かつては、ゆるりとした日常を過ごすスローライフ万歳な公爵令嬢でした。
今では、幾多の会社を率いるカリスマ経営者として働き続けて疲れ果てた美少女です。
ですが、安心して下さい。
我が社は、福利厚生がしっかりしているホワイト企業なので、これからバカンスに行くのだから。
あっ、モモンガさんは大事な取引先との商談があるのでお留守番ですよ。
「…………ガッデム」
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環境破壊が進んだこの世界ですが、一部の富裕層は僅かに残された汚染されていないバカンス用の土地を持っています。
残念ながら、新興勢力の
土地はありませんが、お金ならあります。というわけで、富裕層向けに観光業を営んでいる他所のアーコロジーへ出発です。
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バカンスという名目でアーコロジー外に出ました。
実は今回の外出目的はバカンスではなく、発電所を建てるための事前調査です。
まったく、面倒なことですね。
今回、発電所に目をつけたのは、アーコロジーにとってエネルギー産業が最も重要なインフラであり、そして新規参入が難しい割には儲からない部門だからです。
化石燃料の類いはその殆どが底をつきかけている現在、発電は原子力頼りです。太陽光発電は肝心の太陽光が厚い雲のせいで殆ど地上まで届きません。風力は発電量が不安定ですし故障も多いです。水力発電はダムの水量が激減しているので使い物になりません。
唯一の頼りが原子力ですが、使用済み核燃料の処理に莫大な経費が掛かります。具体的には使用済み核燃料の保管を受け入れている都市があるのですが、そこに支払うお金がべらぼうな金額なのですわ。
電力会社はその経費を電気代に乗せてはいますが、他企業からの圧力が強いためギリギリ黒字程度の経営状態です。
電力会社の経営者は、他の企業も傘下に持っているので、本音では大して儲からず手間ばかりかかる電力会社を廃業したがっていると専らの噂です。
ですが、新規で電力会社を設立しようと思えば、莫大な初期投資を行い発電設備を作る必要があります。そんな投資を行っても儲けが殆どなければ参入する企業などありません。
なので、その経営者だけなら
ですが、それ以外の有力者達は新興勢力の
儲からない事業を態々しようというのに迷惑な方達ですわ。慈善事業みたいなものだというのに。
まぁ、迷惑な人達は放っておくとして、電力会社を設立する為の発電設備ですが、当然ながら原子力などという莫大な経費のかかるものは選びません。健康にも悪そうですしね。
そこで、地熱発電所なのですわ。
地熱を利用すれば燃料代は無料です。なんてお得な発電設備なのでしょう!
従来の工法で地熱発電所を作ろうと思えば、精密な事前調査と大規模な工事が必要らしいですが、
マグマの流れも地下水の流れも思いのままに変える事が出来ます。地質を変化させる事も簡単ですわ。どのような場所でも数日もあれば、地熱発電所を作るのに理想的な環境に変貌させれます。
さてと、場所を選んだなら他にするべき事は一つだけです。
それは、【建設会社・モモンガ】の設立ですわ。
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グシモンドグループが、スポンサーとなってアニメ制作を行うことが決定されました。
なので、ヒロインを演じる声優さんをオーディションで選ぶ必要があります。
うふふ、近年では珍しいほどの多額の予算をかけた超大作です。きっと、オーディションにはお姉様も参加される事でしょう。
ですが、
審査委員長は
ところで、コネは実力の内ですわよね?
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グシモンドグループが、スポンサーとなってゲーム制作を行うことが決定されました。当然ながらフルボイスですわ。
なので、ヒロインを演じる声優さんをオーディションで選ぶ必要があります。
うふふ、近年では珍しいほどの多額の予算をかけた超大作です。きっと、オーディションにはお姉様も参加される事でしょう。
ですが、
審査委員長は
ところで、コネは実力の内ですわよね?
*
グシモンドグループが、スポンサーとなってユグドラシル特集番組の制作を行うことが決定されました。
なので、ナレーションの声優さんをオーディションで選ぶ必要があります。
うふふ、ゴールデンタイムの番組です。きっと、オーディションにはお姉様も参加される事でしょう。
ですが、
審査委員長は
ところで、コネは実力の内ですわよね?
*
引き篭もりました。
部屋に入らないで下さい。
*
「どうしよう、お姉ちゃん。フリアーネ様が部屋から出てこられないよう」
「ど、どどどするでありんすか!? わらわはもう二日もフリアーネ様の芳しい香りをクンカクンカしてないであり……ガクッ」
「シャルティアが禁断症状で泡吹いて倒れちゃったよ!? どうしようお姉ちゃん!」
「えーと、シャルティアにはフリアーネ様がお使いになられたタオルを顔に被せておけばいいよ。フリアーネ様は……ぶくぶく茶釜様に『エコ贔屓しないで実力で選んで下さい!!』って怒られたことが原因だから……暫くはそっとしておくしかないかな?」
「うん……そうだね。うわっ、タオルを被せたらクネクネと悶えだしたよ、お姉ちゃん!!」
「そんなの見ちゃダメ!!」
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「……ひどいこと、言っちゃった。嫌われたわよね、私。あの子は、あの子なりに私のためを思ってくれただけなのに」
「きっと大丈夫だよ。彼女は君のことが大好きなんだからさ。素直にその気持ちを伝えればきっと仲直りが出来るはずさ」
「社長……」
「うんうん、絶対に大丈夫だから会いに行ってあげなよ」
「社長……あの子に幾ら貰ったの?」
「ギクッ!?……な、何のことかな?」
「はぁ、まったく仕方ない子ね。まずはお説教が必要みたいね」
「お、穏便にだよ。絶対に穏便にすませてよ」
「ふん、分かっているわよ。でも、まずはお説教をするわ……それから、素直になって…仲直り……したい」
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「わかりましたわ。無事にミッションコンプリートですね」
「──」
「はい、大丈夫ですよ。お約束通り、例のお仕事は貴方の事務所にお任せしますわ」
「──」
「うふふ、構いませんわ。それではまた何かあれば連絡しますね」
──ガチャン
「おーほほほほ、これでお姉様と仲直り出来ますわ。あの社長も意外と役に立ちますわね」
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お姉様に説教されました。
ぐぬぬ、あの社長め、今度見かけたら泣かしてやりますわ!!