デレマス小説書いてるのにバンドリにハマってたとかそういうんじゃないんです!(自爆)
…いや真面目な話、部活決めやら何やらの高校生活が大変すぎてやる暇が無かっただけなんですけどね
今話からなんとか週一投稿に戻…せれば良いなぁと考えています。
8月某日、太陽が天頂から下り始めた頃。
「ーーさて翼くん。今日が本番なワケだが、どうだい?」
「……どう…って聞かれても上手く答えられないですけど、緊張感はあっても緊張は無く…って感じですかね。
あとは期待かな?」
「…まぁ、フィーリングだけど言いたいことは理解出来た…と思う。」
今までほとんど使ったことのない、346プロにあるプロジェクトルームで現場移動までの時間潰し。
と言っても、俺は大体の流れや台詞が書いた紙を見ながら。今西さんは、何やら忙しなくキーボードをタイピングしながらだけど。
「…そう言えば、来月の頭から俺の後輩が何人か来るんですよね?」
「うん。今やってるのも、ソレ関係の契約書やら説明会資料やらの推敲でね」
ほら、と言って今西さんが見せて来たのは、新しく入るはずのメンバーのプロフィールが書かれた用紙。
「…それ、俺に見せてよかったんですか?」
「遅いか早いかの違いだよ」
今西さん曰く、
「…あれ?
◆
15:00からの
因みに俺が今何をしているのかっつーと、控え室…と言う名のスタッフルームの扉を背に、メイクをしてもらっている最中だ。
…あれ?よく考えたら俺なんもやってねーな。
「本番まで残りジャスト5分!機材組み上げどうなってる!?」
「柱に床と上下ライト設置まで完了しました!」
「音響機器チェックも完璧です!」
「スタッフいつでも行けますよ今西さん!!」
「ハイ翼くんメイク終了で〜す」
「ありがとうございました」
「いえいえ〜」
それでは〜、と言いながら控え室から出て行くメイクさん。
彼女と入れ違いになるように、さっきまで関係者通路で指示を出していた今西さんが入って来た。
「翼くん、準備は」
「もちろん」
食い気味に返答。
そりゃ良かったと溢す今西さんと共に、通路を抜け
「…緊張は?」
「まったく」
ーーそして今、
「不安は?」
「ないっす」
時計の針は一つとなり、
「楽しみかい?」
「とても」
扉が
「ーー魅せてくれよ、
開いた
◆
小さく沸いた歓声。
直後、何十もの無言の視線。
それが意味するところは、一つ、ほとんどが
「…っ!皆さんこんにちは!新田 翼です!
今日は俺の初めてのライブを見に来てくれて、ありがとうございます!」
俺の言葉に返って来たのは、申し訳程度の拍手と無言の催促。
…まぁ、俺も今西さんも予想はしていた。
近年、スマホなどのネット環境の普及から、動画サイトや音楽ダウンロード用アプリは確かにユーザーを増やしている。
が、それが俺の初期ファン数に結び付くかと訊かれれば、現状はNOとしか言えない。
アイドルだろうと歌手だろうと、売れるまでは
誰もが何処かに持っているその固定観念が、誰かの始まりを否定する
逆に言えば、最初は誰もが同じ地点だということ。
…とまぁ、頭では理解出来ても、はっきり言ってこれはキツい。
それでも…いや、それなら尚更、
「じゃあ早速、聴いてください!新田 翼で、『Sizzle Squall』!」
ーー
◆
音が、弾けた。
そうとしか形容出来ない何かが
光に群がる蛾。
ある新聞社は後日、この景色をそう表現することになる。
例えは悪いが、CDショップ吸い込まれるように入って行く人々を見ればそう思うのも無理はない。
総計226名。
スタッフが計上した握手会の参加希望者数を思い出し、口の中で反芻する。
確かに、
彼が入社した当初の計画としては、最初の1ヶ月は歌を中心に、ダンスはそれなりでファーストライブを終え、その経験を基に
ーーしかし、彼はわずか3日で此方の要求度を越えてきた。
バックで音を流さずとも、踊りながら普段通りに歌える。
全てのアイドルが欲してやまないその才能を、彼は持っていたのだ。
すぐに予定やトレーナーを変更し、振り付けも複雑化させた。
そして迎えた
CDショップの中は人がごった返し、誘導にショップのアルバイトまで借りるという異例の事態だ。
正直なところ、ここまでとは思っていなかった。
勿論、僕がアイドルの
…が、僕だってトレーナーには及ばずとも1ヶ月間彼の歌や動きを見てきた人間だ。
だから、断言できる。
彼の動きは、明らかに
フリの一つ一つを正確に決め、その歌声には寸分の揺れすら見られない。
…いやはや、これじゃあ後発組への期待値が上がってしまう。
口では困った困ったと言いながらも、自然に口角が釣りあがってしまうのは、そういうことなんだろう。
「今西さん!あっちお願いします!!」
「ああ、今行く!」
今西さんが企業人染みた思考してるのもきっとウチだけ。
次はやっと楓さん出るよ!