アスナ「私のお兄ちゃんが小さくて可愛い」 作:アルティメットサンダー信雄
BFはフィールドの奥で、モンスターを倒していた。が、途中で手を止めて、ポツリとつぶやいた。
「………懲りねえよなぁ、お前らも」
直後、ガササッと木の上や木の後ろから5人のプレイヤーが姿を現れた。カーソルの色はレッド。全員が同時に斬りかかった。その動きをよく見ると、うち二人の攻撃が先に自分に当たると見えた。
一人の片手剣をしゃがんで躱し、もう一人のダガーは、ダガーを持ってる拳を足で踏んで止めた。
踏んだ手を踏み台にして思いっきり蹴り、ジャンプしながら体を捻って、3人目の剣を弾いた。弾かれた3人目の剣は、横の4人目のプレイヤーの顎を掠って怯ませ、残りの一人には、空中廻し蹴りを叩き込んだ。
その蹴りを男は盾でガードすると、盾の後ろから突きを放った。それを回避すると、敵の腕を脇の下で挟んで腕に剣を振り下ろした。
「ッグォアッ……⁉︎」
腕を切断され、悲鳴をあげかけた男にさらに蹴りを放った。後ろに倒れ込む男にトドメを刺そうと剣を振り下ろしたが、その前に別の奴が立ち塞がって剣でガードした。
その隙に、BFの横からダガーを構えて別のやつが襲い掛かった。その攻撃を腕でしたから手首を打ち込みながらガードすると、思いっきり頭突きを叩き込んだ。
後ろに怯んだ頭をガードした手を伸ばして掴むと、横の奴に振り回して叩き付け、そのまま木に捻じ込んだ。そこの二人に向かって剣を突き込んだ。
二人は何とかしゃがむなら横に飛び退くなりして回避した。剣は木に突き刺さり、木は思いっきり倒れた。
レッドプレイヤーの五人はBFの後ろを取るも、無闇に攻撃することなく、距離を置いた。
「チッ、バケモノめ……!」
「つか、あいつほんとにグリーンかよ。あんな攻撃、俺たちに放ったのか今?」
「相変わらず容赦ねーな」
剣を左手に持ったまま、BFは五人に振り返り、睨み付ける。
「お前らさぁ、花瓶小瓶だっけ?」
「ラフィンコフィンだ」
「何が楽しくて人殺しとかしてるのか知らねーけど。絡む相手いい加減選んでくんない。殺すよホント」
「何度も言わせるな。お前はこっち側の人間だろう」
「あ?」
「人殺しに抵抗があるように見えない。さっきの剣撃だって殺す気だっただろう」
「むしろ笑ったらように見えたよね」
「どういう意味だよ」
「お前は俺たちと共にあるべきだ」
「…………」
その言い草にBFは少し黙り込んだ。腰に手を当て下を向き、右足の踵で左足首を掻きながらため息をつくと、言った。
「あんさ、何度も何度もお誘いくれる度に同じこと言うけどさ。下らないことで一々絡んで来るなよ。ゲームクリアするまではログアウトしたくないだろ?」
「…………まぁいい。また来る」
五人の男達は立ち去った。
「……チッ、胸糞悪い」
そう呟くと、唾を吐き捨てた。
1
57層の主街区。そこのレストランにBFは入った。相席なら空いてる、と言われたので了承したら、キリトと顔を合わせた。
「………随分とお暇なんですね、黒の剣士」
「お前に言われたくねーんだよ紫鬼」
「平日の夜から攻略組が最前線から外れて観光ですか、いいご身分ですねこの野郎」
「それはお前も同じだろチビ。つか、お前こそいつものお姉さんはどうした?あ、悪い悪い。妹だったな」
「いいよ別に。お前、残念な頭してるんだもんな。もう何度もどっちが年上から教えても毎回間違えるもんな。学習能力皆無なんだもんな」
「うるせーよ。その学習能力が皆無な奴に序盤は敵の攻撃パターン教わってたのは誰だ?」
「あれはアスナが聞いてたんだろうが。俺はたまたまその場に近くにいて話が聞こえて来ただけだ」
「うわっ、盗み聞きとかタチ悪いなおい。人としての質も悪いなオイ」
「聞こうとしてたんじゃねぇ、聞こえて来たんだ。大きな間違いだぞこれは」
「間違ってんのはお前の頭と生き方と根性だろ。だから背が伸びねぇんだろ」
「あ?お前何、さっきから身長いじりしかできねぇのか?なんならそのでっかい面たくさん殴って縮ませてやろうか?」
「あ?テメェこそ思いっきり殴って頭腫れさせてやろうか?少しは身長伸びるんじゃね?」
「上等だよオイ、表出ろコラ」
「泣いて謝ってもおせえからな」
指やら首やらをコキコキ鳴らしながら二人は外に出ると、ちょうどそのタイミングで悲鳴が聞こえて来た。