バハルス帝国のグシモンド公爵家の娘にして、帝国最強と謳われる魔法詠唱者です。
もちろん、帝国最強といっても『おーほほほほほっ、
例えば、
「わたしがペロロ…じゃなくて、フリアーネ様に危害を加えるなど、天地がひっくり返ろうともあり得ません!」
確かにこの子が
機嫌を損ねた美少女は、フンスフンスと鼻息を荒くして
そんな言葉ひとつの謝罪で簡単に機嫌を直してくれた心優しい美少女は、
そんな美少女に万力のような怪力で拘束されている
銀髪の美少女――シャルティアは間違いなく変態だと。
「こんな変態を作ったのは誰だっ!?」
「
貞操の危機を感じた
***
ある日、帝国最強の魔法詠唱者と謳われた
死を覚悟した
その際に再会した旧友のモモンガさんからナザリックで共に暮らさないかとプロポーズをされてしまいます。
いくら転生した
あまりにも節操のないモモンガさんを白眼視しながら
「貴方はとても良い人だとは思いますわ。ええ、
「誤解です!? ペロロンチーノさん!!」
「男は皆さんそう言うのですわ」
「いや本当に誤解ですってば、今の私はオーバーロードですよ! そういう感情はありませんよ!」
「必死になるのが余計に怪しいですわ」
「いや本当に勘弁して下さいよ、ペロロンチーノさん」
ぺこぺこと頭を下げるオーバーロード。なんだかシュールな光景ね。
「まあ、そこまで言うのなら信用してあげましょう。ところで、
「フリアーネさんですか?」
モモンガさんは不思議そうに首をかしげる。
異世界転移したモモンガさんとは違い、異世界転生した
ここにいるのは確かにモモンガさんの友人のペロロンチーノですが、同時にこの世界で生きているフリアーネでもあります。
どちらも
バハルス帝国の公爵令嬢にして帝国魔法学院の生徒会長。そして、今や帝国の首席宮廷魔法使いのフールーダをも凌ぐ帝国最高の魔法詠唱者。
そんな才能に溢れた可憐で麗しい美少女魔法使いにはそれに相応しい名というものがあります。
前世でのネットでつけるような巫山戯た名は、とてもではありませんが相応しいとはいえません。
「
ホゲーと
モモンガさんは納得したように頷く。
「なるほど、調査にあった帝国の“狂笑の気狂い魔女”というのはペロロンチーノさんの事だったんですね」
「フザケンナッ!!」
「ヒデブッ!?」
クソモモンガは、俺のドロップキックをまともに受けて吹っ飛ぶ。
「この俺が、文字通り赤ん坊の頃から育成中の乙女を捕まえて巫山戯た二つ名で呼ぶんじゃねえ!! たとえ仲間でも許さねえぞ!!」
「す、すいません。ペロロンチーノさん」
吹っ飛んだクソモモンガは起き上がりながら素直に謝ってくれた。
「ふん、まあいいだろう。今回だけは許してやるが二度目はねえぞ」
「本当に申し訳ありません。ペロロンチーノさんの趣味を忘れていた私の失言でした」
帝国で“聖女”とまで呼ばれる心優しい
ところで、周囲にいる魔物達はオロオロと
そのオッパイの大きい女悪魔を牽制するようにシャルティアが間に入ってくれました。とても心強いです。
***
モモンガさん達との話し合いの結果、ナザリックに直ぐに移動できるようにと、“転移門”を使えるシャルティアをそばに置くことになりました。
もちろん
デミえもん曰く、ナザリック最強のシャルティアでなくては護り切れない可能性があるそうです。
脂汗を流すデミえもんに、“ナニ”から
呑気なモモンガさんは可愛い嫉妬程度に考えているみたいですが、“女”の嫉妬ほど怖いものはありません。
まったく困ったものです。
まあ、兎にも角にも
これで、
「フリアーネ様の野望とは何なのでしょう?」
シャルティアが
それに答えるのはいいのですが、護衛とは護衛対象を
シャルティアに問いかけてもニコニコと微笑むばかりで答えてくれません。
でもまあ、
「
たとえ今世の
よくて歴史書の片隅にその存在を匂わす程度でしかありません。
ですが、
この世に生きたという証を残したい。
それが子を残せない
「御子を…残せない」
「フリ……アーネ…様」
シャルティアはただ
「フリアーネ様。偉大なる我が創造主にして、我が全ての愛を捧げる愛しき御方。我が忠誠はフリアーネ様に。我が心はフリアーネ様と共に。そして、この世界の全てを必ずやフリアーネ様に捧げてみせます」
気がつくと周囲には数え切れないほどの高位の吸血鬼達が頭を垂れていました
この日より
あのー、
***
ひょんな事から
これまでの
公爵家の後継ですらない無力な小娘の
ですが、これからは違います。
地平線を埋め尽くすほどの吸血鬼の私兵団。
この世界では、御伽噺でしか語られないほどに強力な真祖のシャルティア。
これらを率いるは、正統なる王家の血に連なる麗しき公爵令嬢。
ククク、高貴なる血と圧倒的な武力を背景とした帝国内における確固たる発言力を手に入れたのです!!
つまり、
まずは、愚かなお兄様を廃嫡とし、グシモンド公爵家を
というわけで、ただいま公爵領を絶賛包囲中ですわ。
シャルティアとシャルティア配下の吸血鬼軍団10万だけでは少し心許なかったので、モモンガさんにお願いして、アウラとマーレのお二人にも応援に来ていただきました。
このお二人は、
このお二人は、
実は転生した
他の者達は、モモンガさんの御言葉だから
特におっぱいの大きい女悪魔などは、
彼女に隙を見せるのは非常に危険ですね。シャルティアを肌身離さず侍らせておくのが無難ですわ。
まあ、兎にも角にも
公爵領内では公爵軍が展開しています。指揮を執るのは当然ですがお兄様ですわ。
お父様には
もちろん、女だてらにお父様がお決めになった嫡子と争う
願わくば、お兄様とお父様、そして公爵軍全てが敵に回ってほしいものです。
ククク、そうなれば遠慮なく、その全てを
現在の
早く第10位階に達したいものですわ。
しばらくすると、公爵軍に動きがありました。
パッカラ、パッカラとお馬さんが一頭、駆けてきます。
一体なんでしょうか? 宣戦布告でしょうか?
おや、何か引き摺っていますね。
「お嬢様っ、我らは決して敵対の意思はございません!! ご寛恕下さいますようお願いいたします!!」
お馬さんに乗られていたのは公爵軍を束ねる隊長さんでした。
そして、引き摺っていたのは簀巻きにされたお兄様です。
どうやらお兄様は公爵軍に見限られたようですね。公爵軍は戦わずに降伏するつもりのようです。
しかしこれでは
……降伏は聞かなかったことにしましょうか?
“ペロロンチーノさん、こちらでも状況は把握しています。どうやら無事に公爵家を継げそうですね。おめでとうございます”
チッ、どうやらモモンガさんに見られていたようですわね。
モモンガさんは常識人ですから、ここで
モモンガさんの信用を失うわけにはいきません。ここは
「お兄様、どうやら公爵家に相応しいのは
部下に見限られて無様に這い蹲るお兄様。
幼き頃から後継として育てられたお兄様は傲慢でした。たとえば、実の妹の
そして、
他にも
まったく、ロクな思い出がありませんわね。もう殺してしま……さすがに殺すのは可哀想かしら?
ふと
『ほら、こっちだよ』
優しく
『あはは、フリアーネは甘えん坊だなあ』
そう言いながら、抱っこをしてくれたお兄様。
『フリアーネのほっぺたはポヨポヨだね』
美幼女だった
クク、やっぱり幼女は最高だぜ。
『黙れ、愚弟』
ひいっ!?
ち、違う記憶が混ざりました。
コホン…かつては優しかったお兄様。
「……お兄様には養子にいっていただきます」
こうして
***
確固たる立場を手に入れた
生徒会長としての仕事もあるので疎かには出来ません。
歴史の表舞台に出るのは帝国魔法学院を卒業してからです。学院中退というのは何だか格好悪い気がしますからね。
学院中退といえばアルシェさんはどうされているのかしら?
そうね、久しぶりにアルシェとお茶をするとしましょう。
うん、それがいいわね。なんといっても学生時代の友人は大事にするべきだわ。
そうと決まれば善は急げね。早速、アルシェに会いに行きましょう。
*
「そうか、とうとう家を出る決意をしたんだな」
「はい、もうあの両親には愛想が尽きました。育ててもらった恩は既に返し終えたつもりです。今日にでも妹達を連れて家を出ます」
「そうか、俺もそれがいいと思う。アルシェの親御さんを悪く言いたくはないが、これ以上は関わってもアルシェが不幸になるだけだろう」
以前と同じ食堂で、アルシェと彼女が組んでいるワーカーチームのリーダーが深刻そうに話しをされていました。
「……私だけなら兎も角、妹達は幸せに暮らさせて上げたいんです」
「そうか……これから行くのなら俺も一緒に行くぞ」
「いえっ、これは私の問だ「そうね、この
「…俺は急用を思い出したからもう行くぞ」
「リーダー!? 私を置いていかないで!」
「すまないアルシェ! 俺はイミーナをおいて逝くわけにはいかないんだ! じゃっ、そういうことで」
「りぃいいだぁあああぁあああああっ!!!!」
リーダーさんがそそくさと食堂を出て行かれました。
「アルシェったら困っていたのなら
「……いつの間に生徒会長と私は親友になったのでしょうか?」
「うふふ、極悪非道なアルシェの御両親は
「いえいえっ、いくら私でもそこまで両親を恨んではいませんよ!?」
アルシェが慌てて首を横に振る。きっと、
「安心しなさい、アルシェ」
「生徒会長?」
アルシェを安心させるように
「あ、あの……じょ、冗談だったんですよね?」
「うふふ、没落貴族如きを何十人闇に葬ろうともこの
「私の話を聞いてーーーーっ!!!!」
***
バハルス帝国のグシモンド公爵家次期当主にして、帝国最強と謳われる魔法詠唱者。
最近、吸血鬼の真祖の美少女と吸血鬼軍団を配下におさめました。
友好団体として超武闘派揃いのナザリックが存在しています。
このナザリックには高位の魔物が数多くおり、トップのモモンガさんとは親しい友人同士です。
彼は非常に友人思いの良い方なので、
多少、ナザリック内に
「そうだね、アルベドは危険だけど監視はしているから問題ないと思うよ」
「でも、お姉ちゃん。ぶくぶく茶釜様の弟であるペロロンチーノ様に敵意を持つアルベドは殺しちゃった方がいいんじゃない?」
「マーレは物騒だね。でも大丈夫だよ、アルベドが本当に行動に移そうとしたら殺せばいいだけなんだからさ」
「うん…お姉ちゃんがそう言うなら」
うふふ、ナザリック内に信頼できる子達もいるから安心ですね。
さあっ、これから
「くんかくんか、ペロロ…じゃなくて、フリアーネ様の芳しい香りは癖になるでありんす」
うふふ、
安心して下さい。
アルシェは親友に助けられて幸せになったと思います……たぶん。