魔法少女育成計画 -Suicide Side- 作:∈(・ω・)∋
独立して三年も立てば、固定客もできる。美容院と言うのは住宅街の側に建てるべきだ、という師匠の助言は功を奏し、小さな子供から年配のご婦人まで、幅広く客層を増やすことが出来た。
「こんにちはー、今日もお願いしまーすっ!」
「はい、いらっしゃい」
最近の女子高生というのはお洒落だ。個人経営のなので、決して安くはないが、彼女はすっかりお得意様として店に居着いており、月に二度は訪れて、前髪の角度を整えたり、パーマをかけて行ったりする。
本日のご予定は後者のようで、頭をぐるぐるまきにして、機材にかけて少しの間放置する。その間、暇な客がやることはといえば、雑誌を読むか、世間話をするかだが、今日日の学生というやつはスマートフォンなどというものを持ち歩いており、両手が開いていることをいいことにゲームに興じ始めた。
「最近は皆ゲームゲームですねえ、私、そういうの全然わからなくて」
スマートフォン自体は使いこなせている自信はあるが、ゲームというのはとんと駄目だ。
兄がパソコンのゲームをずっとやり続けて引きこもりになった、と実家の両親が毎週のように相談に来るのもいけない、印象としてはマイナスだ。わざわざ自分からお金をかけて手を出そうとも思わない。
パソコンのピンボールなどは暇つぶしに興じたこともあるが、最近新しいのに買い替えたら機能ごと消えていた。
「えー、もったいない、最近のスマホゲームってすごいんですよ、殆ど無料でパズルもRPGもできるんですから」
「そのジャンル説明自体、よくわからないんですよねえ」
「折角だから、なにかやってみません? 私、今これにはまってるんですけどっ」
彼女が見せてきたのは、何やら二頭身のデフォルメされた可愛い女の子が、ぱこんぽこんと敵を倒しているゲームだった。
「魔法少女育成計画、っていうんです、売りは完全無料で、課金要素一切なし! 暇つぶしでやってる人も多いんですよ」
「完全無料でどうやって利益をあげてるんです?」
「さあ……それは私に聞かれても、でもでも、面白いですよ?」
熱心に勧められ、インストールの仕方を懇切丁寧に説明される。
「はあ……暇があったらやってみましょうか」
「ぜひぜひ! 私今布教中なんですよー、プレイヤーが多ければ多いほど嬉しいです!」
あまり乗り気ではなかったが、客の話題に乗るのも仕事だ。今晩あたりにでも、触って見るだけ触ってみようか、と思った。
美容師、