェイトの体が眩い光に包まれ、身体を縛っていた赤いバインドが千切れる。

そして、フェイトのバリアジャケットが変化を始める。

マントと上着が消え、バリアジャケットとしての機能が可能な限り削られた最低限の装甲‥手甲と脚鎧のみとなり、身に纏う衣装は空気抵抗を減らす為、レオタードの様な衣装となる。

 

「な、なにっ!?あの状況から立ち直っただと!?」

 

スカリエッティが思っていたよりも人と言うのは強かった。

 

「私は弱いから……迷ったり、悩んだりを、きっと……これからもずっと繰り返す‥‥」

 

膨大な魔力の奔流は、風となって周囲の空間を満たしていく。

AMFで充満されていた筈の環境でこの光景はあまりにも異常だった。

 

「だけど……いいんだ」

 

そして、雷光を纏いし戦場の女神は……今、舞い降りた。

 

「それも全部……私なんだ!アリシア・テスタロッサのクローンじゃなくて、フェイト・テスタロッサである私なんだ!!」

 

「ば、バカな‥‥AMFが満たされている中、あれほどの力が出せる筈が‥‥」

 

フェイトの変化にスカリエッティ同様、トーレも思わず驚愕する。

 

「くっ、トーレ。手足の1本は構わない。どんな手段をもってしても彼女を仕留めろ!!」

 

そして、それはスカリエッティ本人も精神崩壊一歩手前まで追い込んだのにまさかそこから復活するなんてあまりにも予想外の出来事であった。

彼はもはや手段を選んでいる暇はないと判断しトーレにフェイトの身体がどれだけ傷つこうが後で再生と治療を施せるので、強引にフェイトを倒せと命じる。

 

「は、はい」

 

トーレの方もスカリエッティの命令と現状を見てやはりここは完膚なきまで叩きのめさなければならないと判断した。

四肢に紫色の羽根の様なモノを出しトーレはフェイトへと向かう。

しかし、フェイトの姿は突如フッと消え、いつの間にかトーレに背後をとっていた。

 

「なっ!?」

 

トーレが振り向くと同時に背中に激痛が走る。

 

「くっ‥は、速い……人間に対応できる速度を超えているだと‥‥?だが、私とてナンバーズ1の速さを誇る者として速さ比べで負けるわけにはいかない!!」

 

トーレは拳を構えフェイトへと向かっていく。

フェイトは迫りくるトーレの拳をスッと無駄のない動きで躱しトーレの懐へと入り込む。

 

「ここだぁ!」

 

「くっ!?」

 

しかし、そこは戦闘機人、人並み以上の反射神経でフェイトの一撃を受け止める。

フェイトの雷光とトーレの紫電がぶつかり合う。

そのぶつかり合いも、すぐに終わり、2人は再び間合いを広げた。

 

「‥‥貴女は」

 

「ん?」

 

「貴女は何故、スカリエッティに協力する?彼のやっている事が酷い事だと思わないのか!?」

 

フェイトはトーレに何故スカリエッティの味方になっているのかを問う。

 

「愚問ですね。フェイトお嬢様。それは貴女も理解できている筈です。かつて、お嬢様がプレシア・テスタロッサの命令でジュエルシードを集めていたように私達もドクターの手によって生み出され、ドクターによってその存在意義を見出せた‥それだけで私達がドクターと共にある十分な理由となり得ると思いますが?ドクターの脅威となる者は全て排除する!!それが戦闘機人として生まれた私の使命だからだ!!」

 

トーレの四肢の羽根が一回り大きくなる。

恐らく次の一撃で決めようと言う事だろう。

ならば、

 

「バルディッシュ!」

 

「イエッサー」

 

フェイトの指示を受け、2本のライオットザンバーが1つとなる。

フェイトの方も次の一撃で一気に勝負にでることにした。

どのみちこれ以上の長期戦をやれば魔力が枯渇する。

魔力が無くなる前にトーレを倒さなければ自分の敗北は必至なのだから‥‥

 

「行きますよ、フェイトお嬢様」

 

「次の一撃で一気に決める」

 

「「勝負!!」」

 

トーレとフェイト、互いに神速で相手との距離をつめると紫電の拳と雷光の剣が激突する。

お互いに防御力を捨てた捨て身の戦いをしているため、少しでも気を抜けは相手の攻撃と衝撃波で吹き飛ばされる。

 

「負けられない……私は、絶対に……」

 

「私とて負けられぬのだ!!」

 

互いに負けられない誇りと誇りがぶつかり合う。

それは短くも長い時間に思えた。

だが、1つの要因から均衡が崩れ……決着が付いた。

 

「がはっ!!」

 

宙を舞う体。

そして床にドサッと倒れたのはトーレだった。

 

「がふっ!? ば、バカな……なぜ‥‥なぜ、この私が‥‥」

 

トーレ自身、自分の敗北が信じられなかった。

 

「差があったとすれば、想いの差だよ」

 

「な、なに?」

 

「ただ、与えられているだけの想いと自ら進んで新たな想いを見つけ、それを守ろう、信じようとする想い‥‥その差が、貴女と私の戦いに明確な差となって現れたのよ」

 

「くっ、そんなモノに私は負けたのか‥‥」

 

トーレは自らの敗因をフェイトから聞くと同時にガクッと意識を失った。

 

「フハハハハハ……素晴らしい!!やはり素晴らしいよ!!君は!!……まさか、あのトーレを倒すとは思わなかったよ!!」

 

スカリエッティは拍手をしてフェイトの奮闘ぶりを称える。

 

「スカリエッティ!!」

 

「だが、この代償はいずれ払ってもらう。今回はこれで退散させてもらうよ」

 

そう言い残してスカリエッティの姿は消えた。

 

「くっ」

 

フェイトは悔しそうに顔を歪める。

しかし、あのスカリエッティは実体のないホログラム。

今のフェイトにはどうする事も出来なかった。

それにトーレを倒したことで魔力ももうスッカラカンの状態だったし、かなりの無茶をした為か身体中が悲鳴をあげている。

ガクッと膝から倒れるフェイト。

バルディッシュも既に機能を停止している。

 

「ツナ‥‥私‥勝ったよ‥‥だから、ツナも‥‥絶対に‥‥勝‥って‥‥ね‥‥‥」

 

ドサッ

 

魔力を使い果たしこれまでの戦いで疲労したフェイトはその場に倒れた。

愛する者の勝利を信じて‥‥。

 

 

・・・・続く


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。