かつては、帝国臣民を慈しむ聖女として慕われた慈愛溢れる公爵令嬢でした。
今では、自警団を名乗る愚連隊に信服され、困っているだけの美少女にすぎません。
ですが、安心して下さい。
下級層に属する愚連隊の方達から、上納金を納めさせることなどは、慈愛溢れるこの
*
あの日、星が降った日。それは、まるで……
まるで……夢の景色のように
美しい眺めでした。
*
「まさか本当にパーティー会場に隕石が降ってくるだなんて驚きですね。でも被害に遭われた方達にはお気の毒ですが、フリアーネ会長にお怪我がなくて本当に良かったですよ」
「モモンガさん、心配してもらいありがとうございます。本当にあの日は幸運でした。実はこの
「な、殴ったッ!?」
「ええ、そうです。ですが、そのお陰で
「そ、それは本当に幸運でしたね」
「そうね。本当に幸いなことに殴った相手も目撃者も全員が隕石でペシャンコだから、警察に通報される心配もないものね」
「け、警察ですか。たしかに普通なら今ごろ警察に捕まっていたかもですね。……うん、本当に幸運でした。あんなクソ共のせいでフリアーネ会長が捕まらなくて本当によかった」
「あらあら、モモンガさんがそんな事を仰られるなんて。あの方達はそれ程に嫌な方達でしたのかしら?」
「……いえ、もう亡くなられた方達なので。それよりも、私がパーティーへの出席を頼んだせいで、フリアーネ会長には余計な危険を負わせてしまい申し訳ありませんでした」
「あらあら、自然災害の隕石の事なら誰にも予測など出来ないもの、モモンガさんがお気に病む必要などありませんわ。それでもどうしても気にすると仰るなら、
「フリアーネ会長……はい、微力ながら粉骨砕身をもって職務に励んでいきます!」
「はい、頑張って下さいね。モモンガさん」
*
「フリアーネ様にセクハラを働くなど、なんて羨ま……じゃなくて万死を与えてもまだ足りないでありんす」
フンスフンスと怒りながら、
「そうだね、
「そうだ! 今からでも蘇生して、あらゆる苦しみを百年間かけて繰り返し繰り返し与えるとか、どうでしょうか?」
マーレがいい事を思いついた! という顔で言い出しました。いえいえ、そんな経験値稼ぎにもならないような無駄な事をする趣味はありませんよ。
「
この子達を放っておくと暴走するかもなので、
*
経営陣がまとめて天災死(隕石に潰されたそうです。怖いですね)された事が原因で、急速に業績を落とされ経営難に陥った会社を買い取りました。
食品会社だったその会社は、クソ不味い加工食品を製造されている会社です。
そんな会社など本来なら必要ありませんが、アウラの『ペットショップ・モモンガ』で販売するペットフードを製造する必要が出来たのです
そうです。ワンちゃんのご飯問題が勃発したのですわ。
ワンちゃんを購入したのは富裕層の方々のみですが、いくら富裕層といってもペットに食べさせるのは安い(クソ不味い)合成肉になります。
ワンちゃん達とテレパシーで会話が出来るアウラの下には、それこそ毎食毎に苦情が入っているそうです。
食べ物の恨みは恐ろしいとの言葉通り、ビーストテイマーのアウラですらワンちゃん達の不満は抑える事が難しいようです。
このままでは、ワンちゃん達がいつ飼い主をご飯にしてしまっても不思議ではないとの事です。
「ワンちゃんが飼い主を食べて、ここに戻ってくる。そうしたらまたワンちゃんを販売する。そしてワンちゃんがまた飼い主を食べて戻ってくる。そうしたらまたワンちゃんを販売する。……永遠に儲かる仕組み完成かしら!」
「おぉ! 流石はフリアーネ様でありんす!」
「僕も素晴らしいお考えだと思います!」
「シャルティア……マーレ……あんた達、正気なの?」
……どうやら、
さて、ワンちゃん達のご飯事情を向上させるために調査したところ。世間一般で流通している合成食料がクソ不味い原因は、製造上の避けられない問題ではなく、ただのコスト削減の所為でした。
合成食料に含まれるカロリーと栄養素だけは、労働力維持に直結するためルールが定められていますが、その味付けに関しては無駄な経費だと思われ、各社の経営陣に無視されていました。
確かに経営陣は富裕層なので、クソ不味い合成食料など食べないから仕方ない話ですね。といって終われる話ではありません。前世でクソ不味い合成食料を死ぬまで食わされた恨みを思い出したわけではありませんが、ワンちゃんご飯問題を解決しなければなりません。
最も解決方法は簡単です。経費がかかる事さえ考慮しなければ、美味しいと感じる味付けをする事など技術的には簡単だからです。
流石に商品会社を一から作るのは面倒でしたので、丁度良いタイミングで経営難に陥っていた商品会社を買い取った、というわけですわ。
本来ならペットフードだけに味付けをして販売しようと考えていたのですが、どうやら指示をした
「フリアーネ会長ありがとうございます!! 社員一同、心から感謝致します!! これで胸を張って食品会社の、いいえ『グシモンド食品会社』の社員だと名乗れます!!」
今まで、クソ不味い合成食料を作っていた会社だと、世間から後ろ指を指されていた社員達から激烈に感謝されてしまいました。
この空気の中、「ペット用だけ」などと言い出すのは、慈悲深い公爵令嬢には無理ですわ。
それに
細かい話は、新社長のモモンガさんに一任しますわ。うふふ、粉骨砕身にて職務に励んで下さいね。
「…………が、頑張ります」
*
なぜか、自警団の名称が『グシモンド親衛隊』に変更されていました。
何故でしょう?