ショーンの部屋は、コリンとの二人部屋だ。
部屋の中には実に様々な物が置いてある。
先ずはベッド脇に置いてある二つの大きな水槽。
これは釣ってきた魚の泥抜き用で、現在合計五匹の魚が入っている。
それと魚に混じって巨大なカエルが一匹。こっちは食用ではない――ペットだ。前にハグリッドから譲り受けたもので、名前をハロウィーンという。由来は特にないし、特技もなければ、ついでに可愛くもない最悪なペットである。
周りの人間――特にジニー――からはフクロウか何かを買い直した方がいいと言われているが、それでも……それでもショーンとコリンだけはハロウィーンを信じていた。なんかこう、いつか凄いことをしてくれると。賢者の石を守るとかバジリスクを倒すとか、冤罪の死刑囚を助けるとか、闇の帝王を倒すとかそんな活躍を。
続いて右手をご覧ください。
ステーキです。
ステーキの山です。
“理想とは……食べたいと思った時に肉が食べられる状態を指す。
ショーン・ハーツ”
そんな彼の哲学的思考の元作られた、雄大なステーキスペース。
壁一面、隙間なく鉄製のハンガーが生え出ており、そのほとんどに堂々とステーキが掛けられている。
また各種調味料も幅広く揃えられている……が、ショーンはニンニクなどの強いスパイスが苦手なため、ほとんど使われていないようだ。
更にステーキスペースには防腐呪文、保温呪文、防臭呪文が掛けられている。ちなみに、防腐呪文はショーン担当、保温呪文・防臭呪文はコリンが担当した。
学校の備品を(勝手に)借りて自分達で作った物なので、掛かった費用は0に近い。
その隣には、燻製器が置いてある。
ハグリッドのお手製で、ショーンが釣ってきた魚、猟ってきたジビエ用。
最早コリンの防臭呪文では防ぎきれないほど臭いを発しており、いつか隣の部屋から苦情が来るのではないかとビクビクしている。
対面には、コリンが製作した写真スペース。
コリンが撮った膨大な写真の数々が、年代や人物ごとにファイル分けされて収納されている。
普通の写真を動く写真にする加工もここでおこなわれる。
壁にはコルクボードが取り付けられており、お気に入りの写真が貼られている。
今はショーン・コリン・ジニー・ルーナのフォーショットと、オール・スター戦の時の記念写真、それとハリーとコリンのツーショット。
最後に「ハリー・ポッターを大統領に!」という旗を持った弟との写真が貼られている。両親が見たら泣くぞ。
しかし一年生の時はここにハリーの盗撮写真が加わったのだから、コリンも随分と大人になったものである。
後はテキトーに作った簡易キッチンやら箪笥やらなんやらが置いてある。
コリンはともかく、ショーンはほとんど服やおもちゃなどの私物を持っていないので、収納スペースはほとんど必要ないのだ。
しかし借りた学校の備品が数多くあるのでプラスマイナスゼロ……いや、ちょっとプラスか。
そして今――夜、寝る前。
いろんな物に囲まれたベッドに潜り込み、ショーンとコリンは寝ようとしていた。
「ねえ、ショーン。ちょっといいかな?」
「なんだ? いや、待て。当ててみせよう。ステーキ……ステーキ祭りか? ステーキ祭りだな!? いやっほほぉぉぉおう! 祭りだぁぁぁ!!! そぉーーれわっしょい! わっしょい!!!」
ショーンはベッドから飛び起きると、一旦全裸になってから、壁にかかっているステーキをひったくり、口の中に突っ込んだ。
ええぇ……。
「ふぅ」
ゴクン。
彼はステーキを食べ終わると、口を拭って服を着てからベッドに入り直した。
「それじゃあお休み」
「どうしよう、この10秒間が濃すぎてツッコミが追いつかないや」
「……」
「なに寝ようとしてるんだよ! ちょっといいかなって言ったよね、僕!」
「……すまん、静かにしてもらっていいか?」
「本気で寝ようとするなよ! もっと僕に構ってよ!」
「ほーらよしよしよし。それじゃあお休み」
「犬か! 僕は」
「はあ……。ふう……。えー…………、なに?」
「うわー、ダルそう」
ショーンはベッドから出て燻製されたチーズと鹿肉、それからワインを取った。
長年の付き合いだ。
あっ、この話は長くなるな、という事くらい分かる。
「で、なんだ?」
「うん、猥談をしよう」
「そうか、お休み」
明日は変身術と闇の魔術に対する防衛術が連続である日だ。
マグゴナガル教授はオール・スター戦の失敗以降俺に厳しいし、シリウスはやたらと当ててくる。大変な一日になりそうだ……。
「……君が昔フラーの盗撮写真を僕に依頼したのを、グレンジャーさんに言うよ」
「よっし! 猥談するか! 今日は寝かさないぞー」
せっかくの親友からのお誘いだ。
断るという選択肢はない。
しかしこいつ、なんでこんなに猥談したいのか。ハリーのファンだったり石像になったり、昔から変な奴だったが、最近益々頭がおかしくなっていってる気がする。きっとジニーの影響を受けたのだろう。おのれ、ジニー・ウィーズリー!
「ぶっちゃけさ、どうなの? グレンジャーさんとは。仲良いのは知ってたけど、割とあっさり付き合ったじゃん。あの人身持ちが固そうなのに」
「あー……、それか。まあお前には話してやるけど、他の奴には秘密だぞ」
「オッケー」
ピン。
ショーンは人差し指を立てた。
「先ず一つはな、酒だ」
「ええぇ……」
「あの日な、妖女シスターズのメンバーにしこたま飲まされて、死ぬほど酔ってた。それでこう、ムラっときたわけだ。近くには妖女シスターズとデラクール姉妹がずっといたからさ、抑圧されてたのが一気に来たんだな」
「それで勢いで、と。うーん、控え目に言って最低?」
「それだけじゃない!
二つ目に――これは多分向こうもそうだが――嫉妬したんだ。
俺はクラムに、向こうはフラーに。まあクラムはともかく、フラーはまったく俺には興味なかったが。
とにかく、「他人に取られるかもしれない」ってのが、俺たちを焦らせたんだな」
「なるほどね」
「第三に――」
ショーンは人差し指・中指・薬指を立てた。
「脚だ。俺は脚フェチなんだ。あのドレスから見える脚が魅力的でな……。それでつい」
ショーンはうっとりした風に言った。
「……ふーん、脚ね。まあ、いいんじゃない? その程度で満足出来るなら」
「なんだと……?」
「僕はね、おっぱい星人なんだ。おっぱい聖人と言ってもいい」
まるで将来の夢を母親に語るような柔らかさで、あるいは敬虔な女聖徒が聖母像に朝の挨拶をするような清らかさで、コリンは語った。
「おっぱいに貴賎なしというけれどね……僕は大きければ大きいほどいいと思うんだ。だってそのぶん、愛でる部分が大きくなるって事だからね」
「……コリン、俺はな貧乳好きなんだ。巨乳は、着衣の時のバランスがどうも悪く感じる」
「へえ、そうかい……」
二人の間に鋭い空気が流れる。
――性癖が違う。
武道に於いて三つ段位が違えば生物が違うというが、それは性癖にも当てはまる。
性癖が違えば、生物が違う。
つまりそういう事だ。
「クルーシオ!」
「アバダ・ケダブラ!」
「悪霊の火よ!」
「何かこう、すごい奴!」
「モモ蹴り!」
「目潰し!」
「ステューピファイ!」
バーン!
コリンは失神呪文を受け、ベッドに倒れ込んだ。
おっぱいが負け、脚が勝った。
つまりそういう事だ。
「はあ、はあ……ふぅ。猥談に付き合うのも楽じゃないぜ」
「これは猥談じゃない、うん。絶対違う」
ショーンの右上、ゴドリック・グリフィンドールがぷかぷかと現れた。
「そうだ、僕が本物の猥談というものを教えてあげよう」
「辞めておけ。こいつの若い頃の話は、本当にロクでもない!
取っ替え引っ換え少女を誑かすわ、それでいて後始末は考えないわ――特に神父の娘と関係を持った事は間違いなく魔女狩りを広めた原因の一つだ――まあとにかく、最悪だ」
「それだけモテたって事さ。
それより最悪なのは、君の方だと思うけど。君はまったくモテないじゃないか」
「私は尊き血を重んじ、連れ添う女性を一人と決めていただけだ。貴様のような偽りの安い愛とは違う」
「む。僕だって真実の尊き愛を持ってるよ。それが多いだけさ」
サラザールとゴドリックは取っ組み合いのケンカを始めた。
ショーンが多少――そう、多少――荒っぽいのは、この辺に影響されてのことかもしれない。
「あー、ロウェナはどうなんだ?」
「私にその話振ります?
夫とは殺し合い、娘には遺産を持ち逃げされた私の話を聞きたいと、そう仰るのですね? ええ、ええ。いいでしょう。たっぷりと聞かせてあげましょう、たっぷりと!」
「ふーん。ヘルガは?」
「もうちょっと私に興味を持って!」
「いや、レイブンクローさんのお話長いんで……」
「そんな「近所のやたら絡んでくるおばさん」みたいな扱いをしないで下さい!」
「で、ヘルガはどうなんだ?」
「ここまで来て無視!? あれ、でもちょっと嬉しいかもしれません。胸に湧き上がるこの気持ちは一体……」
「わたくしは……そうですね、ついぞ恋をした事はありませんでした」
「つまり処女って事さ」
とびきりハンサムな顔でゴドリックがウィンクした。
次の瞬間ヘルガの右ストレートが顔面に炸裂し、顔が陥没した。
単純なパワーでは、ゴドリックよりヘルガの方が高かったりする。
「ゴドリック、貴方のせいで手が汚れました」
「あのねえ……」
四人の話を聞き流しながら、ショーンは目を閉じた。
今日は良く眠れる気がする……。
◇◇◇◇◇
ショーンは夢を見ていた。
その光景はこれまでの人生で一度も見たことがない光景であったが、何せもうこれで三回目なのだ。流石にこれが夢である事は直ぐにわかった。
目の前にいるのは、可愛らしい女の子。
ショーンの知る姿よりも大分幼いが、既にその面影は十分にある。
「ヘルガ……」
声をかけてみるも、当然、ショーンの声は彼女に届かない。
ここは夢の世界。
ここの住人に干渉する事は出来ないのだ。
そう、目の前にいたのは若かりし頃のヘルガ・ハッフルパフであった。
今のショーンと同じか、少し幼いくらいだろうか。
「ヘルガ、君を愛してる。僕と結婚してくれ」
ショーンの知らない一人の若者が、ヘルガに求婚を申し出た。
一目見た印象だが、彼は好青年そうだ。どことなく、セドリックに似た雰囲気がある。
それに……それに、何よりのこととして。
彼がヘルガを愛しているということが、痛いほど伝わってきた。本当に、痛いほど。しかし――
「申し訳ございません。わたくしは、貴方一人のモノになる事は出来ません」
――ヘルガもまた、彼を愛していた。
長い付き合いだ、そのくらい分かる。
しかしヘルガが愛していたのは、彼だけではない。
彼も彼女も、野や山も、鳥や穴熊も蛇も獅子も、そして闇でさえも、全てを深く愛していた。
そう、全てを平等に愛していたのだ。
自分だけを見てくれ、何人もの人間が彼女にそう願った。
結果は全て同じ。
彼女はどこまでも平等だった。
平等に愛した。
――故に、ヘルガ・ハッフルパフは苦悩する。
ヘルガは何処までも人を愛していた。人も彼女を愛していた。しかしヘルガが誰か一人を特別に見ることはないと知ると、途端に人は離れていくのだ。
悩めど悩めど、それはどうしようもないことで、解決策はなく、また一つの真理であった。
全てを愛し、全てに愛され、しかし誰とも交われない彼女は、はたしてどこへ向かうのだろうか?
「ヘルガ……」
その事が辛くて、ショーンは手を差し伸べた。
当然それは、届くはずがない。しかし、そうせずにはいられなかった。
そうしなければヘルガが、何処か遠くへ行ってしまう気がした。
……その時だった。
一人の若者が現れた。
何処かで見たことがある気がするが……しかし、詳細は思い出せない。
彼は何かをヘルガに囁いた。
その声は小さく、良く聞き取れない。
ショーンは近づいて、その内容を聞き取ろうとしたが――
それを拒絶する様に、ヘルガが振り向き、
「……ここから先は、貴方にはまだ早い。いつかまた、貴方が貴方の真実に到達した時、あらためて来なさい」
「えっ?」
その瞬間、周りの景色が溶けた。文字通り、まるで水彩絵の具で描いた絵を水につけたかのように、世界が溶けた。
そして全てが混ざり合い、やがて黒へと還っていく。
ショーンもまた夢の世界から元の世界へと還り――
――眼が覚めると、ヘルガ・ハッフルパフが消えていた。
【オリキャラ・オリ用語解説】
・ハロウィーン……ショーンのペット。フルネームは「ハロウィーン・H・ハッピーマンデー」。とてつもなくブサイクな顔をしており、見る者をイラつかせる。
どうでもいいけど、カエルをペットにしてるオリ主ガチのマジで0人な気がする。
・ステーキスペース……意味不明な造語。肉的な宇宙ではなく、肉的な空間。このssが流行ると同時にこの造語が広く認知される事で、30年後くらいのセンター試験でこの言葉が出たらいいな。
さっきふと思ったんですけど、このssってまったくスネイプが喋ってないんですよね、人気投票1位なのに。多分後書きで書いた
ショーン「ここでヤマアラシの針を──」
ハー子「入れないから。まず火から下ろすの、わかる?」
ショーン「今のはお前を試したのだよ。おめでとう、免許皆伝だ」
ハー子「免許皆伝? ご冗談を。こんな簡単な薬の調合で失敗する人なんて、貴方以外いるのかしら」
スニベルス「報告します! ネビル・ロングボトムが失敗しましたぁぁぁ!!!」
ショーン「何か俺にいう事は?」
ハー子「ごめんなさい……。ちょっと待って、どうして私が謝ってるの?」
しか喋ってない。ごめんスネイプ先生……。
後ついでに言ったら、授業も箒の授業しか書いてない。なんだこのハリポタssは(驚愕)