「折本──」さて、この後に続く言葉は──   作:時間の無駄使い

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知らない人がいる可能性があるのでもう一度だけ。05話に津久井さんの絵を上げました。上手くはないし、豆腐メンタルなので、badコメは心の内にしまっておいて頂けると嬉しいです。goodコメなら歓迎します。

津久井一奈 全身着色ver.↓
※白黒です。相変わらずテニスコートは確認しづらいです。光量を上げることをオススメします。

【挿絵表示】



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 * * *

 

 

 

 ──比企谷家サイド(比企谷小町)──

 

「お、お母さん!?」

 

 予想外のママの状態に慌てる。

 

 泣き崩れている自分の母親に駆け寄ると、その母親から漏れた信じ難い一言が小町の背筋を凍らせる。

 

「はちま…ん………事故に……──」

 

 それ以降は聞こえなかった。

 

 不穏なワードが聞こえた気がするが、確証がない。

 

 でも、

 

 まさか、

 

 あのお兄ちゃんが、

 

 あの兄が事故に遭っているとは、この時点ではまだ分かっていなかった。

 

 

 

 そしてその十五分後、パパが帰って来た時、小町はこの母親と同じ道を辿る。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ──比企谷八幡サイド──

 

 全身が焼けるように熱い。

 

 視界は白く、何も見えていない。目を開いているかすら分からなかった。その場合はこれは視界ではないのだが。

 

 そのまま周りの悲鳴を耳に受けながらどうしようもなく路上に横たわっていると不意に身体が動かされる。

 

 だが、ここで俺の意識は落ちてしまった──らしい。その後のことは何も覚えていない。

 

 意識を落とす直前、サイレンが聞こえたから恐らくは救急隊員だろう、というのを痛む頭で考えていた。

 

 

 最後に覚えていたのは、折本に対して、津久井に対して、ひたすらに謝っていたことだった。

 

 

 ごめん───。

 

 

 

 それから俺は救急車で病院に運ばれて、怪我の度合いを調べたらしいのだが、見た目ほど酷くなかった事が告げられた。誰にも言ってないが、折本と津久井を助ける為に振り回して重心がダンプカーの軌道と同じ方にズレたタイミングでぶつかったから衝撃が柔らかくなったのか?とか思っていたりするのだが、それは大分後の話になる。

 

 

 とにかく今は痛みが軽くなるから、という理由で意識が朦朧とする事を必死に願っていた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 それからの流れは、ものすごく早かった(らしい)。

 

 病院に運ばれてその後手術を受け、俺は病室で目を覚ましたのだが、病室に来ていた小町に泣きつかれたのだ。

 

 ちなみに、俺の状態は、

 

 両脚、両腕、肋骨の骨折と、腕からの出血、右足靭帯を伸ばしたくらいらしい。一番大きいのは肋骨の骨折だが、不幸中の幸いというかなんというか、キレイに折れていたらしく後遺症が残る事はないそうだ。よく腰が折れなかったな、と思った。また、吹っ飛ばされて地面にぶつかった時、身体と地面の間に腕が入っていて、頭を打つ事だけは防ぐことができた。

 

 という事で病室から動けず、食事も出来ず、排泄すらままならない俺は、むしろあの瞬間のがマシだったと思うような恥辱に耐える事になる。……排泄はマジかんべん……。

 

 

 そして、当然というか、俺が事故ったのがクリスマスイベントまであと少しの時だったのでイベントに参加する事も出来ず、入院してから二週間後の一月もとっくにスタートした頃一色から報告を受けた。イベントは成功に終わった、という事を伝えられた。

 

 

 

 事故を起こしたダンプカーの運転手は、徹夜明けで昼の十一時頃に酒を飲んでいたらしく、居眠りと飲酒の二つの状態が重なっていたらしい。こちらも不幸中の幸いだったのは車線が曲がらなかった事だ。直線で突っ込んできたからこそ、二人を逃がす事が出来た。ちなみに、電柱を倒した時にハッとして起きたらしく、俺にぶつかる直前──というかぶつかった瞬間と言ってもいいようなタイミングでブレーキを踏んだらしい。俺が立っていた辺りからブレーキ痕があったとのことだ。

 

 ──が、まあ、当然間に合う筈などなく、信号をなぎ倒し、俺を跳ね飛ばし、数台のクルマのボンネット脇をゴツゴツと擦って凹ませ、しまいには休業中だった店に突っ込んで止まったらしい。即刻逮捕される事になった。

 

 そんな話を聞いたり、そのダンプカーの運転手の会社の偉い人が俺が寝ている間に来て色々してったりと、起きたばっかの俺には多過ぎる情報が俺に訪れることになる。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 時間は戻って、事故の日から三日が経ち、俺は病室で目を覚ました。

 

 全身ギプスで、ベッドの上からは一ミリも動けそうにない。しかも今回は両腕も塞がっているため漫画も読めない。果たしてどうしたものか──と考えていると、白衣を着た人とナースさんが入って来た。

 

「今回は大変だったね。女の子を二人も守ったそうじゃないか」

 

 最初にそう言った白衣の医者は、近くの椅子を持って来てベッドの横に座る。

 

「あの…俺の症状は?」

 

「基本は打撲・骨折・裂傷だね。ただ、単にショック性なのか、それとも打ちどころのせいなのか、とにかく君が気を失ったのは出血多量とかじゃないから安心していいよ。ついでに言うと、出血は左腕からの出血と地面で擦ったんだろうけど、右腕全体、わき腹の一部から。後は、本の少し瞼を切ってただけだ」

 

 なにがだけ、なのかは知らないが、医者の分量でだけ、なら問題無いのだろう。…この事故の程度と比較しての「だけ」でないことは祈りたいが。軽くなった要因の一つには、救急車に早く乗せられたらしいことがあるだろう。ありがたいことだ。

 

 安心してね、と、消毒その他も完璧に(おこな)ったとのことを最後に付け足される。

 

 

 ──そういう訳でいろんな偶然が重なり、俺は骨折が完治するまでの間病院で過ごすことになった。

 

 

 ……にしても病状が軽すぎないかとも思ったが、気にしない事にした。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ──折本かおりサイド──

 

 私達は、目の前のあり得ない光景──信じたくない光景をどうにも出来ないまま、関係者、という事で病院に行った。もちろん、ただの関係者なので比企谷の状態を教えてもらうのには、先に教えてもらっていたらしい比企谷のお父さんお母さんから了承を得られた後だった。

 

 

 ──だけど、その時の小町ちゃんのあの顔は恐らく一生忘れられないだろう。

 

『あなたが……あなた達さえ居なければ!!!!!………お兄ちゃんが……怪我する事……なかっ…た……』

 

 その時は比企谷の両親はお医者さんから説明を受けていて親が居なかったからか、溢れてしまったのだろう。中学生にはその気持ちを抑える事は難しかったのだ。泣きながらそう言う小町ちゃんのその言葉は、流石にキツかった。

 

 でも、何も言えないのも事実だったのだ。比企谷は私と津久井さんを庇った。──庇ってしまったのだから。

 

 だから、どんなに辛くても我慢するしかなかった。

 

 

 それでも、比企谷の両親は優しく接してくれた。

 

 怪我は無いか、どこか痛むところは無いのかなど、私達二人の事を心配してくれていた。

 

 流石大人だ、と思った。

 

 

 そして、私と津久井さんも説明を受けた。

 

 

 外見と比べて中身はそうでもない、と医者から言われたが、それで落ち着けるような心境ではなかった。

 

 

 そして、説明を受け終わると、病院に着た直後に連絡した私の親が到着する。更に数分後、見知らぬ夫婦が来た。恐らくは津久井さんの両親だろう。

 

 

 私はどうすればいいのか迷ったが、お父さんに「今日は帰りなさい」と言われて、帰る事にした。病院を出る前に、比企谷さんに「お見舞いは毎日来ます。……来させて下さい」というと、了承を得られたので、ほんの少しだけホッとして私は暗い気持ちのまま帰路についた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 翌々日からの学校は、全部休んだ。

 

 比企谷さんから連絡を受けたらしい父が、最初に私と一緒に比企谷の病室に行った。

 

「今回は、うちの娘を守って頂いたそうで、ありがとう。何か出来る事があれば何でも言っていい。私も出来る限り手伝おう」

 

 お父さんはそう言った。謝らなかったのは、その前に比企谷に私が謝ろうとして断られたからだ。「──俺が望んでやった事だから気にすんな。第一、今回は謝るようなことは俺も折本もしてないだろ」──と比企谷は言っていた。

 

 そして、私は比企谷の世話を自分からするようになった。

 

 途中から──と言っても二日目からだが、津久井さんも同じらしく、面会時間のギリギリまでいつも私と津久井さんで比企谷の事を世話した。

 

 そんな形で一ヶ月が過ぎた。

 

 時々、病室に行くと一色ちゃんや知らないポニーテールの白みがかった青い髪色の女子生徒、小学生の女の子なんかが来ていたりした。

 

 

 そんな日が続いたある日の事だった。

 

 

 

 いつものように病室の扉を叩いてから開く。

 

「比企谷ー、来たよ」

 

「おう、入ってくれ」

 

 あれから時間が経ったこともそうだが、比企谷に暗い顔とか、無理した笑顔をするのはやめろ、と言われて出来るだけ自然体に戻ろうと努力した私は、ある程度もと通りに喋れるようになった。

 

「これ、今日の分」

 

 そう言いながら私が比企谷に出したのは新聞だった。

 

 この部屋にはテレビが無く、情報が得られないから外がどうなっているのか分からないのだそうだ。今回の事件は、一応本人への取材は頑なに断ったおかげで比企谷本人へは特に何もなかったが、その代わり比企谷以外への──比企谷家、津久井家、折本家、学校への取材が殺到しているらしい。私は学校休んでるから知らないけど、津久井さんの話だと総武高の方だと校門前とその周辺に先生を巡らせているらしい。

 

「大したことは書かれてないんだな……しまってくれ」

 

 腕が使えないから比企谷が読んでいる間はずっと私が新聞を持っている。いつも最初の欄だけ見て、出来るだけ早く終わらせようとしているのはバレバレなのだが、言うとややこしくなるのは分かっていた。

 

 

 そこまでの一連の流れが終わった時だった。

 

 

 

「いつまでそんなところに寝ているつもりかしら、比企谷君」

 

 

 声に驚き振り返ると、黒髪のロングの女子と茶髪で団子に結んだ女子が病室の入り口に立っていた──。




今年最後の投稿は大晦日の日です。
読者の皆様、こんな特に特徴も無いどこにでもあるような駄文を今まで読んで頂きありがとうございました。来年度もこの話が終結するまでの間、よろしくお願いします。


それと、比企谷君の病状については、軽すぎるだろ……。と思っても目を瞑っておいて下さい。主人公補正とでも思っていてくれれば。逆に、これくらいが妥当とか、ちょっと重いとかありましたら、感想で書いて下さい。なにぶん想像なもので…。



──最後に──

今までの比企谷君のセリフの中で、一番良かった、と思うセリフ等ありましたら教えて下さい。

私は匿名投稿ですから、自分のアカウントの活動報告を使うわけにもいかないので友人のアカウントの活動報告を借りてアンケートを取ろうと思います。下記のURLをコピペして頂いて、そこにお願いします。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=136462&uid=138410

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