かつては、グシモンド公爵領の治安維持を担う権力者側の公爵令嬢でした。
今では、一般庶民として公権力に怯える力無き美少女です。
ですが、安心して下さい。
警察幹部の半数は、すでに我が眷属なのですから。
*
会社に警察の立入調査を受けました。
いえ、すぐに警察上層部の眷属から命令させて引き上げさせたので問題ありません。
なんでも、勢いのある新興勢力である我が『グシモンドグループ』を警戒した有力者の一部が、自分達の息がかかった警察幹部を動かし、うちの弱味を探させる為と嫌がらせも兼ねて、立入調査をさせたそうですわ。
警察上層部には眷属が多くいますが、組織自体が大きいため、眷属の目が届かない部分もあります。今回の件はその隙をつかれたのでしょうね。
今回のような事がない様にと、
そうです、人口問題です。
眷属化すれば当然ながら種族は、人間種からアンデッドに変わります。そうなればもう子供は出来ませんわ。
ただでさえこの世界は人口が減り続けています。たとえ、この世界では為政者ではないとしても、この
愚かな大衆といえど、滅びへの道を歩ませるわけにはいきません。
それに、新たに生まれるロリ達の可能性を摘むことなど絶対に出来ませんわ!!
そもそも眷属化などしない方がいいのですが、そこはやはり我が身を守るためには必要です。
綺麗事だけでは、このディストピアな世界を生き抜けません。安全第一ですわ。
とりあえずの目標としては、このアーコロジーとその外街を『グシモンド公爵領』として治める事です。
その後は、周囲のアーコロジーを纏めて『バハルス帝国』を建国したいところですが、王にまでなるのは大変そうですね。
……親戚のジル兄様が転移して来ないでしょうか? そうすれば王問題は解決するのですが。
まあ、未来のことは未来の
今は他にするべき事があります。
「そう、報復ですわ! やられたらやり返す。舐められたまま黙っているほど公爵令嬢の誇りは安くありませんわよ!」
今回は、
会社を狙ったということは、会社の社員をも狙ったということです。社員といえば領民も同じことです。
*
ユグドラシルのアバターが完成しました。
大金をつぎ込んだだけあって素晴らしい出来ですわ。
うふふ、お披露目したやまいこ様達も驚いています。
「こ、ここまでやるの……フリアーネ、あなた…気は確か……なの?」
「…………(あんぐり)」
「姉さん、それは失礼ですよ。餡ころもっちもちさんもその大口は女性としてどうかと思いますよ」
「うふふ、実は特典のポイントは余りましたから、やまいこ様達のアバターも外装を変えてみませんか? やまいこ様なら無骨な巨人よりも可愛いジャンガリアンハムスターなど如何でしょうか? 今なら
「姉さんがモフモフに!? それは是非ともお願いすべき!! そして今なら私にモフモフされる特典もつける!!」
「……それはボクにとっての特典になるのかな?」
「優雅で可憐な公爵令嬢にモフモフされる。世の殿方なら垂涎の特典ですわね。売りに出せば破産してでも手に入れたい殿方続出間違いなしですわ」
「愛おしい妹からモフモフされる。世の姉からは絶叫モノの特典です。特にツンデレ妹を持つスキンシップ不足の姉からは妬まれ間違いなしの特典です」
「……がんばれ、やまいこ」
「そんな諦めきった顔で言わないでよ、餡ころもっちもち」
うふふ、餡ころもっちもち様とあけみちゃんの新しいアバターは何がいいかしら?
そうだわ、お姉様のアバターも用意しておこうかしら? そうすれば、いつでもお姉様もユグドラシルを始められるもの。
今回はピンクの肉棒は止めてみせるわよ。流石にあれは……えっちなのはいけないと思います。(棒読み)
*
グシモンド親衛隊が逮捕されました。
もちろん、すぐに容疑不十分で釈放されました。
親衛隊は、我が社に敵対した有力者達が経営する会社、店舗に対して不買運動や街宣車による抗議活動などを連日行なっています。
当然ですが、親衛隊は自主的に行なっています。誰かに命じられたとかは一切ありません。そして会社は有給休暇を取っているそうです。
うふふ、このご時世に有給休暇をとれる会社にお勤めだなんて、親衛隊の方々は幸運ですわね。
「会長さんよ、俺が言うのもアレだが、世間では聖人君子の様に思われてるアンタがこんな手を使っていいのかよ?」
おやおや、親衛隊リーダーが困惑した顔をしていますね。貴方、そんなキャラじゃないですよね?
「たしかに貴方が仰るように、声高に誇れるような手段ではありませんね」
「じゃあ、なんでアンタはこんな手段をとるんだよ。アンタは俺たち下級層の人間からは正義の味方のように思われてるんだぜ。もしバレでもしたらイメージダウンも甚だしいぜ」
「おーほほほほ、この
「ふん、そんなことは分かっているよ。ただ……俺達はそう思いたいってだけだ。俺達を救ってくれる……そんな御伽噺のような正義の味方が現れたってな」
「なるほど、貴方は意外とロマンチストなのですね。でもね、正義の味方では貴方達を救えませんよ」
「……なんでだ?」
「だって、正義の味方は体制側の味方ですわよ。現在の社会を形作っている富裕層の権力者達を守るのが、現在の社会の安定を守るのが、貴方が言う正義の味方の仕事ですわ」
「な、なんだよそれ……それじゃあ、俺達を救ってくる奴は誰もいないっていうのかよ!」
「そんなお人好しなど、いるわけありませんわ」
「ッ!? あ、あんたどうなんだよ。あんたは下級層を救うためにこんな真似をしてるんじゃないのかよ」
「それは違いますわ。
「…………えっと、俺達はアンタの会社の社員だよな」
「そうですわ。親衛隊の方々は、
「……そうか、社員だけか……そうだよな、いくらアンタでも……」
「……
「なんだよいきなり、野望だって?」
「
「す、全てを支配するだと!?」
「
「か、会長ッ!? あ、アンタはそんな途轍もない野望を抱いていたのかよ!!」
「うふふ、
「ククク、そうだな。アンタは正義の味方なんかじゃねえよ。なんたって現在の体制をぶっ壊そうってんだろ?」
「おーほほほほ、
「──悪、悪か。いや、それは俺好みだ。言われてみて初めて気づいた。俺はこの世界が大嫌いだった。こんな世界はずっとぶっ壊したかったんだ。フリアーネ会長、俺はアンタに……いや、私は貴女について行きます。たとえ道半ばでくたばろうと後悔はしない!! 貴女の為にこの身体と魂が燃え尽きるまで戦い抜いてみせる!!」
「おーほほほほ、死ぬ覚悟など要りませんわ。この
「フ、フリアーネ会長ッ!! 必ずや、必ずや貴女に悪の玉座に座ってもらいます!!」
*
えっとですね。喧嘩を売ってきた有力者達を眷属化するのは簡単ですが、安易に敵対者を眷属化するのは発覚の危険(敵対した途端に友好的になる。もしや洗脳したのか?と周囲に思われる危険ですわ)が増すので、ちょっと今回は親衛隊を使ってみようかな? と思ったのですわ。
はぁ、正義の味方とか悪がどうとかをのたまうのは、たっち・みーさんやウルベルトさんの専門です。
ついつい話が盛り上がったので、相手に合わせてしまいました。
全く、公爵令嬢の
社交的すぎる公爵令嬢な
次からは気をつけます。はんせー、ですわ。