ショーン・ハーツと偉大なる創設者達   作: junk

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第6話 2つの自分

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 男が泣いていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 否、それは慟哭であった。

 地面に臥して泣き叫ぶ。その姿は己の無力さと起こってしまった過ちへの嘆きがそのまま形になった様で――。

 

「お前ええええええええええ!

 分かるだろ、なあ!? やっちゃいけないこととやっていいこと! わかれよ、そのくらい! 線引きをするだろ、普通! どんな馬鹿ガキだってする当たり前の線引きっ!! なんで引かない!!!」

 

 ――だからこそ。

 ショーンは爆笑した。

 

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!

 ば、バカだ! くはっ! お、おまえ、その姿! ぶはははははは!」

 

 牢屋の中で笑い転げるショーン。

 ついには笑いすぎるあまり酸欠になって咽せて、カローを見てはまた笑って、そうして3周くらいしてからやっと治った。

 

 ――呪い。

 呪いは反対呪文を唱えなければ打ち消すことができない。

 しかしアバダ・ケダブラに代表されるいくつかの呪いには反対呪文がない。

 これはひとつの事実を示していた。

 

 そう。

 帰ってこないのだ。

 『悪霊の火』によって燃やされたカローの髪の毛は。

 

 シャワーを浴びようとカローが蛇口を捻ったとき。

 出てきたのは『悪霊の火』でした、ありがとうございます。

 

 悲劇の発端は地下牢の近くにたまたまパイプが通っていたことか。

 『秘密の部屋』によく出入りするショーンがパイプの構造をよく把握していたことか。

 昨日、ショーンが招いた客人がたまたま『悪霊の火』の使い手だったことか。

 

「ふあぁーー……なによ、朝からうるさいわね」

 

 ブロンド・ヘアの美女がベッドから出てくる。女は騒ぐカローを不愉快そうに見た後に、ハゲた頭を見て、心底軽蔑した顔をした。

 

「な、なんだその女は! 遂に女まで連れ込みやがったのかテメェ!」

「そうだ。何か問題あるか?」

「問題しかないだろ! 牢に女を呼ぶ奴がいるか! だいたい、ホグワーツに部外者を入れるなよ! 俺たちだって理事会を掌握したりして手続きは踏んでるんだぞ、それをお前は!! 『死喰い人』の上を行くアウトローをするな!」

「チッチッ。お前が勝手に俺の下を行ってるだけだ」

「クタバレ!」

 

 結局、カローは悪態を付いて帰って行った。

 あれから毎日色々な方法でショーンを懲らしめようとしていたが、あまり良い成果が出てるとは言えなかった。

 たまにこうして腹筋が痛くなるくらいの被害しかない。

 

「……上手いやり方ね」

「カローが? そうか??」

 

 少なくともショーンにはそうは思えなかった。

 いくら魔法を跳ね返すと言っても、相手は牢屋にいるのだ。ショーンなら100は嫌がらせを思いつく自信があった。

 

「あなたよ、あ・な・た。自分にヘイトを向けさせることで他の生徒を守ってるんでしょう。牢から出ないでよくやるものね」

「俺くらいになるとな、学校一の人気者になるくらいわけないのさ」

 

 感心した様子を見せた美女――フラー・デラクールは杖を振って手早く身支度を済ませた。

 

「あなた、ガール・フレンドがいなかったかしら? こんな美女と一緒にいる所を見られたら不味いんじゃないの」

「あーー……別れたよ。振られた。夏休みの間に手紙でな」

「あら。それはごめんなさいね」

 

 こんなに悪びれた仕草のない謝罪はジニー・ウィーズリー以来だった。

 

「もう少し気を遣えよ」

「だって、あなた全然堪えてる様子がないんだもの」

「まあ……色々なことがありすぎてな。些細なことに思える。というか“こうなって”からあまり感情が湧かない」

「それは脳が魔力で圧迫されてるからよ。脳の容量は決まってて、感情と魔力は同時にそれほど詰め込めないの」

 

 そう言われてみるとダンブルドアやマクゴナガル先生、セブルスあたりの熟練した魔法使いほど感情が薄い様な気がした。

 もっとも、マクゴナガル先生だけはクィディッチのこととなると途端に魔法力がなくなる様だったが。

 

「手紙にはなんて書いてあったのよ」

「『ハリーとロンと命懸けの旅に出ることになりました。どう考えてもあなたは連絡がマメな方じゃないし、遠距離は無理だと思うの。だから別れましょう。一年後にお互い生きてたらまた話し合いましょう』だってさ。

 ダンブルドアに『恋人からの手紙を預かっておる。いやはや、恋とはなんとも素晴らしい魔法じゃ』とか言いながら渡されて読んだらそれだぞ。空気が死んだわ」

「なるほどねえ……どんな旅に出てるの? 他に、あなたのお友達も姿が見えないようだけど」

「それぞれダンブルドアの指令で動いてるよ。ハーマイオニー御一行はヴォルデモートを倒す材料集めをしてる」

 

 他にもジニーなんかはヌルメンガードに行ってるよ、とショーンは説明した。

 

「ダンブルドア本人はヴォルデモートの呪いを受けて死にかけてる。俺が作ってやった賢者の石と不死鳥の涙があれば時間は掛かるけど治せるらしいから、しばらくは身を隠すとよ」

「それで自分の手の代わりにあなた達を使ってる、というわけね」

「まあ、そういうわけだ。信じられるか? あいつ校長のくせに自主休校を勧めて来やがったんだぞ」

「あら。マダム・マクシームは授業中でもブティックに連れ出したわよ。校長の中だとまともな方だと思うけれど」

 

 ショーンは肩をすくめた。

 

「それで、私を呼んだ本題について話しましょうか。まさかあの塩揉み野菜みたいな男の髪を燃やすために呼んだんじゃないでしょう」

「いや、実はそうなんだ。もう帰っていいぞ」

 

 フラーは思いっきりショーンの脛を蹴り上げた。

 女性のヒールの先端が恐ろしい凶器だということをショーンは身を持って知ることとなった。

 

「オーケイ、オーケイ。話をしよう。話し合いだクソッタレ。まったく、どうして世の中の人間は話し合いで解決出来ないんだろうな。暴力で解決ってのは最低だぜ」

「いいから、ピョンピョン跳ねるのをやめなさい。見てて楽しくないわ」

「楽しませようと思ってるわけじゃない。こうしてないと脛の中の骨が飛び出しそうなんだ」

「……はあ。こんな馬鹿だったかしら」

 

 散々な言われ様だった。

 ハーマイオニーもジニーもいないのに、まさかこんなに罵倒されるとは思っても見なかった。

 ショーンとしては、ちょっと『死喰い人』に占拠されただけの平和なホグワーツだと思っていたのに。

 

「フラー、お前は『ヴィーラ』の血が流れてたな」

「何よ今更。知ってるでしょう」

「確認だよ。それで、俺の見立てだとお前は『ヴィーラ』の力をコントロールしてる。『ヴィーラ』は男を魅了する闇の魔法生物だ。けれどお前はそれを抑えてるし、ダンス・パーティーの時なんかは逆に魅了してた」

「そうね」

「けれどそれは天性のものではないはずだ。妹――ガブリエルはそこまでコントロール出来ていなかったからな。つまり、何かしらの訓練を受ければ力をコントロール出来るんだろう。そして君にはそれが出来る」

「よく見ていると褒めてあげましょう。で、本題はなんなのよ。ストーキングの成果発表がしたいわけじゃないでしょう」

「いや、実はそうなんだ。もう帰っていいぞ」

 

 脛。

 ヒール。

 ピョンピョン。

 

「俺の中にも闇の魔法生物の力がある。それをコントロールする方法を教えて欲しい」

 

 そうなのだ。

 今は幽霊達がショーンの魂に『呪い』をかけて弱らせているが、実際のところ、いつ世界を滅ぼす『闇の帝王』になってもおかしくない。それはあまり良いことだとは言えなかった。核ミサイルの発射ボタンを持ちながら散歩するのを楽しめるほどショーンはギャンブラーではなかったのだ。

 

「なるほど……結論を言いましょう。私に出来る限りの手助けはするけれど、確約は出来ないわ」

 

 それは、いつも余裕たっぷりな顔ばかりしているフラーにしては珍しい、思慮深げな顔だった。

 

「闇の魔法生物の力のコントロールは魔法の練習よりもかなり難しいわ。先ず、理論的じゃないのよ。自己との対話や精神的な強さ――そう言った感覚的な部分がかなり多くなってくるの。

 だから私がやった方法を話して、それをあなたに真似させることは出来ても正解かどうかは分からない」

 

 それに、とフラーは付け加えた。

 

「あなたの中にある“それ”は人類の手に負えるモノではないのかもしれないわ……イギリスに入国した時から私の中の『ヴィーラ』が叫んでるのよ。あなたの“それ”は闇の魔法生物の王なのでしょうね」

「知ってるよ。知った上で俺は頼んでる」

「そう……まあいいわ。それじゃあ早速始めましょうか」

 

 フラーは杖を振ってチェアを2つと小さな丸テーブルを出した。

 フラーもショーンも足を組んで座る。

 ただ、フラーが膝を重ねたのに対してショーンは頭の後ろで組んだ。

 

「今から私の過去を話すわ」

「嬉しいね。初体験はいつ?」

「殺しの初体験を今から始めてあげましょうか」

 

 ホグワーツ流のジョークはあまりフランスでは流行らない様だった。

 

「物心ついた子供の頃――そう確か――5歳くらいの頃ね。

 私は近所の男の子に襲われかけた。その子供はまだ性知識がなかったけれど、私の『ヴィーラ』に誘惑されて本能のまま私を犯そうとした。

 けれどそれがいつか来るだろうと思っていた母によって防がれたの。

 これが私の最初の覚醒よ」

 

 何というか、例えば子供同士で戯れあっているときに手が目に入ってしまった時の様な、盛り上がっていたところに急に冷水を掛けられたような気まずさをショーンは感じた。

 

「ああ、黙らなくていいわ。もう吹っ切れてるし、慣れたことだから。むしろ気を使うならどんどん質問して欲しいわ。慣れたと言ってもあまり何度も話すことではないから」

「ありがとう。今のところ質問はない」

「それじゃあ続けるわね。

 今言ったようなことはその後何度もあったわ。同級生はもちろん、親戚の叔父さんや教師――酷い時期だと目があっただけの店員なんかもあったわね。

 とにかく身近な人がいきなり襲いかかってくるの。一時期私は男性不信になったわ」

 

 そりゃあなるだろうな、とショーンは思った。

 ショーンだってジニーに襲われたとき、しばらく『ジャングル』とか『コンゴ共和国』なんて言葉を聞くだけで震えたものだった。

 

「そんな時に母は、私を祖母の所に連れて行った。

 祖母は私の美貌をひとしきり褒めた後に、若い時の写真を見せてくれたの。私に似ていたけれど――これは今でも思うことだけれど――もっと堂々としていたの。

 写真の中で一緒に写る男達は跪いて祖母を称えていて、祖母は女王のように座っていたわ」

「今のフラーに近いな」

「今日初めての嬉しい褒め言葉ね。私は祖母に憧れて今の振る舞いをしているのよ」

 

 フラーは少し考えるそぶりを見せた。

 何か言いたくないことがあるのだろうと思ったが、しかしショーンはじっと待った。

 やがてフラーは口を開いた。

 

「それで、私は思ったの。例えば私を襲った教師はなぜ私を襲ったのか? だって彼には婚約者がいて立場もある。それを捨てることになるのに私を襲った。

 つまり、それだけ自分が魅力的だって思ったの。

 人ひとりの人生を壊すくらいの価値が私にはあるって。

 それじゃあ今のようにただうずくまっていたら勿体無い――祖母のように美しさで支配しようと考えたのよ」

 

 それからフラーは美しさに磨けをかけるようになったと言う。

 メイクやファッションを覚えて、仕草を研究し尽くした。すると今まで欲望の目で見てきた男達は――まるで完璧な彫刻を相手にしている様な――羨望の眼差しでフラーを見た。

 

「そしてその一人に私は命じた。

 跪いて、私の手の甲を舐めろ。

 牧師だった男は忠誠を誓いながらキスをした」

 

 フラーは手の甲を揺らしながらショーンに魅せた。

 それは子供の頃にかけっこで取った金メダルを見せる様な、恥ずかしい過去でありながら少しだけ自慢に思っている仕草だった。

 

 ショーンはちょっと笑った後に、手の甲に口づけをしようとして鼻頭をデコピンされた。

 

「何してんのよ」

「いやして欲しいのかと思ってよ」

「馬鹿ね」

 

 ショーンが肩をすくめて、フラーは足を組み替えた。

 

「私はこの美貌を――『ヴィーラ』の部分を好きになり始めた。いいえ、正直に言うと選ばれた者だとさえ思ったの。

 けれど妹が育ってきて、今度は違うことを考え始めた。

 私の美しさのせいで妹が危ない目に遭ったら……と思ったのね。ガブリエルは私と違って大人しい子だったから。それに、ううん、それも正確じゃないわね。

 

 あの子は私を尊敬してくれたの。ちょうど私が祖母を尊敬する様に。

 私の『ヴィーラ』ではない、人間としての『私』を好きでいてくれる。ならば私は『尊敬できる姉』でなければならない。果たして美貌だけで男を誑かして貢がせる女はあの子に取って良い姉だろうか? 私が尊敬する祖母の姿と私は同じだろうか?

 

 それは違うと思うと同時に、また『ヴィーラ』であることを誇っている私もいたの。

 尊敬される人としての私も大切だし、ファッションに詳しくて妖艶な仕草もできる私も大切。

 その2つの私を愛したとき、私は『ヴィーラ』の力を完全にコントロールしたのよ」

 

 そのとき、ショーンは不思議な感覚に襲われた。

 一方ではフラーのことを久しぶりに会う得難い友だと感じていて、

 他方では目の前の女を己の物にしたい性的な対象として見ていた。

 意図的にフラーがそう見せているのだ。それは正に、彼女が完璧に力をコントロールしている証だった。

 

「分かるかしら?

 確立した人間としての自分と、特別な力を持った部分とを共に愛してあげることが大切なの。

 あなたは人間としての――ユーモラスで他人を笑わせる自分が好き。自己の確立という意味でなら、あなたは私が見た人間の中で最も強い自我を持っているわね。

 けれど覚醒して日が浅いせいかしら、又は嫌なことでもあったのか……あなたは自分の『闇の魔法生物』としての部分を物凄く嫌悪してる。

 『ヴィーラ』なら異性を惹きつける力、『巨人』なら自然を愛する心。魔法生物にはそれぞれ本能がある。

 言ってみなさい。

 あなたの本能はなに?」

 

 この問いの答えを導き出すのは簡単で、しかし口に出すのは難しいことであった。

 目の前で夕日の角度が分かるくらいショーンは時間を置いて、ゆっくりと語り始めた。

 

「殺人衝動、破壊衝動――そう言ったものだ。

 今でも感じてる。

 初めて覚醒した時は本気で世界を壊す気だった。生きてる生命を全て壊して、地面を平らにしようと思ったさ。

 今の俺は夜も眠らない。むしろ夜の方が心地よいくらいなんだ。

 友達や恋人が近くにいなくて安心してる。ジニーと戯れあったら何かの拍子で殺してしまいそうだし、ハーマイオニーといたら女性としての尊厳を奪うかもしれないな。だから俺は別れ話をされてもそうショックを受けなかったんだろうな。

 もちろん、倫理的に良くないことだと分かってはいるけど、何処かで冷静な自分もいて――例えば、今フラーに襲いかかってグチャグチャに犯したとしても許してくれるだろう、とかどっかで考えてる。わざわざフランスから来て男と狭い牢の中に二人きりだし、そっちもその気だ――とね。

 前の俺なら思わなかったことだ。

 フラー、君の『ヴィーラ』と違って俺の“それ”にはいい所なんてないんだよ」

「それでも好きにならなければコントロール出来ないわ」

「どうやって? さっき言ったことを実践して見せようか? 本能に従った結果一人いい女を抱いたから好きになると?」

「それもいいかもしれないわね。

 あなたの言った通り、私にその気はないけれど、ある程度の覚悟はしてるわ。私は世界で指折りの美少女だから我慢できなくても仕方ないもの。

 ねえ、舐めないでくれる?

 あなたが思ってる以上に強い気持ちで、私はあなたを助けに来たのよ。でなきゃ手紙一枚で世界中のハンサムからの予定を断って、こんな狭い牢屋に来ないでしょ」

「……どうして俺のためにそこまでする?

 そりゃあ俺たちは友達だが、ここまでやるほど――あえて言うが――親友じゃないだろう。

 異性として俺を好きだって言うならまだ分かるが、君はそう言うんじゃない。

 なんでだ?」

「誇りよ。

 あなたは知らないでしょうけど、あなたは私の誇りを守った。

 それを返さないと、私は私が嫌いになる」

 

 フラーの言葉に嘘はなかった。

 

「言ったでしょう。

 私に出来る限りの手助けはすると。

 文字通りの意味よ。私の体で満足するならくれてやるわ」

 

 それはあまりに魅力的な言葉に思えた。

 けれどそれが同時に、ショーンは物凄く嫌だった。

 

「俺の両親がなんで俺に会いに来なかったと思う?」

「……」

「離婚してたんだ。

 俺を手放した罪悪感でギクシャクしたかららしい。

 この力がなければそんな事にはならなかった。

 それでもなお好きになれると思うか?」

「でもその力がなければあなたはホグワーツに来ることもなく、こうして世界一の美女である私とここで話していることもなかったわ。

 物事には良い面と悪い面があって、

 どちらかひとつだけを取るなんてことは出来ないのよ」

 

 ……ルーナ。

 ルーナが昔、同じ様なことを言っていた。

 母から良いものをいっぱいもらったけど、その分悪いことも付いてくると彼女は言っていた。

 その両方をルーナは受け入れていた。 

 

 同じように出来るだろうか?

 それは難しいことの様に思えた。事実、今のところは全然無理そうだった。

 

「……いっぺんに色々と話しすぎたわね。

 今日はもう寝ましょうか」

 

 気づくと夜になっていて、窓から差し込んでいたのは月光だった。

 

「――っと、今のあなたは寝ないんだったわね。まあ私は寝るから、襲いたければ襲ってもいいわよ」

「アホぬかせ」

「皮肉に切れ味がないわね。もしかしてあなた、攻めてる時はイケイケでも守りになると弱いタイプ?」

 

 ちょっと思い当たるフシがあるだけに、ショーンは何も言い返せなかった。

 

「心配しなくていいわ。私は褒め上手だから、明日からあなたを褒めて自分を好きにならせてあげる」

「褒め上手? そうは見えないけどな」

「あら。手を握りながら「あなたってハンサムね」って言えば大抵の男は有頂天よ」

 

 それはなんかちょっと違うだろう。

 ショーンは反論しようとしたが、頭まですっぽり布団を被ったフラーを見て止めた。

 そしてショーンは、月明かりを見ながらナルシストになる訓練を始めたのだった。





活動報告に昔書いたオマケの話を載せました。
暇で暇で死にそうな人がいたら読んでみて下さい。きっと暇だったことを後悔します。

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