「折本──」さて、この後に続く言葉は── 作:時間の無駄使い
今回を最後に定期更新に入る予定ですが、作者の身が現在不安定すぎて、突然前触れなく投稿しなくなる可能性がある事をご了承下さい。
※消えるのは作者が面倒になった訳ではなく、外的要因の可能性のみです。作者的にはこのまま続けていきたいので。
──結局、俺達はそれぞれで枠を設けてイベントをやる事になった。
折本の案の最終的な形はこれだったらしく、それぞれでやりたい事をやり、それの客入りを競うもの。
その案の形だけを折本が軽く提案し、内容などを俺が補正する形で付け加える事で、双方に出来るだけ溝が残らないようにした。(折本がそう言っていただけだから本当にそうなったのかは知らんが、向こう側は折本がどうにかするらしい)
俺は、その案を聞いてから『それでいいのか?』と思っていた。そしたら今以上に《合同》イベントじゃなくなるんじゃないかと危惧した。
──が、
『二校がそれぞれ作ったものを出して一つのイベントにするんだからいいんじゃない?』
という折本に丸め込まれた形で、この案が通った。
その後はそれぞれの高校が自由なペースで作業を行っているが、毎週水曜だけは二校とも参加している。
そして、それぞれで作業を開始して四日目──
「──会長、これはどうする?」
「えーと、じゃあ小学生が手が空いてるっぽいんで、小学生に任せちゃって下さい」
一色も、ちゃんと指揮系統の中心としてしっかり働いている。
俺にも確認しにくる事があるが、回数もめっきり減ったし、本当に確認ぐらいしかしてこなくなったので、恐らく自信がついたのだろう。
後輩という事もあってか、副会長含めここに来ている生徒会役員その他全員が上級生だから少しやり辛そうにしていた一色も、逆にそんな事を気にして欲しくなかったその他役員も、現在はスムーズに動いていて全体的に纏まりを感じる。
やはり一色は仕事も出来る方らしく、吹っ切れてからはサクサクと進んでいった。
「先輩、何やってるんですか。先輩にも仕事があるんですからお願いしますー」
──こんな風に俺をこき使うようになる程一色は成長した。……もともと?そんなわけな……いよな?
ちなみに、俺の仕事は海浜総合側との連絡である。
毎週水曜にあるこの会議に、一色の補助として俺が行き、共通の確認やらなんやらをする。
別々で行うったって一つのイベントの中で別々に行うだけであってイベント自体が異なる訳じゃない。だから、いろいろと全体的に動かないといけないところも出てくる。
そういったものを行う会議だけは、現在も行われていて、出席者は計五名。
総武高校側が一色と俺。そして海浜総合側が玉縄と副会長、そして折本だ。
基本的には折本を除いた四人での会議で、折本は書記をやっている。……なんでも、海浜総合側から呼びかけて始まったから、書記とかそういうのも海浜総合側が行う、という事らしい。
「すいません、遅れましたー」
一色が少し間延びした声でそう言いながらドアを開け、会議室に入る。
俺も後から続いて入り、所定の位置に座ると、折本が手を振って来た。
「比企谷ー、遅いって」
「悪い。……ちょっと指示出しに手間取ってな」
と、そんな会話をしながらも折本は手を振り続けている。
その折本の顔を見て、意図を察した。
──手を振り返せ。と言っているのだ。
付き合っていた時の経験から、俺はもう諦めつつ折本に手を振ると、隣から「ムー……」とかいう唸り声が聞こえた。何?新大陸でも発見した?
「先輩は、ああいうのが好みなんですかね?」
その問いには、返事はしなかった──
* * *
「──じゃあ、これで会議は終了だね。僕達は戻って伝えてくるよ」
玉縄はそう言うと、副会長と一緒に部屋を出て行く。
今日の会議では、大きな動きはなかったものの、一部が変更になり、それに合わせる為にどうするかも少し話した。後はこれを各陣営に持って帰って話し合うだけだ。
俺達は現在折本の記録用紙のコピー待ちである。
「先輩、ああいう折本さんみたいなのが好きなんですね?」
「……………」
既に四度目の質問だ。俺は無視を決め込んでいる。……なんか一色さんの目が怖いです。
「……もしかして、昔になんかあったりしたんですか?」
──下手したら現在進行形だ。
めちゃくちゃ地雷である。
そもそも一色の気になるセンサーに引っかかってしまったのが運の尽きか。
「ほーい、比企谷、一色ちゃん、印刷終わったよ」
「あ、ありがとうございます」
「サンキューな、折本」
「良いって。……てか、それより久しぶりに比企谷とカフェ行きたいんだけど、どう?」
「「……………え?」」
俺と一色の驚いた声が重なる。
一色は俺と折本を交互に見ながら「えっ?えっ?」と繰り返している。
……まあ、確かにこいつの前では俺はただの面倒なぼっちだったからな。驚くのも無理は無い。
「……ああ、分かった。スタバでいいか?」
「オッケー!じゃ、仕事終わったら来て!」
そう言いながら折本は元気にかけていく。……寒くないんだろうか。よく風邪引かないよな──
──と思ってから、一年前に折本を看病したことを思い出して顔が赤くなったが、必死に隠した。
* * *
そしてその後の一色の猛攻を掻い潜り、現在はチャリでスタバを目指して移動中。
冬の風が身体に当たり寒い。手先なんかは凍ってるんじゃなかろうか。寒くてそんなの確認する気にもならない。……と言っても、実は今日はこの時期にしては暖かい方なのだが、その前三日間程が二ヶ月くらい前の気温だったため、急激に冷えてこうなっている。
息を白くさせながらもチャリを漕ぎ、目的地を目指すと、目的地に着く前に、
「あれ、比企谷」
「折本。……スタバに居るんじゃなかったのか」
折本と会ってしまった。
せっかくなのでこのまま一緒に行く事になり、そして現在はチャリを降りて折本と同じく歩いている。
「いやー、本当に久しぶりだね、比企谷と一緒に歩くの」
「ああ。……って言うか、そもそも長話自体が久しぶりな気もするが」
「そうだったね。私も比企谷とメアドとか交換してなかったから連絡取れなかったし……」
「今はあるだろ……」
俺は、なんとなくそう言った。折本と確実に付き合っていた高一の頃にメアドを交換しなかった為、つい最近になってからになってしまったその番号は、登録名が某スパムメールの差出人の人そっくりなのだが、そこら辺はもう……なんだろうか、『こういう系の女子の一般』として俺の脳内にインプットされてしまった為、特に深く考える事はしなかった。どうしようが本人の自由だしな。
「しっかし寒いねー」
「それ、口にするなよ。余計に寒く感じるから」
「じゃあさ、比企谷が温めてよ」
「は!?」
突然、何を言い出したかと思えばいきなり『温めてくれ』とくるとは。
──だが、むしろ俺はその理由に驚く事になった。
「だって、
突然の激白に思わず顔をまじまじと見てしまう。
やや怒りのようなものをにじませたその目線は、鋭く俺を貫いていた。
「…それなのに一色ちゃんと…あんなくっついて一緒にさ……」
折本様、ご立腹。
そこで俺は驚くと同時に、ようやく折本の反応に合点がいった。
──どうやら俺は、まだ折本と恋人だったらしい。
* * *
折本の衝撃証言からまもなく。スタバに到着した俺たちは、取り敢えず各々適当に頼んで、現在それを待っている。
「何?なんでそんなに驚いてんの?」
折本が心底分からない、と言った感じで質問してくる。
「……いや、会わなくなってから特になんもなかったからフられたのかとずっと思ってた」
「えー。……それは私のセリフなんだけど。……比企谷全然連絡ないし、会いに行ってもいないし」
「えっ?」
「やっぱり知らなかったんだ。私、何回か総武高に行ったんだよ?」
「マジで?」
「うん。マジ。……でも、自分の学校が終わってからだったし、比企谷帰っちゃったかなーなんて思ってたんだけど、家に行こうか迷ってるうちに二ヶ月近く過ぎちゃって気まずくなってやめちゃったんだ……」
……おいおい、冗談だろ。
その頃の俺は既に奉仕部に
こうなったのを助長する事になったのも、俺達の関係に理由があるのだが──
「──それにほら、私達って休日しか会わなかったし、あの頃はこうなるなんて考えてなかったから、比企谷の部活終わる時間が分からないし……」
──まあ、時間が分からなければいつまで待つのかも分からないから会えなくなるのも、当然なんだけどさ。
折本はそう言った。
──しかしそうなると、俺は折本の彼氏な訳だ。
あの依頼の方もどうにかしないといけなかったんだが、どうやら事態はちょっとややこしい方へ進んでいるらしい。
……実を言えば俺は最初、あの場で津久井を振るつもりだった。
──名前すら知らない奴にいきなり告白されて、それでどうしろと?って感じで。
だけど、そう出来なかった。そうしなかった。
──津久井の真剣さが。
──津久井の本音が。
恐らくそうさせなかったのだろう。
そして、俺も俺で整理が出来ていなかった。
──折本との関係の真否は?
──俺は自分をどうしたい?
だから、俺はあの場で本当の俺を見せて、本人の気持ちを確認した。……調べるようで失礼なのは知っているが、不安だった。
結果論的には本気で告白してくれていたから、俺も本気で応えることにした。
でも、それ以前にまず自分が把握出来てないんじゃ話にならないから猶予を貰った訳なんだが──
──そこまで考えて、昨日津久井と一緒にデパートに行った事を思い出した。
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