アスナ「私のお兄ちゃんが小さくて可愛い」   作:アルティメットサンダー信雄

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一足先にボス戦

 

迷宮区に入ったBFは、敵を倒してなるべくダメージを避けながらボス部屋の前に立った。BFは試合やテストの前などは、予め準備をしておくタイプではない。だが、今回は命が掛かっている。そのため、不安要素は消しておきたいから、自分だけで偵察しに来た。攻略本の内容はバッチリ頭に叩き込んであるし、少なくとも序盤は問題ないだろうと思っている。

 

「………行くか」

 

とりあえず使えそうなアイテムは片っ端から持って来た。

門の中に入ると、両サイドの壁沿いに並べられた灯りにボホボッと火が灯る。

そして、中央にいる凶悪なカンガルーみたいな化け物がヌッと顔を上げた。上を向くと、それ顎外れてない?ってくらいまで大きく口を開いた。

 

『グルルラアアアアッッ‼︎』

 

耳にキーンと残る咆哮がBFの耳に響き、その巨体は大きく跳んだ。空中でぐるっと一回転し、地響きとともに着地した。そして、左右の壁の高いところに開いた複数の穴から取り巻きのコボルド降りて来た。

BFは背中の片手剣を抜くと、突撃した。取り巻きコボルドの正面への突きを、棒高跳びのように背中を下に向けて回転しながら回避すると、後ろから胴体を斬って一撃で殺した。

すると、左右両方から別の取り巻きが武器を振り上げて襲い掛かって来る。後ろからBFの右肩、前からは左肩を狙って来たが、BFは体を横にして剣の間を通ってよけると、前のコボルトに蹴り飛ばし、後ろのコボルトを斬った。斬ったコボルドの剣を奪うと、蹴りを入れたコボルドにその剣を投げ付けた。

直後、ボスのコボルド王が走って襲いかかって来た。正面からソードスキルを使って剣を振り抜いて来るのを、前転しながら回避し、コボルド王の背後を取りながら、取り巻きコボルドの腹を蹴り飛ばし、後ろに吹っ飛びかけたコボルドの足を掴んだ。自分の方に引っ張り、頭を掴んで剣を突き刺しながらコボルド王を見る。

が、そのBFに取り巻きのコボルドが襲い掛かり、慌てて回避した。

 

「チッ……流石ボス部屋。甘くねぇか」

 

呟きながらコボルト王から距離を取りつつ、アイテムストレージからロープを取り出した。先端にダガーを付けて壁にブッ刺すと、迫って来る取り巻きを避けながら大きな円を描くように走った。

ロープで複数のコボルドを巻き付けると、一気に全員をソードスキルで斬り裂いた。

 

「………ふぅ、」

 

息をついて後ろを見ると、コボルト王がこっちを睨んでいた。BFも再び剣を構える。そして、お互いに地面を蹴って斬り掛かった。

剣と剣がぶつかり合い、ボス部屋内全体を振動させる衝撃が広がる。BFは後ろに大きく飛び退き、再び地面を蹴って突撃。ボスはそれに合わせて剣を振り下ろした。その剣を横に躱し、肩に突きを放った。

そのまま剣を何度も振りながら確実に攻撃を躱し、ダメージを蓄積させていった。

この様子だと、本当に攻略本通りの攻撃パターンっぽいと思い、撤退する事にした。

ボスのHPは四本中、一本破壊している。残りは三本。BFはボスの攻撃をジャンプして回避し、肩を踏み台にして飛び越すと、目の前で道を遮る取り巻きを素通りしながら斬り殺し、ボス部屋を出た。

 

「ふぅ……俺一人でここまでやれるなら。明日は余裕そうだな」

 

歩きながら武器の耐久値を確認、ついでにステータスも。

 

「さて、さっさと帰らねぇと。内緒でボスと遊んでましたなんてアスナにバレた暁にはメチャクチャ怒られ」

 

「バレてますけど」

 

ビクッとBFの肩が震え上がった。恐る恐る振り返ると、アスナが立っていた。

 

「あっ」

 

「………いつまでも帰って来ないと思ったら……何してるのかしら?」

 

「…………」

 

「来なさい。後でお説教よ」

 

「いや、あの、待って。悪かった。俺が悪かったから抱き枕の刑はやめ」

 

抱き枕にされた。

 

 


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