さやかに生えてほむほむが頑張る話《完結》   作:ラゼ

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あけましておめでとうございます。

え、しゃるてぃあ? 年内完結? すいません、ちょっと何言ってるか解りません…


二心

 近未来都市ならではの斬新かつ機能的な一軒家、鹿目ホーム。最近ではそこまで珍しくなくなった女性が働き男性が家事を行う、近代的な性別役割分業制の家庭である。長男長女の二人姉弟であり、夫婦仲も姉弟仲も良好な理想的な家族と言えるだろう。

 

 数年前にアメリカに家族で渡米し、最近になって戻ってきた――まどかに関していえば、いわゆる帰国子女というやつである。とはいえ感性も生活様式も完全に日本に馴染んでいるのは、そもそもアメリカに関しての記憶は『記憶』でしかなく、体験を伴わないものであるからだろう。

 

 新居の筈なのに随分と慣れ親しんだ古巣のように感じるリビングで、まどかは帰ってきてから数度目になるため息をついた。

 

「はぁ…」

「まーたため息ついてるよまどか。学校でなんかあったのかい? それともいまいち馴染めなかったとか?」

「え? あ……ううん。友達もできたし、みんな仲良くしてくれてるよ」

「ふーん……となると恋の悩みかねぇ。さっそくまどかのファンができてラブレターでも寄越してきたかな」

「ち、違うよぉー!」

 

 図星をさされたように慌てるまどかを生温かい目で見つめて、一人娘の成長を嬉しがる詢子。手紙なんぞで告白してくる輩は振ってよし、と草食系男子の希望を打ち砕くアドバイスを娘に授ける。

 

「本当に違うんだってばー」

「ほほう、そうかな? ならそのリボン誰に貰ったんだい?」

「こ、これはその…」

 

 娘が新しいリボンを付けているのを目敏く発見した詢子。娘が選んで買ったにしては少し派手すぎるそれは、しかし非常に良く似合ってもいた。センスが良く、かついきなり贈り物から入る積極的な少年が娘に惚れたとなれば母親にとっては朗報だろう。

 

「…ねぇママ」

「ん、なんだい?」

「その、ね…? やっぱりいきなり抱き着かれたりしたら……その、そういうことなのかなって」

「なぁにぃー!? そりゃ積極的なんじゃなくて軽薄だろう!? どこのどいつだい、うちの娘に手を出す勘違い男は!」

「う、ううん。女の子なんだけど…」

「…なんだ、そりゃ単なるスキンシップじゃないのかい。あっちでも感激したら誰彼構わず抱き着く奴はいたじゃないさ」

「でも、ここ日本だし……それにこのリボンもその子が付けてたやつだし…」

「へぇー…?」

 

 それは確かにおかしいな、と唸る詢子。そして自分の娘も少し『おかしい』と。話している様子からは嫌悪など感じられず、そもそもそのリボンを着けている時点で憎からず思っているのは間違いないだろう。まあ娘の性格からして、気を使って使い続けている可能性も否定はできないが。

 

「なのにね、今日保健室でさやかちゃんと抱き合ってたの! さやかちゃんもさやかちゃんだよ! 私にあの子と関わるななんて言ってたのに、自分だけ…!」

「…こほん。んん…?」

 

 あれ、娘がいつのまにか白百合で百花繚乱になってる、と冷や汗を流し始めた詢子。というかさやかちゃんって誰だと突っ込みを入れようとしたが、なおもぶつぶつと愚痴りながら憤慨している娘に気圧されて沈黙する。

 

 まるで浮気されて怒る彼女のようだ。だいたいなんだその百合修羅場は。もしかして見滝原中学に編入させたのは間違いだったのだろうかと、天井を仰ぐ。

 

「あー……まぁ、ほどほどにね。色恋に性別は関係ないけどさ、刃傷沙汰だけは勘弁してよ? 『まさかうちの子が…』とかやりたかないからさ」

「べ、別にそういうんじゃないよ! ただ、ほむらちゃんとは初めて会った気がしなくて……それにリボンも。渡された時に『返す』って言ってた気がするの…」

「ふぅん? ならもしかして、あっちに行く前の友達だったんじゃない?」

「そうかなぁ…」

 

 『返す』という言葉も、既知であるかのような振る舞いも、確かにそう考えれば納得できるものがある。しかし所詮は数年間の在米だったのだ。流石に小学生の時の友人を忘れているなどということはないだろうとまどかは首を捻る。特にリボンを渡すような親しい友人など忘れよう筈もない、と。

 

「このリボン、持ってたような覚えもあるの」

「うーん、あたしもまどかに選んであげたような気がするんだよねそのリボン。ということはぁ……久しぶりの再会で感激して抱き着いたのに、自分のことを忘れられていたその子が、悲しくてさやかちゃんとやらに慰められてたとか?」

「えぇ!? うー……そうなのかな…? なら私、ほむらちゃんにすごく酷いこと…」

「いや、ただの想像だからね? 気になるんならちゃんと聞きなよ。もしそうだったんならしっかり謝って、また友達になってくださいってお願いすりゃいいのさ。その子のこと嫌いじゃないんだろ?」

「うん。すごく大切な友達……だと思う」

 

 頬を染めながらそんなことを言うまどかに、またもや冷や汗をかき始める詢子。とはいえ多感な時期でもあるし、無理に抑えつけても良い結果にはならないだろうと静観する心積もりである。中学生の恋愛など麻疹のようなもので、けれどそれが最後まで続くならそれはそれで本物だろう。

 

 前者なら自然となるようになる。後者なら応援してもいい。アメリカの一部の州に関しては結婚できるようにもなっているし、本気で愛し合っているなら性別は関係ないというのも詢子の本音だ。

 

「ま、貰ってばっかりもあれだし……明日買い物にでも行こうか。そのほむらちゃんて子にプレゼントでもすればいいのさ。なんならお揃いのリボンでも買っちゃえば?」

「え、えぇー? 恥ずかしいよ…」

「はいはい」

 

 恥ずかしいと言いつつ、まさに名案を聞いたとでもいうような表情だ。子供は親の知らないところで成長するものだな、と複雑な気持ちで自室へいそいそと向かうまどかの後ろ姿を見送る詢子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見滝原という土地は、都市全体がモダンな雰囲気を漂わせるシャレオツな街である。全面ガラス張りで、変態が造ったんじゃないかという見滝原中学を筆頭に防災施設や喫茶店に至るまでやたらとガラスが多いのだ。そんな街の一角にある洒落たカフェで、まどかは母親と一緒にお茶を楽しんでいた。先日約束した通り、リボンを買いに来たのだろう。ついでとばかりに普段仕事で忙しい母親との貴重な時間を楽しんでいるのだ。

 

「ふいー、ちょっと疲れちゃった」

「リボンに時間かけすぎだよ……何軒回るんだか」

「えへへ…」

 

 ほむらへと送る予定のリボンを吟味し、何軒もはしごしてようやく納得できるデザインを発見したのだ。自分が着けているものと少し意匠が似ているそれは、見ようによってはお揃いのようにも見えるかもしれない。どちらかというと男性的でさばさばとしている詢子は買い物も男性らしく即断即決であり、故にやたらと連れまわされた現在少々グロッキーになっていた。

 

 そして頼んでいたメロンソーダとコーヒーが配膳され、いざ口にしようとストローを加えるまどかであったが――自分の座っているソファー席の後ろ、頭がギリギリ見えるか見えないか程度の低い壁で隔てられた後ろの席から、耳に覚えのある声が聞こえてきてピクリと反応する。

 

 どうしたのかと問い掛けてきそうな雰囲気の母親を目で牽制して、少し頭を下げて会話に耳をそばだて始めた。

 

「いやー、取り合えず街を散策しては見たもののまったく意味ありませんでしたなー……はっはっは」

「何を笑っているの。あなたの問題でしょう」

「はは――はぁ……だよねー。ほんと何が原因なんだろう…」

「普段の行いじゃないかしら」

「ど、どういう意味?」

「宿題はしない、授業では居眠り、テストは赤点」

「そ、そんなんでこうなったら今頃世界は女の園だよ! それに宿題はちゃんと提出する時もあるし!」

「志筑仁美の宿題を丸写しで?」

「うぐぐ…」

 

 そこには仲良く二人でお出かけ中、とでもいったようなさやかとほむらの姿があった。嘲るように揶揄ってくる少女に対し、両手を上げて反論するもう一人の少女。内容はともかくとして、その雰囲気は険悪どころか気の置けない仲であることがよく伝わってくるやり取りだ。簡単に言い表すならば……そう、後ろの席で会話を拾っているまどかの顔が、女の子がしてはいけない顔になっているレベルである。

 

 下唇を噛み過ぎて富士山のようになっている口元は、信頼していた部下に恋人を寝取られた女のようだ。実際、割とその通りである。記憶は無くとも魂が叫んでいるのだろう。

 

「ぐぎぎ…」

「ま、まどか?」

「弓……弓はどこに置いたっけ…」

「おーい」

 

 アルティメットゴッデスボウを無意識に探すまどか。どう考えてもオーバーキルだが、間女を制裁するには丁度いいと暗い笑みで呟く。母親としては気が気でなくなるのも当然だろう。もう見ていられないとばかりにトイレへ避難したのも、当然といえば当然だったのかもしれない。そんな母親を尻目に、まどかはひたすらに聞き耳を立て続ける。

 

「はー……もしかしてまどかがなんかしたのかなぁ」

「馬鹿も休み休み言いなさい。今あの子はなにも覚えていないし、そんなことできる筈もないでしょう」

「まぁそうなんだけどさ……でもあんたのやりかたって結構ガバガバじゃん。まどかだって普通に思い出しそうになってたし」

「う…」

「もういいじゃん、思い出してもらったって。みんなぜーんぶ思い出してさ、みんなで仲良く円環いき~って感じで! 円環で円満! なんちゃって」

「あなたの寒い洒落はいまに始まったことではないけど、それで殺意が芽生える人が居る事をなんでわかってくれないの?」

「そこまで言う!?」

 

 そこまで言わせたのはお前だと、冷たい目線でさやかを見据えるほむら。昨晩から何かにつけて一緒に円環の理に戻ろうと言うさやかに少し鬱憤が溜まっていたのだ。というか自分はまだ一度も死んではいないのだから、それは一緒に死のうぜと誘われているようなものである。そもそも『円環の理』というのはマミが勝手につけていた名称であるというのに、公式のような扱いになっているのはどういうことなのだと疑問を呈する。

 

「だいたいその『円環の理』っていうのは誰が決めたの? マミが言い出したのは覚えているけれど、言い出す前にその存在があったのだからおかしいじゃない」

「え? 正式名称はマミさんだよ。まどかが私の消える瞬間を見守ってくれてて……で、き、消えた時にマミさんが、え、『円環の理に導かれて…』って言ってたから、だから、ぶふっ! …そこで、き、決まったの……くひゅっ」

「そういえばあの子も自分の魔法少女姿を絵に描くような子だものね。マミに影響されるのも仕方ないのかしら……く、ふっ……こほん!」

「…………『逝ってしまったわ…』」

「…や、やめなさい」

「『円環の理に導かれて…』」

「やめっふ!」

「どやぁぁん!」

「――っ! くぅ、ぶふっ!」

 

 先輩を先輩と思わぬ二人のやり取り。もしここに彼女が居れば、ティロ・フィナーレが炸裂していたであろうことは間違いない。そしてマミの他にも微妙にディスられていた少女はというと、さやかとほむらの会話の端々に挙がる言葉が脳内でリフレインし、何かを思い出しそうで目を瞑っている。

 

「にしてもさー…」

「なによ?」

「一つ納得できないことがあるんだけど」

「だからなに?」

「いや、まどかの力を裂いて奪ったとは言うけど……どうやったのさ? よく考えたらありえなくない? 四トントラックが突っ込んできたからプラスドライバーで分解して事なきを得たくらいにぶっ飛んでない?」

「…?」

「いやいやいや、だからさぁ――」

 

 たかが一魔法少女が、神の如き存在を裂いて力を奪う。控えめに言っても有り得ないだろう。何がどうなるかも解らないのだから、事前準備や練習もへったくれもないというものだ。一般的な例に当て嵌めてみれば、そうだ。キリストが目の前に降臨したから二つに裂いたった――そんなレベルの暴論であり暴挙である。まったく一般的ではないが。

 

「さあね。月並みな言い方をするなら、執念が勝ったというところでしょう。自分でも無我夢中でよく解らなかったもの」

「『この瞬間を待ってた――!』とか言ってたのに?」

「それはノリよ」

「ノリなのかよ!?」

「強い想いが実を結ぶなんてことはよくあることでしょう?」

「ふぅん……『愛』ってやつ?」

「ぶっ――! な、なんで…? あ、あなたまさか…」

「いや、私だけじゃなくってみんな聞いてたと思うけど。改変されかけの世界中に響いてたよ。『希望より熱く、絶望より深いもの……愛よ!』って言っ」

「わああああぁぁぁ!」

「愛よ! って言ってたの」

「言い直さなくてもいいでしょう!?」

「ほむらってテンション上がると結構とんでもないこと言うよね」

「ぬうぅぅぅ…!」

 

 ほむらに限らず、どんな人間でも精神状態が高揚していると言動がおかしくなることもあるだろう。代表的なものでいえば勿論マミの『アレ』だ。時間が経って落ち着けば後悔し、年月が経って分別がつけばやはり後悔する。いわゆる黒歴史というやつだろうか。

 

 そのことでちくちくとほむらを揶揄うさやかであったが、よくよく見れば彼女の顔にはどことなくぎこちなさが浮かんでいる。それは、そう――小学生が、好きな人と話しながらその人の意中の人物を探るような時の雰囲気にも似ている。

 

 『愛』とはどういう『愛』を指すのか。親愛か、それとも――

 

 ――それでも彼女には核心を問う事ができない。それができるような人間であったならば、彼女は女神のカバン持ちになることもなかったから。

 

「…ほむらってさ、あたしの――っ、えっ!?」

「どうし――っ、しまっ…!」

 

 それでも少し勇気を出して自分と彼女の関係性を明確にしようと問いかけようとした、その時。彼女達の周りが、それどころが周囲の全てが歪み、渦を巻き、大きな何かが解放されるような波動が広がっていったのだ。勿論その発生源は原初の女神。記憶と共に、神の力すらあるべきところに戻さんと世界の理を書き換えていく。

 

「まどか! くぅっ…!」

「――――そうだ、私思い出さなくちゃいけないことが…」

「させ、ない…っ!」

 

 カフェを中心に解放され改変されようとしている世界。けれど、まだまだ悪魔はそれを認めない。たとえ女神の側付きに少し絆されていようとも、ここ数日で人間の心を取り戻してしまったとしても。彼女が生きる意味そのものを簡単に手放す訳はない。

 

 広がる衝撃を耐え、あるのかも解らない床を全力で踏みしめる。力の限り跳ね、女神をその腕に抱きすくめた。記憶も力も、何もかもを忘れさせるために。何よりも大事だからこそ、誰よりも酷い所業を彼女は厭わない。

 

「あ――あれ? えっと……きゃっ! ほ、ほむらちゃん!? え、えと…」

「…」

 

 そして力を封じ込め、まどかの覚醒を防いだ瞬間。そこには公衆の面前で抱き合っている少女達の姿が残っていた。ほむらはなんとか間に合ったと脱力し、その事実に気付いていない。まどかからすれば急に意識が遠くなり、気付いたら気になっていた少女に抱きしめられていたのだから頭が真っ白になるのも仕方ないだろう。

 

 じろじろと視線が彼女達に向かい、そしてトイレから戻ってきた詢子は遠目からその動向を見守っていた。そしてまどかが少し落ち着きどうしたものかと周りに目を向けると――友人である美樹さやかと目が合った。

 

「…」

「…」

「…てぃひひ」

「っ!」

 

 つまり、修羅場である。そう、悪気は無い――無いのだが、確かに鹿目まどかは美樹さやかに対して勝ち誇ったような笑い声を零してしまった。悪意もなければ意識的にそうしたということでもない。しかし、それは間違いようもなく宣戦布告の合図であった。

 

「ほむら! いつまで抱きついてるのさ!」

「えっ……あ、ええ。ごめんなさい鹿目さん。ふらついていたところを抱き留めてもらって、助かったわ」

「あっ…」

 

 怒ったように叫ぶさやかの声に驚き、我を取り戻すほむら。たまたまふら付いていたところを助けてもらったということにして場を濁す。記憶を書き換えた瞬間は前後の行動も基本的にはあまり覚えていないため、これで押し通すつもりのようだ。離れた瞬間の、まどかの名残惜しいような声を気のせいにして彼女はさやかの方へ戻る。

 

 ――否。戻ろうとしたが、まどかに腕を掴まれて戻れなかったというほうが正しいだろう。

 

「ま、また倒れたら危ないから! ね?」

「え、あ、あの……まどか?」

 

 突然の行動に目を見開いて戸惑うほむら。自らの腕を抱きしめるまどかの様子に、驚愕と少しの喜びをもってしどろもどろになる――が。当然そんなまどかの行動をさやかが黙ってみているわけもない。つかつかと二人の方に歩み寄り、空いているもう片方の腕を掴んだ。

 

「やー、ありがとねまどか。ほむらちょっと具合悪いみたいでさ。つき合わせちゃってごめんね、もう帰ろっか。『今日も』泊まるね? 看病したげる」

「ふぇ? ちょ、さや――」

「そうだほむらちゃん! このリボンのお返しにね、お揃いのリボン買ったんだ。着けて……くれるよね?」

「ひゃ、ちょ、まど――」

「まどか? ほむらは具合悪いって言ってるでしょ? そろそろ腕放してくんないかな」

「さやかちゃんこそ。ほむらちゃん迷惑そうだよ?」

「そんなわけないじゃん! そっちこそほむらが困ってるの解んない?」

「そんなことないもん!」

「お、おち、落ち着いて二人ともぉ…」

 

 一方が自分の方に抱き寄せれば、もう一方が無理やり引き戻して自分の方に抱き寄せる。これだけ思われればほむらも本望だろう。今の彼女はまさに大岡裁き状態。ぐいぐいと両方から引っ張られ、がっくんがっくんと体を揺らしている。驚き7割、羞恥が2割、残りの1割は困ったという感情とちょっとにやけそうになる感情が混ざっているようだ。

 

 あるいはそんな風に少々邪なことを考えていたからこそ、この後の悲劇が起こってしまったのかもしれない。

 

「ほむらはあたしと帰るの!」

「ずるいよ! ほむらちゃんは危険な人だなんて言ってたのに、酷すぎるよさやかちゃん!」

「痛い痛い痛い! 二人とも放して!」

「むぅー…!」

「ふにゅ…!」

「ほんとに駄目…! わ、私が裂けちゃう!」

「あっ」

「えっ」

 

 因果応報という言葉がある。自分がしでかした行いは、結局自分が尻拭いをしなければいけない……または自分に返ってくる、という言葉だ。ほむらが女神であるまどかの両手を握り彼女を裂いたように、今彼女は百合修羅場によって裂かれたのだ。

 

「ほむらー!?」

「ほむらちゃん!?」

 

 まどかはほむらによって裂かれた際、何も知らない普通の少女鹿目まどかと、女神の力そのものとしての鹿目まどかの二つに分かれた。そして普通の少女はそのままに、女神の方は彼女のダークオーブに力ごと封印されたのだ。しかしさやかもまどかもダークオーブなど持ってはいない。つまり結果として今ここに、悪魔の力を持ったほむらと普通の少女暁美ほむらの二人が同時に存在することとなった。

 

「つ……いったい何が…?」

「ひぅ……あれ? なんで私、二人…?」

 

 なんとも、やっかいな騒動はまだまだ続きそうである。

 




本当なら今頃10億円当たって仕事辞めてる予定だったのに、年末ジャンボのやろうめ…

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