【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


標的78 恵の村雨

 

 

 

~side山本~

 

キン!キン!キン!

 

山本は愛刀、時雨金時にてディードの二刀流を捌いてはいるがディードの刀はただの刀ではなく、彼女は小太刀を使用している。

小太刀は一見、脇差しの様に短く普通の刀より見劣りするがその刀身の短さを長所にして自分の間合いである空間を完全に支配できる。

つまり防御に特化した刀であった。

それをディードは両手に持っている事で彼女の防御力も2倍となっている。

その為、山本はディードに対して未だに決定打どころかかすり傷1つ負わせる事さえ出来ていない。

しかもそれだけではない。

元々機動力が高いディードのスピードが更に上乗せされて防御に優れている筈の小太刀が付け入るスキのない攻撃型の小太刀となっている。

一方の小太刀で山本の一撃をガードしてもう一方小太刀で山本を斬りつける。

山本は持ち前の反射能力にて何とかディードの攻撃を躱しているがそれも一杯一杯の状態でいつディードの一撃を喰らっても不思議ではない状態だった。

何合か打ちあった後、両者は互いに距離をとる。

しかし、互いにいつでも斬りかかれる間合いギリギリの距離だ。

 

「ふふ、この程度なの?貴方、全然弱いじゃない」

 

ディードは相変わらず狂気に満ちた笑みを浮かべているがその言葉からは明らかに落胆の色が窺える。

 

「す、すっげぇ‥‥」

 

山本は無理に笑ってはいるが額から冷や汗が一滴零れる。

だがしかし、その反面、

 

「やべぇ、何かゾクゾクしてきた」

 

紅桜を持つディードを前にして怖い筈なのにその反面興奮している自分が居た。

山本はかなりの負けず嫌いな性格なので、目の前の強敵に対しても絶対に倒す‥必ず勝ってみせると言う意欲が燃えてきたのだ。

 

「口達者な人ね。でも今の貴方の状態を見てみなさい」

 

山本の少し荒くなった息遣いを指摘するディード。

 

「刀1本だけで私の攻撃を捌くのは見事だけど、それもいつまでもつかしら?」

 

「はは、言ってくれるぜ、だけどな‥‥」

 

山本は首からぶら下げているネックレス、雨のVGに手をやる。

 

「?」

 

ディードはそんな山本の行動に首を傾げる。

 

「あら?最後のお祈りかしら?」

 

「はは、どうだろうなぁ‥まぁ、俺は宗教とか入ってねぇからな神や仏がいるのかは分からねぇ‥‥まっ、信じるなら‥‥次郎、小次郎!!」

 

ネックレスに青い炎灯して山本の相棒の犬の次郎と燕の小次郎を出して、

 

「形態変化」

 

次郎と小次郎が山本の刀の時雨金時と合体して二刀流となる。

 

「自分の今までの行いだな。さぁ、これでお互い二刀流同士‥‥本番はここからだぜ、お嬢さん」

 

「へぇ~そういえばあの銀髪もそんな事をしていたわね‥‥魔力を感じさせない不思議な力‥ドクターが興味を引きそう‥‥」

 

完全に狂った様な目とニヤッと薄気味悪い笑みを浮かべて山本を見るディード。

 

「貴方を手土産にしてもいいかもね‥‥大丈夫よ、死んでもドクターならレリックウェポンか私と同じ戦闘機人に改造して蘇生させてくれるかもしれないから‥‥貴方が私達の側に立った時、あの男や銀髪はどんな顔をするかしら?」

 

ディードは山本を殺してスカリエッティの手によってゼストと同じレリックウェポンか自分と同じ戦闘機人に改造してツナや獄寺と戦わせる場面を想像する。

しかし、山本はそんなディードの言葉に一切動揺せずにジッと状況を見定める。

普段は相当な天然かつ気楽な性分でいつも笑顔を絶やさない山本であるが危機的状況では鋭さをのぞかせる。

そう言った面においてリボーン曰く「生まれながらの殺し屋」と言われる山本の一面なのだろう。

 

「さあ、休憩はもういいでしょう?続けましょう?血で血を洗う剣舞を」

 

「っ!」

 

やはり最初に仕掛けてきたのはディードだった。

彼女は神速で山本との距離を詰めて彼の間合いへと一気に飛び込んできた。

だが山本もいつまでも防戦一方ではない。

ディードが飛び込んできたのと同時に山本もディードに向かって飛び込み剣をぶつけ合う。

 

キーン!

 

金属音が鳴り響き山本がディードの刀を下にそらしてすぐ様斬ろうとするが小太刀が短い文すぐに抜けて逆に山本を襲う。

しかし、彼の反射神経は彼の世界でもトップクラス少々の切り傷と服を残すがなんとか躱すそして後ろに下がり、

 

「攻式一の型車軸の雨」

 

2本の鋭い突きに吹っ飛ばされる刺さりはしないが威力は強く耐えきれない反動とともに壁に衝突する。

ディードも負けずと飛び上がり上から振り下ろす。

 

「守式七の型繁吹き雨」

 

大きな雨の炎の水しぶきが空間を埋め尽くし両者は両断されて見えなくなる。

だが、山本は違う。

彼の繁吹き雨を放ったのは左の太刀、柄には彼の相棒の1匹でもある次郎がいた。

この次郎が放った雨の炎はニオイで空間の完全把握を可能とすることが出来る。

つまり彼は相手の視界を奪い息付く暇なく攻める準備を整えていたのだ。

 

「くっ!」

 

ディードは視界を奪われてしまいそれにこれがただの炎ではないことは百も承知していた。

何度も戦い、何度も痛い目を見たからこそこれが違う種類でも大げさに避けてしまう。

 

「そこだ、特式十一の型雨の嘴!!」

 

激しい豪雨のような燕の嘴の突きを放つ山本目の前は雨の炎で覆われているが確かに人影があった。

この攻撃は回避不可能なので相手は絶対に手傷は負う筈だ。

 

「っ!?」

 

「ふっ」

 

不気味な薄ら笑いが山本の耳に入り込む。その声に反応してしまうが山本の剣は止まらずディードに向かう。

そのディードは特別な事は一切せずにただ山本に向かい直しただけだ。

 

それだけの筈だった‥‥

 

だが次の瞬間信じられないことが山本の目に映る。

ディードは山本の雨の嘴を全て捌いた。しかもそれだけでなく山本の顎を蹴り上げてからすぐさま2つの紅桜で山本を斬りつけたのだ。

 

「ぐぁぁ!?」

 

(な、何故‥‥)

 

山本は堪らず声を上げてしまいその場に膝をつく。

それと同時に山本はどうして回避が不可能な筈の技の中をディードが捌くことが出来たのか不思議で仕方がなかった。

 

「惜しかったわね。あの攻撃‥少なくとも前の私ではこうは行かなかったわ。私が前の私なら、この勝負は貴方の勝ちで終わっていたわね」

 

その不気味にも妖艶にも見える表情でディードは紅桜に付着した山本の血をペロッと舐める。

山本自身は傷を抑えて静かに相手の出方を伺っているが、

 

「はぁ、はぁ、何で...どうしてわかったんだ?」

 

山本はまだ腑に落ちない。

別に自負している訳でも自惚れている訳でもまして慢心していた訳でもない。

あの型は前にも止められたこともあるしこういう風に斬りつけられるのも前にもあった。

そこが、山本が今1番引っかかっている部分‥ディードのあの躱し方には一切の無駄がなく...と言うより無駄が無さすぎる。

まるで技が把握されているような躱し方‥機械やコンピューターの様な感じだった。

幾ら体の中に機械の部品を組み込んでいる戦闘機人とは言え、完全な機械のターミネーターやロボットとは異なる存在の筈だ。

 

「そうね、いいわ。特別に教えてあげる‥それは貴方の攻撃が閃いたのよ。直感でね」

 

「直感だと?」

 

そう答えるディードは悪ふざけをしている様にも見えるが...

 

「この刀は紅桜、これ1本で戦艦10隻を落とせる代物。この刀が厄介なのはね、自分で学習し進化する電魄と呼ばれるものが入っているだけじゃなく...ドクターお手製のある機能も入っているの」

 

「ある機能?」

 

もったいぶるのかギリギリまで言わないディード。

終いには余程嬉しい為なのか体まで震え始めていた。

 

「そうよ、ある人をベースに作られた機能‥彼の天性によってさずけられた。彼だけが持つレアスキル、私もそのせいで屈辱にあった。彼の...沢田綱吉の超直感にね」

 

「なっ!?」

 

超直感、ボンゴレの血であるブラット・オブ・ボンゴレを持つものだけが継承されるボンゴレが最強である由縁のもの、名前だけならただの凄い直感に見えるがこれは普通直感とは二味も十味も違う、自分だけじゃなく周りにも危険が訪れても働く予知と言っても過言ではないそれだけじゃなく、血の動きや筋肉の歪を感じ取り相手の行動すらわかってしまうつまり出し抜くことはほぼ不可能とも言える。彼自身この力に何度も助けられた。

だがおかしい‥‥この情報源が誰なのかはわかるが何時、ツナの力をスカリエッティは見たのだろうか?

 

「前に彼との接触時にこの力を見せられた時は屈辱と共に見せつけられた。この力を...今ここにドクターの頭脳と技術により私のものとして完璧に再現したの!!」

 

デイ―ドとツナの戦闘経験とスカリエッティの天才的な頭脳の元にツナのレアスキルとも言える力が相手の手に渡ってしまった。

それでも普通はこうは行かないだろう。

何故ならこのチカラが宿っているのは紅桜であって彼女自身ではない。

いかに刀が相手の攻撃がわかり回避行動に移そうともそれには何秒かの歪ができて体が追いつかない。

だが紅桜は彼女の体を乗っ取り始めている為、その誤差すら無理やり動かして埋めていく。

ただこれは以前の紅桜よりも何倍も負荷がかかる。常人なら数十分でアウトだ。だがディードは常人とは少し普通と違う。

彼女の体は常人よりも頑丈な戦闘機人。この奇跡の様な組み合わせが擬似超直感を実現させたのだ。

ギンガは戦闘機人そして紅桜を使用する試作型とも言える存在だが、ディードは戦闘機人そして紅桜の使用者のまさに完成形とも言える存在となった。

これは何という皮肉だ。今まで何度も彼と彼の仲間を守ったこの力が今度は彼の仲間に牙を向けている。

 

「なるほどな」

 

「辛そうね?まぁ、本来仲間のレアスキルにやられればショックを受けるのも分かるわ。ましてそれが、貴方の命の灯を奪うのであれば尚更ね」

 

山本は足を震わせながら立ち上がる。

その様子はディードの気分を高揚するには充分だった。

傷ついた山本を見るだけで自分は強者なのだと実感できるからだ。

山本は剣を支えに立ち上がり、

 

「ふふ、どう足掻いても勝ち目なんてないのに随分と諦めが悪いのね。いい加減にさっさと諦めたら一瞬の内に楽になれるのに‥‥足掻く分だけ苦しむだけよ」

 

「生憎と俺は諦めの悪いしぶとい男だからな」

 

ディードは誇張するかのように自分の胸に手を当てて

 

「そう‥でも貴方は私には絶対に勝てない。貴方より優れた戦闘機人の肉体に加えてこの紅桜の力‥‥私は、遂に遂に遂に完全無敵な兵器としてドクターの力になれる!!もう沢田綱吉の戯言にも惑わされない!あの銀髪爆弾魔にも劣らない最強の!!そして他のノーヴェ姉様いえ、ノーヴェにもトレディにも負けない最強無敵の戦闘機人として生まれ変わった!!」

 

両手をバッと広げてそう空に叫ぶディード。

敬愛していた筈のトレディでさえ、もう姉様とは呼ばずに呼び捨て状態。

もう以前の冷静差が1グラムも感じられないぐらいに感じる。

そんな彼女を心配する双子の肉親もいるというのにもう誰の声も届かない、彼女の目にも入らない、彼女が聞くのは紅桜の被害にあったものの最後の言葉、彼女の目に入るのは紅桜の標的だけだ。

既にディードのほぼ全ては紅桜と同一しているのだろう。

 

「はは‥‥」

 

山本の言葉に反応するディードは先ほどとは違い山本を睨みつける。

 

「何がおかしいの?それとも死の恐怖でおかしくなった?」

 

「アンタは俺と...いや俺達と同じ何だなって思ってさ‥‥」

 

「聞いてなかったの?何処が同じなの?私は貴方達みたいな貧弱で下等な人間とは‥「いいや同じさ」」

 

「むっ!?」

 

彼女の言葉に割って入るように山本は声を出す。

 

「負けてスッゲェ悔しいって思うのも...自分の大事なモンを守りたいって思うのも...そしてどんなに自分を見失ったとしても最後に剣を選んだんだからな...アンタは紛れもねぇ俺達と同じ『剣士』だ!」

 

山本はディードを自分と同じ剣士だと言う。

だがディードはそれに否定的な感情を抱いている。

確かに負けたのは悔しかった。でも、大事なモノのために戦っている訳では無い。

ディードが戦っているのは自分はその為に生まれたのだから、紅桜を選んだのはこれが自分の理想とする存在に近づくのに手っ取り早いからと言うだけだ。

 

「だけどアンタは間違えた。アンタは自分の剣を信じずに楽な道を選び道具なんかに頼った」

 

「古臭い考えねぇ。そんな事にこだわるなんて‥‥そこに絶大な力があるのに手にしない方が間違いよ。短時間で楽に最強の力が手に入るなら、それを選ぶに決まっているじゃない」

 

「いや、こだわるさ、こだわんねぇといけねぇモンがあんだからな、それとこいつを加えさせてくれ」

 

また剣を構え直す山本。

 

「あんたが言った、完全無欠最強無敵ってのは俺の時雨蒼燕流の事なんだからな!!」

 

「減らず口を!!」

 

山本の日本の刀にはコバルトブルーの海の様な色が灯り山本が突っ込んでいく。

 

キン!

 

またぶつかり合う剣と剣、思いのある人間の剣とただ人を斬る事を楽しみとしているだけの剣がぶつかりあい火花が散っていた。

 

「はァァ!!」

 

山本の激しい連続攻撃ディードはそれを難なく捌きながら彼の好きを窺う。

 

(貰った!!これで終わり!!)

 

好機と思い攻めるが少し屈めた体制だった為に山本は上にジャンプしてディードの肩に手を置きながら1回転して背後に回る。

 

(なっ!?)

 

そして横薙ぎを1発剣の峰から入れる。吹き飛ばされるも体制を戻してすぐに迎え撃つ左右の刀を上手いタイミングで攻撃して山本の右手の刀を上に弾く。

 

(くっ、これで‥‥)

 

終わりと思ったら、山本はかかがみ込んで、

 

「攻式五の型五月雨」

 

剣の持ち手を入れ替える事により相手のタイミングを外す技だがディードは顔に掠らせながら避け紅桜で山本の顔を掠らせるが山本も躱して、

 

「うぉぉ!!」

 

力いっぱい両手で握りしめた左太刀でディードにぶつける。

そしてディードもまた2本の紅桜で受け止める。

 

(おかしい、先までとは動きが全然違う、何であんな傷を負っているのに‥‥私の方が押されているというの?そんなバカな事が有る筈ない!?)

 

ディードは彼を見誤った。

自分の持つ紅桜が電魄の元に進化するのと同じく、彼もまた自分より上の相手がいるならそれに合わせて成長するそれが彼らの本当の武器なのだ。

 

「気付いたか?アンタ、今すんげぇ悔しそうな表情しているぜ」

 

「う、うるさい!!」

 

声を荒らげながら山本に叫ぶディード、そしてそのまま彼を睨みつけながら一気に距離を縮める。

 

「どうした?最強?こんな怪我人1人を仕留めるのに随分と時間がかかっているじゃねぇか」

 

山本は敢えてディードを挑発して彼女の心を‥精神をかき乱す。

 

「だ、黙れ!黙れ!!黙れェ!!!」

 

自分の気持ちを勢いよく振り回す様にディードは紅桜を振るう。

その姿は見ているだけで痛々しい光景だ。自分の根源が自分に芽生えかけているものを否定して、紅桜がその芽に黒い霧をかけているのだ。

 

「もう止めにしようぜ、アンタの剣は見ているだけで辛いぜ」

 

正直彼は今までこんな剣を受けたことがない、ここまで自分を否定するために振るのは彼女自身の気持ちを組んでも彼女の為にはならない。

だがディードにとってはその山本の好意すら自分に侮辱を与える行為に思え、マグマの様に煮えたぎる殺意と怒りが沸々と湧いてくる。

先程、山本は彼女を剣士だと言った。それは本当の彼女であって今の自分を認めようと機械に徹する彼女ではない

 

「さあ、剣を...武器をとれ!!今度こそ、お前を切り刻んでやる!!」

 

ディードは自分の付近にある山本の剣を蹴り飛ばして剣を渡す。山本は渋い顔でそれを受け取り、

 

「今のアンタ「お前が偉そうに私を!!」」

 

山本に向かい走り出すディード手にした剣で迎え撃とするが...

 

「語るなぁァァ!!」

 

ディードの両腕から何やら触手のような物が勢いよく飛び出してそのまま山本を襲う。

 

「な、何だ!?」

 

剣2本で受け止めるが壁にまで追いやられ激突する。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「コロス‥ブッコロス」

 

もう完全にディードはそこには居ない。

今彼の目の前に立っているのはディードではなく、力に溺れ、力と血を求める妖刀紅桜だった。

 

「お前...でやぁぁ‥‥」

 

触手を切り裂いてそこから脱出するもディードの次の行動に出るのがとても速く、

 

「ウワァォォ!!」

 

「守式二の型逆巻く雨」

 

2つの雨の炎の水柱を立てて最後に3つ目を立てて完全にディードの視界から外れ、

 

「その子から離れろ!!化け物刀!!」

 

とディードの前から突撃するだがディードは難なくそれを斬った山本の映った水柱を

 

「攻式九の型うつし雨」

 

本当の山本は背後にそしてそのまま斬ろうとするもディードも負けずと山本の首元を狙うがそれて左肩の上を深く斬り裂く山本の攻撃は決まるには決まったがディードの深い触手の前では斬り通り彼女にダメージを与えることもできない。

いくら触手に深く突き刺さっても彼女には届かなかった。

そのまま山本は象の足もある太さの触手に押されまた壁にまで追いやられると思いきや、

 

「へへ、何度もやられっかよ」

 

と地面に踏ん張りを効かせて彼女を触手事投げ飛ばす。

ディードは1回転して勢いを殺して壁を飛び台として扱い突っ込んでいく、山本も躱すがそこには小さなクレーターができていて紅桜は自分自身を振りまして、

 

「コロォォォォォス!!」

 

山本もガードするもパワー単体で言うのであれば以前の数倍はある。その上、攻撃の面積もとてつもなく広い。だからこそ山本は剣を上に投げて少しでも視線が上に行けば勝手に攻撃も浮上する。

 

「やっぱりな」

 

と呟き紙一重で攻撃を避け剣の着地点にて、

 

「攻式三の型遣らずの雨」

 

丁度柄の部分を蹴り飛ばしてもう一方のディードの肩に突き刺さる。

 

そしてそのまま触手に乗っかり、

 

「お前は彼女の体だけを乗っ取りすぎたせいで彼女が本来持っていた冷静な判断を失っているんだ、そんなんじゃあいくらツナの力があっても意味ねぇな」

 

そのまま走りディードの前に出て、

 

「やっぱしツナが1番だな」

 

と両肩に刺さっている剣を上から下にやりディードに引っ付いている触手事斬り裂き彼女の青い服が露となる。だが喜びもつかの間すぐにそこを隠すように触手が出てきて彼を捉える。

 

「そろそろ勝たせてもらうぜ!!妖刀!!」

 

ぶつかり合い火花飛び散る中山本は後ろに飛んでその間にディードの紅桜が戻ってきた。

山本は腰に手をやり、刀をほぼ納刀状態にして突き進む。

 

ディードは紅桜を飛び出させずに、

 

「コレデオワァリダァァ!!カトウナニンゲンガぁァァァ!!」

 

触手のみで山本を捕縛してその後突き刺す様だ。

だが、

 

「攻式八の型篠突く雨」

 

文字通り篠突く様な雨が触手を完全に斬り伏せてからの

 

「特式十の型燕特攻!!」

 

迎え撃つは2本の紅い桜、それの飛び込んで行く燕激しくぶつかり合う。

 

「うおおおお!!」

 

ビクン!

 

一瞬だがディードの紅桜に揺れが生じる、それを見逃さない山本は更に1歩踏み込んで、

 

「よく見ておけ、自称最強!!こいつが本当の完全無欠最強無敵だ!!」

 

ディードの紅桜を砕き割り山本の雨の炎がまるで空に固まった水が中心を失い弾けんた様に周りにとんでいた。

 

その炎が消えると共にディードは膝をつき倒れた。

もう紅桜は折れていて彼女を覆っていた触手も砕け散り空の藻屑と消えていた。

 

「おい、アンタ!大丈夫か!?」

 

とディードに慌てて駆け寄るも

 

「来ないで!!」

 

雷のようにその言葉を切り裂かれる。まだ意識はあるようだ、だがそれでも紅桜の後遺症により彼女は暫くの間は這うことすらできないだろう。

しかし、

 

「私は...まだ‥‥まだ‥‥負けていない‥‥負けるわけには‥いかない‥‥」

 

と既に柄の部分しか残ってない紅桜を取り彼女はそれを山本に向けて山本に負けをまだ認めていない。

 

「.....ははは」

 

「何が可笑しいの!?無様に地面に這いつくばる私の姿がそんなにも可笑しいと言うの!?」

 

地面に這いつくばりながらもディードは戦意を失わず、山本を睨みつけている。

 

「やっぱアンタは根っからの剣士だなって思ってさ」

 

この期に及んでまだそんな事をとディードは思い山本を見る。普通、剣士という生き物は剣を魂としてそれが折れたらもう何も魂だけじゃなく精神すら崩れるぐらいまでに陥る。

 

「アンタ、さっきと違ってしっかりと誇りを守ろうとしている」

 

地面を這う屈辱を味わおうとも彼女はまだ負けを認めずに山本に剣を向けて真剣な眼差しで山本の首をとろうとしている。

 

「アンタは、さっきとは明らかに違う。剣士の誇りを持ったアンタと今度は正々堂々の勝負をやってみてぇよ」

 

「何を言い出すかと思えば...私が剣士?見当違いもいい所だわ!!剣が向いているから剣を武器にしただけなのよ。紅桜をとったのは自分をより最強の兵器になるために...その為だけなの.....私はアンタ何かとは違う...私は剣士なんかじゃない!!」

 

「なぁ、何でそこまで最強になろうとしてんだ?」

 

「そんなの私が戦闘機人だからに決まっているでしょう!!戦って相手を殺し破壊するために生まれた兵器、私はその為にしか存在する価値が...」

 

俯き力の限りそう山本に言う彼女の顔は悲しんでいるようにしか見えない。

 

「そうか?俺はそうとは思わねぇよ。だって剣だって人を斬る為の道具だけど使い方によっちゃダチを守ることだってできるんだからな」

 

そう爽やかに言う山本はディードを支えながら熱弁する。

 

「アンタのそのセントウキジンって言うのは少し変わった人間って事だろ?俺はそれいいと思うぜ、俺達の周りにも変な奴がいっぱい集まっているしさ」

 

そう言う山本の顔はいつもの様に明るく笑う。

ディードの手からは紅桜の柄がポロッと落ち、彼女は両手で目を覆いながら、

 

「簡単に...言わないでよ.....私は...私は‥‥」

 

「アンタの目から流れているモン‥それがある奴が心の無い兵器な訳あるかよ」

 

溢れんばかりのその涙はディードにとってはもしかしたら恵の村雨がもたらしたものかもしれない。

そんなディードを山本は優しく抱きしめる。

 

「まず自己紹介からやろうぜ、俺は山本武って言うんだアンタの名前は?何て言うんだ?」

 

「ディード...ただのディード...うわぁぁぁん...ぁぁぁん」

 

ディードは強く強く山本の服を握りしめ山本の胸の中で泣き続けるのであった。

最後は彼女自身の雨が自分の心を雁字搦めにしていた岩を優しく溶かしていっていた。

戦闘機人のディードはこの日、兵器でも機械でもなく1人のディードと言う存在として新たな一歩を踏み出せたのかもしれない。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

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