戦国†恋姫~織田の美丈夫~   作:玄猫

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書いている最中でIMEの辞書がバグって大変なことに……。
誤字脱字があったらごめんなさい!


美濃攻略 - 上洛への道
18話 模擬戦準備と重大な話


「あー!むかつく!!何で詩乃のことを売国奴みたいな言い方するのよ!」

 

 一発屋での食事中、新介が怒ったように言う。

 

「仕方がありませんよ。美濃の調略に私が手を貸しているのを見れば、そう感じてしまう人がいるのは自明の理ですから」

 

 ゆっくりと食事を口に運ぶ詩乃がそういいながら魚をつつく。

 

「でもさ、詩乃は無理に参加しなくてもいいって蘭丸さま言ってたじゃん。ボクもそう思うんだけど……」

「いいえ。私は自分の意思で手伝うと決めたんです。蘭丸さまの為……残念ながら、ひいては美濃のためにもなると思いますので」

「……詩乃がいいんならいいんだけど。まぁ、蘭丸さまがなんとかするって仰ってたし」

「なら大丈夫だろうなぁって思う反面、ちょっと怖いよな」

 

 そういいながら小平太は肉にかぶりつく。

 

「てか、朝からそんなに重いものよく食べられるわね……太るわよ」

「ボク育ち盛りだから。それに太らない体質だし」

「喧嘩売ってるなら買うわよ」

 

 じと目で小平太を見る新介が食べているのは新鮮な野菜を炒めたもの。勿論、味付けは薄めにしてもらっていたりする。

 

「別にそんなんじゃないって!……それはそうと、今日はあれだろ?織田家総出で模擬戦!」

「そうですね。……恐らくは斉藤家の反応を見る目的もあるかと思いますが」

「え、そうだったの!?……ボクそれ知らなかった」

「……怒られるわよ、小平太」

「ら、蘭丸さまはそんな程度で怒らないし!……たぶん」

「そうですね。呆れられたとしても怒りはしないでしょう」

「うぇ!?呆れられるのは嫌だなぁ……」

 

 

「お蘭よ、そろそろ蘭丸隊の二人が戻る頃か?」

「そうですね。昼前には戻る予定と聞いてますので……戻り次第、伝令を送るようには剣丞さまにお願いしております」

「うむ。……して、お蘭。予定している模擬戦であるがお蘭ならばどう分ける?」

「そうですね……赤軍、白軍の二つに分け、壬月さま、佐々、前田。もう一つが麦穂さま、滝川……そして私たちといったところでしょうか」

 

 蘭丸の言葉に久遠が頷く。

 

「最終的な宰領は壬月に任せるが、恐らくは同じ結論に行き着くだろうな。……お蘭よ、演習前に重要な話がある。……よいな?」

「?はい」

 

 久遠の言葉に首を傾げながらも頷く蘭丸。

 

「失礼致します」

「許す」

「美濃より秀吉さま、正勝さまがお戻りになられました」

「苦労。……お蘭、きっと二人ともお前に会いたがっているだろう、行ってやれ。一刻ほど後に全員の招集をかける」

「はい、ありがとう御座います」

 

 

「あ、蘭丸さーんっ!!」

 

 蘭丸が屋敷に戻ると庭で汗をぬぐっていたのだろうか、濡れた手拭いを持ったひよ子が抱きついてくる。

 

「おっと。ふふ、おかえりなさい、ひよ」

「わーん!お会いしたかったです~!」

「二週間ほどでしたか?大変だったでしょう?」

「えへへ……でも、蘭丸さん分吸収したから元気になりました!」

「詩乃ちゃんの紹介状から西美濃三人衆と稲葉山の柱を何本か抜くことに成功しました。……あと、ひよずるい!」

「ほえ?」

「私だって蘭丸さんに癒されたいのに!抜け駆けするなんてひどい!早く交代!」

「あははっ、はーい」

 

 笑いながら、ひよ子がすっと蘭丸から離れると転子が代わって胸に飛び込んでくる。そして、蘭丸に何かを求めるように上目遣いで見つめる。

 

「ころもお疲れ様です。斉藤家の切り崩し、よくやってくれましたね」

 

 そういいながら蘭丸は転子のクセ毛を労わるようにやさしく撫でる。

 

「……あはは、満足です!」

 

 転子が離れるのを待っていたかのようにこほんと一つ咳払いをして詩乃が現れる。

 

「それでは、お二人も落ち着いたようですし情報交換と参りましょう」

 

 

「それでは、美濃のほうでも演習を行う噂が流れていた、と?」

「うん。尾張の弱兵ごときがそんなことをしても何も変わらないって馬鹿にされてたけど」

 

 ひよ子が苦笑いで言う。

 

「自分で言うのもなんですが、東海一の弱兵と言われてますからね。……上方に並ぶかも知れないですね」

「で、ですが蘭丸さま!織田には泣く子も黙る鬼柴田さまや蘭丸さま方森一家も……」

「ふふ、そうですね。ただ母さまと姉さまにそれを言うと怒るので気をつけてくださいね」

「蘭丸さま、それでは演習の準備は……」

「えぇ。剣丞さまは現地の下見がしたいと先に行ってしまいましたので、詩乃に一任します」

「えぇっ!?大丈夫なんですか!」

「新介と小平太をつけてますから、よほどのことが無い限りは大丈夫と思いますよ。……ついでに稲葉山城を見てこようかなーと仰っていたのは流石に止めましたが」

「……剣丞さまは己の価値を分かっておられないのですか?」

 

 詩乃が少し呆れたように言う。

 

「そうですね……ご自身の価値は低く見ている傾向はあるかもしれません。ですが、仲間を守ろうとする気持ちは確かです。詩乃も信用していいと思いますよ」

「……蘭丸さまがそう仰るなら」

「それでは、私は久遠さまの元に。ひよところは皆様に報告もかねて城に上がるようにとのことですのでお願いしますね」

「は、はい!」

「う~……緊張するよぉ、ころちゃん」

 

 

「皆、揃っているか」

「はっ。御前に揃っておりまする」

 

 久遠の言葉に壬月が代表して応える。蘭丸はいつものように久遠の傍に控えている。

 

「デアルカ」

 

 下座に座る家臣たちを見渡し、ちらと蘭丸に視線を向け久遠がゆっくりと口を開く。

 

「先日の稲葉山城制圧。その首謀者である竹中半兵衛重治をお蘭が説得し、我が織田家中に加わったことは、皆知っているであろう。稲葉山城は現在、龍興が起居している。……だが、先日の事件で美濃の内部は動揺している」

 

 そこで言葉を切り、下座の全員を見渡す。

 

「ここが切所。蝮より受け継いだ譲り状を現実のものとするべき時が来た」

「しかし殿。美濃は国人衆八千騎と言われ、強き武士の多き国。……大して尾張は東海一の弱兵と蔑まれるほど、兵の質は悪うございます。果たして……」

「うむ。麦穂の懸念も当然のことであろう。……お蘭、報告せい」

 

 久遠の言葉に静かに頷く蘭丸。

 

「今回の調略活動はひよところに一任しておりましたので、二人から説明をしてもらいます」

「ひゃ、ひゃいっ!!」

「おおお、落ち着いてひよ!」

 

 ガチガチに緊張している二人を見て全員苦笑いを浮かべる。

 

「二人とも、そこまで緊張しなくても大丈夫ですよ」

「そうそう!別にそんな緊張するもんでもないし」

「和奏の言うとおりだよー!」

「気楽に気楽にー。雛みたいにのんびり気楽にしてればいいんだよー」

「貴様はのんびりしすぎだがな」

「あいたー。藪から蛇が出てきたー」

「誰が蛇だ。……が、まぁ概ね三若の言うとおりだ。気楽に報告せい」

 

 これまでの流れで緊張が少しは取れたのだろう。二人が報告を始める。

 

 

「……よし。美濃のことはひとまずおけ。今はこれより行う演習に集中する。壬月、お前が宰領せい」

「御意。では各々方にお伝えいたす。演習は赤組、白組に分かれて行う。赤組は不肖、勝家が指揮を執らせて頂く。白組の指揮は丹羽五郎左。また赤組には佐々、前田を配置。白組には滝川、森……蘭丸。以上だ。何か質問はあるか?」

 

 久遠がにやりと笑って蘭丸に囁く。

 

「お蘭の言ったとおりになったな」

 

 ニコリと微笑む蘭丸。

 

「墨俣近辺まで出張ってやるって話ですけど、稲葉山の連中は大丈夫なんですかね?」

「演習中に横槍とかなったら、まずいかもー」

「それを試す思惑もある」

「どういうことですかー?」

「稲葉山の近くで、堂々と演習をする織田の軍勢に対し、手を出すか否かで、稲葉山の士気がある程度見えてくるということですよ、犬子ちゃん」

「ほわー!なるほどー!」

 

 犬子が感心したように手をたたく。

 

「各々方は稲葉山の横槍が入ることを前提に動け。……敵が来たら迎え撃つからな」

「げっ!てことはガチ装備での演習かよっ!?」

「真剣にやらんと演習にならん。当たり前だ」

「人数はそれぞれ三千。それぞれ大将がいる本陣を制圧するか、大将の馬印を奪えば勝利とします」

「制限時間は二刻だ。……それで勝負がつかんかったら、勝負がつくまでやるから、覚悟せい」

「……マジッすか?」

 

 壬月の言葉に顔を引き攣らせて和奏が尋ねる。

 

「冗談だと思いたいならば思うがいい」

「……了解でーす……」

「各々、良いな?では解散する。すぐに準備に取りかかれ」

 

 

「お蘭よ、ちょっと良いか?」

「はい、何でしょう?」

「結菜にも関係する話だ。屋敷に向かうぞ」

 

 久遠とともに屋敷に向かう蘭丸。

 

「今、帰った」

「お帰りなさいませ」

 

 久遠につれられて屋敷に戻った蘭丸を出迎えた結菜はいつもの笑顔と違い、三つ指をついて楚々とした姿をしていた。

 

「結菜さま……?」

「……」

「お蘭よ、とりあえず部屋へ向かうぞ」

「は、はい」

 

 部屋へと向かい、久遠にすすめられるまま久遠の前に座る蘭丸。

 

「お茶をお持ちしました」

 

 そこへお茶を持って結菜が部屋へと入ってくる。

 

「うむ。苦労。そこに控えておれ」

「はい」

 

 それぞれの前にお茶を出したあと、結菜は久遠の斜め後ろ……普段、客人が来たときに蘭丸が座っているあたりに座り、姿勢を正した。

 

「こほん……お蘭よ。これは前々より考えていたことではあったのだがな……」

 

 少し頬を染めた久遠が蘭丸をまっすぐと見つめ。

 

「お蘭よ、我の妻……ではなかった、夫となれ!」

「……」

 

 ぽかんとした表情になった蘭丸と苦笑いを浮かべる結菜。

 

「久遠ったら、緊張しすぎて大事なところ間違えちゃって……」

「ゆ、結菜!余計なことは言わんでいい!それよりもお前からも言うことがあるだろう!」

「織田久遠が妻、結菜。本日より蘭丸さまの側室としてご奉公させて頂くこととなりました」

「……」

 

 さらに唖然とした様子の蘭丸。さすがの蘭丸も状況がつかめず呆然としているようだった。

 

「ど、どうしたお蘭よ。もしかして……我との婚姻がそんなに嫌か!?」

「……もしかして、久遠。蘭ちゃん……」

 

 座っていた場所から立ち上がると蘭丸の傍へと結菜は寄り。

 

「……気、失ってない?」

「……お蘭っ!?」




どこで結婚させるか悩んでいましたがこのタイミングになりました!
とはいえ、夫婦らしいことはもうちょっと後になります。
まぁ、すでに家族的な雰囲気がある三人ではありますが。

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