「折本──」さて、この後に続く言葉は── 作:時間の無駄使い
因みに、悪いお知らせです。
「お、お兄…ちゃん」
横から聞こえたその声に、口を離しただけの──向かい合って、抱き合ったままの状態で固まる折本と俺。
そりゃそうだろう。
考えても見て欲しい。──恋人とキスをしてるところを見られたのだ。しかも小町は俺が折本と付き合ってるとは知らない。
…いやマジで、一体どんな羞恥──周知プレイだよ。
「……よ、よう…小町」
「……………はっ!?…こ、小町は一体今何を…」
どうやら、あまりに状況が飛び過ぎていて、小町の方も小町の方で色々と大変そうだ。
ここに小町がいるのは俺の為にも折本の為にも小町の心臓の為にも良くない。良い事なんか無かったんだ。
「こ、小町?悪いがちょっと忘れ物をしててな?…折本と一緒に取って
「そ、そうだね。…ごめんね、小町ちゃ」
ガシッ
折本が言い終わる前に、小町が折本の服を掴む。
「ねぇ、折本さん。…今の、なんですか?……あー、そっかぁ、小町の目がおかしかっただけか。そりゃそうですよね。ゴミぃちゃんがキスなんて出来る人居る訳無いですしねー。幾らあれだけ一緒に居た折本さんにだって流石に無理ですよね。だってゴミぃちゃんだし、折本さんもされたら嫌ですよね。てことはやっぱり小町の目がおかしかったんだ。ちょっと眼科行ってこよーかな。あ、でもお兄ちゃんと折本さん二人だけ残して行くのもなんかなーだし、どうしようかな?あ、だったらお兄ちゃんと──」
「………こ、小町?」
急に小町の目から光彩が消え、黒一色になった後で突然早口に捲し立てる。
マジでスクールデ○ズのあのシーン。
いや、待て。小町は
「──って言う冗談はさて置き、…流石に、そのー、配慮をして頂けると…」
「すいませんでした!」
「ごめんなさい…」
急に消えた光彩がフッと小町の目に戻り、それと同時に顔が赤らむ。
マジで恥ずかしくて死にそうだが、まぁこれで小町に伝えるのも楽にはなったかもしれない。
「……で?お兄ちゃんは折本さんを選んだの?」
「…まぁ、見ての通り、俺と折本は付き合ってる」
「そうなんだ…。…結衣さんと雪乃さんにもまだ言ってないんでしょ?ちゃんと伝えてケジメつけなよ?」
「ああ。…そうだな。そうするよ」
「その時は私にも声かけてよ。…恐らく私も居た方が確実だし」
「助かる。…折本には助けてもらってばっかだな」
「そんな事ないって。私だって比企谷に何度も助けてもらったし」
「……お兄ちゃん、折本さんの事名前で呼ばないの?…折本さんも?」
「ああ、いや、それは…な」
「……ね?」
突然の小町からの質問に、俺も折本も曖昧に答える。
「…何かあったの?」
「……まぁ…ね」
「…ふーむ、これは近いうちに祝いを開かなければいけない…。あ、お兄ちゃんはどっか行ってていいよ。小町ちょっと折本さんに色々訊かないといけないから」
「さらっと俺の居場所奪うのやめてくんない?ねぇ。…泣くよ?お兄ちゃん泣くよ?」
「ウザい、煩い、ボケナス、八幡」
「俺の名前は悪口の一種なのかよ…。ってか──」
──
────
…という事があったのだ。
だから今現在、俺の家の庭では、BBQの用意が着々と進んでいた。
あのダンプカーの事故の件から、うちと折本家、津久井家は家族ぐるみでの付き合いが何回かあり、互いの親も、それこそ最初は謝りに謝りで「いえいえ」を何回も──というか永遠に言ってんじゃねぇのと思うくらいに三家族の親がそれぞれ言っていたのだが、うちの親の適当さの前には勝てなかった折本家の両親と津久井家の両親が折れる形で決着がついた。
故に、何度か折本家、津久井家の両親から誘われて家に行ったり、その逆があったりと、俺たち三人の交流も深まっている。
なかでも折本に関してはあの告白の日から俺自身が家に呼んだり呼ばれたりと、恋人らしい事もしてなくはない。まぁ、もちろん普通に二人で出かけたりもするし、寧ろそっちのが多いが。
まぁそんな訳で、今現在うちの庭では『俺に彼女が出来たあり得ない奇跡』を祝おうという事でBBQの用意が進んでいた。
因みに、出席者は俺と折本と小町は勿論の事、うちの両親、折本家の両親に、更に津久井まで来ていた。──津久井はあの日、本当に割り切りを付けたらしく、何も無かったかのように、というのは流石に無理があったが、それでも前と変わらずに接してくれて、あの日の言葉の通り“友達”として接してくれていた。…津久井がどんな気持ちで俺に接しているのかは分からないが。
なので、うちの庭には現在八人が集まっていた。
「あ、比企谷さん、それは私が」
「いえ、大丈夫ですよ。…そっちの皿をとっていただけますか?」
「はい。これですか?」
「有難うございます」
「比企谷ー、ジュースどこー?」
「折本の今立ってるところの右の冷蔵庫の中な。その中にマッ缶も入ってるから一本とってくれるか?」
「比企谷君、この野菜はここに置いておけばいいかな?」
「おう。サンキューな」
こんな調子で進んで行くBBQの用意。
空高く登っている陽は遮蔽物が無い事で俺たちに容赦なく熱を叩きつけてくる。
気温は少し前から三十を超え、何人かは首にタオルを巻いて時々垂れる汗を拭いていた。
「用意も出来たし、そろそろ始めようか」
こうして、いよいよBBQが始まった。
* * *
大人はビールで盛り上がり、俺たちは俺たちで駄弁りながら肉を食べる。
小町と俺とで肉を継ぎつつ食べていると、津久井が半ば無理矢理手伝って来て、それを見た折本も競う様にとって、一時的に肉の数が大変になったり、ビールで盛り上がって調子乗ったうちの親が少しはしゃいで大変な事になったりといろいろあったが、それでも楽しい時間になった。
「あー、比企谷君比企谷君、今日はかおりを泊めるから面倒見てやってくれないか?」
「えっ!?」
「ちょっ!?お父さん!!?」
「比企谷君!?」
「ははは、大丈夫だよ。かおりは君のことが好きだし、何かあっても問題無いさ」
「いや…あの、折本さん?」
「お、お父さんちょっと黙ってて!…比企谷、気にしなくて良いから!お父さん酔ってるだけだから!」
「お、おう」
「折本さん泊まるんですか?私も泊り──」
「泊まらないから!あと津久井さんもダメ!」
「お兄ちゃん、二股は良く無いよ…」
「してねぇ!…津久井もからかうのはやめてくれ…」
「ふふっ…。ごめんね?」
──こうして賑やかな時間は過ぎ去って行った。
まずは、長い間空いたことを謝っておこうとおもいますが、これからのお知らせの内容を見て反省してないと思うかもしれないので、取り敢えず前置きを。
すみませんでしたぁっ!_| ̄|○
さて、お知らせに入りますが、
謝った直後ではありますが、私、時間の無駄使いはこの作品の投稿に関して、長期の休みにはいることに決めました。端的に言ってエタります。
理由は、書いてて楽しく無いのと、アイデアが無いからです。
今まで有難うございました。復帰したらよろしくお願いします。
尚、オリジナルSSにチャレンジしようと思っているので、もし無駄使い戦線で検索して引っかかったら見てみてください。