アスナ「私のお兄ちゃんが小さくて可愛い」 作:アルティメットサンダー信雄
周りのプレイヤー達が慌てて悲鳴の聞こえた方へ走る中、キリトとBFは肩や首をコキコキと鳴らしながら向かい合った。
「武器は無しにしてやるよ」
「男の喧嘩はやっぱ拳だよなぁ」
「とりあえず、負けを認めた奴が負けだかんな」
「喧嘩っつーのは元々そういうもんだろうが」
「「っしゃ、行くぞオラァッ‼︎」
「状況を考えなさいよ‼︎」
アスナのゲンコツが二人の脳天に染み渡った。
「悲鳴が聞こえて出て来たと思ったら何やってんのよあんたら⁉︎場合を考えなさい場合を‼︎」
「な、なんでテメェが、ここに……」
「そーちゃんがいるところに私がいないわけないでしょう⁉︎」
こいつマジでヤバい、と思わざるを得ない男二人だった。
3人は走って広場へ。すると、建物の上で男の胸に剣が突き刺さっていて、壁に打ち付けられていた。
「うわあ、スゲェ」
「言ってる場合か!早く抜け‼︎」
最後の部分は壁に突き刺されている男に言った。男はその槍に手を掛けて抜こうとするが、抜けない。
「BF!塔に登ってあいつを降ろせ!」
「あ?なんでテメェに命令されなきゃいけねぇんだ?」
「アアッ⁉︎」
直後、殴り掛かる二人にラリアットしながらアスナが塔の上に向かった。
が、到着する前に男は青い欠片となって砕け散った。
「!」
「あーあ、死んじゃった」
「呑気なこと言ってる場合か⁉︎デュエルのウィナー表示を探せ!」
「だからなんでテメェに命令されなきゃいけねんだよ」
「アアッ⁉︎」
むしろデュエル申請しようとするキリトをアスナは塔から飛び降りながらドロップキックして、辺りを見回した。
が、ウィナー表示はない。
「ダメだ……30秒経った」
「つまり、圏内PKか」
「これはヤバイぞ、圏内PKなんてものを誰かが見つけたとしたら……」
「いよいよ楽しくなってくるな、このゲームが」
「そうじゃない。危険性が高まるって意味だ」
「あ、そういうね」
「キリトくん!」
アスナが声を掛けた。
「これってどういうこと?」
「圏内PK、かもしれない」
「それなら、このまま放置はできないわね。誰かがそんなものを見つけたなら、早く仕組みを突き止めて対抗手段を公表しないと大変なことになる」
「………俺とあんたの間じゃ、珍しく見解の一致だな」
「あっそー頑張って。俺は帰」
「「逃すか」」
捕まった。
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「すまない、さっきの一件を最初から見てた人、いたら話を聞かせてほしい!」
キリトが声を張り上げた。数秒後、遠慮がちに手が挙げられた。前に出て来たのは女性のプレイヤーだ。
「あいつ犯人じゃね?拷問するか」
「お前は黙ってろカス」
「あ?今なんつったおい」
「二人とも、いい加減になさい」
アスナに怒られ、黙った。
「ごめんね、怖い思いしたばっかりなのに。あなた、お名前は?」
「あ、あの……私、ヨルコっていいます」
「最初の悲鳴もお前が?」
「は、はい……」
「つーか、あんな派手に殺されたのに誰も気付かなかったのかよ」
「さ、さぁ……それより、この生意気な子は……?」
「子じゃねぇ。俺は……」
「私の弟です。そーちゃん?歳上の方にそんな口聞いちゃダメよ?」
「てめっ……!誰が弟……!」
「そーちゃん?静かに」
「おい、テメェマジ殴るぞオイ」
「そーちゃん?」
「…………ぷっ」
「キリト、テメッ何笑ってんだ?殺すよホント」
「あのっ……」
「いやっ、妹にナメられ放題で……ほんとっ……」
「ナメてんのはテメェだろ。ぶっ殺して差し上げましょうか?」
「いい加減になさい」
「元はと言えばテメェが……‼︎」
「そーちゃん?」
笑顔で脅された。
「えっ……あの、元々君がっ……」
「そーちゃん?」
「…………すみませんでした」
「さ、話して。ヨルコさん」
妹が怒ると怖かった。