アスナ「私のお兄ちゃんが小さくて可愛い」 作:アルティメットサンダー信雄
うわあああ、と周りのプレイヤーから悲鳴が上がる。総隊長とも言えるプレイヤーがやられ、全員に動揺が走った。
そして、一人が出口に向かうと、周りのプレイヤーも逃げ出して行く。そんな中、足を止めてる奴が二人いた。
キリトとBF、その二人がボスを見据えながらニヤリと微笑んだ。
「………よーし、キリト。勝負のルール変更だ」
「へぇ、面白い。どうする?」
「あのデカブツを先に倒した方が勝ちだ」
「面白い‼︎」
二人してコボルド王に駆け出した。
「! おい、お前ら!」
すれ違いざまにエギルが声を掛けたが、二人は無視した。二人に気付き、ゴボルド王は巨大な野太刀を振り上げた。
キリトとBFも走りながら剣を構えた。そして、二人のソードスキルとボスのソードスキルが正面からぶつかり合い、ボス部屋全体を振動させた。
ボスの部屋を弾いた直後、BFはすぐに跳び上がってボスの首に剣を伸ばした。
「なんてバネだ……!」
キリトは呟きながら、コボルド王の足を斬った。
BFはボスの顔を斬ると後ろを取り、背中を斬る。
コボルド王は大きく跳び上がった。空中でギギギッと体を捻った。カタナ専用ソードスキル、範囲攻撃《旋車》。キリトは知っていたため大きく後ろに飛び退いたが、BFはそうもいかなかった。
直撃し、大きくHPゲージを減らすと共に、スタンした。
「マジか……‼︎」
BFが声を漏らした直後、ボスがBFに刀を振り下ろす。それをアスナがリニアーで相殺させた。
「何やられそうになってんのよバカ!」
「………別にあの程度余裕だった」
「嘘つきなさいよ‼︎」
そんな話をしてると、二人にボスは刀を振り下ろした。アスナがBFをお姫様抱っこして逃げた。
「お、おい!お姫様抱っこはよせ!」
「小さいのはこうした方が運びやすいの!」
「おい、喧嘩売ってんだよな?それ宣戦布告だと思って良いんだよな?」
「良いから黙ってて!」
キリトがボスのタゲを取ってる間、スタン状態が解除されるのを待ち、終わるとポーションを飲んだ。
そして、キリトを睨んだ。
「キリト!テメェ、ボスの攻撃パターン知ってやがんな⁉︎」
「ああ、βテストの時、10層あたりでカタナスキル使う奴とやり合ったからな‼︎」
「汚ねえぞテメェ‼︎」
「お前は下見に行ったんだろうが‼︎それでチャラだ‼︎」
「んなろ……‼︎その時ゃ、カタナスキルなんて使われてねーんだよ‼︎」
「ちゃんと下見しなかったお前のミスだ‼︎」
「てめっ、上等だコラァッ‼︎」
BFがボスに仕掛けようとした時、その肩をアスナが掴んだ。
「待って。もう攻略組のメンバーは逃げたわよ⁉︎これ以上は危険だわ!」
そう言う通り、他のメンバーは数人を除いてボス部屋から消えていた。
「はっ、知るか。てかちょうどいい。あいつらに雑魚の処理をさせろ。お前もあっちに加われ」
「はぁ⁉︎」
「俺とキリトの遊びの邪魔をさせんなよ‼︎」
再びBFはボスに向かっていった。
「あーもうっ、勝手なんだから‼︎」
アスナはぶつぶつ文句を言いながら従った。
ボス戦組のアホ二人は、ボスの攻撃を確実に躱しながら身体を斬っていった。
ボスの攻撃は全てキャンセルさせ、それによって出来た隙を逃さずにボコボコにタコ殴りにする。HPはジワジワと削れていき、残りは3分の1以下になった。
そこで、ボスは刀を再びソードスキルを発動した。《浮舟》という、コンボを始めるための攻撃で、対象を浮かせた状態にする。
それがBFに迫り、BFは剣でガードしながらも空中に舞い上がった。
「!」
さらに、連続でボスはソードスキルを発動。三連撃を放つ《緋扇》が空中のBFに炸裂した。
「そーちゃん‼︎」
アスナが声を漏らした。キリトも、思わずBFの方に目を取られ、攻撃することをやめた。
空中でボスに攻撃を受けたBFは、刀を構えた状態でボスを睨みながら言った。
「…………終わりか?」
全て、空中で小さくいなしていた。そして、落下しながらボスを見下ろしつつ、剣を横に構えた。
「今度はこっちの番だ」
落下しながらソードスキル、ホリゾンタルを発動し、ボスを大きく怯ませた。その隙を逃さず、キリトがソードスキルを叩き込む。
「あっ、てめっ俺の作った隙だぞこれ‼︎」
「やったもん勝ちだよバーカ‼︎」
「んなろっ……!」
着地したBFも負けじとソードスキルでボスを叩いた。
それでもボスは起き上がる。二人は一度、距離を取った。
「あっぶねぇ、今ので死なれたら俺負けてたじゃん」
「でも、次の一撃で多分決まるぜ」
「じゃ、ここからは小細工なしの純粋な一撃勝負だな」
「いいな、そうゆうの好きだ」
二人は微笑むと、自分達の方に向かって来るボスに向かって行った。
キリトもBFも剣を構えた。使うソードスキルは突撃系のレイジスパイク。ボスのソードスキルを回避すると、二人で前に剣を突き出しながら前に跳んだ。
二本の剣が青白く光り、ボスの体を貫通した。二人はボスの後ろで剣を振り抜いたまま動かない。
数秒経った後、ボスは青く四散し、それと共に二人は武器をしまった。
そして、ラストアタックボーナスは、
「ぃぃいいいいよっしゃあああああああ‼︎」
キリトの物になった。チッ、とBFは舌打ちすると、剣を鞘に収めた。
「…………次は俺が獲る」
「次も俺が獲る」
そう言ってカッコつけてる二人を見ながら、アスナはつぶやいた。
「………なにこれ」