【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


標的66 久しぶりだな

 

 

 

~side機動六課 隊舎~

 

スカリエッティ一味による地獄の様な公開陳述会襲撃があった翌日‥‥

被害はこれまでのテロに比べ大きいモノとなり、多くの死傷者が出た。

何しろ襲われたのがミッドのお膝元である地上本部ビルを中心とする市街地なのだから‥‥

復旧作業も管理局の局員だけでは手が回らず、民間の工事会社にも急遽委託を行い市街地の彼方此方では復旧作業が行われている。

そんな中、動ける機動六課のメンバー達は、朝早くから全壊してしまった六課隊舎の現場調査をしていた。

六課のメンバーにおいては、幸い死者は出なかったものの、やはり大勢の局員が負傷して病院で手当てを受けているか入院中の身となっている。

ティアナ・ランスターは六課のメンバーの中でも無傷であの襲撃事件をくぐり抜けた幸運な者の1人であり、彼女は現在六課の隊舎正面玄関周辺の調査を担当していた。

 

「ランスター陸士、こちらの確認をお願いします」

 

「わかりました」

 

渡された書類を確認し、そう言って持っていたパネルのモニタに触れてチェックする。

六課メンバーの殆どが現場調査をしているとはいえ、その人数は決して多くなく、ティアナの仕事は思っているよりも多かった。

ティアナは手元のパネルから視線を上げた。

 

「‥‥」

 

彼女の視線の先には廃墟と言うか瓦礫の山となった機動六課の隊舎が無残な姿を晒していた。

機動六課に配属になってから、まだ半年も経っていない。

それなのに、この隊舎を見ているだけで、様々な思い出がティアナの頭を駆けていく。

配属されてから直ぐの内は、厳しい訓練の日々と自分に務まるだろうかという不安。

周りは高魔導士のエリートだらけで凡人は自分だけと言う劣等感。

その劣等感から来る焦り‥‥

そんなマイナス面しかない思い出の中にもスバルと獄寺との思い出が蘇り、マイナス面な思い出が次第に楽しかった思い出へと変わり始めた。

スバルは自分と同じく無傷であったが、彼女の姉、ギンガ・ナカジマは未だに行方不明になっており、ギンガの行方を知っていそうな男の人は未だに目を覚まさずに意識不明の重体。

スバルはあの男の人が目を覚ますと信じ、一刻も早く姉の居所を知りたいがためにあの男の人に付きっきりとなっている。

そして、獄寺も重傷を負い、まだ意識を取り戻さない。

ティアナ自身もスバルの様に病院へ行き、彼の傍にいたい。

だが、これ以上人員を割くわけにはいかない。

ティアナは自分が皆の為に頑張らねばと思い作業を続ける。

 

「……酷い事になってしまったな」

 

「えっ?……あっ、シグナム副隊長」

 

ティアナが被害報告を纏めている端末に目をやっていると、不意に後ろから声をかけられる。

声のした方に視線を移せば、そこには眉を寄せて心配そうな表情をしているシグナムの姿があった。

彼女も自分やスバル同様、無傷であの襲撃事件をくぐり抜けた数々少ない隊員の1人だ。

 

「シグナム副隊長‥病院の方は……」

 

「重傷だった隊員達も、無事に峠は越えたそうだ。だが、獄寺はまだ意識を取り戻していない」

 

「‥‥」

 

「やはり、心配か?獄寺の事が」

 

「いえ、アイツは殺しても死なない男ですから、大丈夫です」

 

ティアナはそう言うが、シグナムにはそれが強がっているように見えた。

 

「‥‥ここは私が引き継ぐ。お前も病院に顔を出してくるといい」

 

「えっ?ですが……」

 

ティアナは今ここで自分までもが復旧作業から離れても大丈夫なのかと思っていたのだが、やはり獄寺の事も気になる。

 

「いいから、行ってこい」

 

「……わかりました。それじゃあ、お願いします」

 

ティアナはシグナムの厚意に甘え、これまでの被害報告が纏められた端末を彼女に手渡す。

 

「任されよう。キャロやエリオも向こうに居るから、相手をしてやってくれ」

 

「はい」

 

ティアナの背中を見送りって、溜息を1つ吐き、シグナムはティアナから受け取った端末へと視線を落とすのだった。

しかし、心の中では、

 

(この受けた屈辱は必ず晴らすぞ、覚悟しておけ)

 

襲撃を行ったスカリエッティ一味に対しての怒りを溜めていた。

 

 

~side 土方~

 

 

此処で時系列は一時、襲撃事件のその日に戻る。

 

 

「大丈夫ですか?ヘリが来たのですぐに病院へ連れて行きますから」

 

ギンガとの戦闘に敗れ、彼女を正気に戻せなかった土方。

彼はギンガに胸を突かれ、その場に倒れた。

そんな彼に声をかける人が居た。

うっすらと目を開けると、ぼんやりであるが、彼の目には相棒である彼女と同じエメラルドグリーンの目と青い髪が見えた。

 

「うぅ‥‥ギン‥ガ‥‥」

 

エメラルドグリーンの目と青い髪を見て土方は相棒である少女の名を口にするがその直後、彼の意識は真っ暗闇に落ちた。

 

それから一体どれくらいの時間が経っただろうか?

 

「‥‥さ‥ん‥‥とう‥‥し‥‥ろ‥‥」

 

「とうし‥‥さん‥‥十四郎さん‥‥」

 

土方は誰かに呼ばれている感覚を覚え、瞼を上げる。

あれだけ重かった瞼や体が嘘のように軽くなっていた。

目を開けた土方は上半身を起こし、体中を見る。

そこにはギンガによって傷つけられた傷は全て消えており、自分は普段着慣れている真選組の幹部服を着ていた。

辺りは何もない真っ白な空間が広がっていた。

いや、何もないは語弊がある。

この真っ白な空間には土方十四郎と言う存在と彼の目の前に着物を来た1人の女性が立っていた。

その女性を見て、土方は理解した。

此処は夢の世界か、あの世であると言う事を‥‥。

 

「お前が居るって事は、此処は夢か?それともあの世か?」

 

土方は目の前の女性を見て、1人ごちる。

 

「まぁ、久しぶりにお会いしたのに、そのぶっきらぼうな所は治っていませんね」

 

「これは生まれつきの性分だ」

 

「フフ、そうですね」

 

「まぁ、なんだ‥‥久し振りだな。元気だったか?」

 

「元気じゃなくなったから、こっちに来たんですけど‥‥」

 

「フッ、そりゃそうだ」

 

言いたかったことは沢山あった筈なのに、いざ本人を前にして何一つ言えなかった。

口を開いて出てくる言葉はいつも通りのぶっきらぼうな言葉。

しかし、目の前の女性はそんな土方の性格を理解しているのか、あくまで自分のペースを崩さない。

 

「しかし、よりにもよってお前が出てくるとはな‥‥ミツバ」

 

「はい」

 

土方の目の前に居るのは、沖田総悟の死んだ姉、沖田ミツバだった。

 

「あれからずっと、十四郎さんの事を見守り続けてきました‥‥十四郎さんは何も変わらず、ご自分の信念を貫いてきましたね」

 

「剣を振るうしか取り柄のないどうしようもない男だからな、俺は‥‥」

 

「そうですね。でも、そう言う所が十四郎さんらしいですよ」

 

「それで、お前が出てきたって事は、此処はやはりあの世か?」

 

土方がミツバのこの場所を尋ねると、

 

「いいえ、正確にはあの世とこの世の境界線です。それを十四郎さんは夢を通じてこの場に居るのです」

 

ミツバはこの真っ白な空間を説明する。

 

「そうかい、それじゃあさっさと案内してくれ」

 

「残念ですが、私は十四郎さんを案内できません」

 

「あん?」

 

「だって‥‥十四郎さんはまだ生きていますもの」

 

「‥‥」

 

「その理由は、十四郎さん自身が一番わかっているんじゃないかしら?」

 

「‥‥」

 

「それにあの娘の気持ちも‥‥」

 

「だが、俺にはそんな資格はねぇよ‥‥自分勝手に生きて、気ままに剣を振って悪人を切って生きて来た挙句、お前を捨てた‥‥『惚れた女にゃ幸せになってほしいだけだ』なんて大口叩いておいてあの様だったんだからな‥‥お前の死に目にも立ち会えなかったどうしようもない男さ‥‥」

 

「十四郎さんらしくありませんね、諦めるなんて」

 

「‥‥」

 

「少しでもあの娘の事が気になるなら、戻って下さい。十四郎さん」

 

「なんで、そこまで、俺の世話を焼く?俺はお前に何もしてやれなかったんだぞ」

 

「十四郎さんの言葉を借りるなら、『惚れた男にゃ幸せになってほしいだけ』‥‥ですよ。さあ、早く戻って下さい。あの娘は十四郎さんが助けに来るのをまっているんですから‥‥」

 

ミツバはとても嬉しそうに笑って、光の彼方へ消えていった。

すると、土方の目の前も真っ白い光に包まれた。

 

「ん‥‥」

 

土方が次に目を開けると、彼の目には白い天井が目に入った。

 

(‥‥此処は‥‥診療所か‥‥)

 

土方は周囲から漂ってくる薬の匂いから此処が病院であると気づく。

 

(‥‥やっぱ‥アイツの言う通り、俺は生きていたのか‥‥)

 

あの世とこの世の境界線でミツバに言われた通り、土方は生きていた。

ふと、視線を下げると自分の身体には包帯や点滴、輸血パック等の治療機材が着いていた。

自分の傷を見てあの朧とか言う男の言葉が土方の脳裏に蘇る。

 

(そのような物の代わりなど幾らでもいる)

 

(その娘の正体は人間ではない、戦闘機人と呼ばれる種族だ。早い話、精巧な絡繰り人形と同じ存在なのだよ)

 

(いや、ちげぇ‥‥アイツは絡繰り人形なんかじゃねぇ‥‥俺がこうして生きているのが何より証拠だ‥‥それにアイツは‥‥)

 

土方はあの時の市街戦‥‥ギンガが自分の心臓を突き刺した時の事を思いだす。

あの時、ギンガの紅桜は的確に自分の心臓を捉えていた。

しかし、紅桜の切っ先が刺さった瞬間、紅桜を持っていない左手が紅桜を持っていた右手をガシッと押さえていたのだ。

ギンガが左手で紅桜を持った右手を押さえた故、威力が減速され、自分の心臓は紅桜に貫かれる事がなかったのだ。

そして、ギンガは土方の心臓に紅桜を突き立てた時‥‥

 

(アイツは、泣いていた‥‥)

 

ギンガは紅桜に体を乗っ取られていたにも関わらず、左手で右手を抑え、無表情な筈なのに目からは涙を流した。

 

(アイツは決して、絡繰り人形なんかじゃねぇ‥‥アイツは‥人間だ‥俺よりも立派な人間だ‥‥)

 

土方がギンガの事を思っていると、

 

「ん?なんだ?土方さん、生きていたんですかい?」

 

沖田が土方の病室に入って来た。

ヘリで病院に運び込まれた時、看護師が土方の服の中から身分証明書を見つけ、そこから108部隊のゲンヤに連絡がいき、土方が病院に担ぎ込まれた事実をゲンヤ達は知る事が出来たのだった。

 

「あとほんの少し呑気にそこで寝ていたら介錯してやりやしたのに‥そうしたら真選組副局長の座は俺が継いでいたんですけど」

 

「うるせぇ!!お前なんぞに譲ってたまるか!!俺はお前より1分1秒でも長く生きてやる!!」

 

「トシィィィー!!生きていたか!!」

 

沖田に次いで近藤が入って来た。

 

「お?目が覚めたか?お前さん。発見された時、かなり危ない状態だったんだぞ」

 

最後にゲンヤが土方の病室に入って来た。

 

「おやっさん‥‥部隊の長がバイト(嘱託)の見舞いに来る余裕なんてあるんッスか?」

 

「そのバイト(嘱託)1人がやられて残るバイト(嘱託)連中が、仕事に身が入らなくて困ってな、お前さんから言ってもらいたいと思って来たんだよ」

 

ゲンヤが此処に来た理由を話したが、あくまでもそれは形式上の理由だった。

 

「それでトシ。一体何があった?お前さん程の奴が此処までやられるなんてどんな奴だったんだ?」

 

近藤が土方に一体誰にやられたのかを尋ねると彼の口からは意外な人物の名前が出てきた。

 

「‥‥ギンガだ」

 

『えっ!?』

 

ギンガの名前を聞いた近藤とゲンヤは驚愕したが沖田は、

 

「土方さん。一体あの娘に何したんですか?まさか、むりやりあの犬の餌(土方スペシャル)を食わしたんですかい?」

 

「お前と一緒にするな!!ちげぇよ‥‥紅桜だ‥‥」

 

「紅桜‥だと‥‥?」

 

「なんでアレがこの世界に‥‥」

 

近藤と沖田は紅桜の名前を聞き、顔を引き攣らせる。

 

「な、なんだ?その紅桜って‥‥?」

 

話についていけないゲンヤが紅桜について土方達に尋ねる。

 

「俺達の世界にあった妖刀です」

 

近藤がゲンヤに紅桜の事を話した。

とは言え、近藤も紅桜の事詳しくは知らないので、ゲンヤに全てを教える事はできなかった。

ただ、土方が朧から聞いた話をゲンヤ達に話した。

 

「ギンガちゃんが‥‥」

 

「ギンガ‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガが紅桜に体が乗っ取られた事を知り、近藤、ゲンヤ、沖田は意気消沈した。

 

「それで、ギンガの嬢ちゃんはどうすれば元に戻るんでぃ?土方さん」

 

沖田が土方に戻す方法を尋ねる。

 

「さあ、分からねぇ‥‥でも、俺はこんな事でアイツを諦めるつもりはねぇ‥‥アイツは‥アイツは俺が絶対に取り戻す。この命にかえてもな‥‥」

 

「トシ‥‥」

 

「土方さん‥‥」

 

「土方君‥‥」

 

3人は土方の決意に満ちた目を見て、

 

「ふん、相変わらず負けず嫌いですね、土方さんは‥‥剣の稽古‥必要なら相手になりますぜぇ‥‥」

 

沖田はフッと笑みを零し、土方が起きたと言う事で普段の調子に戻った様子で病室から出て行った。

 

「ギンガちゃんを取り戻すのは良いとして、今は療養に専念しろ。それではギンガちゃんを取り戻せんぞ」

 

「ああ‥‥あっ、ゲンヤのおやっさん」

 

「なんだ?」

 

「ゲンヤのおやっさん、ちょっと、アンタに聞きたい事があるんだが‥‥」

 

「ん?何だ?」

 

土方はゲンヤに話があると切り出し、チラッと近藤を見る。

近藤は土方の視線に気づき、

 

「じゃあ、トシも起きた事だし、俺達は仕事に戻るか‥‥」

 

近藤も土方が無事に目を覚ました事に安堵し、土方の意を汲んで、病室から出て行った。

2人が病室から出た後、土方はゲンヤに朧が言っていたもう一つの事を尋ねた。

 

「ギンガに紅桜を渡した奴が言っていたんだがソイツはギンガが人間じゃないって言っていたんだ‥‥おやっさん‥奴の言っていた事は本当なんですか?」

 

「‥‥それを知って、お前さんはどうする?ギンガを軽蔑するか?それとも助ける事を諦めるか?」

 

ゲンヤがドスの効いた声と鋭い視線で土方に尋ねる。

彼は決して侍ではないがその目からは侍並みの殺気を感じる。

これが父親の威厳なのだろう。

 

「関係ねぇ‥‥ギンガが人間だろうとなかろうと俺がギンガを取り戻す事に変わりはねぇ‥‥ただ、奴が言っていた事が本当なのか知りたいだけだ」

 

「‥‥本当だ」

 

ゲンヤは土方にギンガの出生について話した。

自分の妻で、同じく管理局員だったクイント・ナカジマが所属していた部隊が追っていた戦闘機人事件‥その最中、ある研究所で助けた2人の戦闘機人の少女達‥それがギンガとスバルだった。

その出生は謎で誰の命令でギンガとスバルが生まれたのかは未だに不明。

しかし、1つ判明した事は、ギンガとスバルの2人はクイントのDNAデータを基にして生まれていた。

当初は管理局の中に内通者かスパイが居るのかと疑ったが、結局その真相も分からず、どういった経緯があってクイントのDNAデータが外部に流出したのか分からなかった。

その後もクイントは戦闘機人事件を追いかけたが、ギンガが8歳、スバルが6歳の時に所属していた部隊は全滅しクイントも殉職した。

ギンガは今でもクイントの仇を執る訳では無いが、同じ戦闘機人として生まれた者として彼女も戦闘機人事件を追う為に管理局へと入ったと言う。

 

「‥‥」

 

(成程、だから戦闘機人が関わったとされるあの事件を必死に調べていたのか‥‥)

 

土方はギンガがカジノ船での事件に戦闘機人が関わった事でカジノ船の事件、そしてクイントが殉職した事件の資料を取り寄せ、読み漁っていた。

ゲンヤの話を聞きギンガのあの行動に納得した土方。

それと同時にゲンヤからギンガの出生を聞いた土方はギンガの事を見直した。

女ながらも己の中の信念を通すその度量と気概‥‥

 

(ホント、女にしておくには勿体ない奴だよ)

 

ギンガ本人が聞いたら怒りそうだが土方はだからこそ何が何でも彼女を取り戻してやると心の中で自分自身に誓いをたてた。

 

「土方君」

 

「ん?」

 

「ギンガの事をよろしく頼む」

 

ゲンヤは土方に深々と頭を下げる。

 

「ちょっ、おやっさん。大将がそう簡単に下っ端に頭を下げるな」

 

「いや、これは人としての礼儀だ‥‥部隊長もバイト(嘱託)も関係ねぇ」

 

「‥‥分かった。ギンガの事は俺に任せろ」

 

「ああ、俺の方でも紅桜についての情報を探ってみる」

 

ゲンヤは土方にギンガを託して、彼の病室を出ようとした時、

 

「あっ、ゲンヤのおやっさん」

 

土方がゲンヤを呼び止めた。

 

「ん?なんだ?」

 

「血が足りなくてちょっとクラクラすんだ。あと、腹が減った‥‥何か食い物をくれ。あっ、マヨネーズも忘れないでくれよ」

 

「ったく、お前って奴は‥‥」

 

ゲンヤは呆れながらも売店で食べ物を買ってきた。

 

バクバク‥‥ハムっ、バクバク‥‥

 

ゲンヤは土方が血液不足と言う事で肉と乳製品の食べ物を多めに買ってきた。

土方はゲンヤが買ってきた食べ物にマヨネーズをかけてバクバクと食べている。

 

「そんなに慌てて食うなよ、胃が受け付けねぇぞ」

 

「今は1分1秒でも時間が惜しい‥‥早いとこ調子を取り戻さねぇとな」

 

土方はそう言って再び食べ物にガッツク。

すると、土方の顔色が次第に悪くなった。

 

「ほら、言わんこっちゃねぇ、洗面器か?」

 

ゲンヤが呆れながら土方に尋ねると土方は、

苦しむ様な声を出しながら、

 

「ん?何だ?えっ?」

 

「食ったからもう寝る‥‥」

 

そう言って無理矢理口の中の食べ物を胃の中に流し込むとそのまま寝た。

 

「ったく、コイツは大物なのか馬鹿なのか分からんな」

 

ゲンヤは苦笑しながら、土方の病室を出た。

すると、

 

「お父さん」

 

「ん?スバルか‥‥」

 

土方の病室の前にスバルの姿があった。

 

「お父さん。あの人‥目が覚めたの?」

 

スバルとしては、直ぐに姉の行方を聞きたくて仕方がなかった。

 

「ああ‥‥」

 

「それじゃあ、あの人にギン姉の行方を‥‥」

 

スバルが土方の病室に入ろうとすると、

 

「待て、今はゆっくり休ませてやれ」

 

ゲンヤはスバルの腕を掴んだ。

 

「どうして!?お父さんはギン姉のことが心配じゃないの!?」

 

ゲンヤの行動にスバルは思わず声を上げる。

 

「心配していない訳ないだろう。アイツだって俺の大事な娘なんだ‥だが、ギンガは大丈夫だ」

 

「なんで、そんな事が分かるの!?」

 

「ギンガはきっと、アイツが救い出してくれると信じているからだ」

 

ゲンヤは土方の病室の扉をジッと見て、彼がギンガを救い出してくれると信じていた。

しかし、スバルはまだ納得していない様子だった。

 

 

それから数日後、傷が酷く直ぐには退院できない土方。

しかも病院は指定された場所以外の喫煙が出来ない。

土方は喫煙の為、中庭にでてベンチに座ると煙草が入ったシガーケースとライター、そして携帯灰皿を取り出す。

ギンガが今の自分を見たら、きっと小言を言って来るだろう。

そんな事が土方の脳裏を過ぎった。

 

「‥‥ギンガ」

 

土方は煙草に火をつける事無く煙草を咥え、シガーケースと携帯灰皿をジッと見る。

このシガーケースと携帯灰皿はギンガからの贈り物だった。

あれは、ギンガと共に張り込みをして居た時、

 

「もう、土方さん、張り込み中ぐらい、煙草を止めて下さい。煙や火で犯人にバレます!!」

 

「そんなヘマはしねぇよ」

 

「って、土方さん!!煙草ポイ捨てじゃないですか!!ちゃんと携帯灰皿ぐらい持ち歩いてください!!」

 

「ああ、次から気をつける」

 

「もう、こんなことだろうと思いまして、私が買っておきました」

 

ギンガは土方に携帯灰皿を渡した。

今、土方が手にしている携帯灰皿はその時のモノだった。

そしてシガーケースは以前、ギンガと共に私服を買いに行った帰り‥‥

 

「これ/////あの...よかったら使ってください。」

 

顔をほんのり赤く染めて自分にシガーケースを差し出すギンガの姿が土方の脳裏によみがえる。

咥え煙草をして、空を見ていると、

 

「あ、あの‥‥」

 

土方は、声をかけられた。

 

「あん?」

 

声のした方を見ると、其処には短髪の青髪の少女が立っていた。

 

「お前さんは?」

 

「スバル・ナカジマです。ギン姉‥いえ、ギンガ・ナカジマの妹です」

 

「‥‥そうか‥すまなかった‥お前の姉ちゃんをみすみす敵の手中におとしちまって‥‥」

 

「い、いえ‥‥土方さんは怪我をしてまで、ギン姉の為に戦ってくれたって、お父さんから聞いて‥‥その‥‥私達の生まれも知っているって‥‥それであの‥‥」

 

「お前さん達姉妹がどんな生まれかなんて、俺には関係ねぇ‥俺は只、奪われたモンを取り返す‥‥それだけだ‥‥だから、お前に言えるのはこれだけだ‥‥お前の姉貴は俺が必ず救い出してやる」

 

そう言って、土方は懐に煙草とライター、携帯灰皿を仕舞い、スバルの頭を撫でて病室へと戻って行った。

 

「‥‥」

 

立ち去って行く土方の姿を見て、スバルは確信した。

自分の姉が‥‥ギンガが惚れた男の人は彼なのだと‥‥

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

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